生理のサイクルと便秘・下痢の関係性
女性の体は、約1ヵ月サイクルで女性ホルモンの分泌量が変動しています。女性ホルモンには「プロゲステロン(黄体ホルモン)」と「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の2種類があり、このうち、生理前の便秘や生理中の下痢に関係しているのはプロゲステロンです。まずは生理前の便秘と、生理中の下痢が起こる原因を詳しく紹介します。
生理前:便秘になりやすい
プロゲステロンは間接的に水分を再吸収する働きがあり、便の水分も一部吸収してしまいます。特に生理前はこのプロゲステロンの分泌量が増えるため、便が硬くなり、便秘になりやすくなると言われています。
生理中:下痢になりやすい
生理が始まるとプロゲステロンの分泌量が減少するため、便秘が解消されやすくなります。しかし、今度は子宮や腸を収縮させる「プロスタグランジン」という物質の分泌量が増加。腸の平滑筋の収縮が活発になることで、生理中の下痢につながると考えられています。
また、生理中は精神的に不安定になりやすく、ストレスが下痢を引き起こすこともあります。
生理中に起こる下痢の予防と対処法
生理中の下痢に悩まされている女性は、日頃の習慣や食生活、過ごし方を変えることで改善が期待できます。体を温める、刺激のある飲食物を避ける、つらいときは薬の力を頼るなど、できることから始めて身体を労わりましょう。つらい下痢を改善するために取り入れてほしい、予防・対処法を5つ紹介します。
お腹を冷やさないようにする
生理期間に「体が冷える」と感じる人も多いのでは。これは、生理前は基礎体温が下がり、生理中も低い状態が続くためです。
体の中でも、特にお腹が冷えると下痢をしやすくなるので注意が必要です。暖かい服装にする、腹巻やカイロを使うなど、生理中は意識的にお腹を温めましょう。お腹を温めることで、腸の動きが活発になり過ぎるのを防げます。
刺激のある食べ物・飲み物を避ける
刺激の強い食べ物・飲み物は下痢を引き起こしやすいので、生理中は控えることをおすすめします。
<下痢のときに避けたい飲食物>
- 冷たい飲食物
- カフェインが含まれる飲み物(コーヒー、緑茶、紅茶など)
- アルコール
- 辛い食べ物
- 乳製品(ヨーグルト、チーズなど)
- 人工甘味料が含まれる飲食物
- 食物繊維が多く含まれる食べ物(いも類、きのこ類、海藻類など)
- 脂が多い食べ物
なお、便には大切な栄養分が含まれています。下痢をすると栄養分の他に体内の水分も排出されてしまうので、脱水症を防ぐためにも食べ物・飲み物から栄養と水分を補うことが大切です。
<下痢のときに適した飲食物>
- 消化の良い食べ物(スープ、おかゆ、うどんなど)
- やわらかく煮た野菜(人参、ほうれん草、大根など)
- 脂が少ない食べ物(白身魚、ササミなど)
- 果物(バナナ、りんごなど)
- 常温・温かい飲み物(白湯、麦茶など)
- 脱水症状予防の飲み物(経口補水液、スポーツドリンクなど)
よく噛んでゆっくり食べる
早食いや食べ過ぎ、飲み過ぎなどで起こる消化不良も下痢の原因の1つ。腸の粘膜が刺激されて異常収縮することで、下痢につながってしまいます。生理中に限らず、普段から食事はしっかり噛んで、ゆっくり食べるように心がけてくださいね。
心身を休ませてストレスを溜めない
生理中はホルモンバランスの変化が起こるため、どうしても気分が落ち込みやすいもの。しかし、先述したようにストレスも下痢を引き起こす原因になります。
下痢の予防・解消のためにも生理中は無理をせず、心身の休息を意識しましょう。自宅でのんびり過ごす、趣味に打ち込む、好きな音楽を聴くなど、リラックスできるとき間を作るのがおすすめです。
その他、生理中はプチ贅沢をして、いつも頑張っている自分にご褒美をあげるのも◎。普段は食べないスイーツを買ってみたり、少しリッチなコスメやパックを使ってみたりすると、リフレッシュできて生理に関するストレスを軽減できそうです。
つらいときは薬を飲む
通学・通勤中や仕事中などの下痢に悩む女性は、下痢止め薬を携帯しておくと安心。水なしで飲めるタイプなら、お腹の調子が気になったときにすぐに服用できます。下痢だけでなく、生理による腹痛にも悩まされている場合は、痛みがひどくなる前に鎮痛剤を服用しましょう。
生理中の下痢がひどいときに考えられる病気
生理期間に便秘や下痢が起こるのはホルモン分泌の変動によるものなので、過度な心配はしなくて大丈夫。しかし、腹痛や下痢などがあまりにひどい場合は、病気が潜んでいることを知らせる、体からのサインかもしれません。ここでは、生理中の下痢が続く期間の目安と、下痢がひどいときに考えられる病気を紹介します。
そもそも生理中の下痢はいつまで続くもの?
個人差はありますが、下痢は生理が終わる頃に治まるのが一般的です。しかし、プロスタグランジンの分泌量が多いと子宮や腸の収縮が続くため、生理が終わっても下痢や腹痛が続くこともあります。
考えられる病気① 月経困難症
月経困難症は、強い腹痛や腰痛などの不快な症状が生理期間に起こる病気です。生理の直前、または開始とともに症状が始まり、生理の終了前後に治まります。
<主な症状>
- 下腹部痛
- 腰痛
- お腹の張り
- 下痢
- 吐き気
- 頭痛
- 疲労・脱力感
- 食欲不振
- イライラ・憂うつ
これらの症状によって日常生活に支障が出る場合は治療の対象になります。生理痛や下痢がひどくてつらいなど、気になる症状がある人は婦人科を受診してくださいね。
考えられる病気② 過敏性腸症候群
便秘や下痢が頻繁に起こる場合は、過敏性腸症候群の可能性も考えられます。過敏性腸症候群とは、腹痛やお腹の張りを感じることが多く、便秘・下痢などに悩まされる病気です。
過敏性腸症候群は一般的に命に関わる病気ではないものの、腹痛や便秘・下痢といった症状によって日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。生理期間だけでなく、日頃から便秘・下痢をしやすい人は、内科や消化器内科を受診すると安心です。
生理中は無理をせず、下痢がつらいときは病院を受診しよう
生理期間に起こる便秘や下痢の多くは、ホルモン分泌量の変動が原因です。生理になったら体を温めてゆっくり過ごす、刺激のある食べ物と飲み物は避ける、つらいときは薬を飲むなど、できる範囲で対策をするのがおすすめです。きっと、今よりは便秘や下痢などの不快な症状が改善するはず。
ただし、継続的な便秘や下痢は病気のサインの可能性も。体について不安なことがあるとき、便秘や下痢がつらいときは一人で抱え込まず、医師に相談をしてくださいね。