マルチビタミンは効果があるの?摂るべき栄養素と多く含まれる食べ物について、医師が解説します。

普段食生活が乱れがちで忙しく過ごしている人は、栄養バランスが乱れがちであると言われています。厚労省が定める日本人が日々摂取するべき栄養素の目標数値「日本人の食事摂取基準」と、厚労省が実施している「国民健康・栄養調査」をもとにした、我々が日々どれくらいの栄養素を摂取できているかの結果数値を比較すると、実は摂るべき栄養素が完璧には摂れていないということが分かります。

サプリメントを含む食品は医薬品とは異なり、身体への構造や機能への影響を表示することは原則認められていません(疾患に対する診断・治療・予防・軽減の表現は一切認められていません)。しかし、現実的には、世の中にまるで効果があるように謳われている成分が多く存在することは事実です。また、一部の成分は、たしかに海外では効能を謳うことを認めらる成分であったり、古くから民間療法で使用されており、間接的な効果が否定できないということも事実ではあります。

医師から見て、各成分がどのように見えているのかを共有することは、一定程度の意味があると考え、記事を作成致します。

ここでは疲労回復や老化防止など様々な効能のあるビタミンのうち、主要なビタミンA・B1・B2・C・E・ナイアシン(ビタミンB3)について、詳しい効能と多く含まれる食べ物を解説していきます。

ビタミンA・C・E

ビタミンA・C・Eは疲労回復の他に、「抗酸化作用」によって体内の細胞膜の酸化による「老化」や「動脈硬化」などを予防する効果が期待できるといわれています。

ビタミンA

ビタミンAは豚・鶏レバー、うなぎ、乳製品(牛乳、バター、チーズなど)、卵などに多く含まれます。ビタミンAは脂溶性ビタミンなので脂に溶けやすく、過剰に摂取すると体内の脂肪に蓄積されて健康障害を引き起こす可能性があります。必ず適量を守って摂取することを心がけましょう。

ビタミンC

ビタミンCは抗酸化作用に加え、疲労を引き起こす活性酵素を抑える働きが期待できます。通常のビタミンC摂取量は1日50~100mgほどといわれていますが、抗酸化作用を発揮するためには1日3,000mgものビタミンCの摂取が必要と考えらえています。これを食品で毎日摂取するとなるとほぼ困難であるため、サプリメントでの摂取が推奨されています。

ビタミンCが多く含まれる食べ物と聞くとフルーツなどを思い浮かべるかもしれませんが、意外にも緑茶が最も高く、100gのうち260mgものビタミンCが含まれています。次にグァバが220mg/100g、焼きのりが210mg/100gとなります。フルーツではアセロラジュースが120mg100g、イチゴが62mg/100g、レモン果汁が50mg/100g、となっています。

また、ジャガイモは32mg/100gと含有量は少ないものの、野菜の中でも数少ない加熱をしてもビタミンCが壊れずに摂取できる食べ物ですので、付け合わせ等に取り入れてみるとよいかもしれません。

ビタミンE

ビタミンEは神経や筋肉に作用するため、足りなくなると頭痛や肩こりなどを引き起こすといわれているビタミンです。ビタミンEを多く含む食材はアーモンドなどのナッツ類、胚芽油、穀類、ウナギなどの魚介類、大豆、緑黄色野菜です。熱に強いため加熱調理にも向いています。

なお、ビタミンEもビタミンAと同様に脂溶性ビタミンなのですが、接種したビタミンの3分の2が便で体外に排出されてしまうため、体内に蓄積しにくい脂溶性ビタミンと言われています。そのため、普通の食事でとっている分には過剰摂取になることは極めて少ないといわれています。ですが、食事にプラスしてサプリメントをとった場合には過剰摂取になる可能性もあるといわれています。

ビタミンB1・B2

ビタミンB1・B2はエネルギー生成に関わっている物質で、「疲労回復」に欠かせない成分であると考えられています。

また、ビタミンB1は糖や脂肪からエネルギーを作り出すときに必要なビタミンと言われています。特にエネルギーの生成に関わっているだけでなく、肉体の疲労を回復するのに高い効果が得られるといわれています。

ビタミンB1が多く含まれる食べ物は、豚肉や赤身肉が最も多く、100gあたり2.09mg含まれています。他にもレバー、豆腐にも多く含まれています。また、米ヌカには100gあたり3.12mgものビタミンB1が含まれています。すなわち、精米された米よりも麦ごはんを取り入れると、より効率よくビタミンB1を摂取することができるのです。

ビタミンB2を多く含む食材は、魚介類、レバー、酵母、藻類、落花生などの豆類、牛乳、卵、緑黄色野菜などです。なお、ビタミンB2はビタミンの中でも珍しく熱に強いビタミンのため、加熱調理をしてもビタミンは壊れずに効率よく摂取していくことができます。ビタミンB2は活動量が多い人ほど不足しやすい傾向にあるため、活動量が多い方の疲労回復にはビタミンB2を積極的に摂っていくことが望ましいと言えるでしょう。

ビタミンB1、ビタミンB2は水溶性ビタミンなので、過剰に摂取しても尿で体外に排出されてしまいます。よって過剰摂取のリスクは低くなっていますが、疲労回復のためにはより積極的に摂っていきたいものです。

ナイアシン(ビタミンB3)

ナイアシンはビタミンB3にあたり、「若返りのビタミン」とも呼ばれている成分です。しかし調理・加工をしていく段階でどんどん分解されてしまう希少な成分でもあり、日本で一般的に食べられている食事中のナイアシンの利用効率は約60%ともいわれています。ナイアシンは魚介類、肉類の他、きのこ類、穀類に多く含まれます。こちらもビタミンBやB2と同様に水溶性のビタミンなのですが、例えば食材を洗ったり、ゆでたりするだけでどんどん成分が失われていきます。加熱には強いので、スープにしてゆでた汁も一緒に摂取するなど丸ごと摂取できる調理方法が望ましいと言えるでしょう。

ビタミンA・B1・B2・C・ナイアシンは、皮膚や粘膜の健康に寄与するため、日々の体調管理を行いたい方に必須の成分であるとも考えられています。

これらの食べ物を常に意識した食生活にするのは大変であるため、ビタミン摂取が不十分であると考えられる方は、サプリメントを利用することも効果的でしょう。

いずれにしても、サプリメントは、あくまで健康の補助として、特定の病気に対する診断・治療・予防・軽減を期待せずに摂取することをおすすめいたします。