そもそも基礎体温とは何か
基礎体温とは、生命を維持するために必要な「最小限のエネルギー代謝(基礎代謝)」のみを行っている安静時の体温のことです[1]。
朝目覚めてすぐ、布団の中で体を動かす前に測定します。
女性の場合、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が生理周期に合わせて変化するため、基礎体温も周期的に変動するのが一般的です。
基礎体温の記録は、排卵日の予測や妊娠の可能性の把握など、さまざまな目的に活用されています。
ここではまず、基礎体温の基本的な仕組みと正常なパターンについて確認していきましょう。
通常の基礎体温の二相性のパターン
健康な女性の基礎体温グラフは、「低温期」と「高温期」の2つのパターンが交互に繰り返される「二相性」と呼ばれるパターンを示します[1]。
低温期は生理が始まってから排卵前までの約2週間で、体温が相対的に低い状態が続く時期です[2]。
排卵後に形成される黄体から黄体ホルモンの分泌が増えることで体温が0.3〜0.5度上昇し、高温期(排卵後から次の生理前までの約2週間)に入ります[2]。
妊娠が成立していない場合、生理が始まると体温が下がって再び低温期に戻り、このサイクルが繰り返されるというのが正常な基礎体温のパターンです。
一方で、妊娠した場合は黄体ホルモンが分泌され続けるため高温期が持続します。
個人差があるため前後することもありますが、高温期が16日以上続く場合は妊娠の可能性が考えられます[3]。
低温期・高温期が生じる仕組み
基礎体温に低温期と高温期の波が生じる理由は、女性ホルモンの分泌量が周期的に変化するためです[2]。
生理が始まると卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が優位になり、体温が低い状態(低温期)が続きます。
排卵が起きると、卵巣内に残った卵胞が「黄体」に変化し、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌し始めます[2]。
黄体ホルモンには、体温調節中枢に作用して体温を上げる働きがあるため、排卵後から次の生理まで体温が高い状態(高温期)が維持されます[2]。
この仕組みを理解しておくことで、ピルを服用したときに基礎体温がどう変わるのかが把握しやすくなるでしょう。
基礎体温でわかること
基礎体温を継続的に記録することで、自分の体のリズムについてさまざまな情報を読み取れる可能性があります。
具体的に把握できる主な情報は以下のとおりです。
- 排卵日の予測
- 妊娠のしやすい時期の把握
- 生理周期の確認
- 妊娠の可能性の把握
二相性がはっきりしない場合は「無排卵月経」などの可能性が考えられ、高温期が短い場合は「黄体機能不全」が疑われることがあります[4]。
基礎体温を測る際は、小数点二位(例:36.54度)まで測れる婦人体温計を使用することが望ましいとされています。
通常の体温計は小数点一位(例:36.5度)までしか測れず、低温期と高温期の差を測定しきれないためです。
婦人体温計を使って記録を続けることで、自分の体のリズムを客観的に把握でき、婦人科を受診する際の重要な資料にもなるでしょう。
不安なことがある場合は、基礎体温の記録を持参して医師に相談してみてください。
ピル服用中の基礎体温はどう変化するか
ピル(低用量ピル)を服用すると、通常の生理周期でみられる低温期・高温期の二相性の変化が多くの場合認められなくなり、基礎体温が比較的安定した状態で保たれるようになります。
「ピルを飲み始めてから基礎体温がグラフの上でほぼ変わらなくなった」といった変化はピルの正常な働きによるものであり、基本的には心配する必要はありません。
ピル服用前・服用中・服用後の基礎体温パターンの違いを整理すると、以下のようになります。
| ピルの状態 | 基礎体温パターン | 排卵 |
| 服用前(通常時) | 二相性(低温期・高温期がある) | あり |
| 服用中 | ほぼ一定(変動が少ない) | 抑制される |
| やめた後 | 徐々に二相性に回復 | 約1〜3か月で再開(個人差あり) |
ここでは、ピル服用中の基礎体温変化の理由とその特徴について、3つのポイントで解説します。
二相性がなくなり体温がほぼ一定になる理由
ピルを服用すると基礎体温の二相性がみられなくなる理由は、ピルに含まれるホルモンの働きによって排卵が抑制されるためです。
通常、排卵後には黄体からプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌され、基礎体温が上昇し高温期が形成されます[2]。
一方、低用量ピルの服用中は排卵が抑制されるため黄体が形成されず、排卵に伴うプロゲステロン分泌は起こりません。
その結果、基礎体温の低温期と高温期からなる二相性パターンは認められにくくなります。
代わりに、ピル自体に含まれる黄体ホルモンと卵胞ホルモンが一定量補充されることで、ホルモンの分泌量が安定した状態に保たれます。
ホルモン量が一定になると体温の大きな上下変動が抑えられ、基礎体温グラフはほぼ横ばいに近い状態になることも少なくありません。
「グラフに波がなくなったから何かおかしいのでは」と不安を感じる方もいますが、これはピルが正しく機能している状態と捉えて問題ありません。
服用中の基礎体温はやや高めに推移することがある
ピルを服用すると、基礎体温の二相性は認められにくく、体温は大きな変動を伴わず比較的安定した状態で推移するのが一般的です。
これは、ピルに含まれるプロゲスチン(合成黄体ホルモン)が体温調節機構に影響を及ぼすためと考えられています。
ただし、体温の変化の程度には個人差があり、明確な上昇がみられる場合もあれば、変化をほぼ自覚しない場合もあります。
ピル服用中は、基礎体温の絶対的な数値よりも、二相性が認められず変動が少ない状態が保たれているかなど、全体のパターンを確認することが重要です。
37度前後になっても心配しなくてよい理由
ピル服用中に基礎体温が36.8〜37.0度程度まで上昇すると、「ピルが効いていないのかも」「発熱しているのかも」と不安になる方もいるかもしれません。
しかし、基礎体温はもともとの平熱や測定条件の影響を受けるため、個人差が大きい指標です。
また、ピルに含まれるプロゲスチンの作用で体温が全体的に底上げされるため、基礎体温が高めの値で安定することは、お薬の作用として十分に起こり得ることです。
基礎体温が以前より高めで推移していても、ほかに発熱や体調不良がなければ、過度に心配する必要はありません。
発熱や倦怠感、せきなどの全身症状を伴う場合は感染症など別の原因も考えられるため、医療機関の受診を検討しましょう。
ピル服用中に基礎体温を測る必要はあるか
基礎体温を毎日測ってきた方にとっては、「ピルを飲んでいる間も測り続けた方がよいのか?」と疑問に感じることもあるでしょう。
結論からお伝えすると、ピルを服用中は基礎体温を測定しなくてもよいとされていますが、記録を続けるメリットもあります。
ここでは、服用中に基礎体温が不要とされる理由と、それでも記録を続けることの意義を整理していきましょう。
服用中は基本的に測定不要な理由
基礎体温を測定する主な目的は「排卵日の予測」「妊娠のしやすい時期の把握」「妊娠の兆候の確認」です。ピルを正しく服用している間は、排卵が抑制されているため、基礎体温で排卵日・生理日・妊娠の兆候を把握する必要がなくなります。
それでも記録を続けるメリット
ピルを服用中であっても、基礎体温の記録を続けるメリットとして挙げられるのは、ピルをやめた後の状況把握に役立てられる点です。
将来的な妊活に向けてピルをやめた場合、ピルの服用を中止する前から基礎体温の記録を続けることで、やめた後に排卵が再開しているのかどうかを確認しやすくなります。
記録が面倒に感じる場合は、体温を入力するだけで自動的にグラフ化される生理管理アプリを活用するのも一案です。
測定をやめるタイミングの考え方
「いつ測定をやめてもよいのか」を判断する目安は、ピルを服用し始めてから数か月程度経過し、基礎体温が一定に安定していることを確認できた時点です。
この時点で「ピルが正しく機能している」ことがグラフから読み取れるため、その後は測定を中断しても問題はないとされています。
反対に、将来的にピルの中止を考えている方は、中止前の数か月程度前から記録を再開しておくと、やめた後の変化を比較しやすくなるでしょう。
判断に迷う場合は、医師に相談して自分に合った記録の方針を決めることをおすすめします。
ピルをやめた後の基礎体温の変化
「ピルをやめたら基礎体温はすぐに二相性に戻るのか」「いつから排卵が再開するかわかるのか」という疑問を持つ方は多いでしょう。
ピルをやめると、体はホルモンバランスを自然な状態に回復させようとするため、基礎体温も時間をかけて本来の二相性パターンに戻っていきます[5]。
妊活を考えている方にとっては、排卵再開の時期を把握することがとくに大切な情報です。
ここでは、ピルをやめた後の基礎体温の回復の目安と、基礎体温の記録を再開するタイミングについて整理します。
やめてから二相性が戻るまでの目安
個人差はありますが、ピルの中止後に排卵が再開し、基礎体温が本来の二相性に戻るまでの期間は1〜3か月程度が目安とされています[5]。
排卵が再開されると、基礎体温グラフにも低温期・高温期の二相性のパターンがあらわれ始めます[5]。
「ピルの服用をやめてからも基礎体温が安定している」という状態は、排卵がまだ再開していない可能性があります。
3か月以上経過しても基礎体温の二相性が確認できない場合は、婦人科を受診しましょう。
もともとピルを服用する前から生理不順や無排卵があった方は、ピルをやめた後も同じ状態に戻る場合があるため、このような場合はとくに早めに医師に相談することが大切です。
やめた後に基礎体温を記録する意味
ピルをやめた後に基礎体温の記録を再開するのは、妊活を考えている方にとって重要なことです。
基礎体温の二相性が確認できることで「排卵が再開した」という客観的な目安を把握できるため、妊活のタイミングを計画しやすくなります。
「やめてから何か月経ったから妊娠できるはず」という時間だけで判断するより、基礎体温のグラフで排卵の再開を確認するようにしましょう。
また、基礎体温からは、妊活に役立つ以下の情報も読み取ることができます[6][7]。
- 排卵日はいつごろか
- 高温期が十分な長さ(10日以上)あるか
- 妊娠の可能性が考えられる周期か
ピルをやめた時点から基礎体温の記録を再開し、排卵の回復状況を確認していくことが、スムーズな妊活のための備えになります。
二相性が戻らない場合に考えられること
ピルをやめてから数か月以上経過しても、基礎体温の二相性が戻らない場合は、いくつかの原因が考えられます。
主な原因として以下の2つが挙げられます。
- 排卵障害や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がある場合
ピル服用中は症状が目立たなくなっていた可能性があり、やめてから問題が顕在化することがあります
- ピル以外の要因(ストレス・急激な体重変化など)がある場合
ストレスや体重変化によってホルモンバランスの回復が遅れている場合があります
ピルはホルモンを補うことで生理周期(消退出血の周期)を安定させるため、服用前にあった排卵のトラブルやホルモンバランスの乱れが、一時的に隠れていた可能性があります。
このような場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、基礎体温の記録を持参して婦人科を受診し、排卵の状態を確認してもらいましょう。
基礎体温の正しい測り方
ピル服用中・服用後いずれの場合でも、基礎体温を正確に測るためには正しい方法で継続的に測定することが重要です。
低温期と高温期の差はわずか0.3〜0.5度しかないため、測り方のわずかな違いが結果に影響を与える可能性があります。
「何気なく測っていたが、正しい方法ができているか心配」という方は、以下の3つのポイントを確認してみてください。
- 婦人体温計(小数点二位まで測れるもの)を使う
- 朝目覚めてすぐ、起き上がる前に口の中(舌の裏)で測る
- 毎日ほぼ同じ時間帯に継続して測る
ここでは、基礎体温を正確に測るための3つの重要なポイントをそれぞれ解説します。
婦人体温計を使用する
基礎体温の測定には、通常の体温計ではなく小数点二位(0.01度単位)まで測れる婦人体温計を使用することが大切です。
低温期と高温期の体温差はわずか0.3〜0.5度のため、一般的な体温計では正確な二相性の変化を読み取ることが難しい場合があります。
婦人体温計はドラッグストア・薬局・医療機関などで手に入れることができ、一般的な体温計と同程度の価格帯で入手できるものも多くあります。
データを自動で携帯に記録・転送できるタイプの婦人体温計もあるため、記録の手間を減らしたい方は機能性の高い体温計を使用してもよいでしょう。
不安な場合は、婦人科の受診時にどの体温計が適しているか医師に確認してみてください。
朝起き上がる前に口の中(舌の裏)で測る
基礎体温は、朝目覚めてすぐ体を動かす前に、横になったまま婦人体温計を舌の裏(舌下)に当てて測ります。
起き上がったり動いたりすると体温が変化し、正確な基礎体温が測れなくなる可能性があるためです。
枕元に体温計を置いておき、目が覚めたらすぐに測れる準備をしておきましょう。
口を閉じた状態で測定し、体温計が示す数値が安定するまで動かさないことも大切なポイントです。
正確なグラフを作成できるよう、測定後は忘れないうちに数値を記録しましょう。
毎日ほぼ同じ時間に継続して測る
基礎体温はできるだけ毎日同じ時間帯に測ることが大切です。
体温は時間帯によっても変動し、毎日の測定時間にばらつきがあると正確な比較ができなくなる可能性があるためです。
ただし、1〜2日測り忘れてしまったとしても、それまでの記録がすべて無駄になるわけではありません。
測り忘れがあっても、毎日の記録を継続しましょう。
記録が面倒に感じる場合は、体温を入力するだけで自動的にグラフ化される生理管理アプリを活用するのも一案です。
まずは自分の体温パターンが把握できるよう、1か月を目標に測定を続けてみましょう。
ピルの処方はオンライン診療でも受けられる
クリニックフォアでは、ピルのオンライン診療を提供しております。
オンライン診療の特徴は以下のとおりです。
- スマートフォンやパソコンから予約・診察・処方までをオンラインで完結いただけます
- お薬はご自宅にお届けし、原則として通院せずに服用を継続いただけます
- 忙しい方や通院が難しい方でも無理なく継続しやすい
ピルや基礎体温について相談したい場合にも、ご都合のよい場所からビデオ通話で医師に相談いただけます。
ピルの服用について不安なことがある場合は、ぜひクリニックフォアのオンライン診療をご活用ください。
※医師の判断により、お薬を処方できない場合がございます。
※対面診療をご案内する場合もございます。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。
ピルと基礎体温に関するよくある質問
Q1:ピルを飲んでいると基礎体温はどうなりますか?
ピルを服用すると、通常の低温期・高温期の二相性が認められなくなり、基礎体温が比較的一定の状態で保たれるようになります。
これは、ピルに含まれる黄体ホルモンと卵胞ホルモンの働きによって、排卵が抑制されるためです。
非服用時の低温期よりもやや高めの体温で安定することが多く、人によっては37度前後になるケースもあるでしょう。
Q2:ピル服用中も基礎体温を測る必要がありますか?
ピルを正しく服用している間は、基本的に測定しなくてもよいとされています。
ピルの服用中は基礎体温から排卵日や妊娠の兆候を把握できず、基礎体温を測る必要性が低くなるためです。
ただし、体調変化に気づく手がかりとして、記録を続けることには意義があります。
アプリを活用して無理のない範囲で継続する方法もあるため、ご自身の状況に合わせて判断してみてください。
Q3:ピル服用中に基礎体温が37度になるのは正常ですか?
ピルを服用中に、基礎体温が37度前後になるのは異常ではありません。
ピルに含まれる黄体ホルモンが体温調節中枢に作用し、体温をわずかに上昇させるためです。
風邪症状など、ほかに体調不良の症状がない場合は、ピルによる正常な体温変化として捉えて問題ないでしょう。
Q4:ピルをやめた後、基礎体温はいつ二相性に戻りますか?
ピルをやめた後、基礎体温が二相性に戻るまでには、およそ1〜3か月程度かかるとされています[5]。
3か月以上経過しても二相性が確認できない場合は、婦人科を受診して排卵の状態を確認しましょう。
まとめ
ピルを服用すると、排卵が抑制されることでホルモン分泌量が一定に保たれ、通常の低温期・高温期の二相性が多くの場合認められなくなり、基礎体温が比較的一定の状態になります。
非服用時の低温期よりも体温がやや高めに安定する場合が多く、人によっては37度前後になることもあります。
ピルを正しく服用している間は排卵が抑制されているため、基礎体温で排卵日や妊娠の兆候を把握する目的での測定は基本的に不要です。
ただし、将来の妊活準備に活用できるといったメリットもあるため、無理のない範囲で記録を続けてもよいでしょう。
ピルの服用をやめてから数か月以上経過しても二相性が戻らない場合や生理が再開しない場合は、婦人科を受診して排卵の状態を確認することが大切です。
「ピルをやめて妊活を始めたい」という方は、やめる前から基礎体温の記録を再開し、不安なことがあれば医師に相談しましょう。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。お薬の服用に関しては医師にご相談ください。
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。


