機能性ディスペプシア(FD)とはどんな病気か
機能性ディスペプシアとは「症状の原因となる明らかな異常がなく、胃カメラ(内視鏡)検査などで調べても潰瘍・がんなどの明らかな異常が見つからないにもかかわらず、みぞおちを中心とした不快な症状が慢性的に続く病気」です[1][2]
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命に関わる病気ではないものの、慢性的な症状が仕事・食事・日常生活のパフォーマンスを大きく低下させうるため、適切な診断と治療を受けることが重要な疾患です[1]。
機能性ディスペプシア(FD)の定義と特徴
機能性ディスペプシアとは、日本消化器病学会の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2021」において以下のように定義されています[1]。
症状の原因となる器質的・全身性・代謝性疾患がないにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患
簡単に言うと「胃カメラ(内視鏡)検査で潰瘍・がんなどの明らかな異常が見つからないにもかかわらず、みぞおちを中心とした不快な症状が慢性的に続く病気」です[1]。
日本では2013年に保険診療の病名として正式に認定された比較的新しい概念で、胃の症状を訴えて消化器内科を受診する方の約半数が診断されます[1]。
慢性的な胃の不調が続く場合は「よくあること」と放置せず、早めに消化器内科を受診して適切な診断を受けることが大切です。
機能性ディスペプシアが日常生活に与える影響
機能性ディスペプシアは命に直接関わる疾患ではないものの、以下の不快症状が日常生活に大きな支障をきたすこともあることが問題です[1]。
- 食後に必ず胃もたれが起きる
- 食事を最後まで食べられない
- 仕事中にみぞおちが痛んで集中できないといった症状が繰り返す
「たかが胃の不調」として放置することで症状が慢性化して悪化するだけでなく、食欲低下や体重減少につながるケースもあります。
機能性ディスペプシアはお薬と生活習慣の改善によって症状が大きく改善する可能性があるため、「異常がないから仕方ない」と諦めず、適切な診断と治療を受けることが重要です。
機能性ディスペプシアの4つの主症状
機能性ディスペプシアの診断基準(国際的なRome IV基準)では、以下の4つの症状のいずれか1つ以上が「6ヶ月以上前から始まり、直近3ヶ月間にも継続して存在する」場合に機能性ディスペプシアと定義されています[1]。
| 症状タイプ | 主症状 | 頻度の基準 | 症状の特徴 |
| 食後愁訴症候群(PDS) | 食後の胃もたれ | 週に3日以上 | 食後に胃が重い・消化が遅い感覚 |
| 食後愁訴症候群(PDS) | 早期満腹感 | 週に3日以上 | 少し食べただけで満腹になり食事を続けられない |
| 心窩部痛症候群(EPS) | みぞおちの痛み(心窩部痛) | 週に1日以上 | 食後だけでなく空腹時にも心窩部つうが起こる |
| 心窩部痛症候群(EPS) | みぞおちの灼熱感(心窩部灼熱感) | 週に1日以上 | みぞおちが焼けるような感覚 |
自分の症状がどのパターンに近いかを理解することが、適切な受診判断と治療への第一歩となります。
食後愁訴症候群(PDS)
食後愁訴症候群(PDS:Postprandial Distress Syndrome)は、食事をきっかけに症状があらわれやすいタイプです[1]。
食後のむかつき・吐き気・上腹部の張り・大量のげっぷなどの症状を伴うこともあり、食事をするたびに不快な症状があらわれ、食べることへの恐怖や食欲低下につながるケースもあります。
「食後だけ胃がつらい」「食べるたびに胃が重くなる」という方は、PDSのパターンに当てはまる可能性があります。
心窩部痛症候群(EPS)
心窩部痛症候群(EPS:Epigastric Pain Syndrome)は、みぞおちを中心とした痛みや灼熱感が主な症状としてあらわれるタイプです[1]。
EPSの特徴は食後だけでなく空腹時・食事と無関係なタイミングでも症状が出る点です。
排便によって症状が楽になることはなく、腹部全体ではなくみぞおち周辺に限局した痛みである点が、過敏性腸症候群(IBS)との見分け方の一つです[3]。
なお、PDSとEPSは重複して両方のタイプの症状が混在することも多く、日によって感じる症状が変わるケースもあります[1]。
消化器以外にあらわれる随伴症状
機能性ディスペプシアは4つの主症状以外にも、消化器症状・全身症状・精神症状が幅広くあらわれる可能性があります。
吐き気・食欲不振・げっぷ・腹部膨満感・下痢・便秘などの消化器系の随伴症状に加えて、倦怠感や全身のだるさなどの全身症状を伴うこともあります。
また、機能性ディスペプシアの発症には不安感・抑うつ(気分の落ち込み)などの心理的要因が関連していると考えられています。[1]。
過敏性腸症候群(IBS)とともに機能性ディスペプシアが合併するケースも報告されています。
上腹部(みぞおち周辺)と下腹部(へそ下)の両方に症状がある場合は受診時に両方の症状を詳しく伝えるようにしましょう[1][3]。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシア(FD)とは、胃カメラなどの検査で異常が見つからないにもかかわらず、みぞおちを中心とした不快症状が慢性的に続く疾患で、日本人の約11〜17%が罹患するとされています[1]。
診断基準は「食後の胃もたれ・早期満腹感・みぞおちの痛み・みぞおちの灼熱感」のうち1つ以上が6ヶ月以上前から始まり直近3ヶ月も続いており、かつ検査で異常がない状態です[1]。
主な原因は胃と十二指腸の運動機能障害・知覚過敏・ストレス(脳腸相関)・ピロリ菌感染などが複合的に絡み合っています[1]。
治療はお薬と食事・生活習慣の改善を組み合わせることが基本で、脂っこいもの・アルコール・カフェインを控え、規則正しい生活リズムを維持することが症状改善につながります[1]。
急激な体重減少・繰り返す嘔吐・吐血などのアラームサイン(警告徴候)と呼ばれる、胃がんや胃潰瘍などの重大な疾患を示唆する症状がある場合は、速やかに消化器内科を受診してください。
一旦症状が落ち着いても再発しやすい特徴があるため、症状改善後も生活習慣の見直しとストレス管理を継続することが重要です。
機能性ディスペプシアの検査・診断の流れ
機能性ディスペプシアは「症状はあるが検査で異常が見つからない」という状態で診断されるため、まず症状の原因となる別の疾患がないことを確認することが重要です[1]。
診断は以下の段階的な検査を経ておこなわれます[1]。
- 問診:症状の種類・いつから・頻度・食事との関係・体重減少の有無・ストレスの状況などを確認する
- 胃カメラ(上部内視鏡)検査:胃炎・潰瘍・胃がんなど器質的な病気がないかを直接確認する
- 腹部超音波(エコー)検査:膵臓・胆のう・肝臓など胃の周辺臓器の異常がないかを確認する
- 血液検査:炎症・貧血・肝機能・膵酵素などをチェックする
これらの検査で「器質的な病気がない」と確認されたうえで、4つの主症状が6ヶ月以上前から始まり3ヶ月以上続いている場合に機能性ディスペプシアと診断されます[1]。
胃カメラ検査は診断に必須というわけではありませんが、以下の「アラームサイン」(警告徴候)がある場合は積極的に受けることが推奨されます[1]。
- 急激・著しい体重減少
- 繰り返す嘔吐
- 吐血・黒色便などの出血
- 食べ物が飲み込みにくい・飲み込む時に痛みがある
- 発熱が続いている
- 血縁者に胃がんや食道がんがいる
- 高齢で新たに症状が出始めた
受診の際は「いつから症状があるか」「症状が出るのは主に食後か空腹時か」「どのような痛み方か」「体重の変化があるか」「ストレスの状況」を具体的に伝えることで、正確な診断につながりやすくなります。
以前に胃カメラ検査で「異常なし」と言われたことがある方は、その旨と検査を受けた時期・医療機関も合わせて伝えると医師の判断に役立ちます。
精神的なストレスが強く関与していると疑われる場合は、消化器内科に加えて心療内科への相談が推奨されることがあります[1]。
機能性ディスペプシアの治療と食事・生活習慣
機能性ディスペプシアの治療は「お薬による症状のコントロール」と「食事・生活習慣の改善」の2つを組み合わせておこなうことが基本です[1]。
症状の種類・パターン・重症度によってもっとも適したアプローチが異なるため、自己判断のみでなく内科や消化器内科の医師と相談しながら治療方針を決めることが重要です。
ここでは、お薬による治療・食事の改善・生活習慣の改善の3つの観点から対処法を整理します。
お薬による治療
機能性ディスペプシアのお薬は「症状の原因となっている胃の状態」に合わせて選択されます[1]。
症状タイプ別に選ばれることが多いお薬は以下のとおりです。
| 症状タイプ | 主な症状 | 選ばれやすいお薬 |
| 心窩部痛症候群(EPS) | みぞおちの痛み・灼熱感 | 胃酸分泌抑制のお薬(PPI・H2ブロッカー) |
| 食後愁訴症候群(PDS) | 胃もたれ・早期満腹感・胃の張り | 消化管運動機能改善のお薬(アコファイド・ガスモチンなど) |
| 両タイプ共通 | 知覚過敏・多様な症状 | 漢方薬(六君子湯など) |
| 精神症状が強い場合 | 不安・抑うつを伴う | 抗不安薬(必要に応じて) |
自分の症状のパターン(食後か空腹時か・痛みか重さか・焼けるような感覚か)を医師に詳しく伝えることで、より症状に合ったお薬を処方してもらいやすくなります。
機能性ディスペプシアに合った食事の選び方
お薬による治療と並行して、食事の改善は機能性ディスペプシアの症状管理と再発予防の両方に欠かせません。
| カテゴリ | 内容 |
| 選びやすい食品 | お粥・やわらかく煮たうどんなどの柔らかいもの |
| 控えたい食品 | 脂っこい食べ物・揚げ物・アルコールなど、消化に時間がかかるもの |
| 食べ方のポイント | 1回を少量にして複数回に分ける・よく噛んでゆっくり食べる |
| 食後の姿勢 | 食後しばらくは横にならず上体を起こしておく |
食事の量は1回を少量にして複数回に分ける方が、胃への一度の負担を減らして症状を和らげる食べ方として推奨されます[1]。
生活習慣の改善と再発予防のポイント
規則正しい起床・就寝リズムを保つことや適度な有酸素運動(ウォーキングなど)が、自律神経のバランスを整えられるため、機能性ディスペプシアの症状改善に期待できると考えられます[1]。
喫煙は胃の機能に悪影響を与えるため、喫煙をしている方は禁煙することが推奨されます[1]。
ストレスを「ゼロにする」ことは難しくても、「うまく付き合う」意識を持つことが重要です。
趣味・運動・腹式呼吸(鼻から4秒吸って口から8秒かけてゆっくり吐く)・信頼できる人への相談などを通じてストレスを溜め込まない習慣を持つことが再発予防につながります。
一旦症状が落ち着いても再発しやすい特徴があるため、症状が改善したあとも食事・生活習慣の改善を継続することが重要です。
クリニックフォアのオンライン診療で機能性ディスペプシアを相談する
クリニックフォアでは、機能性ディスペプシア・ストレス性胃炎などの消化器症状に対するオンライン診療をおこなっており、通院の時間や手間をかけずに医師に相談することが可能です。
ただし、以下のようなアラームサインがある場合は、オンライン診療ではなく速やかに対面での消化器内科を受診してください。
- 急激・著しい体重減少
- 繰り返す嘔吐・吐血
- 黒色の便・血便
また、胃カメラ検査など対面での精密検査が必要と判断されたケースでは、対面の医療機関への受診を強くおすすめする場合もあります。
「慢性的な胃の不調が数ヶ月以上続く」「以前の治療で改善しなかった」という方は、オンラインで医師に相談することをおすすめします。
※医師の判断により、お薬を処方できない場合がございます。
※対面診療をご案内する場合もございます。
※診療費は診察内容によって異なります。保険診療の自己負担割合(原則3割)に応じた金額となります。
よくある質問
機能性ディスペプシアの症状についてよくある質問をまとめました。
機能性ディスペプシアは胃カメラを受けないと診断できませんか?
胃カメラ検査は機能性ディスペプシアの診断に絶対必要というわけではありません。
- 体重が急に落ちた
- 繰り返す嘔吐や出血がある
- 食べ物が飲み込みにくい
- 高齢で新たに症状が出た
これらのアラームサイン(警告徴候)がある場合は、胃カメラ(上部内視鏡検査)で器質的な病気がないかを確認することが強く推奨されます[1]。
アラームサインがない場合でも、問診・血液検査・腹部エコー・上部内視鏡検査など複数の検査を組み合わせて「他の疾患がないこと」を確認することが機能性ディスペプシアの正確な診断に有用です[1]。
機能性ディスペプシアは完治しますか?再発しますか?
機能性ディスペプシアは「完治(根治)」よりも「症状が落ち着いた状態(寛解)を維持する」ことが治療の目標とされています。
お薬と生活習慣の改善によって症状が大きく改善するケースは多くありますが、一度治まっても数ヶ月以内に再発するケースもあるとされています。
再発予防のために症状が落ち着いたあとも正しい食生活・ストレス管理・生活習慣を継続することが重要です[1]。
機能性ディスペプシアに良い食事・悪い食事は何ですか?
機能性ディスペプシアに向いている食事は「消化に負担をかけない柔らかめの食品」を少量ずつよく噛んで食べることが推奨されます。
脂っこい食べ物や揚げ物など消化に時間がかかるものは、胃への負担を増やして症状を悪化させるため、控えることが重要です。
1回の食事量を少なめにして満腹になるまで食べずに少量ずつ複数回に分けて食べることやと、食後しばらくは横にならないという2つの習慣が症状改善に効果的とされているため、すぐに取り入れましょう[1]。
まとめ
機能性ディスペプシア(FD)の診断基準は「食後の胃もたれ・早期満腹感・みぞおちの痛み・みぞおちの灼熱感」のうち1つ以上が6ヶ月以上前から始まり直近3ヶ月も続いており、かつ検査で異常がない状態です[1]。
主な原因は胃の運動機能障害・知覚過敏・ストレス(脳腸相関)・ピロリ菌感染などが複合的に絡み合っています[1]。
治療はお薬と食事・生活習慣の改善を組み合わせることが基本で、脂っこいもの・アルコール・カフェインを控え、規則正しい生活リズムを維持することが症状改善につながります[1]。
急激な体重減少・繰り返す嘔吐・吐血などのアラームサインがある場合は、速やかに消化器内科を受診してください。
一旦症状が落ち着いても再発しやすい特徴があるため、症状改善後も生活習慣の見直しとストレス管理を継続することが重要です。
慢性的な胃の不調が数ヶ月以上続く場合は自己判断で放置せず、まずは医師に相談することをおすすめします。
※医師の判断により、お薬を処方できない場合がございます。
※対面診療をご案内する場合もございます。
※診療費は診察内容によって異なります。保険診療の自己負担割合(原則3割)に応じた金額となります。
