インフルエンザ予防接種の効果は「発病予防」と「重症化予防」の2つ
インフルエンザの予防接種を受けたのにかかってしまった、という話を聞いて効果を疑っている方もいるでしょう。
打っても意味がないのではと感じてしまう気持ちも、無理のないことです。
ここでは、ワクチンにできることとできないことを、3つの段階に分けて詳しく解説します。
感染そのものを完全に防ぐわけではない
インフルエンザウイルスは、口や鼻、眼の粘膜から体の中に入り、細胞に侵入して増殖します。
この「感染」の段階を現行のワクチンで完全に止めることはできません。
麻しんや風しんのワクチンで認められているような高い発病予防効果を期待することは難しいです。
接種したのに熱が出た、という経験がある方にとっては、この点を知るだけでも受け止め方が変わるかもしれません。
守られる範囲を正しく把握しておけば、ワクチンだけに頼らず手洗いや換気も合わせて行うという判断につながるでしょう。
発病を抑える効果
インフルエンザワクチンには、体内に入ったウイルスが増えて症状として現れる「発病」を抑える効果が認められています。
ウイルスが体内で増殖すると、数日の潜伏期間を経て発熱やのどの痛みなどの症状が現れます。
ワクチンによって体内に抗体ができていれば、この発病に至る流れを抑えられる可能性が高いです。
インフルエンザの症状は38℃以上の発熱や頭痛、関節痛、筋肉痛、全身のだるさが比較的急速に現れるのが特徴で、日常生活への影響は小さくありません[2]。
数日間の高熱で仕事や学校を休むことになると考えると、発病を避けられる意味は大きいといえるでしょう。
発病後の重症化や死亡を防ぐ効果
インフルエンザワクチンのもうひとつの効果は、発病したあとの重症化や死亡を防ぐことです。
発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症などの重い合併症が現れ、入院が必要になる方や亡くなる方もいます。
お子さんではまれに急性脳症を、高齢の方や免疫の働きが低下している方では二次性の肺炎を伴うこともあるのです。
かかったあとどうなるかを左右する点こそ、接種を勧める根拠になっています。
【年代別】インフルエンザ予防接種の効果の目安
効果の大きさは年代によって示されている数値が異なります。
年代ごとの目安を知ることで、家族の中で誰の接種を優先すべきかという判断にも役立つでしょう。
ここでは、高齢者・小児・成人それぞれについて詳しく解説します。
高齢者は発病と死亡を大きく抑えた報告がある
国内の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者について、34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています[1]。
高齢になるほどインフルエンザから肺炎などの重い合併症へ進みやすく、命に関わる事態になりやすいです。
死亡を8割以上抑えたという数値は、発病予防の数値以上に重い意味を持つ結果といえるでしょう。
こうした背景から、65歳以上の方と60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器やHIVによる免疫の機能に一定の障害がある方は、定期の予防接種の対象と定められています[1]。
ご家族に高齢の方がいる場合は、案内が届いた時点で接種の相談をしておくと安心です。
6歳未満の小児では有効率60%と報告されている
6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%でした[1]。
乳幼児全体では報告によって幅があり、概ね20〜60%の発病防止効果があったとされています[1]。
重症化予防に関する有効性を示す報告も見られており、発病を防ぐだけの手段ではありません。
小さなお子さんは急性脳症などの重い合併症が起こることもあるため、接種を検討する保護者の方が多いのも自然なことです。
数値に幅があることを踏まえたうえで、手洗いや人混みを避ける工夫と合わせて備えていくのが現実的な進め方といえるでしょう。
13歳以上の方に期待できる効果
13歳以上の方についても、発病と重症化の予防効果が期待できます。
成人を対象とした研究では、0.5mLの1回接種で2回接種と同等の抗体価の上昇が得られるとされており、1回の接種で必要な免疫が得られると考えられています[1]。
抗体価とは、ワクチン接種によって体内でつくられた抗体の量を示す値です。
働き世代は仕事を数日休むことによる影響が大きく、発病を避けられる価値を実感しやすいでしょう。
家庭内に高齢の方や小さなお子さんがいる場合は、自分が持ち込まないという意味でも接種の意義があります。
「ワクチン有効率」が示している意味
有効率60%と聞いて、10人中4人はかかるのかと受け取った方もいるかもしれません。
この数値の読み方には少し注意が必要で、実際の意味とはずれが生じやすいです。
ここでは、有効率の正しい読み方と、100%にならない理由について解説します。
有効率60%は「10人中6人しか防げない」ではない
ワクチン有効率60%とは、接種しなかった場合と比べて発病のリスクが相対的に60%減ったことを意味します[1]。
接種しなかった人が病気にかかるリスクを基準として、接種した人のリスクがどれだけ相対的に減少したかを示す指標です[1]。
たとえば、接種しなかった100人のうち30人が発病し、接種した200人のうち24人が発病したとします[1]。
発病率が30%から12%に下がると、この差から有効率60%が算出されます[1]。
接種せずに発病した30人のうち18人は、接種していれば発病を防げたという解釈です[1]。
数字の意味が分かると、報道や口コミに振り回されずに済むでしょう。
有効率が100%にならない理由
ワクチンは体内に抗体をつくることで発病を抑えますが、抗体があってもウイルスの侵入自体は起こり得ます。
さらに、ワクチンは発育鶏卵を用いて製造される過程で、ウイルスの遺伝子に変異が起きる場合があります。
その結果、実際に流行しているウイルスとワクチンのもとになったウイルスとの間に、免疫への作用の違いが生じることがあるのです。
もっとも、こうした乖離がある場合でも、ヒトでは一定程度の有効性は保たれます。
100%を求めるのではなく、リスクを下げる手段のひとつとして捉えておくと、納得したうえで接種できるでしょう。
インフルエンザ予防接種の効果が現れる時期と持続期間
効果があると分かっても、いつ受ければよいのか迷ってしまう方は多いはずです。
ここでは、効果が現れるまでの期間と望ましい接種時期について、詳しく解説します。
効果が現れるまで約2週間かかる
インフルエンザワクチンの効果は、接種後およそ2週間で現れるとされています[3]。
体内で抗体がつくられるまでに時間がかかるため、接種した翌日から守られるわけではありません。
受験や大事な仕事など体調を崩せない予定がある方は、その日から逆算して2週間以上前に接種を済ませておくと安心です。
家族全員分の予約を取る場合は、日程調整に時間がかかることも見込んでおきましょう。
効果は約5か月持続する
インフルエンザワクチンの効果は、接種後およそ5か月間持続するといわれています[3]。
抗体の量は時間とともに少しずつ低下していくため、いつ接種するかによって流行期のどこをカバーできるかが変わります。
10月に接種すれば翌年3月頃まで、11月に接種すれば4月頃までが目安です。
日本では例年12月から3月がインフルエンザの流行シーズンにあたるため、この期間をカバーしましょう[1]。
早すぎる接種は流行の後半で効果が弱まる可能性があり、遅すぎる接種はピークに間に合わない可能性があります。
12月中旬までに接種を終えるのが望ましい
自治体の高齢者定期接種は、10月1日から1月31日までといった期間で実施されることが多いです。
11月後半から12月にかけては予約が集中しやすく、希望する日時が取りにくくなる傾向もあります。
10月から11月のうちに予定を押さえておくと、余裕をもって流行期を迎えられるでしょう。
効果を得るために知っておきたい3つのポイント
同じワクチンでも、受け方によって得られる効果に差が生まれます。
ここでは、効果を十分に得るために押さえておきたい3つのポイントについて詳しく解説します。
毎年接種が必要とされる理由
そのシーズンに流行すると予測されたウイルスを用いて製造されているため、昨年接種を受けていても、今年のワクチンの接種を検討したほうが良いです。
現在国内で使われているワクチンは、A型のH1N1株とH3N2株、B型のビクトリア系統株を含む3価ワクチンで、A型・B型ともに効果が期待されます[1]。
13歳未満は2回接種で抗体の上がり方が変わる
13歳未満のお子さんは、注射タイプの不活化ワクチンでは2回接種することで高い抗体価の上昇が得られます[1]。
接種量は6か月以上3歳未満が1回0.25mL、3歳以上13歳未満が1回0.5mLです[1]。
1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になっていた場合でも、12歳として2回目の接種を行って差し支えありません[1]。
2回目を受けないままシーズンを迎えてしまうご家庭もあるため、1回目の会計時に次の予約を取っておくと確実です。
経鼻タイプと注射タイプで示されている効果が異なる
インフルエンザワクチンには注射タイプのほかに経鼻タイプがあり、報告されている効果の数値が異なります。
小児および若年者の予防を目的とした経鼻弱毒生ワクチンの発症予防効果は、薬事承認申請時の資料によると28.8%です[1]。
注射タイプの不活化ワクチンで6歳未満の有効率60%と報告された研究とは、対象も方法も異なる点に注意が必要です[1]。
数値だけを並べて比べると誤解が生じやすいため、どちらが優れているかという見方は適切ではありません。
痛みの有無や接種回数も含めて、お子さんに合う方法を医師に相談しながら選ぶことをおすすめします。
※クリニックフォアでは、経鼻ワクチンのお取り扱いはございません。
インフルエンザ予防接種の効果に関するよくある質問
Q:接種してもインフルエンザにかかることはありますか?
A:あります。
Q:接種すると症状は軽く済みますか?
A:発病後の重症化を予防する効果が認められています。
Q:毎年打たないと意味がないですか?
A:その年に流行すると予測された株で製造するため、毎年接種したほうが良いでしょう。
Q:接種でインフルエンザを発病することはありますか?
A:注射タイプの不活化ワクチンで、インフルエンザを発病することはありません。
一方、経鼻弱毒生ワクチンの場合は発病することがあり得ますが、その頻度は1.8%と報告されています[1]。
まとめ
インフルエンザワクチンの効果は、発病を予防することと、発病後の重症化や死亡を予防することの2つです。
感染そのものを完全に抑える働きはないため、接種しても発病することはあります。
65歳以上の高齢者福祉施設の入所者では、34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止したと報告されています[1]。
6歳未満の小児では、発病防止に対する有効率が60%でした[1]。
有効率は接種しなかった人を基準とした相対的なリスクの減少を示す指標であり、数値の意味を知っておくと受け止め方が変わるでしょう。
効果は接種後約2週間で現れて約5か月持続するため、12月中旬までに接種を終えておくことが望ましいとされています[1]。
流行株に合わせて毎年つくられるワクチンの特性を踏まえ、今シーズンの接種について医師やお住まいの自治体に相談してみてください。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
予防接種に関しては医師にご相談ください。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。
※医師の判断により接種できない場合があります。

