不眠症の対策方法について、医師が解説します。

老若男女問わずに悩まされている方が多い不眠症。不眠症で悩む方の中にはお薬を使わずに不眠症を改善したいと考える方もいらっしゃるかもしれません。

今回は生活習慣の改善など、お薬を使わずに不眠症を対策する方法をメインに医師が解説します。

1.不眠症のタイプとは?

若い方々の睡眠の悩みのTop 3は、「なかなか寝つけない」、「睡眠の質が高くなく、朝の目覚めが悪い」、「夜中に目が覚めてしまう」といったことが上がってきます。不眠症にはいろんな種類がありますが、これは、それぞれ①入眠障害、②熟眠困難、③中途覚醒という違ったタイプに分類することができます。

「なかなか寝つけない」

①の入眠障害は寝つきが悪いことを言い、一般的には布団に入ってから寝付くまでに2時間以上かかる方が、入眠障害へ該当します。入眠障害の原因は生活習慣、ストレスなどの心理的要因が主な原因で、身体的な疾患が絡んでいる場合もあります。

「睡眠の質が高くなく、朝の目覚めが悪い」

②の熟眠困難とはある程度眠ってもぐっすり眠れたという満足感(休養感)が得られないことをいいます。睡眠時間には個人差があり、日本人の睡眠時間は平均して7時間程度とされていますが、3時間程度でも翌朝すっきりとしている方もいれば、10時間程度眠ってようやく翌朝すっきりするという方もいます。熟眠困難は一般的にストレスなどが原因となりますが、中には睡眠時無呼吸症候群など、病気が原因の場合もあります。

「夜中に目が覚めてしまう」

③の中途覚醒とは眠りが浅く途中で何度も目が覚めることをいい、一旦寝ついても夜中に目が醒め易く2回以上目が醒めるという場合には、中途覚醒であることが考えられます。中途覚醒は、加齢に伴い生理現象として起こるものでもあります。そのため、健康な人でも起こりうる可能性があるものの、寝汗や不安、交感神経の昂りなどさまざまな原因によって病的な中途覚醒となってしまうこともあります。

これらの症状があると自分は不眠症ではないか…と思われるかもしれません。例えば1日や2日ここにかいてある症状が出てきたとしても、数日後にまた元の睡眠サイクルに戻ることができればそれは一時的なもので不眠症ではありません。不眠症と診断されるのは上記のような症状が週に2回以上見られ、かつ少なくとも1ヶ月間は持続した場合となります。これに加えて、眠れないことによって苦痛を感じているか、社会生活または職業的機能が妨げられているかも診断のポイントとなります。

2.不眠症の対策方法は?

自分が不眠症かもしれないと分かった時、薬を使わずにどのような対策ができるかをご紹介します。自分でできる不眠の対策方法は主に2つです。

1つ目は、不眠の原因として思い当たることを取り除くことです。例えば、仕事で悩んでいる、人間関係で悩んでいるという場合その悩みを改善すれば不眠の改善につながる可能性が充分にあります。自分の悩みを身近な人に相談したり、仕事が辛いという方は休職をしたりと、不眠症につながっている悩みを解決していきましょう。悩みを解決できたけれど、不眠症が続いているという場合には、次の2つ目の対策に取り組んでみてください。

2つ目は生活習慣の見直しです。生活習慣と不眠は密接につながっていますので、生活習慣を変えていくことで不眠の解消にもつながります。

まず、良質な睡眠をとれるように睡眠環境を整えていきましょう。睡眠前に副交感神経を活発にさせることで眠気が起こり、良質な睡眠をとることができます。ぬるめのお風呂にゆっくり入ったり、好きな音楽を聞いたり読書をしたりと自分の好きなことでリラックスする時間をとり、心身の緊張をほぐしましょう。ただし、熱いお風呂は交感神経を優位にしてしまうため、ぬるめのお風呂にしましょう。

また、お酒が好きという方もいわゆる寝酒をしてしまうと睡眠が浅くなり中途覚醒につながります。寝る前のお酒は控えましょう。

スマホやタブレット、パソコンなどから発せられるブルーライトは睡眠障害を引き起こすことが分かっています。就寝前2時間以内のスマホやタブレット、パソコンの使用は控えましょう。とはいえ、この情報化社会においてどうしても就寝2時間前に使用を控えるというのは難しいという方もいらっしゃるかと思います。そういった方はブルーライトカットメガネを使用すると睡眠の質の改善につながるという報告があるので活用してみてはいかがでしょうか

さらに、寝室は電気を煌々と点けておかずになるべく真っ暗にし枕や布団、パジャマなどを見直し、自分が眠りやすい材質のものに切り替えていきましょう。真っ暗では眠れないという方は、間接照明を足元に置くなどするとよいでしょう。

睡眠のトラブルがあると、どうしても早く寝なければ、寝よう寝ようと考えてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、こういった思いが実は不眠につながることも分かっており、これを不眠恐怖と呼んでいます。一過性だった不眠障害がこの自己暗示によって慢性化してしまうこともあります。ですのであまり思いつめず、寝れなかったら朝まで起きていようくらいの軽い気持ちを持つことも睡眠には大切です。とはいえ、眠れないからと言ってテレビを見たりスマートフォンを操作するとブルーライトの影響でさらに眠れなくなるため、こちらは控えておきましょう。

次に起床を見直していきます。なるべく何時に寝ても起床時間は一定にすることがおすすめです。休日だからといって寝溜めをしたり、遅く寝た分遅く起きるというのは睡眠障害となるリスクを高めます。もしも同じ時間に起きてしまうと昼間眠くて辛くなるという場合には、午後3時前までに30分以内の昼寝をとるのが睡眠サイクルを崩さない効果的な方法ですので、試してみてください。

さらに、朝起きたあとは太陽の光を浴びるようにしましょう。太陽光などの強い光は体内時計をリセットする効果があります。また、強い光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じてくるとも言われているので、早い時間に光を浴びれば早い時間に眠気が起こり早寝早起きが体内時計によって自然と成立してくるのです。

最後に、日中の過ごし方を見直しましょう。適度に体を動かすことがポイントです。午後に軽く汗ばむくらいの運動は寝つきを良くすると考えられています。逆に身体が疲弊するほどの激しい運動は寝つきを悪くするため控えましょう。また、ストレスを適宜解消できるよう自分なりのストレス発散方法を見つけて実行していきましょう。

もしも生活習慣を見直してみても改善の傾向がないという場合や、身体的な不調や心の不調があるという方は一度医療機関を受診し医師に相談されることをおすすめします。

参考文献

厚生労働省e-ヘルスネット 不眠症 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html

南東北病院 http://www.minamitohoku.or.jp/up/news/minamitouhoku/topnews/201111/topic.htm

第一三共ヘルスケア https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/selfcare/goodsleep-02/