ピルは生理にどんな影響を与える?月経量の変化など医師が徹底解説

ピルは排卵や子宮内膜に関係する薬です。そのため、服用することで生理(月経)にも影響を及ぼします。今回はピルを飲むことによって、生理に対してどのような効果・影響を与えるのかを徹底解説。最後にはピルと生理に関するよくある質問もまとめています。ぜひ、参考にしてみてくださいね。


ピルが生理に与える影響は大きく4つ

ピルが生理に与える影響は、生理周期が整うこと、生理痛やPMSの改善、月経血量の減少、生理日の移動の大きく4つです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

生理周期を整える

基本的に、ピルは21日間毎日飲んで、7日間休薬(または偽薬を飲む)というサイクルで使います。休薬や偽薬の期間に生理(消退出血)が起きるため、ピルによって生理周期が整うといえます。

しかし重度の生理不順、あるいは単なる排卵の周期が原因ではなく子宮や卵巣の病気が関係している生理不順の場合、ピルを服用しても生理不順が改善しないことがあります。

ですので、ピルを服用しても生理周期がなかなか整わないという場合は、お近くの婦人科クリニックへ相談されることをおすすめします。

月経血の量が減る

ピルは生理時の経血量を減少させる効果が期待できます。

ピルの診療ガイドラインによると、「2周期を超える OC(ピル) 使用により月経血量が 43%減少した」という報告も。

月経過多で悩まされている方は絶大な効果が期待できます。

ではなぜ月経血の量が減るのでしょうか。経血の正体は、子宮内膜です。子宮では、エストロゲンの作用により毎周期、子宮内膜が増殖し、妊娠しなければ破綻して経血となります。

ピルには少量のエストロゲンが含まれており、エストロゲンが子宮に作用することで、子宮内膜を通常よりも薄くしておくことができます。それにより、経血量が少なくなるのです。

出血がなくなることもある

ピルを飲むと休薬や偽薬の期間に生理(消退出血)が起きますが、人によっては出血が1日程度で終わることもあります。これはピルの服用によって子宮内膜が厚くならないことで経血量が減るためであり、問題ありません。また、完全に出血がなくなる人もごくまれにいます。通常、ピルを飲むのをやめると数ヶ月で元に戻ります。

生理をずっと止めることはできないが、最大4か月止めることができるピルもある

生理をずっと止めることはできません。しかし超低用量*ピルの「ヤーズフレックス」なら、最長120日まで生理を止められる可能性があります。

※クリニックフォアグループのオンライン診療でもヤーズフレックスを取り扱っていますが、自費診療となります。

生理痛・PMSが改善できる

月経時には子宮内膜からプロスタグランジンが分泌され、子宮が収縮することで生理痛が起こります。そのため、ピルの服用によって子宮内膜が薄く保たれると、生理痛の軽減につながります。

また、PMS(月経前症候群)とは、生理前の3~10日の間に、胸の痛みや張り、頭痛、イライラなどの精神的な症状など、さまざまな症状が現れるものです。黄体ホルモン分泌が急激に変動することが原因と言われており、ピルでホルモン分泌の変動を抑えることが、PMS改善にもつながります。

生理の日を移動できる

ピルは生理日を早めたり遅らせたりすることができます。この月経移動は、ピルを服用する日数を調整することで行える方法です。

女性アスリートの方が試合と生理が被らないように行ったり、受験生が受験日と生理が重ならないようにしたりと、多方面で活用されはじめています。

ピルを飲み忘れなく飲んでいるのに生理がくる理由とは?

休薬またはプラセボの期間以外に生理がきた場合は、不正出血の可能性があります。副作用や病気、妊娠などの可能性があるため詳しく見ていきましょう。

副作用

低用量ピルを飲むと、約20%の人に不正出血の副作用が起きるというデータがありますが、そのまま飲み続ければ解消されることが多いといわれています。また、ピルを飲み忘れた際に不正出血が起こる可能性も。

あまり気にする必要はありませんが、どうしても気になる場合は医師に相談してみましょう。場合によってはピルの種類を変更することで、不正出血が改善される可能性があります。

病気

低用量ピルの副作用ではない原因不明の不正出血の場合は、何らかの病気が隠れているかもしれません。子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症のほか、子宮頸がんや子宮体がんなどの可能性もあるため、早めの検査が必要です。

また、子宮頸がんや子宮体がんと診断された場合は、その時点で低用量ピルの服用を中止しないといけないため、注意が必要です。

妊娠

妊娠初期の出血の可能性もあります。しかし、低用量ピルによる避妊効果は99.7%(※)と非常に高いため、正しく飲んでいる場合は妊娠の可能性は低いでしょう。

ただし、飲み忘れたり、正しい飲み方をしなかったりした場合は92%程度(※)まで避妊率が下がってしまいます。不安な場合は妊娠検査薬を使用するか、婦人科を受診しましょう。

参考文献

Hatcher RA et al, Contraceptive Technology: Twentieth Revised Edition. P779-861, New York : Ardent Media, 2011. https://www.aska-pharma.co.jp/iryouiyaku/news/filedownload.php?name=5b24abc385e31d3ac76cd894b1aec24e.pdf

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf