つらい帯状疱疹を予防したい!帯状疱疹ワクチン(シングリックス®)について医師が解説します

帯状疱疹とは?

水痘・帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる皮膚疾患で,身体の左右どちらか片側に帯状に紅斑(赤い斑点)や水疱(水ぶくれ)といった皮疹ができるのが特徴です.

子供の頃に「水ぼうそう」にかかったあと,ウイルスは神経に潜伏します.年齢が上がり,ストレスや他の疾患により免疫力が下がるとウイルスが再活性化し帯状疱疹を発症します.

帯状疱疹の発症率は50歳から急激に上昇し,85歳までに約50%の人が帯状疱疹の症状を経験するといわれるほどよくある疾患なのです1)

知覚神経に沿って皮疹が出現するため,強い痛みを伴うことが多いです.早いと皮疹が出現する4〜5日前から痛みを感じることもあります.

抗ウイルス薬の内服で治療することで皮疹の多くは速やかに消失しますが,その後も神経の痛みに悩まされることがあります.皮疹が消失したあと3ヶ月を超えて疼痛が持続するものを「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼び,帯状疱疹患者のうち全年齢の18%79歳以上では約3分の1がPHNを経験すると言われています2)

帯状疱疹の発症自体でもPHNの合併でも,年齢が危険因子となっています.治療法は進歩しているものの,まだまだ合併症に長期に苦しむ方が少なくないため早い段階で発症を予防することがとても重要であるといえます.

帯状疱疹ワクチンとは?

​​帯状疱疹の予防に関しては,米国では10年以上前から,わが国でも2016年から生ワクチンの接種が可能です.生ワクチンにより帯状疱疹の発症は51.3%減少,PHNは66.5%減少,重症度も61.1%減少したことが報告されました3)

しかしながら生ワクチンは,ワクチン自体の効果は8年,社会的な費用対効果を加味しても10年で効果が消失することが判明しています4)

また生ワクチン自体の特性から,妊婦や不安定な悪性腫瘍,免疫機能が低下している患者など帯状疱疹の発症リスクが高い患者に対して使うことができないというジレンマがありました.

そこで新規に開発されたのがサブユニットワクチンシングリックス®)です.不活化ワクチンの一種で,ウイルスを構成する糖タンパクの一部を投与することで,ウイルスに対する免疫を強く誘導します.ワクチンの有効性としては,50歳以上の患者に対する臨床試験では発症に対する有効率97.2%,70歳以上の患者に対する臨床試験では発症に対する有効率91.3%,PHNへの有効率88.8%であり,発症予防のみならずPHNに対する高い有効性も証明されました5,6)

長期成績に関しても,海外の臨床試験で9年間の免疫原性(体内で免疫応答を呼び起こす能力)が確認されており,統計学的には少なくとも15年間は維持されることが予測されると報告されています7)

2017年,米国疾病管理予防センター(CDC)からは,50歳以上の免疫不全のない成人を対象とした帯状疱疹および関連合併症の予防目的として,生ワクチンよりもサブユニットワクチンの方が望ましいとの声明が出されています8).日本国内では2018年3月に国内製造販売承認を得ており,現在広く使用されています.

シングリックス® ワクチン接種の実際

「50歳以上」の成人に,1回0.5mLを2か月間隔で2回,筋肉内に接種します.

ワクチン接種の注意点は?

以下の項目に当てはまる方は,ワクチンを接種することはできません

  • 明らかに発熱(通常37.5℃以上)している人
  • 重篤な急性疾患にかかっている人
  • 過去にこのワクチンに含まれている成分でアナフィラキシーを起したことがある人
  • 上記以外に医師が予防接種を行うことが不適当な状態にあると判断した人

また以下の項目に当てはまる方は,接種が適するかどうか医師の判断が必要です.

  • 心臓や血管、腎臓、肝臓や血液の障害などの基礎疾患がある人
  • 他のワクチンの接種を受けて、2日以内に発熱があった人や全身性の発疹などアレルギーが疑われる症状が出たことがある人
  • 過去にけいれんをおこしたことがある人
  • 過去に免疫に異常があると診断されたことがある人や両親や兄弟に先天性免疫不全症の人がいる人
  • このワクチンに含まれている成分に対してアレルギーをおこすおそれがある人
  • 血小板減少症や凝固障害のある人、抗凝固療法を受けている人
  • 高齢の人
  • 妊婦または妊娠している可能性がある人、授乳中の人

ワクチンによる副反応は?

副反応として報告されているものは以下のとおりです.

  • 局所性の副反応では
    注射部位の痛み78%,赤み38%,腫れ26%
  • 全身性の副反応では
    筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%、胃腸症状13%

いずれも身体の免疫応答を反映した一時的な症状で,多くは7日以内に消失します5,6)

他のワクチンとの一緒に接種しても良いの?9)

  • 他の不活化ワクチン(インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンなど)
    • 接種間隔の制限はありません
  • 生ワクチン(BCG、MR[麻疹・風疹ワクチン]など)
    • 接種間隔の制限はありません
  • 新型コロナワクチン
    • 2022年4月現在、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは同時に接種できません.新型コロナワクチンとその他のワクチンは,お互い片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます.

50歳未満は接種できるの?

帯状疱疹は50歳以上から発症率が急激に増加するとされており、50歳未満の方はこちらのワクチンの接種対象とはなっておりませんが、ご希望があれば接種は可能です。

50歳に満たずに1回目の接種を行った場合、2回目の接種は満50歳の誕生日を迎えた後に行うことが望まれます。10) ただし万が一、副反応があった場合など、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない可能性がありますのでご注意ください。

クリニックフォアでの接種料金

クリニックフォア全院でシングリックス®接種に対応しておりますのでご相談ください.

接種料金 1回¥18,500 +税(2回で¥37,000 +税)*
*別途、ワクチンカウンセリング料を頂いております。(初回 ¥3,500 +税、2回目 ¥1,500 +税)

よくあるご質問

Q. 帯状疱疹は他の人に感染しますか?

A. これまでに水ぼうそうに罹ったことがなく、ワクチンも接種したことがない方(お子様など)が帯状疱疹を発症している方と接触した場合、ウイルスは感染する可能性があります。その場合感染した方は水ぼうそうを発症します。小さなお子さんや妊婦さんは、出来るだけ接触しないようにしましょう。

Q. 帯状疱疹にかかってしまいましたが、ワクチンを受けることはできますか?

A. はい。過去に帯状疱疹にかかったことのある方でもシングリックス®の接種は推奨されます。もし現在症状が出ている場合は、急性期症状(赤い発赤や水疱)が消失し、痛みが落ち着いてからの接種が望まれます。11)

Q. 1回目の接種から2ヶ月以上経ってしまいましたが、2回目の接種は可能ですか?

A. はい。2回目の接種が遅れ、1回目の接種から2か月を超えた場合、6か月後までに2回目の接種を行ってください。

Q. ワクチンの接種年齢に上限はありますか?

A. ありません。50歳以上の方であればどなたでも接種対象です。


参考文献

1) Clin Infect Dis. 2001;32(10):1481.
2) Mayo Clin Proc. 2007;82(11):1341.
3) N Engl J Med 352: 2271-2284, 2005.
4) Clin Infect Dis 54: 922-928, 2012.
5) N Engl J Med. 372(22), 2087-2096, 2015.
6) N Engl J Med 375: 1019-1032, 2016.
7) Hum Vaccin Immunother. 14(6), 1370-1377, 2018.
8) MMWR 67: 103-108, 2018
9) 厚生労働省; ワクチンの接種間隔に関する規定を改正することに伴う対応について
10) https://www.cdc.gov/vaccines/vpd/shingles/hcp/shingrix/recommendations.html
11) https://www.immunize.org/askexperts/experts_zos.asp