ノロウイルスの感染拡大のために必要なのが消毒です。消毒はその方法を間違えてしまうと、効果が出ないということもあります。
ノロウイルスの正しい消毒方法について詳しくご紹介します。
ノロウイルスの消毒に必要な薬剤は?
ノロウイルスには次亜塩素酸ナトリウムを使用した消毒が有効です。次亜塩素酸ナトリウムは、使用する場所やその用途によって濃度が異なります。
ドアノブや手すりなどの感染者が直接触れた場所や物を拭きあげる場合には、0.02%の次亜塩素酸ナトリウムを使用します。吐物や下痢便などウイルスが含まれるモノが直接付着してしまった場所や衣服などには0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使用します。
次亜塩素酸ナトリウムは、市販の家庭用塩素系漂白剤に含まれています。そのため、ご家庭で使用される場合にはこちらを使用していきましょう。
家庭用塩素系漂白剤の濃度はほとんどが5%ですので、ここでは、5%の家庭用塩素系漂白剤を使用した場合の、消毒剤の作り方をご紹介します。
0.02%の次亜塩素酸ナトリウムを作る場合には、家庭用塩素系漂白剤10mlに対して水2.5Lが必要となります。これは、ペットボトルのキャップ2杯分の次亜塩素酸系漂白剤と+500mlのペットボトル5本分の水で作ることができます。
0.1%の次亜塩素酸ナトリウムの場合には、家庭用塩素系漂白剤10mlに対して水0.5Lで作ることができます。これは、ペットボトルのキャップ2杯分の塩素系漂白剤と500mlのペットボトル1本分の水で作ることができます。
ノロウイルスの消毒方法は?
作った消毒剤でノロウイルスに汚染されたものを消毒する方法をご紹介します。
まず、床に飛び散った吐物や下痢便を処理するなど直接ウイルスが含まれているものを処理する場合には、必ず使い捨てのエプロン、マスク、手袋、あればゴーグルを着用することが望ましいです。
まずは、ペーパータオルでウイルスが含まれている下痢便や吐物を静かにふき取ります。この時に2方向で拭きとりをするとウイルスを広げてしまうので、1方向から1か所に吐しゃ物を集めて拭きとることがおすすめです。ノロウイルスは乾燥するとウイルスが空気中に舞ってしまうので、水分を含んでいるうちにふき取ってしまいましょう。
下痢便や吐物をすべて回収したら0.1%の濃度で作成した次亜塩素酸ナトリウムで浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。下痢便や吐物とペーパータオルはビニール袋に密閉して廃棄するのですが、この時に袋の中に次亜塩素酸ナトリウムをそそぎいれて破棄しましょう。この時の濃度は0.5%です。
衣服に吐しゃ物が付着してしまったという場合には付着した下痢便や吐物のウイルスが飛び散らないように静かに処理してから、家庭用の洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いをします。
次に下洗いしたリネン類を85℃、1分間以上の熱水洗濯で消毒します。熱水洗濯が行えない場合には、0.1%の次亜塩素酸ナトリウムで消毒をします。消毒後は十分にすすぎ、高温の乾燥機などを使用すると殺菌効果は高まります。お布団などすぐに洗濯できない場合は、まず吐しゃ物を処理してから揉み洗いをしてよく乾燥させ、スチームアイロンや布団乾燥機を使うと効果的です。下洗いをした場所は0.1%の次亜塩素酸ナトリウムで消毒後、洗剤を使って掃除をしてください。
手すりやドアノブなどは0.02%の次亜塩素酸ナトリウムを浸した布を絞って1方向に向かって拭き掃除をし、その後水拭きをしましょう。
次亜塩素酸ナトリウムは木材と接触すると効力が弱まるため、木材を掃除する場合には後述していますアルコール消毒でも良いです。また、金属は腐食性があるため、消毒後は必ず水拭きをしましょう。
ほかにも玩具など色落ちしそうなものに対しては、次亜塩素酸ナトリウムの使用を避け、85度以上の熱湯に1分間浸して消毒をしましょう。
次亜塩素酸ナトリウムを扱う時の注意事項は?思わぬ事故につながることも…
次亜塩素酸ナトリウムは扱い方を間違えると思わぬ事故につながることもあります。そのため、使用に際する注意事項を押さえておきましょう。
まずは次亜塩素酸ナトリウムを扱う際には十分な換気を行い、手指で直接触れないようにしましょう。もちろん、手指消毒に次亜塩素酸ナトリウムを使用することも厳禁です。
次に次亜塩素酸ナトリウムにて消毒剤を作成している時に注意したいことです。次亜塩素酸ナトリウムは酸性と混ざると有毒ガスが発生するため、混ざらないように注意が必要です。
最後に、作成した消毒剤についての注意事項です。作成した消毒剤は時間がたつと劣化して効果がなくなっていくので、その都度使い切りましょう。保管をする場合には、直射日光の当たらない場所で保管をしましょう。原液、希釈液ともに、アルミホイルなどで包んで光を遮るという方法がおすすめです。
作成した薬剤は子供の手の届かないところで保管し、希釈した割合などの情報を記入しておくと、後から使用するときにも困りません。
ノロウイルスにアルコール消毒は効果がないの?
消毒と聞くとアルコールを想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、アルコールはノロウイルスに対しては抵抗性が弱いということが分かっています。一昔前までは、アルコールはノロウイルスに対して効果がないといわれてきました。ですが、近年の実験においてアルコールもある程度有効であるということが分かってきました。しかし、アルコールはノロウイルスに対して抵抗性が弱いことから、一度の消毒では効果がないとしています。ですので、アルコールを用いて手すりやドアノブなどの拭き掃除をする場合は、一度拭きではなく、二度拭きをすることが望ましいと考えられています。
もしも、新型コロナウイルスの感染対策とノロウイルスの感染対策を一緒に行いたいと考えている方は、アルコール消毒を用いて二度拭きを心がけるとよいでしょう。
公開日:9月8日
監修:クリニックフォアルグループ医師