睡眠薬を処方してもらう方法
睡眠薬を処方してもらう方法としては、医療機関の直接受診、オンライン診療の受診の2つの方法が主に挙げられます。また、市販薬を利用するのも一つの方法です。詳しく見ていきましょう。(以下いずれも医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。)
医療機関を受診する
睡眠薬は、内科、精神科、心療内科などで処方されることがあります。保険適用となることが一般的です。
なお、保険適用における睡眠薬の処方には処方日数や、何種類の睡眠薬を処方できるか、などについてルールがあり、それらのルールをもとに医師の判断により処方が行われます。
オンライン診療で受診も可能
オンライン診療とは、スマホやパソコンのビデオ通話などを使って、オンラインで診察を受ける方法のことです。お薬の処方がある場合は、お薬が自宅に配送されたり、自分で薬局に取りに行ったりします。
ただ、厚生労働省によると、オンライン診療において「初診では睡眠薬の処方は行わないこと」とされているため、初診では処方が受けられないケースがあります。
特にベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬などは依存性が高く、濫用されるリスクがあるため、オンラインでの処方には注意が必要とされており、それらのお薬はオンライン診療では処方してもらえない可能性が高いでしょう。
市販薬を購入することも可能
市販されている睡眠薬もあります。ただ、市販薬は、有効成分の種類のバリエーションが少ないです。よく使われているのが、アレルギーにも使われる抗ヒスタミン薬で、これは一時的な不眠の緩和を目的としている成分です。
睡眠薬とは?どのような種類がある?
睡眠薬は、睡眠導入剤や眠剤とも呼ばれるお薬です。どのようなお薬なのか、その種類について詳しく見ていきましょう。
睡眠薬・睡眠導⼊剤・睡眠改善薬・安定剤の違い
睡眠薬に似た名前や、関連するお薬として、睡眠導入剤、睡眠改善薬、安定剤などがあります。
まず、睡眠薬と睡眠導入剤には大きな違いはありません。ただ、睡眠薬の中でも、作用時間(効果の持続期間など)が短いタイプのお薬のことを、便宜的に睡眠導入剤と呼ぶことがあります。
また、睡眠改善薬は市販薬を指すことが一般的です。
安定剤とは
安定剤は精神安定剤のことで、抗不安薬と呼ばれることもあり、不安な症状の緩和を目的とするお薬です。
睡眠薬を成分ごとに分類したときに、ベンゾジアゼピン系に分類されるお薬があります。ベンゾジアゼピン系のお薬にはさまざまなものがあり、催眠作用が強いものは睡眠薬、不安などの緩和作用が強いものが強いものが安定剤として使われるのですが、安定剤は緊張をほぐして眠りにつきやすくなるので、睡眠薬のような目的で使われることもあります。
睡眠薬の種類
睡眠薬を成分や作用によって分類すると、下表のようになります。現在の主流は、非ベンゾジアゼピン系、ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬ですが、お薬の作用時間や、どのように睡眠を改善したいかといった目的に合わせて、適した睡眠薬を選びます。
分類 | 半減期※ | お薬の名前 | 効果・その他 |
---|---|---|---|
非ベンゾジアゼピン系 | 超短時間作用型(2~6時間) | ・アモバン(ゾピクロン)・マイスリー(ゾルピデム)・ルネスタ(エスゾピクロン) | 依存性や耐性が比較的少なく、最初の選択肢となることが多い |
ベンゾジアゼピン系 | 超短時間作用型(2~4時間) | ・ハルシオン(トリアゾラム) | GABAという神経伝達物質の働きを高め、興奮を抑えて睡眠につなげる |
短時間作用型(6~10時間) | ・エバミール・ロラメット(ロルメタゼパムリスミー)・デパス(エチゾラム)・リスミー(リルマザホン塩酸塩水和物)・レンドルミン(ブロチゾラム) | ||
中間作用型(21~36時間) | ・ニメタゼパム・サイレース(フルニトラゼパム)・ドラール(クアゼパム)・ベンザリン・ネルボン(ニトラゼパム) ・ユーロジン(エスタゾラム) | ||
長時間作用型(65~85時間) | ・ソメリン(ハロキサゾラム)・ダルメート(フルラゼパム塩酸塩) | ||
メラトニン受容体作動薬 | 超短時間作⽤型(1時間) | ・ロゼレム(ラメルテオン) | 体内時計を調節するメラトニンというホルモンの受容体に作用し、自然に近い形で睡眠につながる |
オレキシン受容体拮抗薬 | 10時間 | ・ベルソムラ(スボレキサント) | 覚醒状態にあるときにはたらくオレキシンという神経伝達物質のはたらきを阻害し、睡眠につなげる |
47.4時間’10mgの場合)50.6時間(2.5mgの場合) | ・デエビゴ(レンボレキサント |
※半減期とは:お薬の血中濃度が半分になるまでの時間。長いほど効果の持続時間も長い傾向がある。
抗精神薬・抗うつ剤を睡眠薬として使うこともある
精神疾患の治療に使う抗精神薬や、うつや不安症の治療薬である抗うつ剤を睡眠薬として使うこともあります。これらのお薬は、心療内科や精神科といった専門の先生が精神疾患のある方に使われることが主なため、内科の医療機関で睡眠薬として処方されることは原則ありません。
睡眠薬の作用
ここからは、睡眠薬の作用について見ていきましょう。
睡眠薬は、大きく分けて以下の2つの作用を持つお薬に分類できます。
- 脳の機能を低下させるお薬
- 自然に眠気を強めるお薬
前者はやや強引とも言える作用を持ちますが、後者は本来の眠気を強めて睡眠をもたらすお薬です。ただ、その分効果に個人差があります。それぞれの詳細は以下の通りです。
脳の機能を低下させる睡眠薬
脳の機能を低下させる睡眠薬は主に、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、バルビツール酸系があります。現在の主流はベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系で、バルビツール酸系は現在は使われることが少なくなっています。
これらのお薬は脳の特定の部分の神経活動を抑え、催眠作用をもたらすもので、具体的には、GABAという神経伝達物質の働きを高め、眠気をもたらします。GABAの働きが高まると、興奮が鎮まり、リラックスや睡眠の質改善につながるとされています。
バルビツール酸系のリスク
バルビツール酸系の睡眠薬も、脳の機能を低下させるお薬に分類できますが、安全性などの懸念から、現在は使われることはほぼありません。
バルビツール酸系の睡眠薬は、摂取量が多いと神経細胞に直接はたらきかけてしまい、中枢神経が抑制されすぎることがあるためです。
自然に眠気を強める睡眠薬
自然に眠気を強める睡眠薬は比較的新しいお薬で、睡眠や覚醒に関係する物質の働きをコントロールすることで、眠りにつきやすくします。依存性が少なく、自然な眠りが実現しやすくなります。
お薬の種類としては、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬が該当します。
メラトニン受容体作動薬:メラトニンのはたらきを高める睡眠薬
メラトニン受容体作動薬は、メラトニンというホルモンの受容体に作用してメラトニンのはたらきを高め、自然に近い形で眠気をもたらす睡眠薬です。
メラトニンは、体内時計のリズムにかかわるホルモンで、夜間に分泌され、朝になって光を浴びると消えます。また、加齢とともに分泌が少なくなるのも特徴です。
オレキシン受容体拮抗薬:オレキシンのはたらきを阻害する睡眠薬
オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒状態にあるときにはたらくオレキシンという神経伝達物質のはたらきを阻害し、覚醒状態を落ち着かせて睡眠につなげる睡眠薬です。
睡眠薬の効果が期待できるタイミング・時間について
続いて、睡眠薬の効果が実感できるまでの期間、服用から効果が出るまでの時間、作用時間による睡眠薬の選び方について解説します。
効果が実感できるまでの期間
多くの睡眠薬は、飲み始めの初⽇〜1週間以内で症状改善が期待できるとされており、1〜2週間以上飲み続けると、効果がより安定することが一般的です。
なお、睡眠薬の種類によって、効果が実感できる時期は以下のように多少異なります。
- オレキシン受容体拮抗薬、ベンゾジアゼピン系、⾮ベンゾジアゼピン系睡眠薬:初日〜1週間以内に効果が期待でき、1〜2週間以上飲み続けることで、より効果の実感度が高まる
- メラトニン受容体作動薬:服用初期から効果が期待できるが、3ヶ月ほど飲み続けることで、より熟睡感などの効果の実感度が高まる
服用から効果が出るまでの時間
お薬の作用時間にかかわらず、服⽤してから効果が出るまでの時間は同程度で、おおむね10〜30分程度で眠くなります。そのため、どのような睡眠薬でも、就寝直前に服用するとよいでしょう。
なお、作用時間が短い睡眠薬でも、服用から6~7時間は起床後も眠気などを感じることがあるので、起床後に眠気を感じることがないように、服用は起床時刻から逆算して6~7時間までには服用することが推奨されます。
睡眠薬の作用時間と選び方
睡眠薬の種類の項で紹介した通り、睡眠薬の作用時間は種類によって大きく異なり、超短時間型、短時間型といったタイプに分類することができます。
前述の通り、いずれも服⽤してから効果が出るまでの時間は同程度ですが、作用時間のピークが異なるため、睡眠のお悩みによって以下のようにお薬を選びます。
- 超短時間型:作用時間のピークが早いので、寝つきが悪い方向き
- 短時間型:途中(比較的早いタイミング)で起きてしまうことにお困りの方向き
- 中間型:途中(就寝後、ある程度時間が経ってから)で起きてしまうことにお困りの方向き
- 長時間型:早朝など、目覚めが早すぎてお困りの方向き
- オレキシン受容体拮抗薬:寝つきが悪い方、途中で起きてしまう方、目覚めが早い方、いずれの方にも適しています
- メラトニン受容体作動薬:睡眠のリズムが異常な方向き(眠くなるのが遅いなど)
睡眠薬の副作用
睡眠薬の重大な副作用として、長期間の使用によって薬物依存になる恐れがあることが挙げられます。そのため、医師の指導のもと、使用期間、量について慎重に検討しながら使う必要があります。指示された用法用量は必ず守りましょう。
その他に、睡眠薬で筋肉がゆるむことによる睡眠中のいびきや無呼吸のほか、以下のような副作用が生じることがあります。
- 起床時の眠気
- 起床時のふらつき
- 転倒
- 精神運動機能の低下(思考、決断力といった精神活動がとどこおり、動作が緩慢になったり、会話が減少したりするといった行動に現れる状態)
- 健忘(服用から寝るまでの出来事を覚えていない)
- もうろうとする
- 徘徊
- 夢遊症状
- 悪夢を見る
- 頭痛
- 消化器症状
なお、上記のような副作用は、体内に睡眠薬の成分が残っているときだけに生じるもので、後遺症になるようなことはありません。また、メラトニン受容体作動薬では、ふらつきや健忘は少ないとされています。
認知症のリスクについて
睡眠薬の服用によって、認知症になると言われることがありますが、結論は今のところ出ていません。
確かに、長期間服用を続けることで、記憶力や判断力が一時的に低下することはあります。睡眠薬をやめれば回復することが多いですが、機能によっては回復に時間を要することもあります。また、数年から十数年といった長期の服用を続けると、睡眠薬を服用していない人と比べて認知症リスクが1.5~3倍ほど上がる可能性があるといった報告もあります。
一方で、さまざまな研究における結果が一定ではなく、睡眠薬による認知症リスクについては決着がついていません。
なお、不眠症自体が認知機能低下リスクを高める原因となるため、気になる場合はしっかりと治療を受けることが大事です。
睡眠薬服用時の注意点
睡眠薬にはリスクもあるため、服用時には以下のような点に注意しましょう。
他人の睡眠薬を服用しない
前述の通り、睡眠薬の種類はたくさんあり、作用の仕方、睡眠の質への影響などが少しずつ異なります。そのため、家族や知人が睡眠薬を処方されていても、それが自分に合うかはわかりません。他人の睡眠薬を服用しても効果が得られないばかりか、副作用が生じることもあるためやめましょう。睡眠薬を服用したい症状があるときは、まずは受診することをおすすめします。
用法用量を守る
眠れないからといって自己判断で睡眠薬の量を増やすといったことはしないでください。副作用や体に悪影響が出ることがあります。
睡眠薬の効きが悪いなど、気になることがある場合は必ず医師に相談して、睡眠薬の量や種類を判断してもらいましょう。
服用前後に飲酒をしない
アルコールによって副作用が生じやすくなります。健忘、異常行動、ふらつきなどの症状が出ることがあり、危険なので、服用前後の飲酒はやめましょう。
またアルコール自体で、寝つきが悪くなったり、熟睡が妨げられるなどの睡眠への悪影響が起こるため、眠りの問題があるならアルコールは避けたほうがいいでしょう。
自己判断で睡眠薬をやめない
実は、睡眠薬を急にやめることにもリスクがあります。特にベンゾジアゼピン系の睡眠薬を服用しているときは、急な中止で離脱症状を認めることがあります。またお薬によって睡眠が改善されてきた段階で急に服用をやめると、服用前よりも強い不眠になることがあります。これを反跳性不眠といいます。
改善した睡眠障害が、再発しないようにするためにも、睡眠薬のやめ方に関しても医師の判断を仰ぎましょう。
なお、反跳性不眠は作用時間の短い睡眠薬ほど生じやすいとされています。
良質な睡眠のためのセルフケア
良質な睡眠をとるためには、睡眠薬だけに頼るのではなく、生活習慣の改善などに取り組むことも大事です。睡眠薬を使いつつ生活習慣の改善にも取り組むことによって、よりしっかりと眠れるようになったり、最終的には、睡眠薬なしで眠れるようになったりすることも期待できます。
セルフケアのポイントは以下の通りです。
布団の中で考え事をしない
悩みなどを布団の中に持っていくのはよくありません。今日の振り返りをしたり、明日のことに思いを巡らせたり、悩んだり考えたりすると眠りづらくなり、眠りも浅くなりやすいため注意しましょう。
寝室の環境を整える
寝室の環境を整えることで、途中で目覚めることが少なくなります。たとえば、以下のような対策が有効です。
- 絨毯を敷いて音対策をする
- ドアを閉めて音や光の対策をする
- 遮光カーテンを使う
- 快適な温度に保つ
など
就寝前の食事などに気を付ける
眠りにくくなるので、空腹のまま寝ないようにしましょう。しかし就寝直前の夕食や夜食は入眠を妨げるので避けてください。また、寝付きにくくなったり、途中で起きたりする原因になるので、寝る前に以下のような物を摂取するのは避けてください。
- 軽食(特に炭水化物)
- 脂っこいもの
- 過度な水分摂取
- カフェイン(4時間前から摂取しない)
- アルコール
- タバコ
適度な運動をする
適度に有酸素運動をすることで、眠りにつきやすくなります。睡眠が深くなる効果も期待できるため、日中の定期的な運動を習慣づけましょう。
一方で、就寝1時間以内の運動は入眠を妨げるとされますので、控えるようにしましょう。
睡眠薬に関するQ&A
最後に、睡眠薬に関する質問にお答えします。
睡眠薬で睡眠の質は悪くなる?
睡眠の質は、睡眠薬の種類によって異なります。たとえばベンゾジアゼピン系は、浅い睡眠を増やし、睡眠の質低下につながるとされています。
睡眠の種類はレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)の2種類に大きく分けられ、睡眠薬の種類によって、レム睡眠が多くなる、ノンレム睡眠が多くなる、などが異なります。そのため、睡眠の質も踏まえて、自分に合った睡眠薬を選ぶのが大事です。
睡眠薬はずっと服用する必要がある?
服薬と生活の改善によって睡眠の状態が改善されることがあります。医師の指示に従い、適切に服用と生活改善を続け、お薬を減らしていくことで、睡眠薬がなくてもよい睡眠がとれるようになることもあるのです。
妊娠中・授乳中に睡眠薬を服用できる?
妊娠中、授乳中の睡眠薬の服用は、自己判断で服用するのはやめましょう。主治医に相談し、判断、処方してもらうことをおすすめします。
睡眠薬の処方はクリニックフォアのオンライン保険診療へ
クリニックフォアでは、さまざまなお悩みに対応するオンライン診療を行っています。保険診療の内科では、不眠症や睡眠障害のご相談にも対応しているため、睡眠に関するお困りごとがある方は受診をご検討ください。
※依存性の高い向精神薬に分類される不眠症薬は処方できません。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。