ステロイドはオンラインで処方してもらえる?治療の際の注意点も解説

ステロイドとは、体内にも存在する副腎皮質ホルモンの一種をお薬にしたものです。過剰な免疫反応や炎症を抑えることで、さまざまな病気の治療に使われています。

今回は、ステロイドの種類や効果、治療での使い方、処方を相談する方法、注意点などについて詳しく解説します。また、オンラインで処方してもらえるかどうかについても説明します。

ステロイドってどんなお薬?

ステロイドは、副腎(左右の腎臓の上部にそれぞれ1つずつある部分)でつくられる副腎皮質ホルモンの一種で、糖質コルチコイド(コルチゾール)という成分をお薬にしたものです。

これをお薬として使うことで、過剰な免疫反応や炎症を抑えることができ、皮膚、臓器、免疫疾患など、さまざまな部位や病気の治療に使うことがあります。

ステロイド薬の効果

  • 抗炎症作用
  • 免疫抑制作用
  • 細胞増殖抑制作用
  • 血管収縮作用

ステロイド薬は、体内に存在する糖質コルチコイド(コルチゾール)という成分をお薬にしたもので、コルチゾールには上記のような作用があり、お薬でも同様の効果が期待できます。

内服薬・外用薬・注射がある

ステロイドには内服薬、外用薬(吸入薬、点眼薬、点鼻薬を含む)、注射などがあり、病気や、症状がある部位によって使い分けます。

外用薬は、皮膚のほか、目、耳、鼻、口腔、気管支、直腸などに使うことがあります。

全身投与したいときは内服薬を使いますが、内服薬が投与できないときや、緊急かつ大量投与が必要なとき、関節など局所に使用したいときは注射を使うこともあります。

塗り薬の種類

皮膚科では、炎症を抑えるために塗り薬を使うことがよくあります。塗り薬にはさらにさまざまな剤形があり、たとえば軟膏、クリーム、ゲル、ローション、スプレー、テープ、シャンプーなどがあります。

それぞれの特徴や使い心地は以下の通りです。

剤形特徴使い心地
軟膏・どのような状態・症状にも使いやすい・皮膚を保護する役割も期待できる・べたつきを感じる
クリーム・浸透力が高い・軟膏よりも刺激が強い・かさつきがある場合に特に適している・のばしやすい
ゲル・浸透力が低い・べたつきがない
ローション・流れやすい分、頭部への使用が適している・サラサラしている
スプレー・背中などの手が届かない部分にも使いやすい・一度に広い面積に塗りやすい
テープ・患部に貼り付けて使う・虫刺され、手のひび割れなどに使いやすい
シャンプー・頭部の症状に使う

塗り薬は5段階の強さに分類できる

塗り薬はstrongest(もっとも強い)・very strong(とても強い)・strong(強い)・medium(普通)・weak(弱い)の5段階の強さに分類できます。強いほど効果は期待できるものの、副作用のリスクも高まるため、症状や年齢などによって適切なレベルのお薬を使います。

お薬の例は以下の通りです。

強さ一般名お薬の例
strongest(もっとも強い)クロベタゾールプロピオン酸エステルデルモベート
ジフロラゾン酢酸エステルダイアコート
very strong(とても強い)アムシノニドビスダーム
ジフルコルトロン吉草酸エステルネリゾナテクスメテン
ジフルプレドナートマイザー
フルオシノニドトプシム
ベタメタゾンジプロピオン酸エステルリンデロン
モメタゾンフランカルボン酸エステルフルメタ
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルアンテベート
strong(強い)デプロドンプロピオン酸エステルエクラー
デキサメタゾンプロピオン酸エステルメサデルム
デキサメタゾン吉草酸エステルボアラ
ベタメタゾン吉草酸エステルリンデロンベトネベート
フルオシノロンアセトニドフルコート
medium(普通)アルクロメタゾンプロピオン酸エステルアルメタ
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルリドメックス
クロベタゾン酪酸エステルキンダベート
デキサメタゾングリメサゾンオイラゾン
トリアムシノロンアセトニドレダコート
ヒドロコルチゾン酪酸エステルロコイド
weak(弱い)プレドニゾロンプレドニゾロン

参考: 佐伯秀久ら, 日本皮膚科学会ガイドライン|アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021, ステロイド外用薬の使用法|ランクの選択 表11より作表, P2717

ステロイド薬を使う病気・治療

ステロイドは過剰な免疫反応や炎症を抑えることができるため、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、血液疾患、皮膚疾患など、さまざまな部位や病気の治療に使います。

ただし、免疫を抑えてしまうので、細菌などに感染している、もしくは感染が疑わしい場合は注意が必要です。

ステロイドを使うことがある病気の一例は、以下の通りです。なお、ステロイドによる治療がメインの病気もあれば、補助的にステロイドを使う病気もあります。

  • 呼吸器疾患 :気管支喘息、間質性肺炎など
  • 皮膚疾患  :アトピー性皮膚炎、乾癬、接触皮膚炎、蕁麻疹など
  • 自己免疫疾患:関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスなど
  • 腎疾患   :IgA腎症、ネフローゼ症候群、腎炎など

ステロイド薬の処方

続いては、ステロイド薬の処方を受ける方法や、入手する方法を見ていきましょう。

(以下いずれも医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。)

医療機関を受診する

前述のとおり、ステロイドはさまざまな病気の治療に使われるため、内科、呼吸器科、耳鼻咽喉科、内分泌科など、さまざまな診療科で処方されるケースがあります。また、病院で注射の処置を受けたり、入院治療で点滴を受けたりすることもあります。

病気の治療で使う場合は、保険適用となることが一般的です。

なお、ステロイドがほしいという患者さんの希望だけで処方されるものではなく、治療において医師が必要と判断した場合にステロイドによる治療が行われることを理解しておきましょう。

オンライン診療でも可能

オンライン診療とは、パソコンやスマホのビデオ通話などを使って医師の診察を受けるものです。お薬は配送されたり、発行された処方箋をもとに薬局に取りに行ったりします。

ただし、ステロイドは、厚生労働省の提言において「オンライン診療で処方を受けるに当たって注意が必要なお薬」の一つとして挙げられています。特に初診ではステロイドの処方が受けられないケースもあるため注意しましょう。さらに、注射や点滴など、オンライン診療では治療が受けられないものもあります。

ステロイド薬の副作用

どのようなお薬にも副作用のリスクはありますが、ステロイド薬(特に内服や注射)は適切に使わないと、重大な副作用が出やすいお薬でもあります。

生じうる副作用の例は、下表の通りです。ただ、病気や治療法、お薬の量、服薬期間などによっても差があり、特に塗り薬の場合は全身に症状が出ることはほとんどないとされています。生じる可能性があるのは、使った場所にステロイドざ瘡(ニキビ)、ステロイド潮紅、皮膚萎縮、多毛などです。

なお、予防のためにお薬を使うかどうかは医師の判断となりますので、お薬が必要ないこともあります。

副作用理由予防法・対処法
ステロイド痤瘡(ニキビ)ホルモンバランスの変化による皮脂分泌の増加・お薬の減量・ステロイド以外の薬に変更する
ステロイド潮紅(肌の赤み)皮膚の毛細血管が太くなるため・お薬の減量・ステロイド以外の薬に変更する
皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)皮膚の組織が減るため・ステロイド以外の薬に変更する
感染症にかかりやすくなる免疫力が抑えられるため・人ごみを避ける、うがい、手洗い、マスクなどで予防する・感染予防のお薬を飲む
骨粗鬆症・骨折・腸管からのカルシウム吸収が抑制されるなどして骨がもろくなるため・予防薬を飲む
大腿骨頭壊死(無菌性骨壊死)不明・大腿骨の付け根あたり、膝、おしりなどに痛みを感じる場合はすぐに医師に相談する
ステロイド潰瘍消化管の粘膜が弱くなるため・予防薬を飲む・暴飲暴食をしない・喫煙をしない
血栓症血小板(出血を止めるはたらきがある)の機能が高まるため・予防薬を飲む
ステロイド精神病・不眠症・うつ状態・多幸症(幸福感を感じる・ハイな状態になる)脳に作用するため・お薬の減量や中止
ムーンフェイス(満月様顔貌)中心性肥満体重増加食欲の増加と、脂肪の代謝が障害されるため・カロリー制限・お薬の減量や中止
ステロイド糖尿病・糖を合成するはたらきが高まるため・インスリン(血糖値を下げるホルモン)の作用が下がるため・糖の利用が低下するため・食事療法による予防を行う・糖尿病治療を行う
動脈硬化脂質異常症脂質を合成する働きが高まり、コレステロール値や中性脂肪値が上昇するため・コレステロール値や中性脂肪値を下げるお薬を飲む
高血圧むくみ体内に塩分がたまりやすくなるため・塩分制限をする・高血圧治療を行う
ステロイド白内障タンパクの変性のため・定期的に眼科での検査を受ける
ステロイド緑内障眼圧の上昇・定期的に眼科での検査を受ける・お薬の減量、中止
ステロイド筋症(筋力低下)タンパクの変性や、タンパクの合成抑制のため・お薬の減量、中止
ステロイド離脱症候群・倦怠感・吐き気・頭痛・血圧低下お薬の中止によって、体内のステロイドホルモンが不足するため・お薬を徐々に減量する
その他・脱毛・多毛・不整脈・手の震え
・生理不順・食欲増加 など
・お薬の減量や中止

ステロイド薬の注意点

最後に、ステロイド薬の注意点について解説します。ここで紹介する以外にも、医師に指示された注意点があれば必ず守ってください。

適切な強さのお薬を使う

前述の通り、ステロイドの塗り薬には5段階の強さがあります。強すぎると副作用が強く出る恐れがあるので、適切な強さのお薬を使う必要があります。

飲み薬の場合には、飲む量は医師の指示に従いましょう。

逆に、副作用が怖いからといって必要以上に弱い・少ない量のお薬を使うと、効果が期待できず、結果的に使用期間が長くなってむしろ副作用のリスクが高まることもあるので注意しましょう。

塗り薬は適量を守る

副作用が怖いからといった理由で少ししか塗らないと、効果が期待できず、結果的に使用期間が長くなってむしろ副作用のリスクが高まるため、適量を守りましょう。

塗り薬の量の単位に、FTU(ワンフィンガーチップユニット)というものがあります。1FTUは、指の関節1つ分の量のお薬で、たとえば大人の顔と首なら2.5FTU、体幹前面なら7FTUが目安とされています。この量で塗ると、ややべたつく感じがありますが、それが適量です。

自己判断でお薬をやめない

一定の量を超えて、ステロイドを長期に内服すると、体内でのステロイドホルモンの分泌が減少します。この状態でお薬をやめたり減らしたりすると、体内のステロイドホルモンが不足し、頭痛、吐き気、倦怠感といったステロイド離脱症候群が生じることがあるため、自己判断でお薬をやめてはいけません。

離脱症候群を防ぐために、医師の判断のもと、徐々にステロイドの減量が行われることが一般的です。

体に負担がかかることを行う時は医師に相談する

ステロイド薬を内服しているときは、通常よりも免疫が下がることがあります。手術や抜歯など、普段はやらないような体に負担のかかることをする場合は、必ず医師に相談しましょう。ときには、お薬の調整が必要なことがあります。

生ワクチンの接種

生ワクチンの接種を希望する場合は、必ず医師に相談しましょう。

生ワクチンとは、ある病気の予防を目的として、その病原体の毒性を弱めたものを使ったワクチンのことです。接種することでこの病原体に対する免疫がつくられ、病気の発症や重症化予防につながります。

ただ、ステロイド治療中の方は免疫機能が低下しているため、生ワクチンによって感染が持続したり、重症化したりするリスクがあり、接種が禁止されていることもあります。

ステロイド薬の処方はクリニックフォアのオンライン保険診療へ

クリニックフォアでは、さまざまなお悩みに対応するオンライン診療を行っています。保険診療のアレルギー科や皮膚科では、病気や症状によってはステロイドを処方することがあり、喘息の吸入薬、アトピー性皮膚炎の外用薬、難治性のじんましんにおける一時的なステロイド内服薬の処方などを行っています。

スマホやパソコンを使って、ご都合の良い場所から受診していただけるので、忙しい方も、直接の受診が難しい方も、受診しやすくなっています。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。 

 

 

注意 オンラインでお薬の処方ができない場合があります

以下に当てはまる場合はオンラインで処方ができません。

  • 依存性の高い向精神薬(不眠症のお薬を含みます)に分類されるお薬や麻薬は処方できません。
  • 触診・検査などが必要な場合(爪水虫など)、オンラインでは病状を把握するために必要な情報が十分に得られないと医師が判断した場合には、対面での診療をお願いする場合がございます。

参考文献

  1. 厚生労働省 -オンライン診療で処方を受けるに当たって注意が必要なお薬一覧-
  2. 厚生労働省 -重篤副作用疾患別マニュアル-
  3. 日本皮膚科学会雑誌第131巻第13号
  4. 日本皮膚科学会ガイドライン -蕁麻疹診療ガイドライン 2018-
  5. 一般社団法人 日本腎臓学会 -RPGN(急速進行性糸球体腎炎症候群)-