アトピー性皮膚炎の原因・治し方は?重症度チェックやセルフケア法も紹介

「ブツブツができてかゆい」「何だかガサガサして皮もむける」こんな症状が続いている場合は、アトピー性皮膚炎かもしれません。

今回は、アトピー性皮膚炎の原因や治療法、医療機関を受診する前にしておきたいセルフチェックや、日頃の生活でできるケア方法などを詳しく紹介します。

アトピー性皮膚炎の特徴・症状

かゆみを伴う皮膚のトラブルには、かぶれや蕁麻疹などがあります。アトピー性皮膚炎はこうした皮膚疾患とどのように違うのでしょうか?まずはその特徴や症状を紹介します。

赤みやかゆみのある湿疹

かゆみのある湿疹はアトピー性皮膚炎の代表的な症状です。赤みや強いかゆみがあります。寝ている間などに無意識に掻きむしってしまうことも少なくありません。その結果、さらにかゆみがひどくなるという悪循環に陥りやすいため、注意が必要です。

また、掻き崩してジクジクと浸出液が出たり、かさぶたになったりすることもあります。

症状が長引くと皮膚がごわついて硬くなってくるため、早期に適切な治療をすることが大切です。

よくなってもぶり返すことが多い

アトピー性皮膚炎は、よくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。適切な治療によって症状が治まると「よくなった」と思うかもしれません。しかし、症状が治まっても、皮膚の内部の炎症は治まっていないことがあります。外的刺激などちょっとしたきっかけで症状がぶり返しやすく、治りにくいとされています。

そのため、塗り薬や保湿などのケアや、日常生活に気をつける習慣は継続した方がよいでしょう。

アトピー性皮膚炎が起きやすい部位

アトピー性皮膚炎の症状は、左右対称に現れるケースが多く見られます。全身に現れる可能性がありますが、特に起こりやすいのは、顔や頭、首など外気にさらされる部位、肘や膝など腕足の関節の柔らかい部分です。

ただし、年齢によって現れる部位は多少異なります。

例えば、乳幼児の場合、まず症状が現れるのは顔(特に額、目の周り、唇や口の周り、耳の周り)や頭、首です。体幹、四肢や関節部分にも現れ、特に肘の内側や膝の裏側などに出てくる傾向があります。小児は首や手足の関節、思春期以降は上半身に起こりやすいとされています。

アトピー性皮膚炎の主な原因

アトピー性皮膚炎はアレルギー体質の方に多く見られます。しかし、アレルギーだけが原因ではなく、アレルギーのない方でも、突然発症することがあります。では、アトピー性皮膚炎にはどのような原因が考えられるのでしょうか?

アトピー素因

アトピー性皮膚炎の大きな原因として「アトピー素因を持っていること」が挙げられます。アトピー性皮膚炎におけるアトピー素因とは、以下のようなものです。

  • 家族や本人が気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、または複数の診断を受けたことがある
  • 体質的にIgE抗体(アレルギー反応を引き起こすタンパク質の一種)を産生しやすい

皮膚のバリア機能の低下

皮膚表面の角質層には、皮脂膜・天然保湿因子・細胞間脂質から成るバリア機能があります。主な役割は、皮膚の水分を保持し、外部からの異物侵入を防ぐことです。

しかし、アトピー性皮膚炎の方は、何らかの理由でバリア機能が十分に働いていません。そのため、ダニやハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が侵入しやすくなっているのです。

ストレスや不規則な生活

アトピー性皮膚炎はアレルギーや皮膚の状態以外の原因でも起こります。

その一つが、ターンオーバーの乱れです。皮膚細胞は一定のサイクルで古いものと新しいものが入れ替わっています。しかし、ストレスや不規則な生活によって自律神経が乱れると、ターンオーバーのサイクルも影響を受けます。その結果、古い細胞が皮膚の表面に堆積し、バリア機能に影響を及ぼすのです。

また、ストレスによるイライラや不安からかゆみが起こり、無意識に搔いてしまうことがあります。皮膚に刺激を与えたり傷がついたりすると、悪化につながりかねません。

複数の原因が重なって起こる

アトピー素因があるからといって、必ずアトピー性皮膚炎になるわけではありません。

  • アトピー素因を持つ人のバリア機能が何らかの理由で低下する
  • ストレスや生活習慣の乱れによってバリア機能が低下しているところへ、ダニやハウスダストなどの異物が侵入する

など、複数の原因が組み合わさって起こることが多いと考えられているためです。

また、条件が同じでも人によって発症したりしなかったりすることもあります。同じ人でも、そのときの体調やストレス、外部環境によって変わってきます。

アトピー性皮膚炎のセルフチェック

「アトピー性皮膚炎かもしれない」と思ったら、セルフチェックをしてみましょう。自分の状態を知る目安になります。アトピー性皮膚炎の重症度を評価する方法にはさまざまなものがありますが、ここではそのうちのいくつかをご紹介します。

アトピー性皮膚炎の疑いあり?簡易チェック

以下のような症状に当てはまる場合は、アトピー性皮膚炎の可能性があります。当てはまるものが多い場合は早めに医療機関を受診しましょう。

  • 赤いぶつぶつなどの湿疹がある
  • かゆみを伴う
  • アトピー性皮膚炎に特徴的な部位に症状がある
  • 慢性的に繰り返し症状が現れる

重症度チェック①「重症度のめやす」

重症度チェックは、自分の症状がどの程度なのかを知る目安となります。医師が治療法を決める際にも参考にすることがあります。

もっとも簡単なものが、厚生労働科学研究班が開発した「重症度のめやす」です。皮疹の状態や面積によって、以下のように重症度を分類します。

重症度皮疹の状態皮疹が見られる面積
軽症軽度の皮疹*のみ
中等症強い炎症を伴う皮疹**体表面積の10%未満
重症強い炎症を伴う皮疹体表面積の10%以上30%未満
最重症強い炎症を伴う皮疹体表面積の30%以上

*軽度の皮疹:軽度の紅斑(赤い斑点)、乾燥、落屑(皮膚のはがれ)が主体
**強い炎症を伴う皮疹:紅斑、丘疹(盛り上がった湿疹)、びらん(ただれ)、浸潤(注意深く触れるとわずかに硬くなっているのがわかる程度の皮疹)、苔癬化(皮膚が硬く厚くなった状態)などを伴う

重症度チェック②「POEM法」

患者さんやその保護者が自ら実施しやすいチェック方法が、POEM(The Patient Oriented Eczema Measure)法です。自分の重症度を知るだけでなく、医療機関での治療にも役立ちます。

直近1週間の状態に関する7つの質問に対し、以下の5つの選択肢の中から回答します。

全くなかった=0点 1~2日=1点 3~4日=2点 5~6日=3点 毎日=4点

1.この1週間で、湿疹のために皮膚のかゆみがあった日は何日ありましたか?
2.この1週間で、湿疹のために夜の睡眠が妨げられた日は何日ありましたか?
3.この1週間で、湿疹のために皮膚から出血した日は何日ありましたか?
4.この1週間で、湿疹のために皮膚がジクジク(透明な液体がにじみ出る)した日は何日ありましたか?
5.この1週間で、湿疹のために皮膚にひび割れができた日は何日ありましたか?
6.この1週間で、湿疹のために皮膚がポロポロと剥がれ落ちた日は何日ありましたか?
7.この1週間で、湿疹のために皮膚が乾燥またはザラザラしていると感じた日は何日ありましたか?

合算した点数で、以下のようにアトピー性皮膚炎の重症度がチェックできます。

0~2点問題なし/ほぼ問題なし
3~7点軽度
8~16点中等度
17~24点重度
25~28点非常に重度

(参考)
https://www.jsaweb.jp/huge/atopic_gl2021.pdf
https://www.support-allergy.com/atopy/useful/poem

アトピー性皮膚炎の治し方

アトピー性皮膚炎は薬剤を用いた治療が中心です。かゆみを抑えたり、皮膚に潤いを与えたりなど、症状によって使い分けられます。ここでは医療機関で行われる保険適用可能な主な治療法を紹介します。

塗り薬

アトピー性皮膚炎の治療の基本とされているのが、ステロイド外用薬です。軟膏、クリーム、ローション、テープなどさまざまな形態があり、かゆみや炎症を抑える働きがあります。

ステロイド外用薬は最も強い「ストロンゲスト」から弱い「ウィーク」まで5段階があり、状態や塗る場所に応じて処方されます。

また、タクロリムス水和物の外用薬や、デルゴシチニブの外用薬などステロイド以外の外用薬を使うこともあります。症状の程度や、塗る場所に応じてステロイドからこれらの外用薬にかえていくなど、治療の状況に応じて用いられます。

飲み薬

飲み薬は塗り薬と併せて処方されるのが一般的ですが、近年では塗り薬などで効果が見られない方の治療に使われる飲み薬も増えています。

たとえば抗ヒスタミン薬はアレルギー症状の原因となるヒスタミンの生成を抑制する働きがあります。炎症やかゆみに有効です。

ステロイドなどで症状が改善しない場合は、免疫抑制剤の一つであるシクロスポリン内服薬を使うこともあります。塗り薬などの治療で効果が見られない、16歳以上の患者が対象です。

また、バリシチニブは、サイトカイン(細胞内で情報伝達を行う物質)の働きを阻害することで、炎症やかゆみを抑えるお薬です。従来の治療で効果が見られない重症・難治性のアトピー性皮膚炎に使われます。ただし、厚生労働省が定める条件をクリアした上で、日本皮膚科学会に届出をした医療機関しか処方できません。また、保険が適用されますが、費用が高額となります。

注射

ステロイド外用薬などで改善が見られない患者や、副作用などで使用できない場合は、デュピルマブという注射を使うことがあります。IL4とIL13というサイトカイン(細胞間の情報伝達をする物質)の働きを阻害して、炎症やかゆみを抑えます。

成人の場合、注射は合計4回(初回に600mg、以降は2週間に1回のペースで300mgずつ)必要です。

なお、デュピルマブは保険適用でも非常に高額なお薬です。高額療養費制度や医療費控除の対象になりますが、経済的な負担が大きくなるため、医師とよく相談して決めましょう。

また、注射方法のレクチャーを受ける必要もあります。

日常生活で注意すること

アトピー性皮膚炎を改善するには、お薬による治療だけでなく、スキンケアや生活環境を整えることなども大切です。ここでは、日常生活でできることについて解説します。

皮膚を清潔に保つ

皮脂汚れや汗、黄色ブドウ球菌などの付着は症状悪化の原因となります。そのため、シャワーや入浴で皮膚を清潔に保ちましょう。

浴槽やシャワーの適温は38~40度です。熱すぎると必要な皮脂まで洗い流されてしまい、バリア機能が低下する恐れがあるためです。皮膚に洗浄成分が残らないよう、丁寧に洗い流しましょう。

乾燥が強いなど、症状によっては無理して石けんなどの洗浄剤を使う必要はありません。洗浄剤を使うときは、石けんや敏感肌用のボディソープを使いましょう。手の平や柔らかいスポンジにしっかり泡立てて、擦らないように優しく洗うのがポイントです。洗浄剤が残るのは肌によくないため、しっかり洗い流しましょう。

適切なスキンケアでしっかり保湿

アトピー性皮膚炎の方は皮膚が刺激を受けやすくなっているため、日頃からの保湿が必須です。

古い角質や汚れが残っていると、外用薬や保湿剤の効果が十分に得られない恐れがあります。そのため、汚れを落とした清潔な皮膚に保湿を行いましょう。

具体的には、入浴後5分以内に保湿するとよいとされています。皮膚がしっとりしているうちに、皮膚の状態に合った保湿剤を塗って潤いをキープしましょう。

ストレス解消法を見つけておく

ストレスはアトピー性皮膚炎の悪化を招く原因の一つです。仕事や人間関係といった日常生活だけでなく、アトピー性皮膚炎のかゆみや肌荒れそのものがストレスになることもあります。

また、ストレスによる不眠や暴飲暴食なども、免疫機能の低下や自律神経の乱れによる、症状悪化につながりかねません。

ストレスはなるべくため込まないようにし、規則正しい生活を心がけましょう。自分なりのストレス解消法を見つけておくことも大切です。

皮膚への刺激を避ける

衣類の素材や形状によっては、皮膚が擦れて刺激になる可能性があります。羊毛やごわごわした素材は避け、通気性や吸湿性、肌触りのよいものを選びましょう。こまめに洗濯して清潔を保つことも大事です。汗や汚れが刺激になって、アトピー性皮膚炎を引き起こす恐れもあるためです。

また、肌に合わない化粧品やメイク方法は、皮膚に負担を与えたり、接触アレルギーによって症状が悪化したりすることがあります。敏感肌またはアトピー肌用の化粧品を選び、メイクするときも擦らないよう注意しましょう。特に、症状が強いときは、保湿や紫外線対策だけにして、メイクは避けた方が無難です。

アレルゲン対策をする

ダニやハウスダストは、アトピー性皮膚炎の悪化原因となりえます。掃除や換気をして、取り除くようにしましょう。床は掃除機をかけるだけでなく、定期的に雑巾がけなど水拭きすると効果的です。

エアコンや空気清浄機のフィルターは、ホコリがたまったりカビが発生したりしないよう定期的に掃除しましょう。

また、シーツや枕カバーは意外に汗を吸い込んでいます。ダニの心配もあります。抗ダニシーツをつかったり、こまめに清潔なものと取り替えたりしましょう。布団や敷きパッドも、天気のよい日には干し、取りこんだあとに掃除機をかけるとダニ対策に効果的です。

症状が軽快しても定期的に薬を塗る

アトピー性皮膚炎の治療は、継続することが大切です。症状が治まったからといって、自己判断で薬をやめたり量を減らしたりせず、医師の指示に従いましょう。

アトピー性皮膚炎の治療では、プロアクティブ療法の実施も推奨されています。プロアクティブ療法は、症状が治まっても保湿を続け、さらにステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などを週2回程度使う治療法です。症状を抑えて、皮膚のよい状態をキープするのが目的です。

アトピー性皮膚炎は保険適用で診療できる?

アトピー性皮膚炎は保険適用で診療が受けられることが一般的です。診療は、保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、基本的に、皮膚になんらかの症状があり、治療の必要性があり、決められた範囲内の治療法を実施する場合は保険適用となります。

保険診療自由診療(保険外診療)
概要公的な健康保険が適用される診療保険が適用にならない診療
主な状況病気の症状があり、治療の必要性がある状況美容目的や、予防目的の場合
診察・治療内容国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査・治療医療保険各法等の給付対象とならない検査・治療
費用同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ同じ診療内容でも、医療機関によって異なる
原則1~3割負担全額自己負担

アトピー性皮膚炎の治療はクリニックフォアのオンライン診療へ

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が特徴です。よくなったり悪くなったりを繰り返すという特徴があり、慢性化することが多いため、「おかしいな?」と思ったら、早めに医療機関を受診しましょう。

クリニックフォアでは、さまざまなお悩みに対応するオンライン診療を行っており、保険診療の皮膚科では、アトピー性皮膚炎の診療にも対応しています。

湿疹やかゆみ、乾燥といった症状は、適切な治療で改善が期待できます。「アトピー性皮膚炎かも?」と悩んでいる方は、ぜひご相談ください。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。

 

 

注意 オンラインでお薬の処方ができない場合があります

以下に当てはまる場合はオンラインで処方ができません。

  • 依存性の高い向精神薬(不眠症のお薬を含みます)に分類されるお薬や麻薬は処方できません。
  • 触診・検査などが必要な場合(爪水虫など)、オンラインでは病状を把握するために必要な情報が十分に得られないと医師が判断した場合には、対面での診療をお願いする場合がございます。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会ガイドライン - アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021