そもそも湿疹とは?
湿疹とは、皮膚の表面に生じる炎症を伴う疾患のことで、強いかゆみを感じることが多いです。また、一過性のものは急性湿疹と呼びますが、放置すると慢性湿疹に移行することもあります。ここからは、湿疹の症状や特徴について詳しく見ていきましょう。
皮膚の表面に生じる炎症
湿疹とは、皮膚の表面に生じる炎症を伴う皮膚症状の総称です。症状の現れ方は多種多様で、赤みがあるもの、盛り上がっているもの、じゅくじゅくしたもの、カサカサしたもの、水ぶくれがあるものなど、さまざまです。
自己判断で誤った手当をしたり、放置したりすると、何度もぶり返したり、色素沈着を起こしたり、皮膚が厚くなったりすることもあります。
強いかゆみが特徴
湿疹は強いかゆみを伴うことが多いです。湿疹はなんらかの刺激物質が皮膚に触れたり体内に入ったりしてできることがあり、その際に、免疫機能に異常を知らせるために、「ヒスタミン」が大量に作られます。ヒスタミンはかゆみの伝達物質であり、強いかゆみを生じる原因となるものだと考えられています。
湿疹には「急性湿疹」と「慢性湿疹」がある
湿疹は「急性湿疹」と「慢性湿疹」に分けることができます。
急性湿疹は発症後間もないものを指し、一過性のものだと言えます。自然に治るケースもあり、早めに治療を開始すれば早期の治癒が期待できます。
しかし、適切な治療をしないまま放置していると、慢性湿疹に移行してしまう恐れがあります。慢性湿疹は、急性湿疹が長引いて慢性的に湿疹ができている状態を言います。症状が長期化したため、皮膚がゴワゴワしたり、ひび割れたり、かさぶたができたりすることも少なくありません。慢性湿疹になってしまうと、治療にも長い時間を要します。
湿疹ができる原因
湿疹ができる原因は「外的要因」と「内的要因」の2つに分けられます。いずれもほとんどが身近なもので、無意識のうちに接触していることも少なくありません。
また、湿疹ができる原因はかならずしも1つだけとは限りません。外的要因と内的要因が絡みあって生じることが多いです。つまり、体質やアレルギー要因などで皮膚が刺激を受けやすい状態のときに、外部からの刺激が加わることで炎症を起こし、湿疹を引き起こすということです。
主な外的要因と内的要因は以下の通りです。
外的要因
以下のような、皮膚を外部から刺激するものによって湿疹ができることがあります。
物理的な刺激によるもの
- 紫外線
- 気温の寒暖差
- 摩擦
- 下着のゴムによる締め付け
など
化学的な刺激によるもの
- シャンプーや石けん
- 洗濯洗剤
- 化粧品
など
アレルギー物質によるもの
- 花粉
- ハウスダスト
- 食べ物
- 金属
- 虫さされ
など
感染症によるもの
- カビ
- 細菌
など
内的要因
皮膚そのものや健康状態によって湿疹ができることもあります。主な原因としては、以下
のようなものがあります。
皮膚の性質によるもの
- 乾燥肌
- バリア機能の低下
- 皮脂の分泌
- 発汗
など
健康状態によるもの
- アレルギー体質
- 疲労
- ストレス
- 内臓疾患
など
湿疹の治療方法とは?
湿疹の治療には、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン内服薬が使われることが一般的です。それぞれの特徴や期待できる効果を見てみましょう。
ステロイド外用薬
湿疹には、炎症やかゆみを抑える働きがある合成副腎皮質ホルモンを配合したステロイド外用薬を使うのが一般的です。
ステロイド外用薬には「軟膏」「クリーム」「ローション」などの種類がありますが、クリームやローションはべたつきにくいというメリットがある一方で、膿んだりじゅくじゅくしていたりする場合はしみて刺激を感じやすいというデメリットもあります。軟膏は刺激を感じにくく、幅広い症状に使えるので、使用感とともに患部の状態に応じて使い分けるとよいでしょう。
また、かゆみが強くかき壊してしまっている場合などは、細菌感染を防ぐために、抗生物質を配合したステロイド外用薬が処方されることもあります。
抗ヒスタミン内服薬
ステロイド外用薬のみでは治療が難しいと考えられる場合や、患部が広範囲にわたる場合は、抗ヒスタミン内服薬を併用することもあります。
抗ヒスタミン内服薬には、かゆみを引き起こすヒスタミンを抑える作用があるため、炎症を抑えるほか、かゆみ止めとしての効果も期待できます。また、患部をかきむしって炎症を悪化させた場合の色素沈着の予防にも役立ちます。
湿疹の予防方法
湿疹を防ぐために、以下のような方法を心がけるのもよいでしょう。日常生活を振り返り、できることから始めてみましょう。
原因と考えられる刺激を避ける
湿疹の原因は、なんらかの刺激による炎症です。刺激になると思われるものはなるべく避けて生活するとよいでしょう。
たとえば、ピアスやネックレスなどを着けている方は、金属が原因かもしれません。化粧水やファンデーションなどを新しいものに変えたばかりの方は、化粧品が引き金になっていることが考えられます。まずは思い当たるものを身の回りから遠ざけて様子を見ましょう。
患部を掻かない
湿疹は強いかゆみを伴いますが、掻くと皮膚が傷ついたり、バリア機能が低下したりして、さらに湿疹が悪化してしまう恐れがあります。かゆみがつらくても、なるべく掻かないように注意してください。
どうしてもかゆみがつらい場合は、患部を冷やすのがおすすめです。炎症が起こっている皮膚には血液が集中するため、かゆみを起こすヒスタミンも多くなります。濡れタオルなどで冷やすことで、血流をおだやかにし、かゆみをやわらげられます。
肌を清潔に保つ
皮脂や汗汚れなどは皮膚に刺激を与えるものです。こまめに汗を洗い流したり、入浴したりして汚れを溜めないようにしましょう。
ただし、きれいに洗おうとゴシゴシこすってしまうと、摩擦が刺激となって湿疹を誘発するおそれがあります。洗う時は、力を入れずにやさしく洗うようにしてください。
紫外線を避け、保湿をしっかりする
紫外線は皮膚を乾燥させ、バリア機能を低下させます。バリア機能には皮膚を外部刺激から守る役割があるため、紫外線から肌を守り、乾燥させないことが大切です。
日中は日焼け止めや帽子などで隙のない紫外線対策をしてください。また、毎日のスキンケアでは、念入りな保湿ケアを忘れないようにしましょう。
湿疹の種類とよくある症状
一口で湿疹と言っても、さまざまな種類があります。最後に代表的な湿疹の種類について解説します。
接触皮膚炎(かぶれ)
接触皮膚炎はいわゆる「かぶれ」です。なんらかの刺激になるものに接触することによって、触れた部分だけに赤み、水ぶくれ、ブツブツ、ヒリヒリ、強いかゆみ、腫れ、痛みなどの症状があらわれます。
原因は人によって異なりますが、次のようなものがよく知られています。
- うるしなどの植物
- ニッケルやコバルトなどの金属
- シャンプーや化粧水などの化粧品
- ヘアカラー剤
- 湿布薬やぬり薬
- おむつ
蕁麻疹(じんましん)
突然、ぷっくりとした盛り上がりができ、かゆみを伴う湿疹の一種です。血管がふくらんで、血液中の血しょうという成分がしみ出ることで、皮膚が皮膚が盛り上がるものです。
次第に大きくなって広範囲に広がり、つながってしまうこともありますが、ほとんどの場合、数時間以内には消失します。形状は、楕円形や花びらの形、地図のような形などさまざまです。
また、じんましんには、アレルギー性のものと非アレルギー性のものがあり、アレルギー性の場合は食べ物やお薬がきっかけとなることがあります。非アレルギー性の場合は、ストレス、寝不足、疲労、下着や衣類によるこすれや摩擦、内臓の疾患などが原因として知られてます。
手湿疹
水仕事や手洗いによって手の皮膚が乾燥することから発症する湿疹です。主婦に発症する人が多いことから、「主婦湿疹」とも呼ばれていますが、薬剤を手で触ることが多い美容師や医療関係者にも多い症状です。
症状は、手指の周辺の皮膚のカサつき、ひび割れ、小さな水ぶくれ、ブツブツ、赤み、かゆみ、腫れ、痛みなどが特徴的です。
ひんぱんな手洗いや乾燥、アルコール消毒、洗浄剤、ゴムや金属との接触などが原因となっているケースが多く、症状が長期化すると、皮膚が厚くなって手全体が赤く腫れてしまうこともあります。
皮脂欠乏性湿疹
皮膚の皮脂が減少して、乾燥することから発症する湿疹です。皮脂が少ない手、顔、足、二の腕、腹部や背中などによく現れます。
とくに皮膚のうるおいが不足しがちな高齢者に多いと言われており、空気が乾燥する秋から冬にかけてやエアコンを使う季節にもかかりやすくなります。
また、かゆみを伴うことが一般的で、体が温まるとさらにかゆみが強くなる傾向があります。皮膚が粉を吹いたり、カサカサしたりするほか、炎症を起こしてひび割れてしまうケースもあり、日ごろからの保湿ケアが大切です。
脂漏性皮膚炎
もともと皮膚に存在する常在菌のバランスが崩れて、「マラセチア」というカビの一種が増殖して発症する皮膚炎です。多量のフケや赤い点状湿疹が特徴的です。フケは、ウロコ状に乾燥しているケースと、湿った黄色いフケが出るケースがあります。
皮脂が多い部分に発症しやすいため、顔や頭皮、髪の生え際、鼻の横、ほうれい線などに多くみられ、成人の場合、皮脂が多い男性に発症しやすい傾向があります。
皮脂の増加が原因で起こる皮膚炎のため、なるべく油分を避けて保湿ケアをすることが大切です。
アトピー性皮膚炎
かゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返すアレルギー性の皮膚炎です。発症すると、皮膚のかゆみや皮むけ、皮膚の肥厚、かき壊しによるジュクジュクなどがあらわれます。とくに顔や耳、首、ひじ、膝、わきの下などにできやすく、左右対称に症状が現れるのが特徴です。子どものみならず、高齢者が発症するケースも珍しくありません。
原因としては、アトピー素因や、ストレスや食べ物などの環境因子、バリア機能が低下してアレルゲンの刺激を受けやすくなっていることなどが挙げられます。
なお、アトピー性皮膚炎は、患部の面積に応じて4つの重症度に分類されます。
- 軽症:軽度の皮疹のみ(面積は問わない)
- 中等症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%未満
- 重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上、30%未満
- 最重症:強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上
汗疱(かんぽう)
手のひらや足の裏などに小さな水ぶくれがたくさんでき、赤みやかゆみをともなう湿疹です。皮膚の中に汗がたまって、かゆみをともなう小さな水ぶくれが多発し、やがて皮がむけるのが大きな特徴です。また、水ぶくれが大きくなるケースもみられます。自然に治ってもまた再発することが多いです。
原因は今のところはっきりとはわかっていませんが、多汗症や金属アレルギー、アトピー素因などが疑われています。
汗が関与する湿疹のため、汗をかきやすい季節は悪化しやすいので注意が必要です。
貨幣状湿疹
全身に貨幣(コイン)のような円形の湿疹ができます。最初はカサカサと乾燥していますが、症状が進むとジュクジュクして強いかゆみを伴います。かさぶたができたりはがれたりすることもあります。強いかゆみをともなうため、かき壊して全身に広がったり、跡が残ったりしないように注意が必要です。
また、湿疹の大きさは大小さまざまで、よくある小さな湿疹から貨幣状湿疹に移行するケースもあります。
原因は今のところはっきりとわかっていませんが、金属アレルギーや虫刺され、空気の乾燥などの影響が考えられています。
湿疹は保険適用で診療できる?
診療は、以下のように保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、湿疹は保険適用で診療が受けられることが一般的です。
保険診療 | 自由診療(保険外診療) | |
概要 | 公的な健康保険が適用される診療 | 保険が適用にならない診療 |
主な状況 | 病気の症状があり、治療の必要性がある状況 | 美容目的や、予防目的の場合 |
診察・治療内容 | 国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査・治療 | 医療保険各法等の給付対象とならない検査・治療 |
費用 | 同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ | 同じ診療内容でも、医療機関によって異なる |
原則1~3割負担 | 全額自己負担 |
湿疹の治療はクリニックフォアのオンライン保険診療へ
クリニックフォアでは、さまざまなお悩みに対応するオンライン診療を行っています。湿疹の診療は、保険診療の皮膚科で対応が可能です。
特に急性湿疹は長引くと慢性化してしまうことがあるため、早めに受診することをおすすめします。クリニックフォアのオンライン診療は診療時間も幅広く、自宅などにいながら診察を受けられるため、忙しい方でも受診しやすくなっています。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。