アレルギー性結膜炎とは
アレルギー性結膜炎はアレルギー性結膜疾患の一つです。アレルギー性結膜疾患とは、アレルギー反応を主とし、結膜(まぶたの裏側から白目を覆う粘膜)が炎症を起こす病気です。かゆみや異物感、めやに、涙といったなんらかの症状がある場合に診断されます。よりわかりやすく言えば、花粉などのアレルギーの原因物質が目に付着し、アレルギー反応が生じ、目に炎症が生じているものです。
また、原因や症状が出る時期によって、以下の2種類に分けることができます。
- 季節性アレルギー性結膜炎:特定の季節に症状が出る
- 通年性アレルギー性結膜炎:1年中症状が出る(季節や気候の変化で悪化・改善の波はある)
スギ花粉症は、春に季節性アレルギー性結膜炎を起こす代表的な疾患の一つです。
アレルギー性結膜炎の症状
アレルギー性結膜炎の代表的な症状は、かゆみ、異物感、目やに、充血などです。ここでは、症状の詳細をご紹介します。
なお、目の症状の背景には、アレルギー性結膜炎以外にもさまざまな病気があることが考えられます。自己判断は難しいため、気になる症状がある場合は早めに受診したほうがよいでしょう。
かゆみ・異物感
アレルギー性結膜炎の特徴的な症状の一つがかゆみです。かゆみの代わりに異物感を感じるケースもあります。
かゆみも異物感も、原因はアレルギー反応によって放出されたヒスタミンという物質です。アレルギー性結膜炎のメカニズムの詳細は後述しますが、ヒスタミンが神経や血管を刺激することで、かゆみなどの症状が出るとされています。
目やに
目やには、涙に含まれる成分に目の細胞などが含まれるもので、健康な人でも目やには出ます。しかし、アレルギー性結膜炎の場合は、糸を引くような粘りのある目やにが、日中でも多量に出るなど、普段の目やにとは状態や出方が異なります。
上記のような特徴があり、白や半透明の目やにが1ヶ月以上続く場合は、アレルギー性結膜炎の可能性があります。
なお、異常の原因によって、目やにの様子も異なります。普段と違う目やにが出る場合は、重大な病気が隠れていることもあるため注意しましょう。
充血
充血もよくある症状です。充血は、目の表面の血管が広がることが原因です。充血は大きく以下の2種類に分けることができ、アレルギー性結膜炎の場合は結膜充血が生じることがあります。
- 結膜充血:まぶたの裏や白目の周辺部分が赤くなる
- 毛様充血:青紫色がかった充血で、黒目の周囲に発生し、まぶたの裏は充血しない
出血(目が真っ赤になる)
充血ではなく、白目がべったりと真っ赤になる場合は、目の表面の血管から出血が起きている可能性が高いです。出血は、アレルギー性結膜炎にも合併することがあります。見た目には驚きがあるかもしれませんが、出血による痛みはありません。
結膜浮腫・結膜腫脹(まぶたの際や白目がぶよぶよになる)
結膜浮腫や結膜腫脹とは、簡単に言えば、結膜が腫れてぶよぶよとして見えるものです。
結膜浮腫は白目部分によく見られるもので、広がった血管から血しょう成分がもれることで生じるとされています。アレルギー性結膜炎など、アレルギー反応が起きているときの特徴的な症状です。
結膜腫脹はまぶたによく見られるもので、まぶた結膜の炎症や、結膜の血管、リンパ管の循環が悪くなったことで生じるとされています。
アレルギー性結膜炎の原因・メカニズム
アレルギー性結膜炎は、文字通りアレルギー反応が背景に存在します。アレルギーにもいくつか種類がありますが、アレルギー性結膜炎の原因は、I型アレルギー(即時型アレルギー)です。
アレルギーの原因物質(アレルゲン)が目に入ると、その物質に対する抗体(特異的IgE抗体)がつくられ、肥満細胞(マスト細胞)という細胞とくっつきます。そこに再度同じアレルゲンが入ってくると、つくられていたIgE抗体と反応し、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されます。ヒスタミンが目の知覚神経や血管などを刺激すると炎症が生じ、かゆみや充血などの症状が現れるのです。
本来は異物から体を守るはずの免疫反応が、敏感になりすぎることで、このようなアレルギーが引き起こされます。
なお、アレルギー性結膜炎になる人とならない人がいるのは、同じ物質が目に入っても、IgE抗体が作られなかったり、IgE抗体が作られても発症しなかったりする人がいるためです。
代表的なアレルゲン
アレルギー性結膜炎の発症につながる原因物質(アレルゲン)には、以下のようなものがあります。
- ダニ
- ハウスダスト(ほこりにダニやカビ、虫などが混ざっている)
- コンタクトの汚れ
- 花粉(スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカバなど)など
なお、花粉は種類と地域によって飛散時期が異なるため、症状が出る時期も異なります。花粉と言えば春というイメージもあるかもしれませんが、カモガヤやブタクサのように夏に飛散する花粉もあります。
アレルギー性結膜炎の治療法
アレルギー性結膜炎の治療では、症状を緩和する目的で主にお薬を使います。お薬の選び方は、おおむね以下のようになります。
状況・選び方 | 使用するお薬の例 |
第一選択薬 | 抗アレルギー点眼薬 |
抗アレルギー点眼薬では不十分な場合 | ・点眼薬の種類を変更する ・ステロイド点眼薬やNSAIDs点眼薬の併用 ・点眼薬以外のステロイド |
アレルギー性鼻炎を併発している場合 | 抗アレルギー内服薬 |
それぞれのお薬の詳細と、予防目的で行う初期療法については以下の通りです。
抗アレルギー薬
まず使うことが多いものが抗アレルギー点眼薬で、以下のような種類があります。いずれも副作用の心配がほとんどないお薬ですが、症状が強い場合は効果が期待できないことがあります。
- ケミカルメディエーター遊離抑制薬:肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されないようにする
- ヒスタミンH1受容体拮抗薬:ヒスタミンが結合するH1受容体をブロックし、ヒスタミンによる症状が出ないようにする
また、それだけでは効果が不十分な場合や、アレルギー性鼻炎を併発している場合は、抗アレルギー内服薬を使うこともあります。
NSAIDs点眼薬
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は解熱鎮痛剤の一種として知られているもので、炎症を鎮める作用もあります。代表的な成分にはイブプロフェンやロキソプロフェンナトリウム水和物などがあります。
アレルギー性結膜炎においては、抗アレルギー点眼薬では効果が不十分な場合に、NSAIDs点眼薬を使うことがあります。目の炎症を鎮め、症状緩和が期待できます。
ステロイド薬
ステロイド薬は、合成副腎皮質ホルモン(ステロイド)を配合したお薬です。抗炎症作用によって目の症状の改善が期待できます。
ステロイド薬には、目薬、眼軟膏、内服薬、注射があり、抗アレルギー点眼薬の効果が得られないときには、ステロイド点眼薬を使うことがあります。目薬が使えない場合は、まぶたの裏に塗る眼軟膏も選択肢の一つです。
ただし、目薬や軟膏には、眼圧が高くなる、感染症や白内障の誘発といった副作用の懸念があります。副作用を避けるためにも、使い方や診察を受ける頻度などについて、医師の指示に従いましょう。
初期療法
花粉などが原因となる季節性アレルギー性結膜炎の場合は、初期療法という治療ができるケースがあります。
これは、花粉飛散時期の少し前から抗アレルギー点眼薬を使う予防法です。こうすることで、花粉の飛散が増えても症状が軽かったり、症状が出る期間が短くなったりする効果が期待できます。
スギ花粉が原因の場合は、1月中には一度受診してみるとよいでしょう。
アレルギー性結膜炎の対処法
アレルギー性結膜炎が疑われる症状がある場合は、まず医療機関を受診し、適切な診断や、必要に応じて上記のような治療を受けましょう。
また、症状があるときや、アレルゲンが目に入ったと感じる場合は、目を洗ってアレルゲンを洗い流すことも有効です。その際、水道水を使うのは避けましょう。アカントアメーバーという寄生虫が感染するリスクや、水道水に含まれるカルキが目に悪影響を及ぼすリスクなどがあるためです。
代わりに防腐剤不使用の人工涙液を選びましょう。市販されているものもあります。防腐剤配合のものを1日に何度も使っていると、目の細胞が傷つく恐れがあるため注意しましょう。なお、より清潔に使いたい場合は、使い捨てタイプのものを選ぶのも一つの方法です。
アレルギー性結膜炎の予防法
アレルギー性結膜炎の予防や改善のためには、アレルゲンに触れないように対策することが大事です。日常生活の中で、以下のような点に注意しましょう。
ダニ・ハウスダスト対策①室内の環境を整える
ダニの破片や排泄物によってアレルギー性結膜炎が生じている場合は、ダニの増殖を抑える、殺す、除去することが大事です。部屋の中はこまめに掃除しましょう。ダニやハウスダスト除去のためには、週に2回は掃除機をかけ、1㎡あたり20秒以上の時間をかけるとよいとされています。ほこりが溜まっている場所は、舞い上がらないように濡れたもので拭くことも有効です。
さらに、ダニがいなくなるとされる20℃以下、湿度50%以下上の環境を維持し、通気性も良くなるようにしましょう。空気清浄機も使うことをおすすめします。
なお、そもそも、ダニやハウスダストがつきやすいじゅうたん、ぬいぐるみ、布製のソファーなどを使わないことも方法の一つです。
ダニ対策②寝具を清潔に保つ
晴れの日は、ダニの増殖を抑えるために、寝具を天日干ししましょう。天日干し後は掃除機をかけて、ダニを除去することがポイントです。
また、天日干しできない場合は、週に1回は寝具に掃除機をかけることをおすすめします。
防ダニカバーなどもあるので、使用を検討するのもよいでしょう。
花粉対策①花粉が多いときの外出を避ける
症状の原因となる花粉の飛散時期はこまめにチェックし、飛散量が多くなるタイミングでの外出を避けましょう。
1日の中でも、特に昼過ぎ頃は花粉の飛散が多いとされているため、外出は朝方や夕方以降にずらすのもおすすめです。
花粉対策②外出時の服装に注意する
花粉飛散時期に外出する場合は、メガネやマスクをつけることで、目や鼻から花粉が入ることが防げます。可能であれば、ゴーグル型のメガネのほうが高い効果が期待できます。
また、コートやスカーフ、帽子などを着用し、直接花粉にさらされないようにしましょう。ただし、ウールなどの毛羽だった素材の服には花粉がくっつきやすいです。できればつるっとした素材の衣服で出かけましょう。
花粉対策③帰宅後の行動に注意する
外出時についた花粉を室内に持ち込まないことも大事です。コート、スカーフ、帽子、髪などには花粉がついているので、玄関の前で脱いだり、花粉を払ったりしましょう。できるだけ花粉の付着が少ない状態で室内に入ることができます。
顔などにも花粉がついている可能性が高いため、手洗いうがいはもちろん、洗顔や鼻をかんだりして、早めに花粉を除去しましょう。人工涙液を使って目を洗うとよりよいでしょう。
花粉対策④室内に花粉を入れないようにする
花粉の飛散が多い日は、窓を閉め、布団を外に干さないようにしましょう。掃除機でこまめに掃除するほか、花粉対応の空気清浄機を使うのもおすすめです。
洗濯物や布団を干した場合は、花粉を払ってから室内に取り込みましょう。
アレルギー性結膜炎に関するQ&A
ここで、アレルギー性結膜炎にあるよくある質問にお答えします。
アレルギー性結膜炎はうつる?
アレルギー性結膜炎はアレルギー反応によるものなので、人にうつしたり、うつされたりすることはありません。
ただし、結膜炎には、ウイルス性結膜炎、細菌性結膜炎もあります。また、クラミジア結膜炎といって、性感染症で結膜炎になることもあります。これらはうつることがあり、中には登校や出勤が禁止となるものもあります。
そして、症状から原因を見分けることは難しいです。そのため、結膜炎の症状があるときは、目をこすったら手を洗う、手でこすらずにティッシュを使ってすぐに捨てるなどの対策をし、早めに医療機関を受診しましょう。
コンタクトをつけていてもよい?
症状があるときは、コンタクトは使わないほうがよいです。まぶたの裏とコンタクトの摩擦で炎症が悪化することがあるためです。
症状が和らいできて、どうしてもコンタクトをつけたい場合は、つける前と外した後に抗アレルギー点眼薬をさすとよいでしょう。また、装着時には人工涙液を多めにさすと、コンタクトの汚れが除去しやすくなります。使用量や回数は、お薬の説明書をよく確認しましょう。
なお、コンタクトからメガネに替えることで、症状の悪化予防ができるだけでなく、花粉などのアレルゲンの侵入を防ぐこともできます。
コンタクトをつけたまま目薬をさしてもよい?
目薬の中には、コンタクトの変色・変質の原因となる成分が入っているものもあります。そのため、目薬をさすときはコンタクトを外しましょう。
プールに入ることはできる?
アレルギー性結膜炎の場合はプールに入っても問題がないことが多いです。ただ、プールの水は目にとって刺激になるため、ゴーグルをつけたほうがよいでしょう。プールから出たら顔を洗い、目はできれば人工涙液で洗いましょう。
なお、先述の通り、感染性の結膜炎も存在します。その場合はプールに入れないので、自己判断せず、早めに診断を受けましょう。
アレルギー性結膜炎に似ている疾患
最後に、アレルギー性結膜炎に似ている疾患を紹介します。代表的なものが、アレルギー性結膜疾患です。アレルギー性結膜炎も、アレルギー性結膜疾患の一種です。
種類 | 定義 | 特徴・症状など |
アトピー性角結膜炎 | 顔にアトピー性皮膚炎の症状を伴う、慢性的なアレルギー性結膜疾患 | ・角膜のにごり、血管が新たにできる ・結膜の線維化 ・慢性的なかゆみ、目やに |
春季カタル | 増殖性の変化(まぶたの裏のぼつぼつなど)が特徴的 | ・角膜のただれなど、さまざまな角膜の症状が現れる ・春に症状が出て、秋以降治まることが多い ・幼少期の男の子に多い ・成長するにつれて症状がなくなっていく ・主な原因はハウスダストやダニ |
巨大乳頭結膜炎 | 異物による刺激で結膜が炎症し、まぶたの裏に増殖性の変化(ぼつぼつなど)が生じる | コンタクトレンズ、目の手術で使用した糸、義眼などが刺激の原因となりえる |
その他に、細菌性結膜炎やウイルス性結膜炎もあります。原因がアレルギーではないものの、結膜の炎症自体は同じなので、症状も似ています。
アレルギー性結膜炎の見分け方
結論から言うと、アレルギー性結膜炎と、他の病気を見分けることは難しいです。目に何らかの症状があれば、必ず医療機関を受診して正しい診断を受けましょう。
ただ、アレルギー性結膜炎と他の病気で違いが出やすい症状もあるため、参考までに簡単に紹介します。
まぶたの裏にぼつぼつはない
アレルギー性結膜炎は定義上、まぶたの裏にぼつぼつがないものだとされています。ぼつぼつがある場合は、他のアレルギー性結膜疾患の可能性があるということです。
ただし、春季カタルはアレルギー性結膜炎の重症例でもあり、やはり自己判断は難しいです。
目やにの状態
アレルギー性結膜炎の場合、目やには白や半透明のことが多いです。
黄白色で、ドロッとしたりネバネバしたりしている場合は細菌(黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌など)やカビが原因となっている可能性が高いです。また、性感染症の一種である淋菌の感染では、膿のように大量の目やにが出ることが多いです。
一方、ウイルスが原因のときはサラッとした透明の目やにが出る傾向があります。
症状が片目だけか両目か
アレルギー性結膜炎はアレルギーが原因なので、通常は両目に同様の症状が出ます。一方で、細菌や真菌が原因の場合は片目にだけ症状が出ることがあります。しかし、ウイルスが原因の場合も両目に症状が出るため、症状が出る場所だけでアレルギー性結膜炎と見分けることは難しいです
アレルギー性結膜炎は保険適用で診療できる?
アレルギー性結膜炎は保険適用で診療が受けられることが一般的です。診療は、保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、基本的に、目のかゆみなどの症状があり、治療の必要性があり、決められた範囲内の治療法を実施する場合は保険適用となります。
保険診療 | 自由診療(保険外診療) | |
概要 | 公的な健康保険が適用される診療 | 保険が適用にならない診療 |
主な状況 | 病気の症状があり、治療の必要性がある状況 | 美容目的や、予防目的の場合 |
診察・治療内容 | 国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査、治療 | 医療保険各法等の給付対象とならない検査、治療 |
費用 | 同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ | 同じ診療内容でも、医療機関によって異なる |
原則1~3割負担 | 全額自己負担 |
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「花粉の時期の外出は避けたい」「症状がつらくて外出ができない」といった場合でも、オンライン診療なので、受診しやすくなっています。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。