急性上気道炎とは?
急性上気道炎とは、いわゆる「風邪」のことです。喉や鼻などに炎症が起こる疾患で、呼吸器疾患としてはごく一般的なものです。
その症状は多岐にわたり、鼻から喉にかけての気道のほか、全身症状があらわれることもあります。
多くはウイルス感染から発症しますが、原因となるウイルスには多くの種類があります。
急性上気道炎の症状
急性上気道炎の主な症状は、以下の通りです。
- のどの痛み
- 鼻水
- 鼻づまり
- くしゃみ
また、以下のような症状を伴うこともあります。
- 発熱
- 頭痛
- 倦怠感
- 咳
- たん
- 声のかすれ
- 関節痛
- 筋肉痛
部位により3つに細分化できる
急性上気道炎は、感染した部位によってさらに細かく分類することができます。詳細は以下の通りです。
急性鼻炎
鼻の粘膜にウイルスなどが感染して起こる炎症です。主な症状は以下の通りです。
- 鼻が乾燥してヒリヒリする
- 鼻に違和感がある
- 鼻の粘膜が痛い
- 発熱がある
- 鼻水が出る
- 鼻が詰まる
- くしゃみが出る
急性咽頭炎
咽頭とは、いわゆる「のど」のことです。のどの粘膜やリンパ組織などが感染して起こる炎症を急性咽頭炎といいます。主な症状は以下の通りです。
- のどがヒリヒリする
- のどに違和感がある
- のどが痛い
- 耳が痛い
- 発熱がある
- 痰が出る
- 咳が出る
- 飲み込む時に痛みがある
急性喉頭炎
喉頭とは、いわゆる「のどぼとけ」と呼ばれる部位のことです。声を出すのに欠かせない器官で、喉頭の粘膜がウイルスなどに感染して起こる炎症を急性喉頭炎といいます。主な症状は以下の通りです。
- 声がかすれる
- 声が出にくい
- 発熱がある
- のどがヒリヒリする
- のどに違和感がある
- のどが痛い
- 痰が出る
- 咳が出る
急性上気道炎の原因
急性上気道炎の原因となるウイルスや細菌にはさまざな種類があります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
主な原因はウイルス
もっとも一般的な原因はウイルスです。急性上気道炎の80~90%はウイルス感染によるものといわれており、鼻やのどからウイルスが侵入することで感染します。
原因となるウイルスの種類は多様ですが、主なウイルスは次の通りです。
- RSウイルス
- アデノウイルス
- コロナウイルス
- ライノウイルス
- パラインフルエンザウイルス
細菌感染の場合も
急性上気道炎は、細菌感染によって発症する場合もあります。細菌の種類もさまざまですが、主なものは次の通りです。
- 溶連菌
- マイコプラズマ
- クラミジア
主に飛沫感染や接触感染から感染
急性上気道炎におけるウイルスや細菌の感染経路は、飛沫感染や接触感染です。感染を避けるには、人混みを避け、マスクを着用したりこまめに手洗いをしたりすることが有効です。
年間を通して感染の可能性がありますが、空気が乾燥する秋から冬にかけてはとくに感染のリスクが高まります。
性的接触が原因となることもある
細菌による急性上気道炎のひとつに、クラミジア・トラコマティスという菌が原因のものもあります。
クラミジア感染症は性行為による感染症として知られていますが、オーラルセックスによって病原菌がのどの粘膜に感染すると、のどの痛みやリンパ節の腫れなどを引き起こすことがあります。
扁桃炎や咽頭炎が長引く場合は、クラミジア感染症の可能性も考えられます。クラミジアによる咽頭炎は抗生物質の飲み薬で治療を行いますが、性器感染に比べると治療に時間がかかる傾向があります。
急性上気道炎に治療は必要?
急性上気道炎にかかっても、ウイルス性であれば自宅療養で回復するケースが多いです。そもそも、急性上気道炎の原因となるウイルスに対応できる抗ウイルス薬はほとんどありません。つまり、お薬で急性上気道炎を治すことはほぼ不可能と言えます。
ただし、熱が高いときには解熱剤、咳がひどいときには咳止め、といった具合に、対症療法で症状をやわらげる選択肢はあります。
市販の風邪薬を服用する
急性上気道炎のお薬は、市販されているものも多いです。よくあるのが総合かぜ薬(総合感冒薬)といって、複数の成分が配合され、さまざまな症状に効果が期待できるお薬です。
個別の症状にアプローチするお薬もあります(詳細は後述します)。その他に、ビタミン剤や漢方薬も選択肢となります。
市販薬を使いたい場合は、自己判断で選ぶのではなく、薬剤師もしくは登録販売者に相談して選んでもらうとよいでしょう。
医療機関を受診する
医療機関で急性上気道炎と診断された場合も、個別の症状にアプローチするお薬が処方されることが多いです。また、細菌感染が疑われる場合は、抗菌薬が投与されるケースもあります。
なお、軽症であれば自宅療養で治癒が見込めますが、39℃以上の発熱があったり、つらい症状が4日以上続く場合は、医療機関を受診する目安となります。インフルエンザや、その他の重大な病気が背景に存在する恐れがあるためです。
【受診したほうがよいと思われる症状】
- 39℃以上の発熱がある
- 鼻汁が黄色や緑色に濁っている
- 咳がはげしい
- のどにはげしい痛みや腫れがある
- 熱が38℃以上で、他にも2つ以上の症状がある
急性上気道炎に使うお薬
前述の通り、一般的な風邪に対して有効な抗ウイルス薬のようなお薬はほとんどありません。しかし、症状を和らげるためのお薬にはさまざまなものがあります。お薬の詳細は以下の通りです。
熱を下げるお薬
風邪のときによく使うお薬が、熱を下げる「解熱鎮痛剤」です。熱を下げるだけでなく、のどや関節の痛みを緩和したり、鼻症状にも効果が期待できたりします。
解熱鎮痛剤は、痛みや炎症などの原因となるプロスタグランジンという物質を抑えることで、熱、痛みの緩和をするものが多いです。代表的な成分には以下のようなものがあり、市販薬も数多くあります。
分類 | 成分 | お薬の例 | 特徴・注意点 |
アセトアミノフェン | カロナール | ・効果はマイルド ・副作用の心配が少ない ・妊婦や15歳未満の子供でも使えるものが多い | |
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) | イブプロフェン | ブルフェン | ・胃腸に関する副作用のリスクがある ・妊婦や15歳未満は使えないものが多い ・インフルエンザが疑われる場合は自己判断で使わない |
ロキソプロフェン | ロキソニン | ||
アスピリン(アセチルサリチル酸) | バイアスピリン |
のどの症状を和らげるお薬
咳など、のどの症状がある場合は、医療機関でも以下のような症状を和らげるお薬が処方されることが多いです。市販されているものも多くあります。
分類 | 成分の例 | 効果 |
鎮咳薬 | ・ジヒドロコデインリン酸塩 ・デキストロメトルファン臭化水素酸塩 ・dl-メチルエフェドリン塩酸塩 | 咳を緩和する |
去痰薬 | ・アンブロキソール塩酸塩 ・カルボシステイン・グアイフェネシン ・ブロムヘキシン塩酸塩 | 痰を緩和する |
抗炎症薬 | トラネキサム酸 | のどの痛み、はれを緩和する |
鼻の症状を和らげるお薬
鼻の症状がひどい場合は、鼻の症状を和らげるお薬も選択肢となります。たとえば、以下のようなお薬が挙げられます。
分類 | 成分の例 | 効果 |
抗ヒスタミン薬 | d−クロルフェニラミンマレイン酸塩 | くしゃみ、鼻水、鼻づまりを緩和する |
抗コリン薬 | ヨウ化イソプロパミド | 鼻水を緩和する |
総合風邪薬(総合感冒薬)
ここまでに紹介した成分を複数配合したものが総合風邪薬(総合感冒薬)です。市販薬で風邪薬と言えば、総合風邪薬を指すことが多いです。
急性上気道炎のセルフケア
ウイルス性の急性上気道炎は、適切なセルフケアを行えば、自然治癒することがほとんどです。以下のように、安静や栄養補給、水分補給をしっかりと行いましょう。
安静にする
急性上気道炎は、自らの免疫機能によって自然治癒することがほとんどです。布団で横になり、十分に体を休めて、免疫力を高めましょう。
水分補給をしっかりする
発熱して汗をたくさんかいた、という経験がある方は多いと思いますが、汗には熱を排出し、体温を正常に保つ役割があります。熱が出たときは、脱水を防ぐためにも、水分摂取を心がけましょう。
栄養補給をしっかりする
ウイルスへの抵抗力を高めるには、しっかりと栄養を摂取することが大切です。とくに大切なのはビタミン類。ビタミンC、D、Eは免疫機能を高め、ウイルスの増殖を防ぐ効果が期待できます。
なお、高熱がある時は、できればエネルギーと良質のたんぱく質を補充できるおかゆやうどんなどを食べるのが理想ですが、どうしても食欲がない場合は、無理に食べなくてもよいでしょう。かわりに、水分とナトリウムなどを補充できる経口補水液を用いると脱水予防ができます。経口補水液がないときは、スポーツドリンクでも代用できます。
室温湿度を調節する
急性上気道炎の原因となるウイルスは、低温と乾燥した環境下で増殖します。まずは室温を20~25℃に保って、ウイルスが苦手な環境を作りましょう。また、空気が乾燥していると鼻やのどにウイルスが侵入しやすくなるので要注意です。加湿をして湿度50~60%をキープするとよいでしょう。
急性上気道炎の予防方法とは?
急性上気道炎は、日常生活で気を付けることで予防も可能です。ここでは、予防のポイントをご紹介します。
手洗い
急性上気道炎の原因となるウイルスは、手から鼻や口に侵入することがあります。洗い残しの多い指の間や爪の間、手の甲なども、石けんを使ってしっかりと洗いましょう。
洗い終わったら、十分にすすぎます。ペーパータオルなどで水分をふき取った後に、アルコール消毒液をすりこむとより安心です。
うがい
うがいは、口からウイルスが侵入するのを防ぐのに効果的です。うがいをした場合としない場合を比べると、うがいをした方が感染症の発症率が40%減少するという研究結果もあります。
なお、うがいをするときは、清潔なコップを使うようにしてください。うがい薬を使わなくても、水だけでも十分効果が期待できます。
最初は口の中をすすぎますが、このとき注意したいのは、上を向かないことです。口内に細菌がある状態で上を向くと、のどに細菌が運ばれてしまうおそれがあります。かならず口内をすすいでから、新しい水でうがいをしてください。
(参考)水うがいで風邪発症が4割減少|京都大学環境安全保健機構
https://www.hoken.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2015/03/gargle2007.pdf
マスクの着用
ウイルスはマスクの穴より小さいため、マスクでウイルスの侵入を完全に防ぐことはできません。しかし、マスクを着用していれば、咳やくしゃみによるウイルスを含む飛沫を吸い込んでしまうリスクを減らせます。
また、空気が乾燥する秋から冬は、のどの乾燥にも注意したいものです。マスクは乾燥予防としても有用なので、日常的に着用するのもおすすめです。
規則正しい生活
不規則な生活をしていると、疲労がたまって体力を消耗し、免疫力が下がることがあります。そのため、普段からしっかりと睡眠をとり、栄養バランスのとれた食事を摂る習慣を身につけましょう。
季節ごとの風邪の特徴
急性上気道炎、いわゆる風邪は、季節によって原因が異なる傾向があります。季節特有の体調の変化もあるため、時期に合わせた健康管理をしましょう。
春の風邪
寒暖差が激しいため、自律神経の乱れから体調を崩しやすい季節です。また、最近ではRSウイルスの感染が春から増えていくことが多いとされています。
さらに、この季節特有の症状として、花粉症が増えることも注意したいところです。急性上気道炎と花粉症は症状が似ているところもあるので、1週間以上つらい鼻症状が続くようなら、花粉症を疑ってみてもいいでしょう。
夏の風邪
食欲が落ちて体力や免疫力が低下しやすい季節です。「夏風邪は治りにくい」といわれるのも、体力が消耗しやすい時期だからです。
春に感染者が増え始めるRSウイルスは、夏も引き続き活動的で、最近では夏が感染のピークとなることが多いとされています。また、特に子どもでは、アデノウイルスが原因となる咽頭結膜熱が流行する時期でもあります。咽頭結膜熱は、以前はプール熱とも呼ばれていたもので、咽頭炎や発熱の他、目の症状も出ることがある病気です。
一般的に、風邪を引き起こすウイルスは低温・乾燥を好みますが、夏風邪を引き起こすウイルスは高温・多湿を好みます。ウイルスが活動的になり、体外に排出されるまで時間がかかるため、長引きやすい傾向があります。
秋の風邪
秋になると、急激に肌寒くなってきます。夏の暑さで免疫力が低下した体は、温度変化に適応しきれずに、自律神経の乱れから体調を崩しやすくなります。
また、インフルエンザ感染もちらほらみられます。鼻水、発熱、全身倦怠感などの諸症状は一般的な風邪の症状ですが、まれにインフルエンザに感染しているケースもあるため、注意が必要でしょう。
さらに、寒くなって空気が乾燥しやすくなる季節でもあります。のどが乾燥して、痛みを感じる方は珍しくありません。口呼吸になっている方は、のどに直接ウイルスが触れるため、とくに注意が必要です。
冬の風邪
冬はインフルエンザが流行する季節です。風邪との区別がつきにくいかもしれませんが、症状には大きな違いがあります。
風邪は高熱が出にくく、高くても38℃を超えることはほとんどありません。初期には微熱や鼻水、くしゃみといった症状が出ますが、市販薬で緩和したり、安静にして過ごしたりすれば、数日程度で軽快します。
一方、インフルエンザは、突然38℃以上の高熱が出ます。初期には寒気や関節痛、倦怠感といった症状が現れることも多いです。市販薬では緩和が難しいため、医療機関の受診が必要です。
急性上気道炎は保険適用で診療できる?
診療は、以下のように保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、急性上気道炎のような症状があるときは、保険適用で診療が受けられることが一般的です。
保険診療 | 自由診療(保険外診療) | |
概要 | 公的な健康保険が適用される診療 | 保険が適用にならない診療 |
主な状況 | 病気の症状があり、治療の必要性がある状況 | 美容目的や、予防目的の場合 |
診察・治療内容 | 国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査、治療 | 医療保険各法等の給付対象とならない検査、治療 |
費用 | 同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ | 同じ診療内容でも、医療機関によって異なる |
原則1~3割負担 | 全額自己負担 |
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ただの風邪だと思っていても、実は別の感染症だったり、風邪をこじらせて重症化してしまったりすることもあります。そのため、症状が重い、または長く続くような場合は特に早めに受診をご検討ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。