咳・喉の痛みの原因は?つらい症状を抑える薬や予防法も紹介

風邪を引いたときに、咳込んだり喉が痛くなったりした経験は誰にでもあるでしょう。よくあることだからと見過ごしてしまいがちですが、咳や喉の痛みは思わぬ病気の可能性もあります。

今回は、咳やのどの痛みの原因や、考えられる病気、治療方法などを詳しく解説します。

咳や喉の痛みが起こる理由

咳や喉の痛みはなぜ起こるのでしょうか?まずは仕組みを見ていきましょう。

咳は異物を体外へ排除する働き

咳が起きる理由として、まず挙げられるのが人体に備わった防御機能です。

気道は常に外界とつながっています。そのため、空気を取り込むだけでなく、細菌やウィルス、花粉やホコリといった異物が入り込むリスクがあります。

咳はこうした異物から防御するために人体に備わった機能です。気道内の異物を排除し、侵入してくるのを防ぐ働きがあります。

また、気道の炎症や外的刺激によって、咳中枢が刺激されることも原因です。このタイプの咳は、防御機能とは別物とされていますが、刺激物を外部へ排出しようとする働きであることに変わりはありません。

喉の痛みは炎症によるもの

喉の痛みは、炎症によって神経が刺激されることで起こります。炎症を起こした気道の表面は敏感になっているため、唾を飲み込むなどちょっとした刺激でも痛みを感じるのです。

一口に炎症といっても、喉の粘膜が腫れる、扁桃腺が腫れるなど、場所や原因によって痛み方や症状(熱の有無など)が異なるため、適切な治療が必要です。悪化すると激しい痛みや呼吸困難につながる恐れもあります。

咳・喉の痛みの原因

ここでは、咳や喉の痛みを引き起こす主な原因を3つ紹介します。ただし、原因がほかにある可能性も考えられます。夜眠れないほどの咳や喉の痛み、長引く咳があるときは早めに医療機関を受診しましょう。

ウイルスや細菌の感染

急性(出始めから3週間以内に治まるもの)に分類される咳のほとんどは、風邪症候群(いわゆる風邪)が原因とされています。風邪は、気道のうち、上気道(鼻から気管の入り口まで)の炎症による症状の総称であり、咳や喉の痛みが代表的な症状です。

風邪の原因の80~90%はウイルス由来です。主なものにライノウイルス、アデノウイルスなどがあります。近年、猛威をふるっているコロナウイルスも原因の一つです。

ウイルス以外の原因としては、一般細菌や肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラなどの細菌類が挙げられます。

アレルギー

3週間以上続く慢性的な咳は、アレルギーの可能性があります。ハウスダストや花粉などのアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が入り込むことでアレルギー反応が起こり、咳が出るのです。

特に花粉症の方は、特定の野菜や果物を食べると口の中や喉にアレルギー症状が現れることがあり、咳だけでなく、喉の痛みや違和感、口腔内の腫れなどが生じることもあります。

喉の酷使や過剰な刺激

カラオケやライブ、スポーツの試合の応援などで大声を出すと、咳が出たり喉が痛くなったりすることがあります。また、からいものや熱いものを食べて咳が止まらなくなった経験がある方もいるでしょう。

これらは外部からの物理的な刺激によって喉がダメージを受けたり、炎症を起こしたりすることで起こります。多くは一時的なものですが、痛みが強いときや症状が続くときは医師の診察を受けましょう。

また、乾燥や大気汚染、冷たい空気といった外的な要因でも、咳や喉の痛み、喉の違和感が表れることがあります。空気清浄機を使ったり、マスクをつけたりすることである程度防げるため、乾燥や空気の汚れが気になるときは活用するとよいでしょう。

咳や喉の痛みを伴う主な病気

咳や喉の痛みはさまざまな病気によってで現れる症状でもあります。主なものを見ていきましょう。

代表的な病気は「風邪」

咳や喉の痛みを引き起こす病気として、最も多く見られるのが風邪です。ほとんどの場合、安静、水分・栄養補給で自然によくなります。喉の痛みは比較的初期に現れ、炎症が下気道(気管、気管支、肺)にまで及ぶと咳(多くは痰を伴う)が出て来ることが一般的です。

また、急性気管支炎や急性咽頭炎を伴うと、喉の痛みが強い傾向があります。急性気管支炎は、気管(空気の通り道)と気管から枝分かれする気管支に炎症が起きる疾患です。急性咽頭炎は咽頭(喉の奥)の炎症です。

舌の付け根の両側にある口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)は、ウイルスや細菌から喉を守っています。しかし、風邪や疲労、睡眠不足などで抵抗力が落ちていると、口蓋扁桃そのものが炎症を起こす急性扁桃炎になることがあります。喉の痛みだけでなく、発熱や倦怠感を伴うのが特徴です。

咳だけが止まらないときは「咳喘息」かも

激しい咳や息苦しさを伴う病気として、気管支喘息(いわゆる喘息)があります。気道が炎症によって狭くなり、呼吸の度に喘鳴(ヒューヒュー、ゼイゼイという音)が生じるのが特徴です。

しかし、喘鳴がなく、乾いた咳だけが続くときは咳喘息の可能性があります。咳喘息の約30%が気管支喘息に移行するとされているため、早めの治療が必要です。

なお、気管支喘息や咳喘息の場合、通常の咳止めや風邪薬では効果がなく、気管支拡張薬のみが有効とされています。

その他

咳や喉の痛みを伴う疾患として最も多いのは風邪ですが、軽く考えて放置するのは禁物です。咳や喉の痛みを引き起こす病気にはさまざまなものがあるためです。

咳が続く場合は、咳喘息のほか、肺炎や結核、百日咳(百日咳ウィルスによる急性気道感染症)などの病気や心不全、逆流性食道炎(胃酸など胃の内容物が逆流することで起こる食道の炎症)など、一見咳とは関係がなさそうな病気であるケースもあります。また、肺がんや咽頭がんといった重大な病気の可能性もゼロではありません。

そのため、咳や喉の痛みが長引くときは、必ず医療機関を受診しましょう。特に痛みが激しいときや、違和感があるときなどは注意が必要です。

咳や喉の痛みに効果が期待できるお薬は?

喉の痛みを抑えるお薬にはさまざまな種類があります。咳を抑えるものや、喉の痛みを緩和するもの、炎症の原因が細菌と考えられる場合には抗菌薬など、症状に合わせて適切なお薬を選ぶことが大切です。ドラッグストアで購入できる市販薬もありますが、しばらく飲んでも症状が改善しないときは医師や薬剤師に相談しましょう。

鎮咳薬(咳止め)

つらい咳を抑えるお薬には、脳の咳中枢に作用する中枢性鎮咳薬と、気道や気管支などの末梢部に作用する末梢性鎮咳薬があります。

中枢性鎮咳薬

中枢性鎮咳薬には麻薬性と非麻薬性があります。麻薬性のお薬は長期にわたって使用すると薬物依存を生じる恐れがあるため、医師や薬剤師の指示に従って服用することが大切です。また、授乳中の方は基本的に使用できません。妊婦や妊娠の可能性がある方に対しては、医師が危険性より有効性が上回ると判断した場合にのみ処方されます。

分類有効成分剤形注意点など
麻薬性コデインリン酸塩水和物錠剤、粉薬など・連用により薬物依存を生じる恐れがある・眠気やめまいが起こることがある・12歳未満の小児には使用不可
ジヒドロコデインリン酸塩粉薬など
非麻薬性デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠剤、粉薬など・眠気をもよおすことがある・子どもが使う場合は特によく説明書などを確認する(小児等を対象とした臨床試験が未実施であるため)
ジメモルファンリン酸塩錠剤、粉薬、シロップなど・咳を鎮める効果は麻薬性に及ばないが、耐性や依存性の心配がほとんどない
クロペラスチン塩酸塩錠剤、粉薬、シロップなど
チペピジンヒベンズ酸塩錠剤、粉薬、シロップ、ドライシロップ(※1)など・コデインリン酸塩と同程度の咳を鎮める作用が確認されている(犬に投与した実験)
ペントキシペリンクエン酸塩錠剤など・高齢者は抗コリン作用(※2)による便秘や口の渇きが起こりやすい

※1 ドライシロップ:水に溶かして飲む粉末状のお薬(そのまま服用も可)
※2 抗コリン作用:神経伝達物質の一つであるアセチルコリンの働きを阻害する抗コリン薬によって引き起こされる、望ましくない作用

<末梢性鎮咳薬

末梢性鎮咳剤には、去痰薬や漢方薬、トローチなどがあります。中枢性鎮咳剤と同じく、授乳中の方は基本的に使用できず、妊婦や妊娠の可能性がある方は、医師が危険性より有効性が上回ると判断した場合にのみ処方されます。

分類有効成分剤形注意点など
去痰薬L-カルボシステイン錠剤、ドライシロップ(※1)など・重大な副作用として中毒性表皮壊死融解症(※3)・皮膚粘膜眼症候群(※5)が報告されている
ブロムヘキシン塩酸塩錠剤、シロップ、吸入液など年齢・症状に応じて量を調節する
アンブロキソール塩酸塩錠剤、液剤、シロップ、ドライシロップ(※1)など重大な副作用としてアナフィラキシーショック・皮膚粘膜眼症候群(※4)が報告されている
トローチデカリニウム塩化物トローチ・一部の細菌や真菌(カビ類)に対する抗菌作用がある・口の中でできるだけ長くなめて服用する(かみ砕いたり飲み込んだりしない)

※3 中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群):高熱や倦怠感とともに、全身に紅斑(赤い斑点)やただれ、水ぶくれが現れる。指定難病の一つ。
※4 皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群):症状は中毒性表皮壊死融解症とほぼ同じ。水ぶくれやただれにより皮膚がむけた範囲が体表面積の10%未満の場合に皮膚粘膜眼症候群、10%以上になると中毒性表皮壊死融解症とされる。

気管支拡張薬(気管支を広げて咳を抑えるお薬)

気管支拡張薬は、気管支を広げて咳を抑え、呼吸を楽にするお薬です。気道の炎症を抑える抗ステロイド薬や、気管支の平滑筋を緩めて広げるβ2刺激薬などがあります。気管支喘息や咳喘息など、炎症によって気道が狭くなる病気に特に有効とされています。

吸入タイプやテープ(胸に貼る)があり、症状や患者さんの年齢を考慮して適切なものが処方されます。

解熱鎮痛剤(喉の痛みを和らげるお薬)

喉の痛みには、解熱鎮痛剤のほか、抗炎症作用のあるトラネキサム酸が処方されることがあります。それぞれの詳細は以下の通りです。

分類・有効成分剤形特徴・注意点など
アセトアミノフェン錠剤、粉薬、坐薬、ドライシロップなど・子どもや妊婦さんなどでも使いやすい
非ステロイド性抗炎症薬(プロスタグランジン(痛みを増強させる物質)の産生を防いで痛みや炎症を抑えるお薬)イブプロフェン錠剤、粉薬など・インフルエンザには使用しない・妊娠中は使えないことがある
アセチルサリチル酸(アスピリン)
ロキソプロフェンナトリウム水和物
トラネキサム酸錠剤、粉薬、カプセル抗炎症作用がある

医療機関での治療法

咳や喉の痛みの主な治療方法は、上記のようなお薬を使った薬物療法ですが、医療機関によっては気道に直接働きかける治療も行っています。

たとえば「薬剤吸入」とも呼ばれるネブライザーという治療方法です。お薬を微粒子にすることで、薬効成分を気道へ速やかに届けることができます。また、普通に呼吸するだけでよいので、お薬を飲むのが難しい子供や高齢者でも使いやすい点がメリットです。

ネブライザーには毛細管で吸い上げた薬液にジェット気流をあてて粒子を発生させるジェット式、高周波で振動させることで薬液を微細な霧状にするメッシュ式、超音波を用いる超音波式があります。

咳や喉の痛みの予防法

咳や喉の痛みは、日常生活に注意することで、ある程度予防できます。つらい症状を防ぐためにも、できることを実践していきましょう。

乾燥を防ぐ

空気が乾燥すると喉の粘膜の防御機能が低下し、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。冬に風邪やインフルエンザが流行しやすいのも、空気が乾燥しているためです。

また、乾燥した空気や冷たい空気そのものが刺激となって咳が出やすくなることもあります。

そのため、加湿器を使ったり、マスクで保護したりして喉を乾燥や刺激から守るようにしましょう。

刺激を避ける

辛いものやスパイシーなもの、熱すぎるものが刺激となって咳や喉の痛みを誘発することもあります。特に熱すぎる食べ物や飲み物は、喉の水分を奪うことにもなるので咳が出やすくなるのです。

大声を出す、長時間のおしゃべりやカラオケなど、喉の酷使も咳や喉の痛みにつながります。痛みを感じたときは物理的な刺激を控え、喉を保護することを心がけましょう。

アレルゲンの除去

花粉やハウスダストなど、アレルギー反応のきっかけとなるものを取りこまないことも大切です。特にアレルギーのある方は、普段から空気清浄機を使ったり、マスクを着用したりするとよいでしょう。

こまめな掃除も有効です。できればカーペットや毛足の長いじゅうたんを避け、フローリングにすると拭き掃除がしやすく、清潔を保てます。犬や猫、ハムスターなど抜け毛やフケが飛散する恐れのあるペットも飼わない方が無難です。

咳・喉の痛みは保険適用で診療できる?

咳・喉の痛みがある場合は保険適用で診療が受けられることが一般的です。診療は、保険適用の保険診療と、保険適用外の自由診療に分けることができ、基本的に、咳・喉の痛みなどの症状があり、治療の必要性があり、決められた範囲内の治療法を実施する場合は保険適用となります。

保険診療自由診療(保険外診療)
概要公的な健康保険が適用される診療保険が適用にならない診療
主な状況病気の症状があり、治療の必要性がある状況美容目的や、予防目的の場合
診察・治療内容国民健康保険法や健康保険法などによって、給付対象として定められている検査・治療医療保険各法等の給付対象とならない検査・治療
費用同じ診療内容なら、どの医療機関でも同じ同じ診療内容でも、医療機関によって異なる
原則1~3割負担全額自己負担

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※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。 

 

 

注意 オンラインでお薬の処方ができない場合があります

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参考文献

  1. のどの痛み-MSDマニュアル家庭版
  2. 気管食道科に関連する疾患・症状-日本気管食道科学会
  3. JAPIC