フルミストと注射のインフルエンザワクチンは仕組みから異なる
インフルエンザの予防接種には、鼻に噴霧するタイプと腕に接種するタイプの2種類があります。
使い方だけでなく、ワクチンの性質そのものが異なります。
フルミストは鼻に噴霧する弱毒生ワクチン
フルミストは、ウイルスの力を弱めた状態で鼻の中に噴霧する弱毒生ワクチンです。
体の中でわずかにウイルスを増やすことで免疫反応を引き出します[1]。
鼻の粘膜はウイルスが最初に入ってくる場所であり、そこに直接働きかける形です。
接種は1回で、0.2mLを各鼻腔に0.1mLずつ噴霧します[1]。
注射針を使わないため、針を見ただけで泣いてしまうお子さんの負担は大きく減るでしょう。
注射タイプは感染する力を失わせた不活化ワクチン
注射タイプのワクチンは、ウイルスが感染する力を失わせた不活化ワクチンです。
体内でウイルスが増えないため、免疫の働きが弱っている方にも用いやすいです。
正式にはインフルエンザHAワクチンと呼ばれ、日本で長年にわたって使われてきました[1]。
生後6か月から接種でき、年齢の上限もないため、家族全員が同じワクチンを使えます。
接種した部位が赤くなったり腫れたりすることがありますが、多くの場合は数日でおさまります。
免疫のつくられ方に違いがある
フルミストと注射タイプでは、体の中でつくられる免疫の種類が異なります。
鼻に噴霧するタイプは、弱毒化したウイルスが鼻の粘膜で免疫反応を起こすことで、自然感染に近い形の局所免疫(IgA)に加えて、全身の免疫を誘導することが期待されています[1]。
注射タイプは主に血液中の抗体を誘導することで、全身的な免疫をつくります。
鼻やのどの入り口で防ぐか、体の中に入ってからの広がりを抑えるかという違いと考えると分かりやすいでしょう。
フルミストと注射タイプの違いを項目ごとに比較する
2つのワクチンの違いは、いくつかの項目に整理すると把握しやすくなります。
下記は、フルミストと注射タイプの主な違いを比較した一覧です。
| 項目 | フルミスト | 注射タイプ |
| 接種方法 | 鼻に噴霧 | 腕に接種 |
| 対象年齢 | 2歳以上19歳未満 | 生後6か月以上(上限なし) |
| 接種回数 | 1回 | 13歳未満は2回、13歳以上は原則1回 |
| 痛み | ほとんどない | 接種時に痛みがある |
| 主な副反応 | 鼻水、鼻づまり、のどの痛み | 接種部位の赤み、腫れ、痛み |
| 費用の目安 | おおむね8,000〜10,000円程度 | 4,000円程度 |
選ぶ側にとって影響が大きい違いは年齢と回数、そして費用の3点です。
対象年齢と接種回数が大きく異なる
フルミストを受けられるのは、2歳以上19歳未満の方だけです[1]。
2歳未満のお子さんについては、海外の試験で入院や喘鳴の頻度が上がったことから、対象になりません[1]。
19歳以上の方については、データが十分でないために対象外です。
痛みの有無と出やすい副反応が違う
フルミストは針を使わないため、接種による痛みはほとんどありません。
その代わり、接種後に鼻づまりや鼻水、のどの痛み、せきといった症状が出ることがあります。
国内の臨床試験では、鼻閉や鼻漏といった鼻の症状が59.2%の接種者に認められました[1]。
多くは数日以内に自然におさまりますが、頻度としては決して低くない点は知っておきましょう。
注射タイプでは、接種した部位が赤くなる、腫れる、押すと痛いといった反応が比較的よく見られます。
どちらの症状も一時的なものですが、出方の傾向が異なることは知っておきましょう。
費用と自治体の助成の扱いが異なる
フルミストのほうが費用が高くなる傾向があるのは、新しいワクチンであることや、輸入・流通のコストが影響していると考えられます。
子どものインフルエンザ予防接種は任意接種にあたるため、金額は医療機関ごとにさまざまです(65歳以上の方と、60〜64歳で特定の基礎疾患がある方は定期接種の対象です)。
自治体によっては子どものインフルエンザ予防接種に助成を設けていますが、フルミストは助成の対象外としている自治体も多いため、事前の確認が欠かせません。
助成の対象年齢や金額、対象となるワクチンの種類は、お住まいの自治体のホームページや保健センターで確認できます。
13歳未満のお子さんは注射タイプだと2回分で合計6,000〜10,000円程度かかるため、フルミストとの差が小さくなる場合もあります。合計金額で比べましょう。
予防の効果に明確な差は確認されていない
「痛くないほうを選びたいけれど、効果が落ちるのでは」と心配する方は少なくありません。
効果の比較については、専門の学会が見解を示しています。
日本小児科学会は両者を同等に推奨している
日本小児科学会は、2歳から19歳未満の方に対して、注射タイプか経鼻タイプでの予防を、同等に推奨しています[1]。
両者の間に、効果の明確な優位性は確認されていません[1]。
なお、国内の臨床試験では、フルミストの発症予防に対するワクチン有効率は28.8%と報告されています[1]。
どちらのワクチンも、接種すれば必ず発症を防げるものではない点は共通しています。
海外の研究では、6歳未満の小児においてフルミストが不活化ワクチンより感染抑制効果が高いとされた一方で、入院については明確な減少効果は確認されませんでした[1]。
国内の承認時臨床試験では、フルミストと注射タイプとの直接の比較は行われていません[1]。
「フルミストのほうが効く」「注射のほうが確実」といった情報を見かけることがありますが、現時点では断定できる段階にないです。
効果で優劣をつけるより、受けられる条件で選ぶほうが理にかなった判断になります。
2歳から19歳未満はどちらを選んでも差し支えない
お子さんが2歳から19歳未満であれば、学会が同等に推奨しているため、どちらを選んでも問題ありません。
注射を極端に怖がるお子さんであれば、フルミストを選ぶと予防接種が受けやすくなるでしょう。
鼻づまりが起こりやすい体質のお子さんや、鼻に何かをされることを嫌がるお子さんであれば、注射タイプのほうが落ち着いて受けられることもあります。
効果があらわれるまでの期間と接種時期の目安
どちらのワクチンも、接種してすぐに効果があらわれるわけではありません。
注射タイプでは、効果があらわれるまでにおよそ2週間かかります[2]。
13歳未満のお子さんが注射タイプを選ぶ場合、2回目の接種からさらに2週間必要になるため、1回目は10月上旬から中旬に受けておくと余裕が生まれます。
フルミストは1回で完了するため、同じ年齢でもスケジュールに余裕を持たせやすいです。
日本のインフルエンザは例年12月から4月ごろに流行し、1月末から3月上旬にピークを迎えます[2]。
どちらを選ぶ場合も10月から11月に済ませ、遅くとも12月中旬までに終えておくことが望ましいとされています[2]。
フルミストを選べない場合は注射タイプが推奨される
生ワクチンという性質上、体の状態によっては注射タイプが推奨されます。
対象から外れる条件を先に知っておけば、予約の段階で無駄な手間を避けられるでしょう。
生後6か月から2歳未満と19歳以上は注射タイプのみ
生後6か月から2歳未満のお子さんと、19歳以上の方には注射タイプのみ推奨されています[1]。
お子さんが18歳であれば対象ですが、19歳の誕生日を迎えていると対象外です。
家族で一緒に受ける場合、大人と2歳未満のお子さんは注射タイプという形が基本です。
重度の喘息がある場合は医師への相談が必要
重度の喘息があるお子さんや、過去1年以内に喘鳴の症状があったお子さんについては、注射タイプが推奨される場合があります[1]。
これは、経鼻ワクチン接種後の喘鳴などの呼吸器症状のリスクを考慮したものです。
一方で、軽度の喘息でコントロールが良好であれば、フルミストを接種できることもあります。
季節の変わり目にせきが長引きやすいお子さんも、事前に医師へ伝えておきましょう。
呼吸の症状がある場合は自己判断せず医師に相談する、と覚えておくとよいでしょう。
妊娠中の方や周囲に免疫の低下した方がいる場合
妊娠していることが明らかな方は、フルミストの接種ができません[1]。生ワクチンは妊娠中の接種を避けることが原則とされているためです。
また、明らかに免疫機能に異常のある疾患をお持ちの方や、免疫抑制をきたす治療を受けている方も接種できません[1]。
授乳中の方や、重度の免疫不全状態にあるご家族と同居している場合は、接種の可否について医師との相談が必要です[1]。
フルミストは飛沫や接触でワクチンのウイルスが周囲に広がる可能性があり、接種後1〜2週間程度は密接な接触を避けるか、注射タイプを選ぶことが推奨されています[1]。
抗がん剤による治療を受けているご家族と同居している場合や、免疫不全と診断された方が身近にいる場合が該当します。
ご自身の体調だけでなく、同居しているご家族の状況も踏まえて選びましょう。
ゼラチンアレルギーがある場合は接種できない
鶏卵、ゼラチン、ゲンタマイシン、アルギニンなどワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方は、フルミストを接種できません[1]。
アナフィラキシーには至らないゼラチンアレルギーや卵アレルギーの場合は、程度によって判断が変わるため、医師との相談が必要です[1]。
ゼリーやグミを食べたあとに、じんましんや口の中のかゆみが出たことがある場合は、その内容を伝えておきましょう。
過去に他のワクチンでアレルギー症状が出た経験がある場合も、事前に伝えておくと安心です。
気になる点がある場合は、予約の段階で医療機関に相談しておきましょう。
注射タイプのインフルエンザワクチンを受けるときの目安
注射タイプを選ぶことになった場合、受けられる期間や回数を把握しておくと動きやすくなります。
フルミストを取り扱っている医療機関は限られており、近くで見つからず注射タイプを選ぶケースも少なくありません。
接種は10月から11月が目安
注射タイプの予防接種は、流行シーズンに合わせてワクチンが供給されるため、受け付け期間が医療機関ごとに決まっています。
効果があらわれるまでに約2週間かかることを踏まえると、10月から11月に受け、遅くとも12月中旬までに終えておくのが目安です[2]。
自治体の助成にも期限があり、住んでいる場所によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
なお、クリニックフォアでは注射タイプのインフルエンザワクチンのみを取り扱っています。
13歳未満は2〜4週間あけて2回、13歳以上は原則1回
生後6か月から13歳未満のお子さんは2回接種が基本で、1回目より2回目のあとのほうが抗体の上がり方が高くなります[2]。
1回目と2回目の間隔は、2〜4週間あけることが目安です[2]。
13歳以上の方は原則1回です。
1回目の接種時に12歳で、2回目のときに13歳になっていた場合は、12歳として2回接種を行って差し支えありません[2]。
医師が2回必要と判断した場合は、この限りではありません。
フルミストと注射の違いについてよくある質問
Q:フルミストと注射はどちらが効果が高いですか?
A:研究によって結果が異なるため、一概にはいえません。
日本小児科学会は、2歳から19歳未満に対して経鼻タイプと注射タイプを選択肢として同等とし、適応や注意点を踏まえて判断するよう示しています[1]。
注射が苦手なお子さんや、1回で接種を完了したい場合は、フルミストが有力な選択肢になります。
Q:フルミストは何歳から何歳まで受けられますか?
A:フルミストの対象は2歳以上19歳未満です[1]。
年齢の区切りは誕生日を基準に判断されます。
Q:きょうだいで別のワクチンを選んでも問題ありませんか?
A:年齢や体質が異なる場合、きょうだいで別のワクチンを選んでも差し支えありません。
ただし重度の喘息があるお子さんや、過去1年以内に喘鳴があったお子さんには注射タイプが推奨される場合があるため、医師に伝えたうえで選ぶことが大切です[1]。
Q:新型コロナワクチンと同時に受けられますか?
A:注射タイプのインフルエンザワクチンは、新型コロナワクチンとの同時接種が可能で、接種間隔の制限もありません。
フルミストについても、医師が必要と認めた場合には他のワクチンと同時に接種できます。経鼻の生ワクチンであるため、注射生ワクチン同士のように27日以上の間隔をあける必要はありません。
判断に迷う場合は、予約の段階で医療機関に相談しておくと安心です。
まとめ
フルミストは2歳以上19歳未満が対象で1回、注射タイプは生後6か月から受けられ13歳未満は2回必要です[1][2]。
注射が苦手なお子さんにはフルミストが一助になる一方、2歳未満や19歳以上の方、妊娠中の方、免疫機能に異常のある方には注射タイプが選択されます。重度の喘息があるお子さんも、医師との相談が必要です[1]。
どちらを選んでも、10月から11月に済ませておくと備えになります。
迷う場合は、お子さんの体質や同居しているご家族の状況を医師に伝えたうえで相談してみてください。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療アドバイスではありません。
お薬の服用に関しては必ず医師にご相談ください。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
