過多月経の定義とセルフチェック
「経血の量って人と比べる機会がないから、自分が多いのかどうかよくわからない」という方は多いでしょう。まず過多月経の定義と、自分でチェックできる目安を確認しておきましょう。
過多月経の定義
過多月経は、1回の生理(1周期)における経血量が正常範囲(20〜140mL(g))を上回る出血が生じる状態とされています[1]。経血量を実際に計測することは難しいため、ナプキンの使い方や経血の状態から判断することが一般的です。
ただし、定義の数値より少なくても日常生活に支障が出ている場合は過多月経と診断されることがあるため、「数値に当てはまらないから大丈夫」と一概には言えません。「これが自分にとっての普通」と長年思い込んでいた方が、受診してはじめて過多月経と診断されるケースも多くあります。
過多月経のセルフチェック
以下の項目に当てはまるものがあれば、過多月経の可能性があります[2]。
- 昼間でも夜用ナプキンを使わなければならない日が数日ある
- 普通のナプキン1枚が1〜2時間もたない
- 経血にレバー状・ゼリー状の血の塊が混じる(目安として500円玉より大きな塊)
- タンポンと夜用ナプキンを同時に使っても心配な日がある
- 血が衣服や寝具に染みることが頻繁にある
- 健康診断で「貧血(鉄が少ない)」と指摘されたことがある
- 日常的にめまい・立ちくらみ・動悸・息切れ・体のだるさがある
複数当てはまる場合や日常生活に支障が出ている場合は、婦人科への受診をお勧めします。
過多月経の年代別の特徴
過多月経は特定の年代だけに起きるものではなく、10代から40代以降まで幅広い世代でみられます[2]。ただし、年代によって背景となる原因が異なる傾向があります[2]。
| 年代 | 主な原因の傾向 |
| 10代〜20代前半 | 月経歴が短く、黄体機能不全や無排卵性周期症などホルモンの乱れが原因となるケースが多い |
| 30代〜40代 | 子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープなどの器質的疾患が増える世代 |
| 40代後半〜閉経期 | ホルモンバランスの変化から機能性の出血異常が起きやすい時期 |
「年々生理が重くなっている」「30代に入ってから急に量が増えた」という変化は、病気のサインである可能性があるため、早めの受診を検討することが大切です。
過多月経の主な原因
過多月経には、原因となる病気が見つかる「器質性過多月経」と、特定の病気が見つからない「機能性過多月経」の2種類があり、加えて婦人科以外の内科的疾患が原因となる場合もあります[2]。
| 分類 | 概念 | 代表的な疾患・状態 |
| 器質性過多月経 | 子宮や卵巣など臓器に形態的な異常がある | 子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープ・悪性腫瘍 |
| 機能性過多月経 | 特定の病気はなくホルモン異常が原因 | 黄体機能不全・無排卵性周期症 |
| 内科的疾患による過多月経 | 婦人科以外の疾患が原因 | 血液疾患(血小板減少症・血友病など)・抗凝固薬服用 |
それぞれ詳しく解説します。
器質性過多月経
「器質性」とは、子宮や卵巣など臓器そのものに形態的な異常がある状態を指します[1]。代表的な疾患は以下のとおりです[3][4]。
| 疾患 | 主な特徴 |
| 子宮筋腫 | 子宮にできる良性の腫瘍で、がんではない。30歳以上の女性の3割前後にみられるとされる[3] |
| 子宮腺筋症 | 子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉層の中に発生し、生理のたびに経血量が増えていく傾向がある[4] |
| 子宮内膜ポリープ | 子宮内膜の一部が突出してポリープ状になる状態で、異常子宮出血の原因となる[4] |
とくに注意すべき点として、子宮体がん・子宮頸がんなどの悪性腫瘍も過多月経の原因となりうるため、婦人科受診と定期的ながん検診が欠かせません[2]。
機能性過多月経
特定の子宮の病気がなくても、ホルモンバランスの乱れによって過多月経が起きることがあります。代表的な原因として、黄体機能不全・無排卵性周期症(排卵を伴わない周期的な出血)などがあります[2]。黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が不十分な状態では、子宮内膜の発育や剥離が乱れ、経血量が増える場合があります[2]。
機能性過多月経はホルモン療法(ピルなど)で症状を改善できるケースが多いため、悲観せずに受診してみることが大切です。
内科的な疾患が原因になる場合
婦人科以外の疾患として、血液疾患(血小板減少症・血友病・白血病など)が原因で止血・凝固機能に異常が生じた結果、過多月経になることがあります[2]。過多月経の精査を進める中で血液疾患が発見されるケースもあるため、初診時に症状を詳しく伝えることが正確な診断につながります[2]。
抗凝固薬(血液をサラサラにするお薬)を服用している方も経血量が増えることがあるため、現在服用しているお薬はすべて婦人科受診時に申告することが大切です。
過多月経を放置するとどうなるか
「生理が多いのは昔からだから仕方ない」と放置している方も多いですが、過多月経には放置することで深刻化するリスクがあります。
鉄欠乏性貧血の慢性化リスクを高める
過多月経で多くみられる影響として、慢性的な鉄欠乏性貧血が挙げられます。経血とともに大量の鉄分が失われることで血液中のヘモグロビン量が減少し、体内への酸素供給が低下した状態が続きます。慢性化すると以下の症状があらわれやすくなります。
- めまい・立ちくらみ
- 動悸・息切れ
- 体のだるさ・疲れやすさ
- 集中力の低下・頭痛
- 顔色の悪さ・爪が薄くなるまたはスプーン状に変形するなど
「毎日だるいのが当たり前」「少し動いただけで息が切れるのは体力がないせい」と思っている方が、実は過多月経による慢性貧血だったというケースは少なくありません。
原因疾患の悪化・発見の遅れの可能性がある
過多月経の背景に病気がある場合、未治療のまま経過すると進行する可能性があります[2]。子宮筋腫は放置すると大きくなり続けることがあり、手術の選択肢が限られるほど進行してしまう場合もあります。また、子宮体がん・子宮頸がんなどの悪性疾患が原因の場合は早期発見と治療開始が予後を大きく左右するため、早期に医師の診察を受けることが重要です。
日常生活・仕事・精神面へ影響がおよぶリスクがある
生理期間中に外出や仕事が困難になる・生理のたびにナプキン交換を心配して集中できない・毎月の生理が近づくとストレスを感じるなど、QOL(生活の質)の低下につながるケースも多くあります。
「生理が重くて毎月仕事を休む」「旅行や大事な予定に生理がかぶると不安になる」という状態が続いている場合は、治療によって改善できる可能性があります。
過多月経の検査
「婦人科受診が初めてで、何をされるのか不安」という方のために、過多月経の診断においておこなわれる主な検査の内容を整理します。
問診と内診
最初におこなわれるのは問診です。月経周期・最終月経・出産経験・家族歴・現在服用しているお薬・経血量の状態(ナプキンの交換頻度・血の塊の有無など)について詳しく聞かれます。受診前に以下の情報をメモしておくと、医師がより正確に判断できます。
- 生理周期と期間
- 経血量が最も多い日のナプキン交換回数
- 血の塊が出るかどうかとその大きさの目安
- 貧血症状(めまい・動悸など)の有無
- 最近の生理で変化があったかどうか
内診では、子宮の大きさや形を医師が触診で確認します。性交経験のない方には、お腹の上からの超音波検査や直腸からの検査(直腸診)などで対応できる場合があるため、受診前に医師にその旨を伝えることが大切です。
超音波検査(エコー検査)
問診・内診の後におこなわれることが多い超音波検査は、子宮や卵巣の状態を画像で確認する検査です。腟からのプローブを使う「経腟超音波検査」と、お腹の上からおこなう「経腹超音波検査」があります。子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープなどがあれば確認できることが多く、経腹超音波では拾いにくい病変を経腟超音波で確認できる場合があり、症状や患者背景に応じて経腟超音波検査が選択されることがあります。検査は数分で完了し、痛みは多くの場合ありません。必要に応じてMRI検査・CT検査・子宮鏡検査が追加される場合があります。
血液検査とがん検診
血液検査では、貧血の程度(ヘモグロビン値・血清フェリチン)とホルモン値(エストロゲン・LH・FSHなど)を調べます。「どのくらい貧血が進んでいるか」を数値で確認することで、治療の緊急性の判断と貧血治療(鉄剤など)の処方方針が決まるためです。
また、悪性疾患(子宮体がん・子宮頸がんなど)を除外するため、子宮体部・頸部のがん検診(スメア検査)がおこなわれることがあります。
検査結果によって、ホルモン療法・お薬による治療・手術など複数の方法から適切な治療が提案されます。
過多月経の治療法
過多月経の治療は段階的に選択できる複数の方法があり、年齢・妊娠希望・原因疾患の有無によって適した方針が異なります。
| 治療カテゴリ | 主な治療法 | 特徴 |
| お薬による治療 | 低用量ピル・LEP | ホルモン分泌を一定に保ち子宮内膜の増殖を抑える |
| お薬による治療 | ジエノゲスト | 子宮内膜症・子宮腺筋症に伴う疼痛と過多月経に使用される |
| お薬による治療 | ミレーナ(IUS) | 子宮内に装着し5年間効果が続く |
| お薬による治療 | 鉄剤(内服・点滴) | 鉄欠乏性貧血の治療 |
| 手術療法 | 子宮鏡下手術 | 粘膜下筋腫の切除、低侵襲 |
| 手術療法 | 腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術 | 子宮筋腫核出術、妊娠希望者向け |
| 手術療法 | 子宮内膜アブレーション(MEA) | 子宮温存、妊娠希望のない方向け |
| 手術療法 | 子宮全摘術 | 根本的治療として子宮を摘出 |
| 手術療法 | 子宮動脈塞栓術(UAE) | 筋腫への血流を止めて縮小、妊娠希望者には原則推奨されない |
お薬による治療
低用量ピル・LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)は、ホルモン分泌を一定に保ち子宮内膜の増殖を抑えることで経血量の減少が期待でき、月経困難症(生理痛)の改善も期待できます[5]。
ジエノゲストは子宮内膜症および子宮腺筋症に伴う疼痛の改善に対して保険適用があり、これらの疾患を背景とする過多月経に対しても服用される場合があります[6]。ただし、過多月経単独の治療薬として承認されているわけではないため、服用の適否は医師が判断します。
ミレーナ(IUS:子宮内黄体ホルモン放出システム)は、子宮の中に小さなT字型の器具を装着し、5年間にわたって少量の黄体ホルモンを持続的に放出する治療法です。毎日のお薬の服用が不要で、経血量の改善が期待できます[7]。
鉄欠乏性貧血が確認された場合は、鉄剤(内服または点滴)による治療も並行しておこなわれます。
手術療法
お薬による治療で十分な効果が得られない場合や、子宮筋腫・子宮腺筋症の程度が進んでいる場合には手術が検討されます。
子宮鏡下手術は、子宮の内側から内視鏡でアプローチして粘膜下筋腫を切除する手術で、お腹に傷をつけずに行えるため入院期間が短い低侵襲な手術として知られています[3]。腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術はお腹に小さな穴を開けて内視鏡を使っておこなう手術で、子宮筋腫核出術(筋腫だけを取り除く)に用いられ、妊娠希望がある方に適しています[3]。
子宮内膜アブレーション(MEA)は、子宮内膜をマイクロ波などで焼灼することで過多月経の改善を図る手術で、子宮を温存できます。ただし、術後の妊娠には適さないため、妊娠を希望しない方が対象となる手術です[8]。
子宮全摘術は根本的な治療として子宮を摘出する手術です。子宮動脈塞栓術(UAE)はカテーテルを使って子宮筋腫への血流を止めることで縮小させる治療法ですが、妊娠への影響が懸念されるため妊娠希望者には原則として推奨されず、慎重な判断が必要です[9]。
治療選択の考え方
治療を選ぶうえで重要な観点は、現在の妊娠希望の有無・原因となっている疾患の種類と程度・年齢や体の状態の3点です。妊娠希望がある方には子宮を温存できる治療(腹腔鏡下手術・薬物療法など)が優先され、妊娠希望がない方にはミレーナや子宮内膜アブレーション・子宮全摘術なども選択肢に入ります。
子宮筋腫や子宮腺筋症の大きさ・場所・症状の重さによっても適した治療法は異なるため、医師と現在の状態を十分に共有したうえで方針を決めることが大切です。
クリニックフォアで過多月経の相談ができます
「経血量が多くて気になっているが、婦人科に行くのはハードルが高い」「まず話を聞いてほしい」という方には、クリニックフォアのオンライン診療が便利です。
クリニックフォアでは、過多月経・生理痛・ホルモン療法(ピル)に関する相談をオンラインで医師におこなえます。
診察の結果、超音波検査・子宮鏡検査・がん検診など対面での検査が必要と医師が判断した場合は、近隣の婦人科・医療機関への受診をご案内します。すべてを自己判断する必要はありません。
まずは自分の状態を知ることからはじめてみましょう。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合がございます。
※対面診療をご案内する場合もございます。
※診療費は診察内容によって異なります。
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。
過多月経についてよくある質問
過多月経に関して、多く寄せられる質問にお答えします。受診をすべきかの判断材料にご活用ください。
Q1. 過多月経かどうか、自分で判断するにはどうすればいいですか?
経血量を実際に計測することは難しいため、ナプキンの使い方や経血の状態で判断するのが現実的です。
「昼間でも夜用ナプキンが必要で、それでも1〜2時間でいっぱいになる」「レバー状・500円玉以上の血の塊が毎回出る」「ここ数年で経血量が明らかに増えた」という状態が当てはまる場合は、過多月経の可能性があります。気になる場合は婦人科に相談することをお勧めします。
Q2. 過多月経の検査は痛いですか?
基本的な検査(問診・超音波検査・血液検査)は、多くの場合で強い痛みはありません。経腟超音波検査はプローブを腟内に挿入しますが、圧迫感を覚える程度で強い痛みは感じにくいでしょう。性交経験のない方には、お腹からの超音波検査や直腸からの検査で対応できる場合があるため、受診前に「性交経験がない」ことを伝えることが大切です。
Q3. 子宮に病気がなくても過多月経になりますか?
子宮に特定の病気が見つからなくても過多月経になることがあります[2]。これを「機能性過多月経」といい、ホルモンバランスの乱れ(黄体機能不全・無排卵性周期症など)が原因の場合があります[2]。
機能性過多月経は低用量ピルやプロゲスチン製剤などのホルモン療法で改善が期待できるため、「病気がないから仕方ない」と放置せずに婦人科に相談することをお勧めします。
Q4. ミレーナで過多月経は改善しますか?
ミレーナ(IUS)は、子宮内に装着することで少量の黄体ホルモンを持続的に放出し、子宮内膜の増殖を抑えることで経血量の減少が期待できる治療法です[7]。月経困難症・過多月経の治療として保険適用があり、毎日のお薬の服用が不要で5年間効果が続く点が特徴です[7]。
装着直後に不正出血が出ることがある点や、妊娠を希望する際には除去が必要な点など、医師との相談が必要な事項もあるため、婦人科で自分の状況に合うかどうかを確認してみてください[7]。
まとめ
過多月経は、正常な月経量(20〜140mL(g)/周期)を上回る経血が生じる状態です。昼間でも夜用ナプキンが必要・レバー状の大きな血の塊が出る・年々経血量が増えているといった状態が当てはまれば、婦人科への受診を検討しましょう。
背景には子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜ポリープなどの器質的疾患が原因のケースと、ホルモン異常が原因の機能性のケースがあり、まれに血液疾患や悪性腫瘍が隠れていることもあるため放置は避けるべきです。
治療はお薬による治療(低用量ピル・ジエノゲスト・ミレーナなど)から手術療法(子宮鏡・腹腔鏡・子宮内膜アブレーション・子宮全摘)まで複数の選択肢があり、年齢・妊娠希望・原因の種類に合わせて医師と相談しながら選べます。
「生理が多いのは体質だから」と長年放置してきた方でも、治療によって日常生活のつらさを大きく改善できる可能性があります。また、悪性腫瘍の早期発見・早期治療の観点からも、まずは婦人科に相談してみてください。



