精力剤とは
精力剤は、肉体的・精神的な疲れを緩和する医薬品・食品の総称です。精力剤の疲労回復効果や不調の改善効果によって、勃起力が改善するなど、性機能の増強につながる可能性もあります。
精力剤に期待できる効果
精力剤は、厳密には、精力(肉体的・精神的な活力)を高めるものです。しかし、勃起力の改善など、性機能の増強効果が期待できるものもあります。精力剤と呼ばれる商品は無数にあり、成分も多岐にわたるので、商品によって効果も多様です。
ここでは、やる気・活力低下に対する効果と、性機能低下に対する効果について詳しく見ていきましょう。
やる気・活力低下に対する効果
やる気や活力低下が気になっている場合は、男性更年期を改善する精力剤や、ビタミン剤などで改善が期待できます。
年齢とともにやる気や活力の低下を感じている場合は、加齢による血流悪化やホルモン分泌の低下などが原因となっている可能性があります。さらに、40代以上になると、男性ホルモン(アンドロゲン)の低下によって「男性更年期」(LOH症候群)が生じることがあるのです。男性更年期になると、性欲低下やED(勃起不全・勃起ができなくなったり、維持できなくなったりすること)などが起きることもあります。そして、精力剤の中には、男性更年期の改善効果が期待できるものもあるのです。
そのほか、ビタミン、ミネラル、タンパク質といった栄養に不足も、やる気や活力の低下に影響することがあります。この場合はビタミン剤などで栄養を補給することで、改善が期待できるでしょう。
性機能低下に対する効果
市販の精力剤の中には勃起力改善をうたうものもありますが、その効果は不明確です。勃起力の低下といったEDの症状に対しては、ED治療薬を使うのが最も有効とされています。
ただし、EDの原因は、加齢や生活習慣病による動脈硬化、疲労、栄養不足、精神的な問題などさまざまです。EDの原因が疲れやストレス、栄養不足などにあるケースでは、精力剤でも効果が期待できる可能性があります。
精力剤の分類
精力剤は、医薬品と医薬部外品、食品(健康食品や栄養飲料)の3つに大別できます。基本的には食品に分類されることが多いですが、中には一般用医薬品に分類されるものもあります。
また、形状もさまざまです。錠剤タイプ(サプリメント)やドリンクタイプが多いですが、塗り薬も存在します。
ここからは、精力剤の分類ごとの特徴を見ていきましょう。
医薬品
医薬品とは、病気の治療を目的とした薬のことです。厚生労働省から、配合される有効成分の効果が認められたものだけが医薬品に分類されます。一般的に、医薬部外品や健康食品よりも高い効果が期待できますが、その反面、副作用のリスクも高くなります。そのため、医師の処方箋や薬剤師の指導が必要な薬もあります。
また、医薬品には医療用医薬品、一般用医薬品(第1類~第3類医薬品)、要指導医薬品があります。医療用医薬品は医療機関で医師から処方箋をもらわないと入手できませんが、それ以外はドラッグストアなどでも販売されています。
医薬品に分類される精力剤には、ビタミン剤、滋養強壮剤、メチルテストステロンやにんにくからの抽出成分を配合したものなどがあります。メチルテストステロンは医薬品にしか配合が認められていない成分です。テストステロンと同じくらいの男性ホルモン作用があり、ホルモン分泌低下による男性の更年期障害を改善する薬に配合されています。
医薬部外品
医薬部外品は「人体に対する作用がおだやかなもの」、「医薬品と同様の目的のために使用されるもので厚生労働大臣が指定するもの」といった定義がなされているものです。つまり、医薬品よりも作用はおだやかですが、医薬品と同様の目的で使われる薬のことです。
精力剤においてはビタミン剤、滋養強壮剤などが該当します。ネット通販やドラッグストアなどでも購入でき、医薬品よりも手軽に入手しやすいという特徴があります。
食品(健康食品)
普段の生活でもよく耳にする「健康食品」ですが、実は健康食品には法律上の定義はありません。医薬品以外で、健康の維持や増進への効果をうたったり、そのような効果を期待して摂取される食品全般のことを健康食品と呼んでいるだけなのです。医薬品にも医薬部外品にも該当しないビタミン剤(いわゆるサプリメント)も、このカテゴリーに含まれます。
ただ、健康食品の中でも、国が定めた安全性や有効性の基準などを満たしたものは保健機能食品と呼ばれます。保健機能食品には機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品(いわゆるトクホ)の3つがあります。
たとえば機能性表示食品には、「疲労の回復」や「精神的ストレスの緩和」が期待できると表示されているものもあります。このような精力剤を使えば、疲れやストレスによる性機能の低下に効果が期待できるかもしれません。
漢方薬
漢方薬とは、植物や鉱物などの自然に存在するもの(生薬)を組み合わせた薬のことです。同じ種類の漢方薬でも、成分の配合量によって医療用医薬品と一般用医薬品が存在することが多いです。さらに、漢方の処方(生薬の組み合わせ)を応用したドリンク剤やサプリメントも数多くあり、医薬部外品や食品に分類されるものも存在します。マムシやスッポン、朝鮮人参などを配合したものも漢方薬のカテゴリーに含まれます。
性機能の改善に関連する代表的な漢方薬は以下の通りです。
- 八味地黄丸(はちみじおうがん) :生殖器などの機能が低下した状態(東洋医学では「腎虚」という)の改善のために使われる漢方薬
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):エネルギーが不足した状態(気虚)に対して使われる漢方薬で、疲労回復などの効果が期待できる
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう): 不眠や不安などを改善し、精神的な問題によるEDに効果が期待できる
いずれも即効性はありませんが、不調を取り除き、自然な勃起が期待できるでしょう。また、西洋薬(一般的な医薬品)に比べて副作用が出づらいのが特徴です。
精力剤とED治療薬の違いは?
勃起機能の改善に高い効果が期待できるのが、バイアグラなどに代表されるED治療薬です。精力剤とED治療薬では、カテゴリーも期待できる効果も大きく異なります。
まず、バイアグラのようなED治療薬は医療用医薬品であり、処方には医師の処方箋が必要です。一方で精力剤は、一般用医薬品や健康食品に分類されるものを指すことが一般的です。
また、日本で承認されているED治療薬は、性的興奮が生じたときに血行をよくするなどして勃起を直接的にサポートする薬です。一方、精力剤は疲労回復や不調の改善によって性機能の改善につながる可能性があるものです。つまり、性機能低下の原因によっては大きな効果が期待できないこともしばしばです。
精力剤の選び方
精力剤を買うときは、効果や成分、形状、価格、購入方法など、さまざまなポイントを踏まえて選びましょう。詳しくは以下の通りです。
厚生労働省に効果・効能が認められているものを選ぶ
医薬品、医薬部外品、保健機能食品の中から選ぶのがよいでしょう。
ここまで紹介した通り、一口に精力剤といってもさまざまなタイプがあります。精力剤は、性機能の向上に直接的な効果が期待できないものが多いので、できるだけ厚生労働省に効果・効能が認められているものを選ぶとよいでしょう。
成分・効果で選ぶ
精力剤に含まれる成分は多岐にわたるので、自分の不調に合った成分が入っているものを選びましょう。
栄養不足を感じている場合は、特定の栄養素だけをとる、といった選び方や使い方をしてもよいでしょう。たとえば亜鉛は性機能とも密接に関係しているといわれますが、食事だけでは必要量がとれていない人が多いです。そのような時は、亜鉛のサプリメントがとても役立ちます。
精力剤に含まれる代表的な成分は以下の通りです。
成分名 | 概要 | 特徴・効果 | その他・補足 |
メチルテストステロン | 合成ホルモン剤 | テストステロンと同じくらいの男性ホルモン作用 | 医薬品成分 |
マカ | ・南米原産の植物 ・アミノ酸、ミネラルなどさまざまな栄養素が含まれている | 性欲改善効果があったという研究結果もある | |
亜鉛 | 必須ミネラルのひとつ | 不足すると男性機能不全、性欲減退などにつながることがある | |
シトルリン | アミノ酸の一種 | ・疲労回復 ・血流改善・勃起の時に不可欠な一酸化窒素をつくる | 一酸化窒素は血管拡張作用があるが、EDが改善されるほどではないといわれている |
アルギニン | アミノ酸の一種 | ・疲労回復 ・血流改善・勃起の時に不可欠な一酸化窒素をつくる | シトルリンと一緒に摂ることでより血流が高まる |
タウリン | 体内でたんぱく質が分解されたときにできる物質 | ・血中のコレステロール、中性脂肪を減らす・血圧を正常に保つ ・糖尿病の予防につながる・体内に存在する亜鉛の消費を抑える | 亜鉛と一緒に摂るとより効果が期待できる |
レスベラトロール | 植物性ポリフェノール | 血流改善 | 赤ワインにも多く含まれる |
トンカットアリ | 東アジア原産の植物 | 血流改善 | |
クラチャイダム(ブラックジンジャー) | ・タイ原産のショウガ科の植物 ・アルギニンをはじめとしたさまざまな栄養素が含まれる | ・疲労回復 ・血流改善 ・勃起の時に不可欠な一酸化窒素をつくるなど | |
ガラナ | アマゾン川流域原産の植物・カフェインが含まれる | 興奮作用 | |
スッポン | 必須アミノ酸がバランスよく含まれる | 疲労回復 | |
マムシ | ・ヘビの一種 | ・血流増加など | |
朝鮮人参(高麗人参) | 極東原産のニンジンの一種 | ストレスへの抵抗性を高める | |
ニンニク | アリシン、ビタミンBなどさまざまな栄養素が含まれる | ・疲労回復 ・血流増加 |
形状・使い勝手・飲みやすさで選ぶ
精力剤は錠剤タイプやドリンクタイプのものが多いです。錠剤タイプはかさばらず、保管や持ち運びがしやすいです。一方、ドリンクタイプは水がなくてもどこでも飲めるのが特徴。ドリンクタイプは風味もいろいろあるので、飲みやすいものを好みで選ぶのもよいでしょう。
また、軟膏などの塗るタイプのものもあります。これは、主成分が男性ホルモンであり、第1類医薬品に分類されるものが多いです。男性器に直接塗るため、即効性が期待できます。
価格で選ぶ
精力剤は即効性が期待できることが少ないため、継続することが大事です。そのため、続けやすい価格のものを選ぶとよいでしょう。ただし、あまりにも安いものは安全性に不安があるものもあるので注意が必要です。
購入方法で選ぶ
医薬品などの分類によっては、ネット通販で買えないものや、買う時に薬剤師などからの説明が必要なものもあります。対面で購入したり、説明されたりするのに抵抗がある場合は、そのような必要がない精力剤を選んだほうがよいでしょう。逆に、薬剤師などに聞きたいことがある場合は、そのような専門科がいるドラッグストアなどで購入するのがおすすめです。
要指導医薬品と一般用医薬品は基本的に薬剤師などがいるドラッグストアで販売されるものですが、最近では薬剤師や登録販売者のスタッフがいるコンビニもあり、コンビニで購入できる場合もあります。
医薬品の分類と購入の際の条件は以下の通りです。
分類 | 販売場所 | 販売者からの説明 | インターネット販売 | |
要指導医薬品 | 薬剤師のいるドラッグストアなど | 必ず対面で書面での情報提供を行う | × | |
一般用医薬品 | 第1類医薬品 | 薬剤師のいるドラッグストアなど | 必ず書面での情報提供を行う | 〇 |
第2類医薬品 | 薬剤師または登録販売者のいるドラッグストアなど | 情報提供が行われる場合がある | 〇 | |
第3類医薬品 | 薬剤師または登録販売者のいるドラッグストアなど | 規定なし | 〇 | |
医薬部外品 | ドラッグストアなど | 規定なし | 〇 | |
健康食品 | ドラッグストアなど | 規定なし | 〇 |
精力剤の注意点
最後に、精力剤の注意点をおさえておきましょう。まず、精力剤にはED治療薬ほどの効果は期待できないので、EDに悩んでいる場合は早めに受診したほうがよいでしょう。
また、精力剤にも副作用のリスクがあるので、用法用量を守って使いましょう。異常を感じたらすぐに受診することも大事です。普段服用している薬などがある、持病があるといった場合は、精力剤を使ってもよいか事前に主治医などに確認すると安心です。
さらに、安全性の高いものを選ぶために、ドラッグストアや信頼できる通販を利用し、特に海外製品の購入には注意しましょう。詳しくは以下の通りです。
ED治療薬ほどの効果は期待できない
ED治療薬は性的興奮が生じたときに血行をよくするなどして勃起を直接的にサポートする薬です。一方で、精力剤は疲労回復や不調の改善によって性機能の改善につながるものなので、ED治療薬ほどの効果は期待できません。健康食品に分類されるようなものは、そもそも性機能の改善に直接的な効果は期待しづらいでしょう。
また、一般用医薬品に分類されているものでも、市販のものは有効成分の含有量がそこまで多くありません。そのため、勃起機能を改善したい場合は医療機関を受診し、ED治療薬を処方してもらうのがよいでしょう。
副作用のリスク
サプリメントなどの健康食品や、市販の漢方薬は、副作用がないと思っている方も多いでしょう。しかし、市販のものでも、体質などによっては副作用のような症状が出ることがあります。特に、持病がある場合は事前に医師に相談してから使いましょう。
成分によっては一緒にとるとよくないものもあるので注意してください。普段服用している薬などがある場合は、精力剤を併用してもよいか処方医に確認すると安心です。
また、ビタミン剤でも、とりすぎると体に害を及ぼすことがあるので、用法用量を守りましょう。たとえば亜鉛は、摂りすぎると貧血や胃の不快感、骨や髪の毛の異常、白血球・好中球の減少、心血管系や神経系の異常、成長障害などが生じることがあります。
安全性に注意する
安全面を考え、精力剤はドラッグストアや信頼できる通販サイトで購入したほうがよいでしょう。
特に通販で販売されている海外製品はリスクが高いとされています。なかには成分表に書かれていない医薬品成分が含まれているケースもあり、健康被害につながるようなものも販売されています。実際に、医療用医薬品の成分が配合された海外製品が精力剤として販売されていたこともあるので注意が必要です。
さらに、医薬品、医薬部外品の場合はパッケージにGMPと記載のあるものを選ぶのがおすすめです。GMP(Good Manufacturing Practice・医薬品の製造管理及び品質管理の基準)は、医薬品製造において遵守しないといけないルールのことです。
異常を感じたらすぐに受診を
精力剤の服用後に異常や体調不良などを感じたらすぐに受診しましょう。特に、アレルギー体質の方や、今までに薬の副作用を経験したことがある方は注意が必要です。
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