手汗の原因とは?多汗症の可能性・自分でできる対策・医療機関での治療法を徹底解説

「手汗がひどくて握手やプレゼンが憂鬱」「書類が手汗で滲んで困る」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
手汗は誰もが多少はかくものですが、日常生活に支障をきたすほどの量となると「手掌多汗症」という保険適用で治療できる疾患の可能性があります[1]。
この記事では手汗の原因、多汗症のセルフチェック、自分でできる対策、医療機関での治療法まで詳しく解説します。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。

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手汗とは?基本情報を整理

手汗は、誰でも多少はかく自然な生理現象のひとつです。人間の手のひらには汗を分泌する「エクリン汗腺」が密集しており、体温調節や緊張時の反応として発汗する仕組みになっています[2]。手汗の量には個人差が大きく、日常生活で影響が出ることがあります。

日常生活に支障があれば手掌多汗症の可能性

手掌多汗症は、緊張や刺激がなくても手のひらに過剰な発汗が生じる疾患です[1]

楽器の演奏やキーボード操作に困る・机のうえが汗で濡れるなど日常生活に影響を及ぼすことがあります。精神的なストレスを伴うため、手汗を気にすればするほどさらに発汗が増える「悪循環」に陥るケースも少なくありません。「手汗くらいで医療機関に行くのは恥ずかしい」と感じる方も多いものの、適切な治療を受けることで症状が改善する可能性があります。

原発性多汗症と続発性多汗症の違い

手汗を含む多汗症は、原因によって「原発性多汗症」と「続発性多汗症」に分類されます。それぞれ原因と対処法が大きく異なるため、自分のタイプを把握することが適切な治療を受けるうえで重要です。

項目原発性多汗症続発性多汗症
原因明確な原因疾患がなく、汗の量自体が多い状態結核などの感染症・甲状腺機能亢進症・副腎腫瘍(褐色細胞腫)などの基礎疾患が原因[1]
発汗部位手のひら・足の裏・わきの下など特定の部位全身の発汗量が増える傾向
対処の優先順位多汗症そのものへの治療原因疾患の検査と治療が優先

自分の手汗がどちらのタイプかは医師の診断が必要なため、気になる方は医療機関の医師に相談してみてください。

手汗の主な原因

手汗の原因はさまざまで、複数の要因が絡み合っているケースも珍しくありません。原因を理解することで、自分に合った対策や治療法を選びやすくなります。

自律神経・交感神経の活発化

手汗の最も基本的な原因は、自律神経の中でも交感神経の活発化です。交感神経は汗腺に作用して発汗を促す働きがあり、活発になると意思とは無関係に手汗が増加します。手のひらにはエクリン汗腺が多く分布しており、交感神経の影響を受けやすいため、緊張時や活動時に発汗が増えやすい特徴があります[2]

原発性手掌多汗症では、交感神経活動や遺伝的要因の関与が示唆されており、小学校就学時期から青年期にかけて症状を自覚するケースが多いとされています[1]。自律神経は睡眠不足やストレスなど生活習慣の影響も受けるため、生活リズムを整えることが症状管理の一助になる場合があります。

ストレス・緊張・不安

ストレス・緊張・不安などの精神的要因も、手汗を増やす大きな原因です。人前で話す場面や試験、面接などの緊張で交感神経が刺激され、手汗が増える経験を持つ方も多いのではないでしょうか。

とくに手掌多汗症の方は、手汗を気にすること自体がストレスとなり、さらに発汗が増えるという負のスパイラルに陥ることがあります。慢性的なストレスや睡眠不足は自律神経のバランスに影響を与えるため、手汗症状の悪化につながることがあります。

ホルモンバランスの乱れや疾患

ホルモンバランスの乱れや特定の疾患が手汗の原因となるケースもあります。続発性多汗症の場合、以下の疾患などが原因で全身の発汗量が増えるケースがあります[1]

  • 結核などの感染症
  • 甲状腺機能亢進症
  • 副腎腫瘍(褐色細胞腫)

急に手汗が増えた、全身の汗も増えた、体重減少や動悸を伴うといった変化がある場合は、基礎疾患の可能性を考えて医療機関を受診することが大切です。

手掌多汗症のセルフチェック

自分が手掌多汗症かどうかは、いくつかの特徴的な症状を確認することで判断の目安になります。セルフチェックを通じて、医療機関への受診が必要かどうかの判断材料が得られます。

6項目のチェックリスト

原発性手掌多汗症の診断には、日本皮膚科学会のガイドラインで6項目が用いられています[1]。まず「明らかな原因がないまま過剰な発汗が6か月以上続いていること」が基本条件で、これに加えて以下6項目のうち2項目以上に該当することが診断条件となります[1]

  • 最初に症状が出たのが25歳以下
  • 左右対称性の発汗がある
  • 睡眠中は発汗が止まる
  • 週に1回以上多汗のエピソードがある
  • 家族歴がある
  • 日常生活に支障をきたす

セルフチェックはあくまで目安のため、確定診断には医療機関の医師に相談することが大切です。

重症度の判定(HDSS)

手掌多汗症の重症度は、「HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)」というスケールで判定されます[1]

レベル症状の説明評価
レベル1発汗は全く気にならず日常生活に支障なし軽症
レベル2発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障あり軽症
レベル3発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある重症(積極的な治療対象)
レベル4発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある重症(積極的な治療対象)

HDSSでレベル1〜2の軽症と評価される場合でも、本人が日常生活で困っている場合には症状に応じて治療が検討されることがあります。医療機関では問診や検査を通じて、より正確な重症度を判定してもらえます。

受診を検討すべきサイン

以下のようなサインがある場合は、医療機関への受診を検討してください。

  • 書類が手汗で滲む
  • 人と握手するのを避けるようになった
  • スマートフォンやキーボードの操作に支障が出る
  • 手汗を気にして外出や対人関係を避けるようになっている
  • 急に手汗が増えた
  • 夜間や睡眠中も発汗が止まらない
  • 全身の発汗量も増えた

とくに急に手汗が増えた・夜間も発汗が止まらない・全身の発汗量も増えた場合は基礎疾患のある続発性多汗症の可能性もあるため、早めに内科や皮膚科を受診してください。

自分でできる手汗対策

手汗の症状が軽い場合は、自分でできるセルフケアで改善が期待できる可能性があります。医療機関での治療を検討する前に、まずは自宅でできる対策を試してみてください。

アルミニウムローション・制汗剤の活用

軽度の手汗には、アルミニウムローションや市販の制汗剤の活用が役立つことがあります。塩化アルミニウム配合のローションは汗腺を一時的に塞ぐ働きがあり、手汗の量を抑える効果が期待できます[1]。ドラッグストアや薬局で購入できる市販品もあり、手軽にセルフケアを始められます。

ただし市販品は濃度が低く設定されているため、十分な効果が得られない場合は医療機関で処方される高濃度品を相談することが望ましいです。使用方法は就寝前に手のひらに塗布し、効果を感じられるまで毎日継続して塗布します[1]。肌の弱い方や塗布部位にかゆみ・赤みが出る場合は使用を中止し、医療機関の医師に相談することが大切です。

ストレスケアと生活習慣の見直し

ストレスケアと生活習慣の見直しは、手汗対策の基本となる重要な要素です。適度な運動・趣味・リラクゼーションでストレスを発散する習慣を取り入れることが効果的な場合があります。睡眠不足や不規則な生活は自律神経のバランスを崩すため、規則正しい生活リズムを整えることで発汗が抑制されることもあります。

カフェイン・アルコール・辛い食事は発汗を促す傾向があるため、過剰摂取を避けるとよいでしょう。深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法は交感神経の活発化を抑える効果が期待できます。すぐに効果はあらわれないものの、長期的に続けることで体質改善につながる可能性があります。

一時的に手汗を抑える方法

人前に出る場面など、一時的に手汗を抑えたい場合の対処法もいくつかあります。

  • ハンカチやタオルで頻繁に手汗を拭き取る
  • ベビーパウダーを薄く塗布する
  • 冷たい水で手を冷やす・保冷剤を握るなど物理的に温度を下げる
  • 握手やプレゼンの直前に手をしっかり洗って乾かしておく

ただしこれらは一時的な対処法のため、根本的な改善を目指す場合は医療機関の医師に相談することが大切です。

医療機関での手汗治療法

セルフケアで改善がみられない場合や症状が重い場合は、医療機関での治療を検討しましょう。治療法は症状の程度に応じて段階的に選択されます。

治療法特徴持続期間・通院頻度主な副作用
高濃度塩化アルミニウム外用剤市販品より高濃度で処方される外用療法継続使用が必要皮膚のかゆみ・赤み
抗コリン薬(内服)汗の分泌を抑える内服薬継続服用が必要口の渇き・便秘・排尿障害
イオントフォレーシス水道水に手足を浸して微弱電流を流す定期的な通院・継続治療比較的少ない
A型ボツリヌス毒素注射手のひらに注射し発汗を抑制(手掌多汗症に対しては自由診療)数か月程度持続注射部位の痛み・内出血
交感神経離断術(ETS手術)胸部の交感神経を一部切断不可逆的代償性発汗
アポハイドローション20%(抗コリン外用薬)国内初の手掌多汗症保険適用外用薬継続使用が必要適用部位の皮膚炎・口渇など

外用剤・内服薬による保存療法

医療機関での治療は、まず外用剤や内服薬による保存療法から始まるのが一般的な流れです。外用療法としては高濃度の塩化アルミニウム製剤に加え、2023年に承認された手掌多汗症に対する国内初の保険適用外用薬「アポハイドローション20%」(オキシブチニン塩酸塩)も使用されています[1]。内服薬としては抗コリン薬が使用される場合があります。口の渇き・便秘・排尿障害などの副作用があらわれることがあるため、医師の指示に従って服用し、気になる点は医療機関の医師に確認することが大切です。

イオントフォレーシス・A型ボツリヌス毒素注射

保存療法で十分な効果が得られない場合は、イオントフォレーシスやA型ボツリヌス毒素注射が検討されます。イオントフォレーシスは水道水に手や足を浸して微弱な電流を流す治療法で、比較的副作用が少ない一方、定期的な通院が必要です。A型ボツリヌス毒素注射は手のひらに注射することで発汗を抑える治療法で、数か月程度効果が持続するとされています[3]。なお、手掌多汗症に対するA型ボツリヌス毒素注射は自由診療となります。

交感神経離断術(ETS手術)

既存の治療に抵抗性を示す重度の手掌多汗症に対して、術後の代償性発汗について十分なインフォームドコンセントを得たうえで行われます[1]。ETS手術は胸部の交感神経を一部切断することで、手のひらへの発汗指令を遮断する治療法です。代償性発汗(背中・胸・腰など別の部位の発汗が増える現象)が高頻度でみられる不可逆的な治療であるため、医師から十分な説明を受けたうえで慎重に判断することが大切です[1]

手汗の治療はクリニックフォアのオンライン診療へ

日常生活に影響のあるほどの手汗に悩み、治療を検討している方は医療機関で相談することが大切です。クリニックフォアのオンライン診療では手汗や発汗の悩みについて医師に相談でき、内服薬(ソリフェナシン・プロバンサイン・防已黄耆湯)や外用薬(塩化アルミニウム液20%・40%、ラピフォートワイプ、エクロックゲル、アポハイドローション)を症状に応じて処方しています。

なお、クリニックフォアの多汗症治療は自由診療となります。保険診療を希望される方や保険診療で改善しなかった方の自由診療メニューもご利用いただけます。

ただしイオントフォレーシスやA型ボツリヌス毒素注射・ETS手術など、対面での処置が必要な治療は対面診療をご案内する場合があります。急に手汗が増えた・全身の発汗が増えた・体重減少や動悸を伴う場合は、甲状腺疾患などの基礎疾患が原因の可能性もあるため、まずは内科や皮膚科で原因疾患の検査を受けることが大切です。

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手汗に関するよくある質問

手汗についてよく寄せられる質問をまとめました。対策や治療を始める前の参考にしてください。

Q1. 子どもの手汗は改善する?

子どもの手汗は、成長とともに自然に改善するケースもあります。ただし日常生活や学校生活に支障が出ている場合は、早めに医療機関の医師に相談することが望ましいです。子どもでも保険適用で受けられる治療法もあるため、勉強やスポーツに集中できるよう適切な治療法を医療機関の医師に相談してみましょう。

Q2. 手汗に効く市販薬はある?

ドラッグストアや薬局では、塩化アルミニウム配合の制汗ローションやジェルが市販されています。軽度の手汗には市販品でも一定の効果が期待できる可能性がありますが、中等度以上の症状には効果が得られにくい場合があります。市販薬で十分な改善がみられない場合は、医療機関で処方薬による治療について相談することも選択肢のひとつです。

Q3. 手汗は遺伝する?

原発性手掌多汗症には、遺伝的な要因が関わると考えられています[1]。家族に同様の症状がみられる場合は、発症に遺伝的要因が関与している可能性があります。ただし遺伝だけが原因ではなく、ストレスや生活習慣も影響するため、家族歴があっても適切な対策で症状を軽減できる場合があります。

Q4. ストレスがなくても手汗が出るのはなぜ?

原発性手掌多汗症の方は、ストレスや緊張がない状態でも手汗が出る特徴があります。体質的に手の交感神経が活発で、意思とは無関係に発汗が起こることが考えられています[2]。「リラックスしているのに手汗が止まらない」という状態は原発性多汗症の可能性があるため、医療機関の医師に相談してみてください。

まとめ

手汗は誰でもかく自然な現象ですが、日常生活に支障をきたすほどの量がある場合は、「手掌多汗症」という保険適用で治療できる疾患かもしれません[1]

主な原因は自律神経の活発化・ストレス・基礎疾患の3つで、6項目のセルフチェックリストとHDSS重症度判定で自分の状態を客観的に把握できます。

セルフケアで改善しない場合は、外用剤・内服薬・イオントフォレーシス・A型ボツリヌス毒素注射・ETS手術といった医療的アプローチで根本的な改善を目指せる可能性があります。

一人で悩み続けるよりも、早めに医療機関の医師に相談して快適な日常生活を送りましょう。

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参考文献

  1. ] 藤本智子, 横関博雄, 中里良彦ほか「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂)」日本皮膚科学会雑誌, 133(13): 3025-3056, 2023
  2. Brackenrich J, Medeus CF. "Hyperhidrosis." StatPearls [Internet]. NCBI Bookshelf, National Institutes of Health. Last Update: October 3, 2022.
  3. Kisielnicka A. et al. "Hyperhidrosis: disease aetiology, classification and management in the light of modern treatment modalities." Postepy Dermatologii i Alergologii. 39(2): 251-257. 2022.
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