せきに効果が期待できる漢方薬とは?せきの特徴ごとに徹底解説!

せきが出る、のどが痛い、痰が絡む…。せきやのどのトラブルは早く治したいものですよね。この記事では、せきに対して漢方薬の使用を検討している方に向けて、せきの種類別に効果が期待できる漢方薬や、漢方医学におけるせきの考え方などについて詳しく解説します。

【せきの種類別】せきに効果が期待できる漢方薬

まずは、せきの特徴・種類ごとに、効果が期待できる漢方薬を詳しく見ていきましょう。

乾いたせき:麦門冬湯

麦門冬湯(バクモンドウトウ)は、ユリ科の植物の根「麦門冬湯(ばくもんどう)」を配合した漢方薬です。

粘膜を潤したり、せきの反射を鎮めたりすることで、のどの乾燥を伴うせきを和らげる効果が期待できます。

  • 効果が期待できる症状・病気:痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく

のどの痛みを伴うせき

のどの痛みを伴うせきには、銀翹散(ギンショウサン)や桔梗湯(キキョウトウ)が適しています。詳しく見ていきましょう。

銀翹散

銀翹散(ギンショウサン)は、漢方の本場・中国では有名な漢方薬で、「温病条弁(うんびょうじょうべん)」という医学書にも載っています。

からだの熱を鎮め、のどの炎症を抑えることで、のどの痛みやせきを緩和するとされています。

効果が期待できる症状・病気:かぜによるせき、のどの痛み、口やのどの渇き、頭痛

桔梗湯

桔梗湯(キキョウトウ)は、桔梗の根を配合した漢方薬です。のどの炎症を抑えることで、のどの痛みや腫れを改善するとされています。

  • 効果が期待できる症状・病気:のどがはれて痛む扁桃炎・扁桃周囲炎

強いせきや痰

強いせきや痰には麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)や五虎湯(ゴコトウ)が適しています。詳しく見ていきましょう。

麻杏甘石湯

麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)は、麻黄(まおう)、杏仁(きょうにん)、甘草(かんぞう)、石膏(せっこう)を組み合わせた漢方薬です。

肺が気(き・エネルギーの源のようなもの)や水(すい・身体に潤いを与えるもの)を取り入れたり出したりする働きのバランスが、外邪(がいじゃ・季節の変化といった、体に悪影響を与えるもの)によって乱れたときに使います。

  • 効果が期待できる症状・病気:小児ぜんそく、気管支ぜんそく

五虎湯

五虎湯(ゴコトウ)は、麻杏甘石湯に桑白皮(そうはくひ・桑の一種)を加えた漢方薬です。

  • 効果が期待できる症状・病気:せき、気管支ぜんそく

粘り気の強いたんが多い:清肺湯

清肺湯(セイハイトウ)は、気管支を潤し、熱を鎮めてたんを伴うせきを改善する漢方薬です。

  • 効果が期待できる症状・病気:たんの多く出るせき

痰が切れにくく、せきこむとき:滋陰降火湯

滋陰降火湯(ジインコウカトウ)は、体にうるおいを与える津液(しんえき)を補うことで、体の熱を冷ますとされる漢方薬です。

  • 効果が期待できる症状・病気:のどにうるおいがなく痰が出なくて咳こむもの

風邪のひき始めのせき:麻黄湯

麻黄湯(マオウトウ)は、風邪のひき始めなどに、身体を温めたいときに使う漢方薬です。西洋医学的には、発熱や痛みに関わるプロスタグランジンという物質を抑えるとされています。

  • 効果が期待できる症状・病気:かぜ、インフルエンザ(初期)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻づまり、哺乳困難

風邪によるせき・鼻水:小青竜湯

小青竜湯(ショウセイリュウトウ)は、風邪やアレルギー性鼻炎の時によく処方される漢方薬です。せきの他、水っぽい鼻水や痰、くしゃみ、鼻づまりなどの症状があるときに使います。

水(すい・身体に潤いを与えるもの)によって冷えた部分を温め、水分代謝を促し、「気(エネルギーのようなもの)を動かして症状を抑えるとされています。

  • 効果が期待できる症状・病気:かぜ、鼻炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎によるせき、水様のたん、水様の鼻水、鼻づまり、くしゃみ、喘鳴、流涙

風邪をこじらせたとき

風邪をこじらせたときには小柴胡湯(ショウサイコトウ)や苓桂味甘湯(リョウケイミカントウ)、竹葉石膏湯 (チクヨウセッコウトウ)が適しています。詳しく見ていきましょう。

小柴胡湯

小柴胡湯(ショウサイコトウ)は、免疫機能を調整し、炎症を和らげるとされる漢方薬です。

  • 効果が期待できる症状・病気:かぜ、急性熱性病、肺炎、気管支炎、気管支喘息、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、産後回復不全、慢性肝炎における肝機能障害

苓桂味甘湯

苓桂味甘湯(リョウケイミカントウ)は、風邪で熱が下がった後にも長引くせきに効果が期待できる漢方薬です。

  • 効果が期待できる症状・病気:からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感、動悸、のぼせ

竹葉石膏湯

竹葉石膏湯 (チクヨウセッコウトウ)は、名前の通り竹葉(ちくよう)や石膏(せっこう)を配合した漢方薬です。風邪で熱が下がった後にも長引くせきに効果が期待できます。

熱によって消耗した体内の水分を補い、気管支を潤して炎症を鎮めるとされています。

  • 効果が期待できる症状・病気:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、口の渇き、軽い熱中症

つまった感じがするせき:半夏厚朴湯

半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)は、不安などの精神的なトラブルにアプローチする漢方薬です。神経を鎮めるだけでなく、せきをおさえる効果も期待できるため、ストレスと、のどに異物感やつまった感じがあり、せきが出るような方に適しています。

  • 効果が期待できる症状・病気:せき、しわがれ声、不安神経症、神経性胃炎、つわり、神経性食道狭窄症、不眠症

動悸・めまい・吐き気などを伴うせき:柴朴湯

柴朴湯(サイボクトウ)は、小柴胡湯と半夏厚朴湯を合わせた漢方薬です。気分がふさいでのどのあたりにつまった感じがあり、動悸、めまい、吐き気などを伴うせきがある方に適しています。

  • 効果が期待できる症状・病気:動悸、めまい、吐き気などをともなう方のせき、不安神経症、気管支炎、気管支喘息など

慢性疾患による長引くせきに使われる漢方薬

慢性的な病気によってせきが長引くときにも、漢方薬が使われることがあります。ここでは一例として、気管支喘息と慢性気管支炎(COPDなど)に使われることがある漢方薬について見ていきましょう。

気管支喘息

気管支喘息とは、気道が炎症し、何かのきっかけで気管が細くなったときに呼吸困難やせきなどが出る病気です。

漢方薬名効果が期待できる症状・病気(気管支喘息を除く)向いている方
小青竜湯(ショウセイリュウトウ)・気管支炎
・かぜ
・鼻炎
・アレルギー性鼻炎
・アレルギー性結膜炎気管支炎
・体力中等度~やや虚弱
・うすい水様のたんを伴う
麦門冬湯(バクモンドウトウ)・痰の切れにくい咳・気管支炎・体力中等度以下
・たんが切れにくい
・ときに強くせきこむ
・咽頭の乾燥感がある
柴朴湯(サイボクトウ)・小児ぜんそく
・気管支炎
・せき
・不安神経症
・体力中等度
・胸の苦しさ、のどの異物感がある
神秘湯(シンピトウ)・小児ぜんそく・気管支炎・体力中等度以上
五虎湯(ゴコトウ)・せき・体力中等度以上
・せきが強く出る
麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)・小児ぜんそく・体力中等度以上
・せきが出る
・ときにのどが渇く
小柴胡湯(ショウサイコトウ)・かぜ
・急性熱性病
・肺炎
・気管支炎
・リンパ腺炎
・慢性胃腸障害
・産後回復不全
・慢性肝炎における肝機能障害
・体力中等度
・上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不振がある
・ときに微熱、悪心がある
竹葉石膏湯(チクヨウセッコウトウ)・からぜき
・気管支炎
・口の渇き
・軽い熱中症
・体力虚弱
・かぜが治りきらず、たんが切れにくい
・ときに熱感、強いせきこみ、口の渇きがある

慢性気管支炎(COPDなど)

慢性気管支炎とは、慢性的に気管や気管支が炎症し、せきやたんが続く状態のことです。なお、現在は肺気腫(肺の中にある肺胞が壊れ、肺に空気がたまって押し出せなくなる病気)と合わせてCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といわれています。

漢方薬名効果が期待できる症状(気管支炎を除く)向いている方
滋陰至宝湯(ジインシホウトウ)・慢性のせき、たん・体力虚弱
滋陰降火湯(ジインコウカトウ)・のどにうるおいがなく、たんが出なくて咳こむもの・体力虚弱
清肺湯(セイハイトウ)・たんの多く出るせき・体力中等度
・せきが続く
・たんが多くて切れにくい

せきの仕組み

最後に、せきの仕組みや、漢方におけるせきの考え方についても見ていきましょう。

せきは、気道に入ってきた異物(細菌、ウイルス、花粉など)やたんを外に出すための、体の防御反応です。のどの粘膜に異物がつくと、排除するため粘液が分泌されてたんとなります。そして、たんが増えると、たんを排出するためにもせきが出ます。

漢方におけるせきの考え方

漢方では、人の体は「気(き・エネルギーの源のようなもの)・血(けつ・全身に栄養素を運ぶもの)水・(すい・身体に潤いを与えるもの)」の3つの要素で成り立っていると考えられています。そして、これらのバランスが崩れると、体に不調が現れると考えられているのです。

たとえば風邪の後にせきが長引く場合、漢方では「水毒(すいどく)」の状態に陥っていると考えられています。水毒は、体から水分が奪われ、水のバランスが崩れている状態です。この場合は漢方薬で水のバランスを整え、気道を潤すことでせきを改善します。

止めないほうがよいせきもある

せきが出るからといって、全てのせきを止めてよいわけではありません。たんが絡むせきが出るということは、異物を排出しようとしているということなので、無理にとめないほうがよいでしょう。

一方で、「からぜき」とも言われる、コンコンするような乾いたせきは繰り返すことも珍しくありません。体力を消耗することもあるので早めに止めたほうがよいでしょう。

漢方薬と西洋薬の作用の違い

漢方薬の場合、体内の「水」のバランスを整え、気道を潤して、咳を改善するというのが基本的なアプローチです。つまり、気道の粘膜に水分を与えたり、神経をしずめたりすることでせきをおさえることを目指します。

一方、西洋薬では、脳のせき中枢に作用する「中枢性鎮咳成分」や、交感神経を活発にして気管支を広げる「気管支拡張成分」によってせきをおさえるため、アプローチの仕方が大きく異なります。

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