日本は低用量ピル後進国?日本で普及率が低い理由について、医師が解説します。

世界的に見ても先進国の中で日本だけが低用量ピルに関して後進国であると考えられています。なぜ日本では低用量ピルが普及しないのでしょうか。その理由について詳しく解説していきます。


1.低用量ピルにはどんな効果があるの?

低用量ピルとは低用量経口避妊薬という正式名称のお薬です。低用量ピルには卵胞ホルモンと黄体ホルモンいう2つの女性ホルモンが含まれており、体内の女性ホルモンの量をコントロールしてくれます。これによって排卵を阻止したり、受精卵の着床を防いだりしてくれるため、避妊効果が期待されています。低用量ピルによる避妊効果はとても高く、飲み忘れなどなければ99.7%の避妊効果が期待できるという報告があります。また、妊孕性も高く、妊娠を希望するときには服用をやめれば、数か月後には排卵が戻り、妊娠可能な体となります。

避妊効果以外にも副効果といって、女性に良い効果をもたらしてくれます。例えば、月経前症候群(PMS)の改善や、月経痛、月経過多の改善といった効果が期待できますので、生理にまつわるトラブルに悩まされているという方の治療にもなりうるお薬です。また、卵巣がんや子宮体がんのリスクを下げる効果も期待できます。

2.ピルは海外ではどのくらい飲まれているの?

避妊法2019(Contraceptive Use by Method 2019)のデータを用いて世界のピルの内服状況を見てみましょう。欧米諸国のピル内服率を見てみるとノルウェー25.6%、英国26.1%、フランス33.1%、カナダ28.5%、米国13.7%となっています。一方で、東アジアにおけるピル内服率は、中国2.4%、香港6.2%、韓国3.3%となっています。また、東南アジアのピル内服率は、ミャンマー8.4%、ベトナム10.5%、タイ19.6%、マレーシア8.8%、カンボジア13.7%となっています。

世界のピル内服事情をここで確認した上で、次のデータを見ていきましょう。

3.日本での普及率は?先進国の中でもあまり普及していない?

先ほどのデータで日本のピルの内服状況を見てみると日本のピル内服率は2.9%となっています。この値は、東アジア地域で見れば中国や韓国と同じくらいですが、欧米の先進国と比べると圧倒的な差があります。この内服率が日本が低用量ピル後進国といわれる理由となるでしょう。

それではなぜ、日本で低用量ピルが普及しないのか。その理由を解説していきます。日本で低用量ピルが普及しない理由の1つとして入手方法があります。実は世界では、低用量ピルは薬局での購入が可能。しかも低用量ピルだけでなくアフターピルともいわれている緊急避妊薬についても薬局での購入が可能です。しかもかなり安い値段で購入ができ、日本に住む我々が風邪薬を市販で購入するという感覚で手に入れることができるのです。

一方、日本では産婦人科を受診して診察を受けなければ手に入れることができません。しかし新型コロナウイルスの影響もあり、近年オンライン診療が普及しており、オンライン診療で低用量ピルの処方が可能となり、受診という負担は減りつつあります。

クリニックフォアでは、初診から全国どなたでもオンライン診療で低用量ピルの処方を行なっています。事前問診3分、診療3分のみで薬は最短当日発送いたします。

低用量ピルが普及しない2つ目の理由として日本の性教育の遅れがあります。日本は先進国に比べて性教育がかなり遅れています。先進国のほとんどの国では日本でいう園児の年齢から性教育を開始し、段階的に合わせて性教育をしていきます。それも日本人がすぐに思い浮かぶ性教育とは異なり、女性や男性といった性別の性の教育から、性暴力、禁欲をすることによって相手を守ることなど、幅広い観点から性教育を行っています。

一方、日本では小学生くらいの年齢で初潮や月経について学ぶ程度であり、あとは中学生から高校生という思春期真っただ中にからだの変化や妊娠・生命の誕生、性感染症といった最低限の知識を学ぶだけで終わります。

日本が年間平均して3時間程度しか性教育を学ぶ時間を確保していないのに対して、世界では多くの時間を性教育に割いています。現在、インターネットやテレビを通して早い段階から性に関する知識を入手できる時代です。誤った情報を早くから入手してしまうことが懸念されています。性教育が遅いことで、日本人にとって低用量ピルはなじみがなく、さらに、学校の授業でも低用量ピルの避妊効果含めた女性にとってのメリットを教わらないということから、日本には低用量ピルが普及しないと考えられています。

3つ目は、日本で男性が主導の避妊法がメジャーであることです。アメリカ、フランス、日本の3カ国を対象とした避妊法を見てみると、少し古いデータではありますが日本はコンドームの装着など男性が主導となる避妊法が主流になるのに対して、他の国は低用量ピルの内服、子宮内避妊用具など女性サイドが主流の避妊法も多く使われています。女性が主導型の避妊法という考え方が定着していないことも低用量ピルが日本においてメジャーになっていない理由です。

先ほどもご説明したようにクリニックフォアでは低用量ピルのオンライン診察・処方を行っております。ただ処方をするのではなくお悩みの相談も受け付けております。

近年、インターネットの通信販売などで安価な低用量ピルも出回っていますが、偽物の可能性や、混入物の危険性もあるため個人輸入をした低用量ピルはリスクが高くおすすめできません。また、副作用の危険性もあることから、医師の診療を受けたうえで服用をされることがおすすめです。クリニックフォアでは、継続して服用が続けられるようなフォロー体制を要しております。お気軽にご相談ください。

参考文献

The United Nations‐避妊法 2019‐
https://www.un.org/development/desa/pd/sites/www.un.org.development.desa.pd/files/files/documents/2020/Jan/un_2019_contraceptiveusebymethod_databooklet.pdf