ピル服用中にお酒は飲める?ピル服用中の飲酒の注意点を医師が詳しく解説します。

低用量ピルとは、女性ホルモンが配合された薬のことです。避妊効果や、生理痛・月経困難症の改善、生理時の出血を減らすことによる貧血改善など、さまざまな効果が期待できます。 低用量ピルは、1日でも飲み忘れがあると効果(特に避妊効果)が得られなくなることがあるため、毎日飲み続ける必要があります。では、服用中にお酒を飲むのは問題ないのでしょうか?この記事では、低用量ピル服用中の飲酒について詳しく解説します。中用量ピルやアフターピルに関する解説もあるので、最後までご覧ください。


低用量ピル服用中の飲酒は基本的に問題ない。

低用量ピルの服用中に飲酒をしても、適量なら薬の効果に影響はないといわれています。ただし、ピルをお酒で飲んだり、ピルを飲んでからすぐにお酒をのんだりするのはよくないので注意しましょう。

低用量ピルとお酒を同時に飲むのはNG!

薬は水で飲むのが基本です。アルコールと薬はどちらも肝臓で分解されるため、低用量ピルとアルコールを一緒に摂ってしまうと、低用量ピルの分解が遅れてしまうことがあります。すると、低用量ピルの血中濃度が高くなってしまい、副作用が強く出てしまう可能性があるため、同時に飲むのは絶対にやめましょう。

中用量ピル服用時の飲酒は注意が必要

低用量ピルの飲み始めの時期は、吐き気や頭痛などの副作用が出ることがあります。しかし、飲酒で副作用の症状が強くなるといったことはないため心配する必要はないでしょう。

ただし、中用量ピルなどのホルモン量が多いピルを飲んでいる場合は、飲酒が副作用に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。

低用量ピル服用中の飲酒に関する注意点は?

嘔吐や下痢に注意

低用量ピルを服用してから3時間以内に嘔吐や下痢をした場合は、薬の成分が十分に吸収されず、効果が薄れてしまう可能性があります。そのため、服用から3時間以内に嘔吐や下痢をしてしまった場合は、すぐに追加で1錠服用しましょう。ただ、軟便程度であれば問題ないといわれています。

また、下痢や嘔吐が続いている場合は、症状が改善してから最低7日間は別の避妊法も併用するようにしましょう。

酔って低用量ピルの服用を忘れない

飲み忘れ防止や、適切に効果を得るためにも、低用量ピルは毎日決まった時間に飲む必要があります。そのため、酔って飲み忘れたりしないように注意しましょう。

ただし、数時間のずれなら問題ないといわれています。当日中に飲み忘れに気づいたら、早めに飲むようにしましょう。

1日分を飲み忘れてしまった場合は、気づいたときにすぐに前日分を1錠服用し、当日分も通常の時間に服用します。(その日は2錠服用することになります。)また、飲み忘れに気づいた時間が普段飲んでいる時間と近い場合は、いつもの時間に2錠まとめて飲んでも大丈夫です。

血栓症リスクに注意

低用量ピルの服用によって血栓症の発症リスクが高まるとされています。血栓症とは、血管の中に血栓(血のかたまり)ができ、血管がつまってしまう病気です。

お酒には利尿作用があるほか、アルコールの分解のためにも水分を使うため、脱水につながりやすいです。水分が不足すると血流が悪化したり、血栓ができやすくなったりして血栓症のリスクが高まります。つまり、過度な飲酒は血栓症リスクをさらに高める可能性があるのです。

長時間の移動の際はアルコールを控える

長時間の移動時は、長時間の同一姿勢、機内の低湿度、脱水などで血栓症リスクが高まります。エコノミークラス症候群という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは血栓症の一種で、飛行機に限らず、車、電車、船でも起こることがあります。

低用量ピルを服用している方は、通常よりも血栓症のリスクが高まっているため、長時間の移動時は特に血栓症の対策を行うことを心がけましょう。具体的には、脱水予防のため、水分を十分にとる、アルコールは控えることなどが基本です。さらに足などを動かす簡単な運動も行うのがおすすめです。

アフターピル服用後最低2時間は飲酒を避ける

アフターピル服用時は、飲酒による嘔吐で効果がなくなったり、副作用が強く出たりする可能性があるため、服用後最低2時間は飲酒を避けましょう。

アフターピルとは、避妊に失敗した時などに飲む緊急避妊用の薬です。アフターピルの避妊効果を得るためには、性交後72時間以内(種類によっては120時間以内)でできるだけ早く薬を飲む必要があります。

しかし、アフターピルの成分が体に吸収される前に嘔吐してしまうと、十分な効果が得られなくなる場合があります。2時間以内に吐いてしまった場合は追加服用が必要なこともあり、タイムロスになってしまうというデメリットもあります。さらに、アフターピルの副作用として嘔吐や吐き気があらわれることがあり、飲酒によって程度が悪化する可能性もあります。そのため、アフターピル服用時は飲酒のタイミングなどに注意しましょう。


参考文献

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf

https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/kinkyuhinin_shishin_H28.pdf

http://www.jsognh.jp/common/files/society/guide_line.pdf