陰部のできものの原因
陰部にできものができた場合、考えられる原因は性感染症をはじめとする病気、もしくは全く治療の必要のない脂肪の塊などが挙げられます。前者の場合は早めの対処が必要なので、まずはそれぞれの特徴を紹介します。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルス(HSV)というウイルスに感染して発症するものです。水ぶくれやブツブツとしたできものができるのが特徴で、かゆみや強い痛み、ただれが見られることもあります。
このウイルスは性行為によって感染することもありますが、タオルの共用などでも感染しうるため、子どもでも発症することがあります。
人生で初めて感染して症状が出る時は、発熱や、リンパの腫れが生じることもあります。また、抗ウイルス薬を使って治療を行いますが、ウイルスが完全になくなるわけではありません。一度感染するとウイルスは体内にずっと存在し、免疫力が低下したときなどに再発します。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じる性感染症です。イボのようなできもの(ブツブツ)ができます。イボはピンクや褐色をしており、鶏のトサカやカリフラワーのような見た目が特徴。かゆみや違和感を覚えることもあります。
男性は陰茎や亀頭、包皮、陰嚢など、女性は外陰部や腟、子宮頸部など、男女ともにさまざまな場所にイボができます。また、肛門やその周辺にできることもありますが、肛門や腟内の場合は確認が難しいため、発見が遅れることも少なくありません。
クリニックフォアでは外用の抗ウイルス薬による治療を行っていますが、外科的切除やレーザー治療、液体窒素療法などが必要となるケースもあります。
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌の感染によって生じる性感染症です。近年、感染増加が問題になっています。
梅毒の特徴は、人によって症状のバリエーションがかなり多く、症状だけでは梅毒に気づくのが難しいことです。典型的な症状についてお示しします。
まず、感染から3~6週間ほどすると、感染した部位(陰部または口など)にしこりのようなできものができます。基本的に痛みはありませんが、痛みを感じる人もいるようです。
しばらくするとしこりは消えますが、3ヶ月ほどすると今度はバラ疹と呼ばれる赤い斑点などが、手や足といった全身に現れます。このとき、陰部では扁平コンジローマという平らなイボが現れることもあります。
クリニックフォアでは抗菌薬の筋肉注射、もしくは内服薬による治療を行っています。
性器伝染性軟属腫(水いぼ)
ポックスウイルスによる皮膚の病気です。ピンク色または白色の、2~5㎜ほどのイボがたくさんできます。中心がくぼんでいて、つまむと分泌物が出るのが特徴。
このウイルスはタオルなどを介して感染することがあり、子どもに多い病気ですが、大人も性行為などによって感染することがあります。
また、自然治癒することが多いですが、塗り薬、レーザーや電気メスによる治療、凍結療法などの選択肢もあります。
疥癬
ヒゼンダニ(疥癬虫)が皮膚に寄生することが原因となる皮膚の病気です。陰部に激しいかゆみを伴う赤いぶつぶつがたくさんできます。しこりができることもあります。
ヒゼンダニは、性行為だけでなく、寝具や衣類を介して感染することもあります。治療は、飲み薬や塗り薬などを使うことが一般的です。
毛包炎・毛嚢炎
毛穴の奥で細菌(黄色ブドウ球菌など)が増殖し、毛根の周りの毛包に炎症が起こるものです。陰毛で生じると、陰部にできものができます。にきびのように赤くはれ、膿や痛みを感じることも。そして、進行すると硬いしこり状になり、赤み、痛み、熱感がより強く生じるようになります。さらに進行すると膿がたまり、倦怠感や発熱することもあるため注意が必要です。
原因として挙げられるのは、ムダ毛の処理や、生理、汗など。治療は抗菌薬の外用や内服のほか、膿がたまっている場合は切開が必要なこともあります。
尿道カルンクル
尿道カルンクルは、尿道の出口にできる良性のできものです。異物感、出血、かゆみを伴うケースもあります。更年期以降の女性に多いのが特徴です。
治療はステロイドの塗り薬を使うことが一般的ですが、ステロイドの効果がなかったり、できものの大きさや症状によっては手術となることもあります。
バルトリン腺嚢胞
女性はバルトリン腺嚢胞といって、外陰部や腟にできものができることがあります。バルトリン腺とは、腟の左右に存在する分泌腺のことです。
初期はできものが見られますが、痛みはありません。しかし、バルトリン腺の開口部が炎症などでつまってバルトリン腺の内部に粘液が溜まり、細菌(大腸菌など)が感染すると膿がたまります。この状態をバルトリン腺膿瘍やバルトリン腺炎といいます。
膿瘍に進行すると、痛み、腫れ、熱感、不快感、発熱などが生じ、歩くときなど日常生活に支障をきたすこともあります。
小さな嚢胞だけなら必ずしも治療は必要ありませんが、感染が起きたり、日常生活に影響が出たりするような場合は治療を行います。その場合、抗菌薬や消炎鎮痛剤の投与、中の液体を注射器で吸い出す処置、切開して中身を取り除くなどの治療の選択肢があります。
また、何度も繰り返す場合は袋ごと完全に取ってしまう治療を行うこともあります。
皮下腫瘤(しこり)
その名の通り、皮膚の下に生じるしこりです。良性と悪性があり、悪性のものとしては有棘細胞がんや悪性黒色腫といった皮膚のがんが挙げられます。悪性の場合はほくろのように黒っぽい色をしていることが多いです。
悪性であれば手術や放射線治療、化学療法(抗がん剤)などが選択肢となりますが、良性の場合は必ずしも治療は必要ではありません。大きくて気になるような場合は、手術で切除することがあります。
粉瘤
粉瘤は、古い角質と皮脂が皮膚の下にたまって、嚢腫(袋状の構造物)となるもの。やや盛り上がった小さなしこりです。
中身を押し出すと、悪臭のする膿が出てくることも特徴です。また、粉瘤の中で強い炎症が起こると赤み、腫れ、痛みが生じます。
軽度なら飲み薬で改善しますが、悪化して膿がたまった場合は切開が必要となることもあります。
イボなど
病気などではなく、自然に生じる小さなブツブツなどの可能性もあります。この場合は基本的に治療は必要ありませんが、気になる場合は電気メスなどで除去できます。
たとえば真珠様小丘疹、包皮腺、フォアダイス、腟前庭部乳頭・外陰部乳頭症などがあります。
真珠様小丘疹
名前の通り、真珠のような小さいぶつぶつができます。男性は亀頭の根元の外側を囲むように輪っか状にでき、女性は腟前庭から小陰唇にかけて、左右対称にできることが一般的です。
包皮腺
タイソン腺ともいいます。男性の包皮小帯(いわゆる裏スジ)の両側に、白いブツブツができるのが特徴です。
フォアダイス
中身は脂肪で、白いぶつぶつとしたできものができます。陰茎や小陰唇に存在することがあります。
尖圭コンジローマの初期症状に似ていて見分けがつかないことがあるので、気になるようであれば受診したほうがよいでしょう。
腟前庭部乳頭・外陰部乳頭症
腟前庭部(小陰唇の内側)や外陰部に1mm前後の小さな突起物が左右対称にできるものです。
こちらも尖圭コンジローマに似ているため、気になるときは受診しましょう。
陰部にできものがあるときの対処法
陰部のできものは、性感染症や毛包炎といった治療が必要な病気のこともあれば、全く問題ないブツブツなどの可能性もあります。自己判断は難しいので、気になる場合は受診しましょう。性感染症を扱う病院、皮膚科、婦人科、泌尿器科などが選択肢となります。
なお、以下のような場合は性感染症や治療が必要な病気の可能性が高いです。早めに受診しましょう。
- パートナーにも同じような症状が出ている
- パートナーに性感染症の疑いがある
- 痛みがある
- 性行為後に痛みが現れ数日続いている
- 腫れが数日続いている
- 腫れがどんどんひどくなっている
陰部のできものの予防法
自然にできるブツブツなどを予防することはできませんが、感染症などであればある程度予防が可能です。清潔にしたり、性感染症予防を講じたりしましょう。
陰部を清潔にしておく
皮膚を傷つけない(過度な刺激を与えない)、蒸れないようにする、清潔にしておくことが大事です。
そのため、しめつけの強い下着を避け、通気性がよく刺激が少ない素材(綿など)を選びましょう。入浴後はよくふくこと、排尿排便後はしっかりふきとることが大事です。ただし、強くこすると傷になって逆効果になるので注意しましょう。
性感染症の感染者と性行為をしない
性感染症は、感染者との性行為によって感染することが一般的です。そのため、感染が分かっている人とは性行為をしないでください。オーラルセックスで感染することもあります。
また、日ごろからコンドームの使用を心がけましょう。
陰部のできものが気になる場合はクリニックフォアへ
クリニックフォアでは、オンラインで性感染症の検査と治療を行っています。キットを使って自宅で検査を実施していただき、検査結果をもとにお薬を処方します。基本的に全てオンライン上でやり取りが完結するので、忙しい方や、受診のハードルが高いと感じる方にもご利用いただきやすくなっています。
一部、対面でなければできない検査や治療もありますが、まずはご相談ください。