肛門の痛みの原因
肛門は腸と皮膚の境目部分にありますが、痛みを感じる神経は腸の粘膜にはないため、肛門が痛いと感じるときは、皮膚に異常が生じていることが多いです。なかでも痔のケースが多いですが、他の病気の可能性もあるため、詳しく見ていきましょう。
いぼ痔
肛門に腫れと痛みがある場合はいぼ痔の可能性があります。いぼ痔とは、肛門周辺の血流が悪くなり、うっ血により腫れた状態のことをいいます。
いぼ痔にも種類があり、特に痛みを感じやすいものとして以下の2つが挙げられます。
- 血栓性外痔核:血栓を伴ういぼ痔で、いぼが大きくなると急激に痛みが強くなる。血栓を摘出して治療。
- 内痔核嵌頓(ないじかくかんとん):内痔核(肛門の内側(粘膜側)にできるいぼ痔)の中でも、肛門の外に出て戻らなくなり、血栓ができて腫れあがっているもの。さまざまな大きさになります。(1㎝のものもあれば8cmのものあります。)
内痔核の原因は、便秘、排便時に強くいきんでしまうこと、長時間の同じ姿勢、妊娠や出産などと言われています。一方、外痔核の原因は、便秘、下痢、刺激物(アルコールやからい物)の食べすぎ、長時間歩くまたは座ったままのことが多い、ストレス、冷えなどと言われています。
切れ痔
腫れがない場合は切れ痔の疑いがあります。排便時に痛みが増す、トイレットペーパーに血が少しつくといったことが起こるときは、切れ痔の可能性が高いでしょう。
切れ痔は、便秘で硬い便を無理に出そうとしたりして起こるものです。悪化すると切れ目が深くなって炎症し、潰瘍やポリープで肛門が狭くなることもあります。
塗り薬で傷にアプローチし、予防としてスムーズな排便となるように飲み薬でサポートするといった治療法が一般的です。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲膿瘍は、肛門のまわりに膿がたまっている状態です。痛みだけでなく腫れを伴うこともあります。
原因は、肛門の皮膚と粘膜の境目にあるくぼみで細菌感染が起こり、化膿すること。下痢や軟便があるとき、免疫力が低下しているときになりやすいと言われています。また、後述する痔ろうになることもあります。
治療は、切開して膿を出すことによって行うことが一般的です。
痔ろう
肛門周囲膿瘍などが繰り返され、細菌の入り口と膿の出口がトンネルのようにつながった状態を痔ろうと言います。肛門括約筋が強い男性の方がやや多いとされています。
痔ろうになると肛門のまわりが腫れて痛くなり、場合によっては熱が出ることもあります。膿が出るので下着が汚れるのも特徴です。原因は、免疫力低下(ストレスなど)や下痢など
と考えられています。
痔ろうになると手術が必要になるため、痔ろうになる前に適切な治療を受けることが大事です。
粉瘤
粉瘤は、古い角質と皮脂が皮膚の下にたまって、嚢腫(袋状の構造物)となったもののことです。体のどこにでもできますが、中でもおしりはよくできる部位のひとつです。
見た目はやや盛り上がった小さなしこりで、中身を押し出すと、悪臭のする膿が出てくるのが特徴。
粉瘤の中で強い炎症が起こると赤み、腫れ、痛みが生じることがあります。
軽度なら抗生物質を飲むことで改善が見込めますが、悪化して膿がたまった場合は、切開が必要となることもあります。
直腸粘膜脱
直腸粘膜脱は、直腸を支える組織が弱くなることで、粘膜が肛門に下がってしまった状態です。粘膜が神経を刺激して、にぶい痛みが出ることがあります。治療が必要な場合は、直腸や粘膜を切除することが一般的です。
筋肉痛
肛門の筋肉(肛門挙筋)の緊張が長期間続くと、筋肉痛になることがあります。長時間にわたる運転、デスクワーク(座った姿勢)が主な原因とされています。
筋肉痛はしばらくすれば治るでしょう。筋肉痛にならないように、普段から適度な休憩や、体を動かす時間をとることを心がけてください。
がん
直腸や肛門のがんの恐れもあります。直腸がん、肛門がんともに、便に血が混じったり、排便時に血が出ることがあります。
治療は、がんの状態などに合わせて、手術、抗がん剤治療、放射線治療のいずれかを選択したり、組み合わせて実施します。
性感染症
肛門に痛みが出る性感染症はあまりありませんが、かゆみやできものができることはあるため、人によっては痛みを感じることもあるでしょう。中でも肛門ヘルペスは痛みが出ることも珍しくない病気です。
肛門に症状が出ることのある性感染症は以下の通りです。
病名 | 肛門の症状 | その他の症状 | |
肛門ヘルペス | ・痛み・違和感・かゆみ・少量の出血など | ・便通異常・排便困難・下痢・便秘など | |
尖圭コンジローマ | ・いぼ・痛みを伴うことはあまりない | ー | |
性器カンジダ症 | 腟から肛門にかけての強いかゆみ | おりものがヨーグルトのような状態になる | |
梅毒 | 第1期(感染から3週間経過した頃) | ・硬いしこりができ、中心部分がただれ、こすると透明な液体が出る・痛みを伴うことはあまりない | リンパの腫れなど |
第2期(感染からおおむね3ヶ月以降) | 扁平コンジローマ(平らなしこりのようなもの)ができる | ・顔面や手足のバラ疹(薄い赤みのある発疹・手のひらや足の裏に現れる赤みや隆起・発熱・食欲不振・悪心・疲労感・頭痛など | |
いんきんたむし | ・強いかゆみ・湿疹 | 太もにかけても強いかゆみや湿疹が生じることがある |
肛門の痛みの予防法
肛門の痛み原因の多くは痔であり、便秘や下痢がきっかけとなることが多いため、ある程度予防が可能です。具体的な予防法は以下の通りです。
生活習慣を改善する
規則正しい生活や、便秘にならないための食事を心がけましょう。食物繊維をしっかりとるのがおすすめです。また、刺激の強いもの(からいものなど)は肛門を刺激してうっ血につながることがあるので避けてください。
ストレスをためず、適度に運動することも大切です。血流がよくなるほか、ストレス解消や腸が活発になるといったメリットもあります。
姿勢に注意する
長時間座ったまま、立ったままはうっ血の原因となるためよくありません。時折姿勢を変えたり、ストレッチをしたりすることを心がけましょう。
おしり・からだを温める
うっ血予防と肛門の清潔を維持するために、湯船にしっかりつかりましょう。あたためることでうっ血予防・改善が期待できます。入浴以外にも、体や腰などを冷やさないように心がけてください。
ただし、腫れて痛みがあるときは逆に患部を冷やしたほうがよいとされています。
性感染症予防の徹底も!
性感染症によって肛門に痛みが生じることもあります。性感染症予防のためにはコンドームの使用がよいとされています。ただし、オーラルセックスなどでも感染するため、コンドームをつけたからといって確実に感染予防ができるわけではありません。
また、性感染症の患者や、疑わしい症状のある人との性行為は避けましょう。パートナーが感染していることがわかったら、自分は無症状でも受診して検査を受けてください。
クリニックフォアには性感染症外来・オンライン診療あり
クリニックフォアでは、対面診療とオンライン診療で性感染症の検査と治療を行っています。
オンラインの場合はキットを使って自宅で検査を実施していただき、検査結果をもとにお薬を処方します。基本的に全てオンライン上でやり取りが完結するので、忙しい方や、受診のハードルが高いと感じる方にもご利用いただきやすくなっています。
一部、対面でなければできない検査や治療もありますが、まずはご相談ください。