色素沈着って何?メカニズムとは
色素沈着は、メラノサイトという色素細胞から分泌されたメラニン色素が、皮膚に沈着して黒くなるものを言います。主な原因は炎症と摩擦ですが、メイクなどの色素が沈着しているケースもあります。
実はメラニンは、紫外線によるダメージから体を守ったり、細胞を解毒したりする役割を担っています。そのため、肌に炎症や刺激が生じると、肌が自分で自分を守るために、メラニンがつくられるのです。
また、新しい細胞を作って炎症や刺激によるダメージから回復しようとするときに、メラニンを生成する細胞(メラノサイト)が刺激されることも、メラニン生成の原因となります。
通常は肌のターンオーバーによってメラニンが排出されるのですが、排出が追いつかないほどのメラニンがつくられたり、ターンオーバーのサイクルが遅くなったりすると肌にメラニンが残って色素沈着となってしまうのです。
色素沈着の種類と原因
色素沈着は、炎症が原因となる「炎症後色素沈着」、摩擦が原因となる「摩擦黒皮症」のほか、紫外線が原因となるいわゆるシミや、メイクなどの色素・化学物質によるものなどに分類できます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
炎症【炎症後色素沈着】
炎症後色素沈着は、ケガややけどなどで炎症が起きた後に、茶色や黒く跡が残ってしまうものです。ニキビ跡にもこのタイプがあります。
また、アトピー性皮膚炎で炎症が繰り返された結果、色素沈着をすることもあります。アトピー性皮膚炎の肌はバリア機能が低下しており、刺激を受けやすいため、余計に色素沈着しやすいのです。
炎症後色素沈着のよくある原因としては、以下のようなものがあります。
- ケガ(傷)
- やけど
- 虫刺され
- 湿疹
- ニキビ など
摩擦【摩擦黒皮症】
摩擦黒皮症とは、強い摩擦を受けたり、長年にわたって摩擦などの刺激を受け続けたりした結果、その部分が黒っぽくなるものです。顔よりも体(特に首、鎖骨部分、肋骨部分、鎖骨部分など)に多い傾向があります。
前述の通り、皮膚が摩擦や刺激でダメージを受けると、刺激から守るためにメラニンがたくさん分泌されますが、それだけでなく、角質が厚くなることもあります。そのため、過剰なメラニンや、厚くなった角質が蓄積して黒ずんで見えるのです。
摩擦黒皮症のよくある原因としては、以下のようなものがあります。
- カミソリなど、脱毛の際の刺激
- メイク落としや洗顔による過度な刺激
- 硬いボディタオルなどによる刺激
- 過度なマッサージなどによる刺激
- 下着や衣服の締め付け
- ひじやひざをつく行為
- 目をこする行為
- 掻きこわし
また、上記のような行為で炎症が起き、炎症後色素沈着になるケースもあります。
紫外線【いわゆるシミ】
紫外線はメラニン生成の大きな原因です。
たとえば加齢や紫外線によって生じるシミは「老人性色素斑」や「日光性色素斑」と言いますが、これもメラニンが肌に残ったものなので、色素沈着と考えることもできます。ただし、医学的にはシミは色素病変の総称であり、炎症後色素沈着などはシミの一種となります。
なお、シミは境界がはっきりとしており、丸い形が特徴。大きさは数センチ程度になることもあります。
また、炎症が起きた後に過度に紫外線を浴びると、炎症後色素沈着の悪化にもつながるので注意しましょう。シミの一種であるそばかすや肝斑なども、紫外線によって悪化することがあります。
メイクなどの色素・化学物質
メイクの色素が残って沈着しているケースもあります。
たとえば口紅をきちんと落とさないと唇に色素沈着が起こることがありますし、アイシャドウやマスカラなどのアイメイクをきちんと落とさないと、目の周りに色素沈着が起こることがあります。
このような色素沈着を防ぐためには、ポイントメイク用のリムーバーを使うとよいでしょう。ただし、しっかり落とすことは大事ですが、こすりすぎないでください。こすりすぎると摩擦による色素沈着につながってしまいます。
なお、メイクに含まれる化学物質によってアレルギー反応が起き、炎症が生じて色素沈着の原因となることもあります。
色素沈着のその他の原因
ここまでに紹介した炎症、摩擦、紫外線、化学物質以外に、乾燥やストレス、ホルモンバランスの乱れも色素沈着の原因となります。詳細は以下の通りです。
乾燥
乾燥はターンオーバーの乱れにつながるため、メラニンが排出しにくくなってしまいます。また、肌のバリア機能が低下して紫外線や刺激などの影響を受けやすくなり、色素沈着しやすくなることもあります。炎症の原因にもなりえるため、注意が必要です。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスが乱れるとプラスミンという酵素が増えます。プラスミンはメラノサイトを活性化し、メラニンの生成を促進してしまうため、色素沈着の原因となるのです。
妊娠・出産を機にシミや黒ずみが増えることがあるのも、これが原因だと考えられます。
ホルモンバランスの乱れによるシミとしては、両頬などにモヤっと広がる「肝斑」が代表的です。
ストレス
ストレスによってメラニンの生成が増えることがわかっています。さらにストレスは肌のターンオーバーの乱れにもつながり、メラニンも排出されにくくなってしまうため、色素沈着しやすくなります。
また、ストレスがホルモンバランスの乱れの原因となることもあります。
色素沈着の治療法
摩擦黒皮症は、刺激の原因となる行為をやめれば徐々に改善されることが多いですが、それ以外の色素沈着は、セルフケアだけで治すのは難しいケースが多いです。特に、年齢を重ねるとターンオーバーのサイクルも遅くなっていくので、より治りにくくなります。
早く、できるだけ高い効果を得たいという場合は、美容皮膚科などで治療を受けるのがよいでしょう。色素沈着に効果が期待できる代表的な治療法は以下の通りです。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは酸の力で肌表面の古い角質を溶かし、ターンオーバーを促す施術です。正常なターンオーバーに整えることで、色素沈着の原因であるメラニンの排出を促進するため、シミだけでなくくすみやニキビ跡の改善にも効果が期待できます。
ケミカルピーリングで使用する主な酸の種類は以下の通りです。
酸の種類 | 作用 |
AHA(グリコール酸) | サトウキビやリンゴなどに含まれる水溶性の酸。低い濃度で試せるため、肌への負担が少ない傾向 |
BHA(サルチル酸) | 古い角質や余分な皮脂を取り除く。毛穴詰まりやニキビの改善にも効果が期待できる |
TCA(トリクロロ酢酸) | 表面の角質だけでなく、真皮まで届き、コラーゲンの増生を誘導。濃いシミやクレーター状のニキビ跡の改善も期待できる |
ケミカルピーリングはシミやくすみだけでなく、ニキビへの効果も期待できる施術です。ニキビとニキビ跡が両方存在する場合でも、ニキビ跡の改善だけでなく、今あるニキビの炎症後色素沈着の予防にもつながります。
副作用として、皮膚が赤くなったりカサカサすることもありますが、数日で治まることがほとんどです。また、ケミカルピーリング後は肌が敏感になっているため、紫外線対策と保湿を十分に行ってください。
光治療(IPL)
光治療は、紫外線を含まない特定の波長の光を照射することで、肌に優しくアプローチする治療法です。皮膚の浅い層に広範囲で作用し、シミやそばかすの改善が期待できます。
今までレーザー治療では反応しにくかった薄いシミや顔全体のくすみに効果を発揮します。メラニンだけでなく、ヘモグロビンにも作用するため顔の赤みの改善にも効果が期待できます。
また、光の波長が長いほど肌の深部まで届くため、複数の波長を使えば表面の色素沈着だけでなく、真皮層のコラーゲン生成を促すなど、幅広い肌トラブルに対応が可能です。
色素沈着以外にも以下のような症状に効果が期待できます。
- 赤ら顔、酒さ
- 肌質の改善
- 毛穴の引き締め
- しわ、たるみの改善
- くすみ改善
また、レーザーと比べて威力が穏やかなため、照射後の炎症色素沈着の発生率が低いとされています。
光治療のダウンタイムは少なく、施術後すぐにメイクが可能です。ただし、一時的に赤みや乾燥、かゆみが生じることがあります。施術後は刺激のある化粧品の使用は避け、紫外線対策をしっかりと行うことが大切です。
レーザートーニング
レーザートーニングとは、低出力のレーザーを照射しメラニンを少しずつ分解する施術です。1回の治療では効果を実感しにくいですが、回数を重ねることで肌の変化を感じられるようになります。
また、肌の負担が少ないレーザーを均一に照射するため、今までレーザー治療ができなかった肝斑の治療にも有効です。
肝斑は少しの刺激でもメラニンの原因であるメラノサイトが活性しやすいため、従来のレーザー治療のような強い照射ではかえって肝斑を悪化させる可能性がありました。弱い出力で少しづつメラニンを取り除くレーザートーニングが登場したことで、シミと肝斑を同時に治療することができるようになったのです。
また、シミや肝斑以外にも毛穴の開きやくすみにも効果が期待でき、色味だけでなく肌質の改善も期待できます。
なお、レーザートーニングの施術中は輪ゴムではじかれたような痛みを感じますが、ダウンタイムはほぼありません。メイクや洗顔も当日から可能です。ただし、レーザー照射後は赤みがでることもあります。また、肌が乾燥しやすいため、ニキビや湿疹、かゆみが生じる恐れもあります。保湿力の高いスキンケアアイテムを使用し、いつも以上にしっかりと保湿を心がけてください。
外用薬・内服薬
医療機関で処方される外用薬や内服薬で色素沈着の改善を目指すのも一つの方法です。
外用薬で代表的な成分がトレチノインとハイドロキノンです。トレチノインは角質を剥がして皮膚の再生を促すとともに、メラニンの排出も促進します。高い効果が期待できる一方で、使い始めの時期は、レチノイド反応やA反応と呼ばれる、赤みや皮むけが起きることが多いです。このように強い副作用があるため、市販されておらず、医療機関でしか処方されません。医師の指示に従って正しく使用しましょう。
ハイドロキノンはメラニンの生成に関わるチロシナーゼという酵素の働きを抑制することでメラニンの生成を抑え、シミや色素沈着を改善する成分です。こちらは市販品にも含まれていますが、医療機関で処方されるものよりも成分量が少ないことが多いです。
また、内服薬で効果が期待できる成分としては、以下のようなものがあります。
成分 | 期待できる効果 |
ビタミンC | メラニンの生成を抑える |
ビタミンE | 肌の新陳代謝を高めて色素沈着などを改善、予防 |
トラネキサム酸 | ・炎症を抑える ・メラニンの生成を抑える ・肝斑の改善 |
なお、医療機関で処方されるお薬は、他のお薬や治療法と同様、副作用のリスクもあるためよく理解した上で使いましょう。
色素沈着の予防・改善方法【セルフケア】
色素沈着をセルフケアで完全に治すことは難しいですが、色素沈着ができないように予防したり、これ以上悪化しないようにしたりするためにできることはいくつかあります。以下のようなポイントを押さえるとよいでしょう。
紫外線対策
紫外線は、メラニンを増やす直接的な原因となります。色素沈着をはじめとするシミの原因になるため、日焼け止めなどを使ってしっかり対策しましょう。
紫外線は、ターンオーバーの乱れや炎症後色素沈着の悪化にもつながるため、十分な注意が必要です。
刺激や摩擦を避ける
刺激や摩擦によって摩擦黒皮症が生じることがあります。そのため、肌を強くこすったり、刺激となるような衣服を身につけたりするのはできるだけ避けましょう。
スキンケア・保湿を十分に行う
乾燥は、ターンオーバー乱れ、バリア機能の低下、炎症など、肌にさまざまな悪影響を与えます。そのため、十分に保湿することが大事です。
なお、メラニンの生成を抑えたり、排出を促進したり、ターンオーバーを促進したりする成分を取り入れるのもよいでしょう。代表的な成分には、トラネキサム酸、ハイドロキノン、ビタミンC誘導体、レチノール、プラセンタなどがあります。
生活習慣を改善する
肌のターンオーバーを整えるために、日々の生活でできることはいろいろあります。たとえば、栄養バランスのよい食事をとる、ストレスをためない、規則正しい生活をする、十分な睡眠をとる、喫煙は控えるといった行動を心がけましょう。
食べ物は、以下のような栄養素を含むものが特におすすめです。
栄養素・成分 | 特徴、期待できる効果 | 多く含まれる食品 | |
ビタミンA | ・抗酸化作用が高い ・皮膚や粘膜を健やかに保つ | 緑黄色野菜(ほうれん草、にんじん、かぼちゃ、トマトなど) など | |
ビタミンC | ・抗酸化作用が高い ・コラーゲンの生成に関わる ・皮膚や粘膜を健やかに保つ | ・果物(レモン、イチゴなど) ・緑黄色野菜(ブロッコリー、ピーマンなど) ・いも類 など | |
タンパク質 | 皮膚の土台となる基本的な栄養素 | ・肉 ・魚 ・卵 ・乳製品(牛乳、チーズなど) など |
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※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。
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