急な動悸、息苦しさはストレスが原因?こころと自律神経の関係について、医師が解説します。

運動をしたわけではないのに急に息苦しい、息切れがするとなると、病気ではないかと心配される方も少なくないでしょう。運動をしているわけではないのに息が苦しくなる時にはストレスが関係している可能性もあります。

今回はストレスと息が苦しくなることの因果関係についてご紹介します。

仕事中に動悸がしたり息苦しくなるのは、ストレスが原因?

仕事中デスクワークをしているだけなのに急に動悸がする、オフィスを歩いていただけなのに息苦しくなるという場合には、ストレスも関係している可能性が高いです。
ストレスでなぜ動悸がしたり、息苦しくなるのか。この原因はいくつか考えられます。

ストレスによって起こった身体化

1つ目はストレスによって起こった身体化による動悸や息切れです。身体化とはストレス反応が身体に現れたものです。心理的ストレスが加わることにより脳の機能に影響を及ぼし、結果として冠動脈が一時的な痙攣を起こすことがあり、これが動悸や息苦しさの原因の一つであるといわれています。

ストレスによる自律神経失調症

2つ目はストレスによって自律神経失調症となってしまっていることです。自律神経失調症とは自律神経のバランスが崩れてしまうことによってさまざまな症状が出現する病気です。そもそも自律神経は、例えば暑い時に汗をかいたり寒い時に震えるといったように、自分の意志と関係なく身体が常に正常に保たれるようにバランスを司っています。ですが、この自律神経が乱れるとこういった指示を身体の調子に合わせて送ることができず、結果として体に不快をきたすさまざまな症状が出現します。

自律神経失調症で出現する症状は全身に渡って見られ、一か所だけでなく重複して見られることもあります。ですので、動悸や息切れが起こるという方もいれば、めまいが起こるという方、腹痛や下痢が起こる方もいたり、肩こりが起こったりする方もいます。

過緊張

3つ目は過緊張によるものです。これは特に仕事をしているビジネスマンに多い傾向のあるものです。例えばプレゼンテーションや重役揃いの会議、大役を任されている時など大切な仕事の時に緊張するということは誰しもあることです。しかし、この過緊張の場合、緊張状態が長きにわたって持続し、自分で緊張を緩めることができないという状態になり、自律神経の乱れにつながるものと考えられています。過緊張は職場だけでなく家でも常に緊張をしている状態の方が多いという特徴があります。

これ以外にもストレスによってパニック障害や不安障害などの精神疾患にかかり、結果として動悸や息苦しさを誘発しているということもあります。

実は病気が隠れているかも。チェック方法は?

動悸や息苦しさには病気が隠れている可能性もあります。動悸や息苦しさが出てくる病気は循環器系の病気が多く、中には放置していると命取りになる可能性もありますが、素人が判断することは非常に難しく、やはり医療機関で検査を受けることが良いと考えられます。

ですが、ストレスか病気かを手軽にチェックしたいという方もいるかもしれません。ストレスか病気かのチェックとして特に重要視しておきたいのは緊急性です。

緊急で病院を受診された方がよいタイプは「脈拍数が1分間に40回以下で、身体を動かす時に強い息切れを感じる」という場合と「動悸が突然始まり突然起こる」というタイプです。これらの動悸や息苦しさに当てはまるという方は病院を受診しましょう。

また、ストレスによる動悸や息切れは放置しているといずれ循環器の病気へと移行することがあると知られています。例えば、自律神経が乱れ特に交感神経という神経が活発となることで心臓に負担をかけ、もともと心臓が悪かったという人の心臓の病気が悪化するということが考えられています。

さらに、ストレスが引き金となって動悸や息苦しさを主症状とする病気になっている可能性もあります。社会的ストレスがある人、抑うつ症状のある人は、そうでない場合に比べて、約1.5倍心筋梗塞になりやすいということが分かっています。つまり、今はストレスが原因であろうと、放置してしまうといずれ本当に心臓の病気になってしまう可能性があるのです。そのため、ストレスが原因であろうと考えられる場合であっても、症状が長く続く場合には必ず医療機関で検査を受けられることをおすすめします。