日常生活に支障をきたす「慢性疲労症候群」とは?症状、治療について、医師が解説します。

慢性疲労症候群は日常生活にも支障をきたすものであるといわれ、できるならば改善をさせておきたいものです。ですが、慢性疲労症候群がどのようなものであるのかが分からなければ改善することは難しいでしょう。

今回は、慢性疲労症候群とは何か、また原因と改善の方法を詳しくご紹介します。

慢性疲労症候群とは?症状がどれくらい続いたら慢性?

慢性疲労症候群とは、身体診察や臨床検査で客観的な異常が認められない状況で、日常生活を送れないほどの重度の疲労感が長期間続く状態のことをいいます。20~50代にかけて多く発症し、男性よりも女性に多く見られる傾向にあります。

疲労というと誰でも感じるものでありますし、疲労は目に見えないため慢性疲労症候群がどのくらいの疲労であるかを評価することが難しいことでしょう。

慢性疲労症候群の基準を厚生労働省が定めています。慢性疲労症候群とは、以下の状態に当てはまることを言います。

必須項目→以下の2つは必ず満たしていなければ、慢性疲労症候群と認められません。

①生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返すこと

②慢性疲労の原因と考えられるような疾病を除外すること

以下の症状のうち8つが6カ月以上にわたり持続または繰り返し生じている

1. 微熱(腋窩温37.2~38.3℃)ないし悪寒 

2. 咽頭痛 

3. 頚部あるいは腋窩リンパ節の腫張 

4. 原因不明の筋力低下 

5. 筋肉痛ないし不快感 

6. 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感 

7. 頭痛

8. 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛 

9. 精神神経症状(いずれか1つ以上)羞明、一過性暗点、物忘れ、易刺激性、錯乱、思考力低下、集中力低下、抑うつ

10. 睡眠障害(過眠、不眠)

11. 発症時、主たる症状が数時間から数日の間に発現

または上記の症状が6つおよび以下の症状が2つ当てはまる場合

1. 微熱

2. 非浸出性咽頭炎

3. リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)

6ヶ月間これらの症状が見られていた場合には、慢性疲労症候群の可能性があると考えるべきでしょう。

原因はなに?

いくつかの研究によると、精神的及び身体的なストレスが関係している可能性があると考えられています。また、「几帳面な人」「真面目な人」「正義感が強い人」などは慢性疲労症候群になりやすいと考えて特に注意が必要と言えます。

病気が潜んでいることも?

慢性疲労症候群は症状が多岐にわたるということもあり、今出ているその症状が、慢性疲労症候群によるものか、病気によるものかに気づくことが難しい傾向にあります。

慢性疲労症候群と似ている病気としては、悪性腫瘍、自己免疫疾患、急性・慢性細菌感染症、HIV感染症、慢性炎症性疾患、神経筋疾患、内分泌疾患、呼吸器疾患、循環器疾患、消化器疾患などがあり、内科、外科と幅広い病気が疑われます。特に、精神面の症状で見てみるとうつ病と似ているため、医療者でも気づきにくいこともあります。

慢性疲労を改善する生活習慣とは?

慢性疲労症候群は原因が不明ということもあり、特化した治療法がありません。ですので、病院へ受診しても具体的な症状が出ていれば対処療法として薬が処方されることもありますが、根本的な治療法はありません。

慢性疲労を改善する生活習慣として最もおすすめしたいのが睡眠です。睡眠をしっかりと取ることで疲労を軽減することができます。質の良い睡眠が取れるように環境を整えていきましょう。

質の良い睡眠をとるためには副交感神経を活発にすることが大切です。スマートフォンやパソコンなどの電子機器は睡眠前になるべく見ないようにし、ストレッチなどをして心身ともにリラックスした状態を作りましょう。規則正しい睡眠はホルモンバランスを整えてくれます。なるべく毎日同じ時間に就寝することを心がけましょう。また、ストレスが原因になると考えられるためストレスを適度に解消できるように働きかけていくとよいでしょう。

もう1つ大切にしていただきたいのが栄養です。栄養不足は疲労を招き、なかなか改善へ至らせることもできません。バランスのとれた食事を摂ることも必要ですが、エネルギーを作りたい方がビタミンB1とミネラル、ストレスが続いている方はビタミンC,たんぱく質、カルシウムを積極的に摂られることをおすすめします。食事の内容だけでなく3食しっかりと食べることを意識しましょう。

特に朝食は、1日動くためのエネルギー源となり、1日のリズムを作るために非常に重要です。また、朝食を抜くことでお腹が空いてしまい昼食あるいは夕食で過量摂取、いわゆるドカ食いをしてしまいます。特に夜ドカ食いをすると消化に負担がかかることから、質の良い睡眠をとることができなくなります。食事の内容とともに3食食べることを意識して下さい。

公開日:5月7日

監修:クリニックフォアグループ医師

参考文献

二プロ https://www.nipro.co.jp/sukoyakanet/58/

厚生労働省 https://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/fatigue/fatigue07.html

https://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/fatigue/fatigue03.html