2020.08.06

新型コロナウイルス感染者管理システム、HER-SYS (ハーシス)とは?医師が解説します。

HER-SYS (ハーシス)とは?

今週から一部の自治体で新型コロナウイルス感染者管理システムであるHER-SYS [Health Center Real-time Information-sharing System、ハーシス] の運用がスタートしました。HER-SYS (ハーシス)とは、厚労省が開発した「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」であり、2020年5月17日から一部の保健所で実証実験が行われていました。医療のデジタル化を進めることで、逼迫する現場の事務負担を軽減する試みとして現在、注目を浴びています。

現在のところ、新型コロナウイルス感染症について、医療機関から保健所への報告、各保健所から自治体への報告はFAXで行われています。これまでデジタル化が進んでこなかった弊害として、「報告に時間がかかり、新規感染者数の迅速な公表が行われていないこと」、「集計ミスのリスクが高いこと」が指摘されてきました。実際に東京都において、各保健所から届く感染者情報を集約する作業を巡り、2020年5月11日には陽性者111人の報告漏れと35人の重複が、5月21日には58件の漏れと11件の重複や誤りがあったと公表されています。

再び新型コロナウイルスの感染が拡大する中、保健所の職員や医師ら仕事を増やす要因となっていた事務手続きをITで軽減しようとする取り組みがようやく始まったといえます。

日本の全医療機関で利用開始

厚生労働省は当初、2020年5月末をめどに、国全体として感染者情報を一元管理するこの新システムを稼働させる予定としていました。しかし実際には、その後も緊急事態宣言が出されるなど、激動する日々の業務に追われる中で、実際の運用は先延ばしにされていました。

これまで新型コロナ感染者の発生届は、医師、看護師や保健所職員が紙の書類を手書きで記入し、FAXで送ることで報告していましたが、HER-SYS (ハーシス)を活用することで、オンラインで入力すれば済むようになるとされています。医療現場における事務的負担が減るだけでなく、感染者数の登録漏れや重複集計も解決されるとされています。

診療所、病院から保健所にFAXで送信される新型コロナウイルスの発生届。現在は手書きで記入してファクスで送信している 
(新型コロナ届出様式、出所:厚生労働省)

また、HER-SYS (ハーシス)では軽症者や濃厚接触者を含めた全ての患者について、1人ごとに検査結果や症状の経過を継続的に記録し、医療関係者で共有する機能があります。人工呼吸器、ECMO(体外式膜型人工肺)の使用状況やレムデシビルなどの新薬の使用の有無なども集計して管理することを目的としています。そのため、軽症者のフォローや重症化した場合の入院先の調整など、医療の連携体制の強化にも役立つとされています。

5月、6月の新型コロナの感染拡大局面において、重症化した患者の入院調整や、発熱患者の救急受け入れが難航するなどの問題が浮き彫りとなりました。再び感染者数が増加しつつある現状において、医療とデジタルの連携による業務効率化は喫緊の課題であると言えるでしょう。

厚労省は全ての新型コロナ関係医療機関にHER-SYSを行き渡らせ、感染者数や検査数、陽性率などの集計を全国と都道府県別ともに新システムに移行させる方針であるとされています。

クリニックフォアにおけるこれまでの取り組み

新型コロナウイルスが広がりを見せる中、クリニックフォアグループは、新型コロナウイルスに対しても、逃げること無く、正面から立ち向かい、皆様のかかりつけ医として、「プライマリケア」としての役割を全うするよう努力してまいりました。

具体的には、2020年2月に、LineBOTでのコロナウイルス情報発信ツールの作成に加え、2020年5月、クリニックフォア田町は、クリニックとしては東京都で初めて、新型コロナウイルスのPCR検査を保険診療・公費で実施できる指定を東京都より頂きました。

同月より、クリニックフォア田町の4階スペースを「発熱外来」として開設。
新型コロナウイルスを疑う発熱患者さんと、他の一般疾患のある患者さんの導線を完全に分けた状況で診察を行える体制を構築いたしました。

発熱患者さんを診療しない医療機関もある中、発熱症状がある患者さんはもちろん、症状の有無にかかわらず、コロナウイルスの不安に悩む方への診察を行なってきた結果、2020年7月15日までに、延べ3000件以上の公費でのPCR検査を実施し、PCR検査を行える体制の構築に貢献しております。

また、2020年7月より、大手町・飯田橋院においても、「自費」でのPCRが行えるような体制を構築しました。グループ全体では、新型コロナPCR検査を、最大で1日500件程度を実施できるような体制を確立しております。

>>クリニックフォアグループの新型コロナウイルスに対する取り組みについてはこちら

HER-SYS (ハーシス)導入における今後の課題

日々、真摯に診療を続けている医療現場から見えてくる、HER-SYS (ハーシス)導入における課題について解説します。

日々増え続ける新たな患者さんの対応で追われる医療現場の中で、長年の間、すべてFAXで行ってきたオペレーションについて、一気にデジタル化を進める作業は、想像以上に大変なことです。更にHER-SYS (ハーシス)では、入力すべき項目も細部に渡るため、その運用には人員と労力の確保が必要不可欠でしょう。

また、厚労省は全ての関係機関にHER-SYS (ハーシス)の利用を促していく、としていますが、現状として様々な医療機関がPCR検査を含む新型コロナウイルス感染症の検査を行っています。具体的には、クリニックフォア のような発熱外来を有する病院やクリニック、全国の保健所地域外来・検査センターなどがその多くを占めます。 しかし、新型コロナウイルスの自費検査だけを行う医療機関もあり、そのような医療機関の検査で陽性と診断された場合に、保健所への報告が適切に行われていないケースもあることが問題となっています。コロナPCR検査で陽性と診断された患者さんを一元的に管理するためには、オペレーションまで含めたルール作りが必要です。

必要なデータを迅速に収集することで、科学的な根拠にもとづく計画を策定していくために、保健所を含めた行政と医療現場が上手く連携して、短期的・長期的な視野を共有しつつ、新型コロナウイルス感染症に取り組んでいくことが大切であると考えられます。

作成: クリニックフォアグループ医師 奥村 雄一郎

公開日:8月6日

※本記事は、上記公開日時点での状況・情報・エビデンスをもとに記載しています。新型コロナウイルス感染症については、日々状況が変化し、また新しくわかることも多々ありますので、最新の情報は、直近の記事や情報をご参照くださいますようお願いいたします。