ATOPIC DERMATITIS

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アトピー性皮膚炎とは、強いかゆみを伴う湿疹が、よくなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気のことです。この記事では、アトピー性皮膚炎のよくある症状や原因、治療方法について解説します。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、慢性炎症性皮膚疾患のひとつでアトピー素因を持つ方に発症する、強いかゆみを伴う湿疹を認める皮膚の病気です。

多くの方は2歳ごろから学童期までに発症し、その後症状がよくなったり、悪くなったりを繰り返します。成人となったあとにも良くなっていた病気が悪化することは珍しくなく、稀ではありますが成人となってから発症することもあります。

アトピー性皮膚炎によくある症状

アトピー性皮膚炎の症状は、かゆみと皮膚の症状があります。

かゆみは、良くなったり悪くなったりを繰り返し、悪い時には睡眠の質が悪くなったり、気になってしまって仕事に差し支えたりすることもあります。皮膚の症状も同様に、軽いものから重いものまで様々で、軽い場合は肌がカサカサするだけですが、それが赤みを帯びたり、白い粉を吹いたり、皮がむけたりといった、重い症状となることがあります。

アトピー性皮膚炎の症状が出やすい部位

アトピー性皮膚炎は全身のどこにでも症状が現れる可能性がありますが、特に以下の部位に出やすい傾向があります。

  • 顔・首・頭:皮脂や汗の分泌が多く、外気にさらされやすいため、炎症が起こりやすい
  • ひじやひざの内側:皮膚がこすれやすく汗がたまりやすいことから、症状が現れやすい
  • 胸・おなか・背中:衣類による摩擦や蒸れが刺激となり、皮疹が出やすい

アトピー性皮膚炎の年齢別の特徴

アトピー性皮膚炎は、多くの場合、乳幼児・小児期に発症します。皮膚科医の健診によるアトピー性皮膚炎有症率調査によると、乳児では約6〜32%、幼児は約5〜15%、大学生ではおよそ5〜9%が発症していると報告されています。

皮膚の症状は、年齢によって出現しやすい場所が異なります。乳児期には、頭や顔に湿疹が見られ、それが次第に体や手足へと広がっていくのが一般的です。小児期になると、首やひじ、ひざなどの関節部分に湿疹ができやすくなります。思春期から成人期にかけては、顔、首や胸、背中など、上半身に症状が強く出ることが多いです。

また、成人では顔、首、胸、背中など上半身と、肘や膝のように曲げる場所に多くなり、長年アトピー性皮膚炎を有するために皮膚が厚く固くなることもあります。

アトピー性皮膚炎の重症度別の特徴

アトピー性皮膚炎は、症状の強さや湿疹(皮疹)が広がっている範囲によって、以下のように「軽症」「中等症」「重症」「最重症」の4段階に分類されます。

軽症

面積にかかわらず、軽度の皮疹(軽度の紅斑、乾燥、皮膚のはがれ主体の病変)のみがみられる

中等症

強い炎症を伴う皮疹(紅斑、もりあがった湿疹、ただれ、皮膚の厚みや硬さの変化などを伴う病変)が体表面積の10%未満にみられる

重症

強い炎症を伴う皮疹が体表面積の10%以上、30%未満にみられる

最重症

強い炎症を伴う皮疹が体表面積の30%以上にみられる

アトピー性皮膚炎によくある合併症

アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が低下しているため、他の感染症や症状を合併しやすい特徴があります。以下に、よくみられる合併症について解説します。

紅皮症

紅皮症はアトピー性皮膚炎が重症化した場合に見られることがあり、体表面積の70%以上にわたって皮膚が赤くなる症状です。発熱や寒気、全身の倦怠感を伴うことも多いです。

細菌感染症

アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下しており、細菌感染を起こしやすい状態です。特に黄色ブドウ球菌やレンサ球菌による感染が多く、赤みや腫れ、膿が見られることがあります。

ウイルスによる皮膚感染症

皮膚の免疫力が低下していると、ウイルス性の感染症も起こりやすくなります。ヘルペス、尋常性疣贅(いぼ)や伝染性軟属腫(水いぼ)などが見られ、広範囲に広がることがあります。

目の症状

アトピー性皮膚炎の影響は目にも現れることがあります。まぶたの炎症が慢性化するアトピー性眼瞼炎や、重症例では白内障、網膜剥離といった深刻な病気が生じることもあります。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎には、アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)と、皮膚のバリア機能の低下が大きく関係しています。その他に、免疫系の異常や環境要因なども関わり合っているとされています。

バリア機能の低下

健康な皮膚は外部からの刺激やアレルゲン(アレルギーの原因物質)を遮断する「バリア機能」を持っていますが、アトピー性皮膚炎の方はこの機能がうまく働いていません。

バリア機能が低下していると、アレルゲンや細菌、ウイルスなどの異物が皮膚の内部に侵入しやすくなり、侵入した異物に対して免疫系が反応することで、炎症やかゆみが引き起こされます。かゆみによって皮膚をかくと、さらに皮膚が傷ついてバリア機能が悪化し、異物の侵入が進むという悪循環に陥ることもあります。そのため、保湿などでバリア機能を維持することが大切です。

アトピー素因

アトピー素因という、喘息やアレルギー性鼻炎を起こしやすい遺伝的素因がアトピー性皮膚炎にも関与しています。そのため両親にアトピー性皮膚炎や喘息の方がいると、子供はアトピー性皮膚炎を発症することが多いといわれています。

生活環境

アトピー性皮膚炎は、さまざまな生活環境の要因が複合的に影響し、発症や悪化につながることが多い病気です。特に身の回りの環境や日常生活で触れる刺激物が皮膚に負担をかけることが多いです。

また、ダニやハウスダスト、卵や牛乳、小麦、大豆などアレルギーの原因物質になりやすいものの影響を受けて、アトピー素因を持つ方がアトピー性皮膚炎を発症したり、悪くなったりすることもあるとされています。

具体的な生活環境の悪化要因

  • ダニやホコリ、花粉、ペットの毛など
  • 化粧品や金属などによる接触アレルギー
  • 唾液や汗、毛髪、衣類の摩擦などの刺激
  • 日焼け
  • 刺激の強い石鹸
  • 黄色ブドウ球菌
  • 粗い繊維やウールなど肌に刺激となる衣類
  • 過度の入浴や洗浄による皮膚バリアの損傷

ストレス

成人のアトピー性皮膚炎の場合、ストレスや生活環境の変化が症状の悪化や再発に深く関わることがあります。強いストレスを感じることで、免疫や自律神経のバランスが乱れ、皮膚の炎症やかゆみが悪化する傾向があるのです。そのため、ストレス対策や心身のリラックスも、症状管理には重要です。

食べ物

食物アレルギーが直接アトピー性皮膚炎を引き起こすことは非常にまれで、食べ物が症状を悪化させるようなこともあまりないとされています。

ただし、特定の食べ物に明らかなアレルギー反応がある場合は、その食べ物を避けることで症状の改善が期待できることもあります。

アトピー性皮膚炎の診断方法

アトピー性皮膚炎の診断は、まず問診によって、かゆみや皮膚症状の経過や、過去のアトピー性皮膚炎や喘息、鼻炎の有無、これらの疾患を持つ家族の有無、環境の変化などについてお伺いします。皮膚症状の診察も行います。

これらの情報や症状からアトピー性皮膚炎と診断して治療を開始することもありますが、医師が必要と判断した場合には、血液検査を行うこともあります。

血液検査では、末梢血好酸球数や、血清総IgE値などアレルギーの程度をみることで、アトピー性皮膚炎悪化の原因物質を特定する検査が行われることがあります。

アトピー性皮膚炎の治療方法

アトピー性皮膚炎は、良くなったり、悪くなったりを繰り返す病気ですが、治療やスキンケアによって良くなった状態を長く維持することが可能な場合があります。一方で、悪い状態が長くなると合併症としてかいてしまうことによる眼の症状や、弱くなった皮膚におこる感染症など合併症を認めることがあります。成人後も症状を認める場合は医療機関で相談を継続することが重要です。

アトピー性皮膚炎の治療は、大きく以下のように分けられます。

  • 保湿などの「スキンケア」
  • ステロイド外用薬を中心とした「薬物療法」
  • 悪化の原因となるものへの対処

治療の目標は「症状がほとんどなく日常生活に支障がない状態を維持すること」、または「軽度の症状があっても急激な悪化がなく、症状が長期間続かない状態を保つこと」です。ほとんどの場合は外来治療で対応可能ですが、重度の感染症や紅皮症が起きた場合には入院治療が必要となることもあります。

各治療法の詳細は以下の通りです。

スキンケア

「スキンケア」は、保湿することで乾燥による皮膚のバリア機能低下を避けることを目的に行います。入浴後に保湿剤(ヒルドイド®など)を塗る、こまめにハンドクリームを使用するなどが大切です。夏など汗をかいた際には、複数回入浴できるとより望ましいです。

日々の入浴やシャワーでは、石けんで古い皮脂や汗、汚れ、黄色ブドウ球菌などをしっかり落とすことが大事ですが、湯温はぬるめに調整しましょう。

薬物療法 

「薬物療法」は、ステロイドの塗り薬が中心となります。薬には強さがあり、塗る場所、皮膚症状の程度に応じて塗り分けることが必要になるので医師と相談が大切です。保湿剤を使用する場合はその上から塗ることが可能です。免疫抑制剤の塗り薬を使用することもあります。塗り薬は、悪化している時には毎日しっかりと外用して、急に中止せずに、次第に塗る頻度を減らしていくことが大切です。

使用するお薬の例は以下の通りです。

ステロイド

ステロイド外用薬は、強い抗炎症作用を持つお薬です。個々の皮疹の重症度に応じて適切な強さのステロイド外用薬を使用することで、軽度から重度まで幅広く適応できます。通

ただし長期間使用することで、副腎機能抑制などの全身性副作用が発生する場合があるため、定期的に検査することが大切です。また重症の場合には、ステロイド内服薬を短期間使用することもあります。

カルシニューリン阻害薬

カルシニューリン阻害薬は免疫の働きを抑制して炎症を軽減するお薬です。副作用の懸念などからステロイド外用薬での治療が困難であった場合に使用されることがあります。

代表的なものにタクロリムス軟膏がありますが、副作用として軽い刺激感や赤みが出ることがあります。

JAK阻害薬(ヤヌスキナーゼ阻害薬)

JAK阻害薬は炎症の信号伝達を阻害し、皮膚の炎症を抑えるお薬です。代表的なお薬には、デルゴシチニブ軟膏などがあります。過剰に使うと全身に副作用などの影響を及ぼす恐れがあるため、用法用量を守った使用が重要です。

PDE4阻害薬

PDE4阻害薬は、PDE4という酵素の働きを阻害することで、炎症を抑える作用をもつお薬です。代表的なお薬に、ジファミラスト軟膏などがあります。

生物学的製剤

生物学的製剤は免疫系の特定の分子を標的とした注射薬で、中等症以上の方に使用される治療法です。デュピルマブ、ネモリズマブ、トラロキヌマブなどがあり、炎症を引き起こすサイトカインの働きを抑制します。また炎症を抑えるだけではなく、皮膚のバリア機能を改善することも期待できます。

その他

症状のかゆみを抑えるために抗ヒスタミン薬、症状緩和のために漢方薬などが用いられることがあります。また、紫外線療法は、外用療法などを行っても改善されない場合などに用いられる治療法です。急性皮膚障害や皮膚がんを含む長期の副作用の可能性があるため、慎重に選択する必要があります。

悪化要因の対策

検査やいままでの経過からわかっている原因があれば避けるようにすることが大切です。具体的な対策としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 洗剤や石鹸は低刺激性に変更する
  • チクチクする衣服は避ける
  • 部屋のダニやホコリをこまめに掃除する(床はこまめに掃除機をかける)
  • 家具は壁から離して設置し、隙間を掃除する
  • ソファは布製ではなく革や合成皮革製を選ぶ
  • ぬいぐるみは毛羽立ちの少ない表面が滑らかなものを選ぶ
  • 花粉飛散時期は窓を閉め、除湿機を使う
  • カーテンは薄手のものを選び、定期的に洗濯する
  • 寝具は日光に当てて干し、掃除機をかける
  • エアコンのフィルターを定期的に水洗いする
  • 観葉植物はカビ対策のため置かない
  • ペットは飼わないようにする
  • 精神的ストレスを軽減し、睡眠を十分にとる

アトピー性皮膚炎の治療はクリニックフォアの皮膚科対面診療へ

クリニックフォアでは、皮膚科対面診療でアトピー性皮膚炎の治療を行っています。

お子さんの病気のイメージがあるアトピー性皮膚炎ですが、成人の方でも新たに発症したり、再び悪化することがあります。気になる皮膚の症状を認めたら、お気軽にクリニックフォアグループへご相談下さい。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。 

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