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皮膚のかゆみを生じる病気にはさまざまなものがあります。本記事では、皮膚のかゆみを伴う病気の種類と原因・治療法、かゆいときの対処法などを詳しく解説します。
かゆみを伴う病気の種類
皮膚のかゆみを伴う病気には多くのものがあります。まずは病気の種類と症状の特徴・原因・治療法などを見てみましょう。
アトピー性皮膚炎
強いかゆみを伴う湿疹が、よくなったり悪くなったりを繰り返す皮膚炎です。
乳児や幼児のうちは、顔や首、体全体にジュクジュクとした体液がにじむことが多く、小児期になると、皮膚の乾燥がひどくなり、膝や肘の内側、おしりなどに皮膚炎ができることが多いです。治らないまま大人になった場合や、大人になってから発症した場合は、乾燥が悪化して皮膚が厚くゴワゴワと硬くなることもあります。なかには全身の皮膚が赤みを帯びたり、黒ずんだりするケースもみられます。
原因ははっきりとはわかっていませんが、アトピー性皮膚炎を発症する方は、皮膚が乾燥しやすく、遺伝的にアレルギーを起こしやすいことがわかっています。バリア機能が低下しているために、ダニやほこりなどのハウスダスト、ペットの体毛、卵などの食べ物などがアレルゲンとなりやすいことも指摘されています。
治療は保湿が基本ですが、症状の重さに応じて免疫抑制薬の軟膏やステロイド外用薬なども使われます。また、アレルゲンを除去することも大切です。
接触性皮膚炎
なんらかのアレルギー反応を起こす物質に触れることがきっかけとなり、皮膚にかゆみを伴う湿疹ができる病気です。一般に、かぶれと言われることもあります。紅斑ができるのが特徴ですが、なかには水ぶくれや腫れを伴うケースもあります。
また、日常生活で接触する可能性のある身の回りのもののほとんどが原因となり得ます。一般的に知られているものとしては、金属製のアクセサリー、化粧品、衣類、洗剤、ペット、薬などが挙げられます。
治療には、かゆみを鎮める抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬が使われます。
乾燥湿疹（皮脂欠乏性湿疹）
皮膚のうるおいを守る皮脂が欠乏したことによって、おしりや足などにできることが多い湿疹です。皮膚が剥がれ落ちて細かなフケのようなものが出たり、皮膚に亀甲状の亀裂がみられたりするのが特徴です。かゆみが強く、かきこわすと、さらに新たな湿疹や炎症ができ、やがて黒ずみができてしまうこともあります。
原因は皮脂分泌量の低下なので、高齢者や乾燥肌の方がなりやすいとされています。乾燥しやすい冬に発症しやすいことでも知られています。
治療には抗ヒスタミン薬の内服とステロイド外用薬が使われることが一般的です。さらに、保湿が重要なため、入浴後などにはしっかりと保湿することも大切です。
手湿疹
手指にできる湿疹で、俗に「主婦湿疹」「手荒れ」とも呼ばれます。赤いポツポツとしたかゆみを伴う湿疹のほか、皮膚がフケのようにポロポロとはがれ落ちるなどの症状が現れることもあります。悪化すると、指の腹がひび割れたり指紋が消えたりすることもあります。
原因は、ひんぱんな手洗いなどによって皮膚の皮脂が失われ、バリア機能の低下から刺激を受けやすくなることだと考えられています。美容師や調理師など、水仕事や手への刺激が多い職業の方によくみられます。
軽症であれば、水仕事の際には手袋を着用し、保湿クリームで皮膚を守ることで改善が見込めます。症状が重い場合は、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド外用薬が使われます。
脂漏性皮膚炎
皮脂が多く分泌される顔や脇の下、頭皮、髪の生え際、耳の裏などにみられることが多い皮膚炎です。皮膚の赤みや皮むけ、かゆみなどが主な症状ですが、頭皮に発症した場合は、剥がれ落ちた皮膚がフケのように落ち、紅斑も伴うことが一般的です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、皮膚から分泌された皮脂に、皮脂を餌に増殖するマラセチア菌が関与し、炎症を起こしているのではないかと考えられています。
治療には、ステロイド外用薬や抗真菌薬などが使われます。
皮膚そう痒症
湿疹や発疹などがないにもかかわらず、皮膚にかゆみを感じる病気です。かゆみが出るのは、全身のこともあれば、肛門や陰部などの部分的なこともあります。
高齢者が発症した場合は、加齢による皮脂の欠乏が原因と考えられ、尿素軟膏による保湿と抗ヒスタミン薬の内服で治療することが一般的です。
また、糖尿病や腎不全などの内臓疾患や、精神的な要因などが原因となっている場合もあり、その場合は原因となっている病気の治療をすることで皮膚のかゆみの改善が期待できます。
虫刺症（虫刺され）
虫に刺されたことによって、赤い発疹ができます。患部が赤く腫れたり、発疹が残ってかゆみが慢性化したりすることもあります。
原因となる虫には、蚊、ブユ、ノミ、ダニ、シラミ、蜂、毛虫、蟻、ムカデなど、さまざまな種類があります。これらの虫は、刺す時にかゆみを起こす毒液を人間の体内に注入するため、かゆみが引き起こされるのです。
治療が必要な場合は、抗ヒスタミン薬やステロイドの外用薬が使われます。
痒疹
硬く盛り上がった発疹が手足や全身に出現する病気です。痒疹（ようしん）という名前の通り、強いかゆみを伴うのが特徴です。
アトピー性皮膚炎の症状のひとつであることもありますが、虫刺されが慢性化して痒疹になるケースが多いです。
治療には、注射、抗ヒスタミン薬の内服、ステロイドの外用薬やテープ薬を使います。また、液体窒素で患部を冷凍凝固させる治療が行われることもあります。
蕁麻疹
突然強いかゆみを伴い、紅斑や大きな盛り上がった発疹ができます。自然に消えることもあれば、数時間程度でできたり消えたりを繰り返すこともあります。発疹の大きさや形はさまざまで、手のひら大のものがつながって地図のように広がってしまうケースもあります。
重症になると症状が腸や粘膜といった体の内側にも生じ、呼吸困難や腹痛、下痢を伴うケースもみられます。
冷感や温感、薬、食べ物などが刺激となってかゆみを引き起こすヒスタミンが分泌されることが原因ですが、なかにはストレスや疲労が原因となるケースもあります。
多形滲出性紅斑
倦怠感や発熱に伴い、手足に水ぶくれのような紅斑ができる病気です。紅斑が複数できてお互いがくっつき、地図のようになったり、紅斑の上にさらに水ぶくれができることもあります。
原因はアレルギー反応ですが、アレルゲンとなるものは、病原性微生物（マイコプラズマや単純ヘルペスウイルスなど）、食べ物、薬、内分泌異常、悪性腫瘍など多岐にわたります。
治療のためには原因をつきとめることが重要ですが、原因がわからない場合は、ステロイド外用薬や非ステロイド系抗炎症薬の内服で治療します。また、症状が重い場合には、ステロイド薬や抗ヒスタミン薬の内服なども行われます。
乾癬
乾癬にはいくつかの種類がありますが、乾癬のうち9割程度は慢性化した尋常性乾癬だといわれています。頭皮、生え際、ひじ、もも、すね、おしりなどに盛り上がりのある紅斑ができ、表面には厚みのある銀白色のフケのようなものができます。別のタイプでは、発熱したり、関節炎を伴ったり、膿疱ができたりするケースもあります。
原因はまだはっきりとはわかっていませんが、遺伝的要素の関連が疑われており、ストレスや肥満、食事、感染症などによって発症すると考えられています。
治療法は、紫外線をあてる光線療法、炎症物質をピンポイントで抑える抗体療法、外用薬、内服薬などがあり、症状に応じてこれらを選んだり、組み合わせたりします。
皮膚真菌感染症
真菌（カビ）に感染したことによって、皮膚の発疹やかゆみ、赤み、水ぶくれなどができる病気です。皮膚同士が触れ合いやすいところにできる傾向があり、よく知られている水虫も皮膚真菌感染症のひとつです。
皮膚真菌感染症を引き起こす真菌には、白癬菌、カンジダ、マラセチアなどがあります。
治療は、抗真菌薬の外用や内服を行うことが一般的です。また、湿気をためないことも治療に効果的で、患部にパウダーを使用したり、足の場合はつま先が開いた靴を履いたりすることも推奨されています。
光線過敏症
別名「日光アレルギー」とも呼ばれる、日光によって発症する皮膚炎です。症状によって主に主に3つに分類することができます。
日光じんま疹
日光にさらされてから数分程度で蕁麻疹が現れます。蕁麻疹は一つひとつが大きく、ときにみみず腫れや隆起を伴いますが、数時間程度で自然に消失することが一般的です。ただ、広範囲に症状があらわれた場合は、頭痛、めまい、吐き気、喘鳴、脱力などを伴うこともあります。
治療には、抗ヒスタミン薬やコルチコステロイドが使われ、紫外線療法が効果的なケースもあります。また、日焼け止めで日光を遮断することなども大切です。
多形日光疹
日光にさらされた皮膚に赤く盛り上がった発疹や水ぶくれが現れる病気です。日光じんま疹との違いは主に症状が現れる時期で、多形日光疹の場合は日光にさらされてから数日後に症状が現れることが多いです。
原因はまだはっきりとはわかっておらず、日光にあたる機会が少ない方でも発症することがあります。
治療には、コルチコステロイドの外用薬や内服薬、ヒドロキシクロロキンという内服薬などが使われます。
化学物質による光線過敏症
食べたものや皮膚に塗ったものが、日光によって皮膚にアレルギー反応を引き起こす病気です。
光毒性と光アレルギー性の2種類があり、光毒性の場合は、日光にさらされた皮膚のみに痛みや炎症、赤みが現れます。光アレルギー性の場合は、日光にさらされた部位だけでなく、日光にさらされていない皮膚にも、かゆみ、水ぶくれ、赤み、皮むけなどが生じます。
治療には、コルチコステロイドが使われます。原因となる化学物質の使用を中止することも大切です。
その他に考えられる病気
上記以外にも、次のような病気によって皮膚にかゆみを生じることもあります。
全身性疾患
それほど多くありませんが、次のような全身性疾患によって皮膚にかゆみを生じることがあります。皮膚には発疹などが現れないのが特徴です。
- 慢性腎臓病
- 糖尿病
- 肝臓または胆嚢の病気、特にそれが黄疸を引き起こす場合
- 甲状腺機能亢進症（甲状腺が過剰に働いてしまう病気）
- 甲状腺機能低下症（甲状腺が十分に機能しない病気）
精神障害
精神疾患によってかゆみを生じることもあります。身体的な原因が不明なこともあり、心因性そう痒と呼ばれています。
皮膚のかゆみの原因とは？
ここからは、湿疹などができたときに皮膚にかゆみを生じるメカニズムを解説します。
主な原因は「ヒスタミン」や「肌のバリア機能の低下」
湿疹によってかゆみが起きるのは、私たちの身体に備わった「警報システム」の一つです。皮膚の中に異物を感知すると、「ヒスタミン」などのかゆみの伝達物質を放出して皮膚に異常が起きていることを知らせます。これによって私たちは強いかゆみを感じるのです。
健康な肌の場合、皮脂膜でコーティングされたみずみずしい角質層がバリアとなり、異物の侵入を防いでいます。
しかし肌が乾いた状態が続くと、角質層が破壊されてバリア機能が失われていきます。肌のバリア機能が障害されると、刺激に対して無防備になるので、肌トラブルが起きやすくなるのです。
肌のバリア機能を低下させる要因
皮膚のバリア機能が低下してしまう原因には、体の外からの要因と体の中からの原因の2種類があります。
外部要因
- 肌をかくことによる刺激
- 乾燥
- 紫外線
- 衣服などの摩擦
- 金属・化学物質によるかぶれ
- 虫刺され
体内要因
- ホルモンバランス
- 睡眠不足
- ストレス
- 加齢
- 喫煙
- 内臓疾患
皮膚のかゆみの対処法
皮膚にかゆみを生じたときは、次の方法を試してみましょう。
かかずに冷やす
かゆいからとかいてしまうと、かゆみを引き起こすヒスタミンが放出され、さらにかゆみが増してしまうおそれがあります。また、皮膚を傷つけてバリア機能が低下すると、わずかな刺激に対しても敏感になってかゆみを感じやすくなることがあります。
そこで、かゆいときは保冷剤や氷枕で患部を冷やすようにしましょう。冷やすことで毛細血管が収縮し、かゆみの症状にブレーキをかけることができます。
乾燥を予防する
皮膚の乾燥が原因のかゆみは、スキンケアを変えることで改善が見込めることがあります。特に保湿は重点的に行いましょう。単純な乾燥の場合は、保湿などのスキンケアだけで改善することも多いです。
市販薬を使用する
虫刺されなど、かゆみの原因がはっきりしており、患部が広範囲でない場合は、市販の炎症を抑える効果が期待できるステロイド外用薬などで様子を見てもよいでしょう。お薬を選ぶときは、薬剤師か登録販売者に相談するのがおすすめです。
皮膚科を受診する
以下のような症状がある場合は、なるべく早めに受診をご検討ください。
- 皮膚がカサカサ、赤みがある、ヒリヒリしたり痛みがある
- かいたことで出血、浸出液がでている
- 赤く膨らむ発疹が体の一部にみられる
- かゆみがしばらく続く
- 昔、アトピー性皮膚炎で治療していた
上記のような症状がある場合、可能性がある病気としては、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、脂漏性皮膚炎、蕁麻疹、乾癬、皮膚真菌症、甲状腺機能異常、肝機能異常、腎障害などが考えられます。
また、以下のような症状がある場合はアナフィラキシーショックの可能性が考えられるため、早急に受診して下さい。状況によっては救急車を利用しましょう。
- かゆみだけでなく、息苦しさ、腹痛、嘔吐、下痢などの症状がある
- 赤く膨らむ発疹が全身に広がっている
皮膚のかゆみの治療法
医療機関で皮膚のかゆみを治療する場合は、かゆみの改善を目的とする外用薬の処方が一般的です。
アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎による皮膚の炎症がみられる場合は、炎症などを抑えるステロイドが使われます。また、アレルギーが関与する場合は、かゆみを引き起こすヒスタミンを抑える抗ヒスタミン薬も皮膚のかゆみ治療に効果的です。
かゆみが皮膚疾患によるものでない場合は、原因となっている病気の治療をすることで、かゆみの改善が期待できます。
皮膚のかゆみの予防法
日常生活のなかで、皮膚のかゆみを防ぐ方法もあります。
肌の乾燥を防ぐ
皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下して外部の刺激を受けやすくなり、かゆみを生じやすくなります。乾燥を防ぐには、保湿剤の使用が効果的です。とくに入浴後などは皮膚の水分が蒸発しやすいので、念入りな保湿を心がけましょう。
紫外線を防ぐ
紫外線は、皮膚を乾燥させたり、日光アレルギーを起こしたりします。外出時には日焼け止めを塗り、紫外線から肌を守ることが大切です。半袖の季節などは、首や腕を覆うようにしたり、日傘をさしたりするのも効果的です。
入浴習慣を見直す
熱いお湯はうるおいを守る皮脂を落としすぎてしまいます。入浴時のお湯はぬるめを意識しましょう。また、体を洗う時にタオルでごしごしこすってしまうと、皮膚にダメージを与えるため、手のひらでやさしく洗うのがおすすめです。
質の良い睡眠をとる
睡眠不足はストレスや自律神経の乱れにつながり、かゆみを誘発してしまうことがあります。入眠前には目に刺激を与えるスマホを見ないようにするなど、リラックスして眠れる環境をつくって質の良い睡眠をとるよう心がけましょう。
刺激の少ない服を選ぶ
衣類の刺激が皮膚のかゆみをまねくこともあります。皮膚に刺激を与えない、やわらかく吸湿性のある素材のものを選ぶようにしましょう。また、体を締め付けるものや縫い目が刺激となるものなどは避けた方がよいでしょう。
汗をかいたままにしない
汗は肌を刺激し、かゆみをまねきます。汗をかいたときは早めにシャワーを浴びて洗い流すようにしましょう。すぐに入浴することが難しい場合は、汗をこまめにふきとるだけでも効果的です。
皮膚のかゆみの治療はクリニックフォアの皮膚科対面診療へ
皮膚のかゆみは、皮膚の病気だけでなく、内科の病気、例えば糖尿病や腎臓病のような病気の症状として認められることがあります。そのため、皮膚に異常がなくても検査などを行った方がよい場合もあります。
症状がひどい、保湿などのセルフケアを行ってもよくならない、かゆみ以外にも気になる症状があるといった場合は、クリニックフォアの受診をご検討ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。
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