ULTRAVIOLET PHOTOTHERAPY

※画像はイメージです

紫外線治療(ナローバンドUVB、光線療法)は、特定波長の紫外線を皮膚に照射する、皮膚疾患の治療法です。

紫外線を当てて免疫反応や細胞の増殖を抑えたり、神経に働きかけたりすることで、皮膚の炎症を抑え、痒みや皮疹といった症状や病気を改善することができると考えられています。これまで飲み薬や塗り薬ではなかなか効果を実感できなかった患者さんでも、紫外線治療の併用により、相乗的に改善していくことが可能です。

そもそも紫外線とは?

光には、目に見える「可視光線」と、目に見えない紫外線・赤外線があります。光には波長があり、波長が長いと赤色に見え、さらに長いと目に見えない赤外線となります。逆に波長が短いと紫色に見え、さらに短くなって目に見えないのが紫外線です。

そして、紫外線は波長が長い方からUVA(320~400nm)、UVB(280~320nm)、UVC(190~280nm)と分類され、それぞれに以下のような特徴があります。

  • UVA:皮膚の奥まで届き、細胞などを酸化・損傷させる
  • UVB:日焼けの大きな原因であり、長期間の蓄積で光老化によるシミ、シワなどにつながる 
  • UVC:人体に有害とされるものの、地表には届かない

このように、紫外線にはシミやシワの原因となるなど、皮膚に悪影響を及ぼす側面もあります。しかし、紫外線治療では波長やエネルギー量を調整することで、皮膚症状の治療に有効かつ安全性を高めているため、皮膚への影響は少ないと考えられます。

紫外線治療の種類と歴史

紫外線治療の歴史は古く、1960年頃には行われていました。その後、安全性や利便性(簡便、照射時間の短縮など)を追求しながら研究が進み、時代とともにさまざまな治療法が確立されていきました。まずは、紫外線治療の種類を時系列でご紹介します。

PUVA療法

当初行われていたのは「PUVA療法」と呼ばれる治療法です。こちらは、紫外線の中では波長が長いUVAを照射する治療法で、ソラレンという飲み薬・塗り薬を併用して治療するものでした。

なお、UVAを照射する治療法としては、320~400nmのUVAを照射するUVA1療法もあります。

ブロードバンドUVB療法

その後、ヨーロッパでは、1980年代には主にお薬の併用が必要ない「ブロードバンドUVB療法」も行われるようになりました。こちらは280nm~320nmのUVBを照射する治療法です。現在でも、紫外線治療と言えばUVBの照射が主流となっています。

ナローバンドUVB療法

続いて、皮膚に負担をかける波長を避け、311nm近辺のUVBを照射する「ナローバンドUVB療法」が行われるようになりました。こちらは、2002年に国産の機器が登場したことにより、日本の皮膚治療でも幅広く使われるようになりました。

ただ、高頻度(少なくとも週に1~2回程度の照射)かつ長期間の治療が必要なことなど、課題もあります。

ターゲット型光線療法(ターゲット型エキシマライト)

正常な皮膚に照射せざるをえないという課題を解決したのが、「ターゲット型光線療法(ターゲット型エキシマライト)」です。

こちらは、ナローバンドUVBとほぼ同じ波長の紫外線を、病変部にピンポイントに照射する治療法です。

紫外線治療の効果が期待できる病気・症状

紫外線治療は、従来の飲み薬や塗り薬では効果を実感できなかった患者さんでも、病気・症状の改善を期待することができます。

皮膚科において保険適応となる疾患は、アトピー性皮膚炎、湿疹、痒疹、脂漏性皮膚炎、尋常性白斑、乾癬、掌蹠膿疱症、、円形脱毛症です。

また、皮膚科以外の病気では、悪性リンパ腫や、新生児の黄疸治療などに用いられることがあります。

ここからは、皮膚科において保険適応となる病気や症状について、紫外線治療の詳細も含めて解説します。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは、主な症状としてかゆみのある湿疹が生じ、よくなったり悪くなったりを繰り返す病気のことです。

治療ではまず、炎症やかゆみをおさえるためにステロイドなどの塗り薬を使います。また、保湿などのスキンケアを並行して行うことも大事です。

紫外線治療を行うのは、中等症以上で難治性の場合や、他の治療で副作用が出ている場合などです。

ナローバンドUVB療法が広く用いられています。

湿疹

湿疹も、紫外線治療が有効なケースがあります。なかでも手湿疹は、日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは推奨度B(行うよう勧められる)の治療法として紫外線治療があります。

PUVA療法、ブロードバンドUVB療法、ナロードバンドUVB療法が選択肢として挙げられています。

痒疹

痒疹(ようしん)とは、もりあがった赤い湿疹ができ、強いかゆみを伴うものです。直径1cmほどのブツブツができる、結節性痒疹というものもあります。

ステロイドの塗り薬と、かゆみを緩和するための抗ヒスタミン薬を使うことが一般的ですが、症状が体中にある場合は、紫外線治療を行うことがあります。

日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは推奨度C1(行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない)となっていますが、特に結節性痒疹に対しては、有効性があるとの報告が多く上がっているようです。

脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎とは、皮脂が多い部分に、黄色っぽいフケのようなものを伴い赤くなる皮膚炎です。顔や頭などに症状が出ることが多いです。

主な原因はカビ(真菌)であるため、抗真菌薬を使うことが一般的ですが、光線療法も保険適応が可能とされています。

尋常性白斑

尋常性白斑とは、メラニンを作る細胞が減ったりなくなったりすることで、皮膚の色が白く抜けた状態のことです。後天的な病気であり、考えられる原因として、免疫の異常や化学物質、感染症などが挙げられます。

治療ではステロイドの塗り薬を使うことが多く、その他に、免疫を抑制する塗り薬などを使うこともあります。

また、日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは、紫外線治療も推奨度1(強い推奨)となっています。白斑のタイプや状態にもよりますが、一部のタイプではナローバンドUVB療法が有効とされています。その場合、照射は週に1~2回程度で、効果を得るためには半年から1年程度継続する必要があります。また、15~20回程度の照射で効果が実感できるようになるとされています。

病変の部位が限定されている場合は、ターゲット型光線療法が選択肢となります。こちらも照射は週に1~2回程度です。

なお、PUVA療法も推奨度2(弱い推奨)となっていますが、近年はPUVA療法ではなくナローバンドUVB療法を選択することが一般的であり、ナローバンドUVB療法やターゲット型光線療法で効果が得られない場合にPUVA療法が選択肢となります。

乾癬

乾癬とは、炎症を伴って慢性的に症状が続く皮膚症状のことです。乾癬にはさまざまなタイプがありますが、ほとんどの場合、銀白色のフケのようなものを伴い、もりあがった赤い発疹が全身に出ます。このような症状が現れるものを、尋常性乾癬といいます。

乾癬の治療は、まずステロイドなどの塗り薬から始めることが一般的で、さらに症状などに合わせて飲み薬、紫外線治療、抗体療法などを組み合わせることもあります。

尋常性乾癬や膿疱性乾癬(皮膚が赤くなり、膿を伴う水ぶくれのようなものが現れる)の場合は、紫外線治療が選択肢となりえます。また、十分な効果を得るためには、週2回以上の照射が必要であり、必要に応じて入院し、週3~5回の照射を行うようなケースもあるとされています。

尋常性乾癬の場合

尋常性乾癬の場合、PUVA療法、ブロードバンドUVB療法、ナローバンドUVB療法、ターゲット型光線療法の全てが選択肢となります。それぞれに特徴があるため、症状の強さや部位などに合わせて選択することになるでしょう。例えば、ターゲット型光線療法は、症状が強く、症状の部位が限られている場合のみに選択肢となることが一般的です。

膿疱性乾癬の場合

膿疱性乾癬は急性と慢性があり、慢性のものに対してのみ、ナローバンドUVB療法またはPUVA療法が選択肢となります。

日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは、いずれも推奨度C1(行うことを考慮しても良いが、十分な根拠がない)となっています。

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症(しゅせきのうほうしょう)とは、手のひら(手掌)や足の裏(足蹠)に、膿をもった水ぶくれが繰り返しできるものです。治療法は、塗り薬、飲み薬、紫外線治療、注射などがあり、症状などに合わせて選択します。

紫外線治療は、PUVA療法、ナローバンドUVB療法、ターゲット光線療法の選択肢がありますが、日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは、いずれも推奨度C1(行うことを考慮しても良いが、十分な根拠がない)となっています。

円形脱毛症

名前の通り、円形に脱毛する病気です。コインくらいの大きさのものもあれば、患部が広がって広範囲が脱毛することもあります。

症状の出方(タイプ)によって治療法は異なりますが、強く推奨される治療法はステロイドの注射や塗り薬、免疫を調節する飲み薬などが主です。

成人の円形脱毛症に対する紫外線治療は、日本皮膚科学会のガイドラインでは推奨度2(弱い推奨)となっています。具体的には、単発型、多発型(脱毛箇所が複数ある)にはターゲット型光線療法やナローバンドUVB療法を行い、全頭型(頭全体が脱毛している)、汎発型(頭部だけでなく全身にも脱毛が及んでいる)にはPUVA療法を行うとされています。

紫外線治療の副作用

紫外線治療では、有害な波長を取り除き、治療効果の高い、非常に限られた波長域の紫外線を用いており、基本的には安全性の高い治療となります。

照射後に赤みが出ることがありますが、通常は数日程度ですぐに解消されます。また、照射を続けることにより、軽い日焼けや、長期間浴びた場合には日光角化症(カサついた角質やかさぶたを伴うシミのようなもの)が生じる可能性はあります。しかし、少なくとも大人の患者さんの場合には、皮膚がんのリスクが増加することはないと考えられています。日焼けしたくない部分はタオルやヘルメットにより保護して照射することが可能です。

なお、光線が作用するのは皮膚だけで、内臓などに影響はないとされています。

ただし、治療を受けた後に赤み、腫れなどがひどい、やけどのようになった、発熱したといった場合は早めに医師に相談しましょう。

紫外線治療ができない方

以下の方は、安全上の理由から、紫外線治療について事前に医師に相談されることをお勧めいたします。

  • 皮膚がんがある方
  • 光線過敏症がある方
  • その他、病気などで日光に当たることができない方
  • 化粧品などでかぶれたことがある方
  • 光線過敏を起こす薬剤を使っている方
    (例、カルバマゼピン、テトラサイクリン、ジクロフェナク、フロセミド、シンバスタチン、エトレチナート、タムスロシン、ピリドキシン、ビタミンB12、一部の湿布薬など)
  • 免疫抑制剤を使っている方
  • 心臓や脳などに障害がある方
  • 10歳未満の方
  • 妊娠している方

 など

紫外線治療の費用

保険適応の場合は、各治療について金額(点数)が決まっています。皮膚科での光線療法の点数は以下の通りです。

  1. 赤外線または紫外線治療の実施(入院中の患者を除く) 45点
  2. おおむね290nm以上315nm以下の紫外線治療 150点
  3. おおむね308nm以上313nm以下の紫外線治療 340点

例えば、外来でナローバンドUVB療法またはターゲット型光線療法を1回受けた場合、いずれも波長は311nm付近なので、③が治療費となります。点数は340点で、1点は10円なので3400円。つまり、3割負担の場合の紫外線治療に関する費用は、1060円程度が目安となるでしょう。

紫外線治療に関するよくある質問

最後に、紫外線治療に関するよくある質問にお答えします。

紫外線治療はどこで受けられる?

皮膚に対する紫外線治療は、照射する機械を扱っている皮膚科で受けることが可能です。紫外線治療を検討している方は、受診する医療機関が扱っているか確認することをおすすめします。

紫外線治療は痛い?

紫外線治療で照射中に痛みを感じることはありません。

日焼けや皮膚がんの心配はない?

前述の通り、軽い日焼けや、長期間浴びた場合には日光角化症が生じることはあります。ただ、日光角化症の発症率が増加するのは、紫外線の照射が200回以上となる場合とされています。

長期間にわたってナローバンドUVB両方を受けた場合でも、皮膚がんの発症率が高まるようなことはないとされています。

紫外線治療の期間や頻度は?

紫外線治療の効果を高めるためには、継続することが重要です。病気や症状の状態にもよりますが、最低週1回、可能な場合には週2~3回の治療を続けることで症状の改善を期待できます。

1回の照射時間は?

1回の照射時間は数十秒から5分程度と、ごく短時間で受けていただくことが可能です。

短時間の照射によって、皮膚がん発症のリスク低減にもつながります。

ニキビに効果はある?

ニキビに対しては紫外線治療の効果は期待できません。日常で浴びる紫外線は、かえってニキビの発生・悪化原因となることもあります。

ただ、紫外線とは異なる光をあてる光線療法は行われています。紫外線より波長の長い光線を当てることで、ニキビの原因となるアクネ菌を殺菌し、ニキビ改善を目指すというメカニズムです。

家庭用の治療器を使ってもよい?

家庭用の紫外線治療器も存在します。ただ、これはUVCによる殺菌効果が期待できるもので、水虫やわきが改善によいとされています。

本記事で紹介したような保険適応の症状には対応していないため、注意が必要です。

紫外線治療はクリニックフォアの皮膚科対面診療へ

クリニックフォアの皮膚科対面診療では、必要に応じて紫外線治療を行っています。お薬による治療で効果がみられないアトピー性皮膚炎や乾癬、白斑などに対する紫外線療法も行っているため、気になる症状がある方は受診をご検討ください。

紫外線治療では、有害な波長を取り除き、治療効果の高い、非常に限られた波長域の紫外線を用いており、基本的には安全性の高い治療となります。

なお、以下の方は、安全上の理由から、紫外線治療について事前に医師に相談されることをお勧めいたします。

  • 光線過敏症、皮膚癌がある方
  • 光線過敏を起こす薬剤を飲まれている方
    (例、カルバマゼピン、テトラサイクリン、ジクロフェナク、フロセミド、シンバスタチン、エトレチナート、タムスロシン、ピリドキシン、ビタミンB12)
  • 10歳未満の方

紫外線治療は、従来の飲み薬や塗り薬では効果を実感できなかった患者さんでも、病気・症状の改善を期待することができます。クリニックフォアでは、東京の「新橋院」と「田町院」においてのみ、紫外線治療機器を導入しております。 お困りの方は、クリニックフォアグループにお気軽にご相談下さい。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。


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