扁桃腺が腫れるとは?まず知っておきたい基本
そもそも扁桃腺とはのどのどこにある組織で、なぜ腫れてしまうのか、あらためて問われると分からない方も多いのではないでしょうか。
腫れの正体を知っておくと、必要以上に不安がることなく、落ち着いて対応しやすくなるでしょう。
扁桃腺(口蓋扁桃)はのどの奥の免疫組織
扁桃腺は、のどの奥の左右に一対ある、アーモンドのような形をした組織です。
正式には口蓋扁桃と呼ばれ、口を大きく開けたときに見える、いわゆる「のどちんこ」の両わきに位置しています。
この扁桃腺は、口や鼻から入ってくるウイルスや細菌を、体の入り口の段階で食い止める、免疫の役割を担っています[1]。
そのため、病原体と戦う過程で炎症を起こし、赤く腫れて痛みが出ることがあるのです。
扁桃腺が腫れる主な原因
扁桃腺が腫れる背景には、いくつかの原因が考えられます。
その多くは感染によるものですが、日ごろの疲れや免疫の低下が深く関わっていることもあります[1]。
ウイルスによる扁桃炎(風邪・アデノ・コロナなど)
扁桃腺の腫れでとくに多いのが、ウイルスの感染によって起こる扁桃炎です[1]。
風邪を引き起こすウイルスをはじめ、アデノウイルスやコロナウイルスなど、さまざまなウイルスがその原因になります。
風邪の症状の一部として起こることも多く、体をしっかり休めるうちに落ち着いていくことも少なくありません。
細菌による扁桃炎(溶連菌など)
細菌の感染によっても扁桃腺は腫れます[1]。
代表的なのが、溶連菌(溶血性連鎖球菌)と呼ばれる細菌による扁桃炎です。
細菌が原因の場合は、扁桃腺に白い膿のようなもの、いわゆる白苔が付着することが多いです。
さらに、強いのどの痛みや高い熱、首のリンパ節の腫れをともなうこともあります。
溶連菌はきちんと治療しないと、あとから腎臓や心臓に関わる合併症につながることがあり、注意が必要です[2]。
そのため、症状が強いときは、医療機関で原因を調べてもらうことが大切になります。
疲れ・免疫低下・慢性扁桃炎(繰り返す腫れ)
扁桃腺の腫れには、睡眠不足や過労などによる免疫の低下が、思いのほか深く関わっています[1]。
炎症を何度も繰り返すうちに、腫れが慢性的に続く慢性扁桃炎へと移行することもあります。
とくに、年に何度も扁桃炎を繰り返すような場合は、反復性扁桃炎と呼ばれることもあります。
腫れを繰り返しやすい方は、一度医療機関で相談しておくと安心です。
熱なし・片方だけの腫れはどう見る?
「熱はないのに腫れている」「なぜか片方だけ腫れている」と気づいて、不安になる方はとても多いものです。
こうしたケースには、それぞれ考えられる背景があり、見方を知っておくと落ち着いて対応しやすくなるでしょう。
熱がないときは慢性扁桃炎のことが多い
熱がないのに扁桃腺が腫れているというときは、慢性扁桃炎であることが多いです。
これは、扁桃の炎症が慢性的に続いていて、急性のときのような強い症状が出にくくなっている状態だからです。
具体的には、軽いのどの痛みや違和感、口臭、のどの乾燥などが、主な症状として知られています。
熱がなくても違和感が長引くときは、我慢せず、一度耳鼻咽喉科で相談しておくとよいでしょう。
片方だけの腫れ・左右差が続くときは念のため受診を
扁桃腺が片方だけ腫れているというときも、その多くは扁桃炎によるものです。
ただし、片方だけの腫れや左右差がなかなか引かず、長く続いているときには、扁桃の腫瘍のサインとなっている場合があります。
過度に心配しすぎる必要はありませんが、念のため耳鼻咽喉科を受診しておくと安心です。
子どもの扁桃腺の腫れ(熱なし・肥大)
子どもの場合は、扁桃腺がもともと大きく、腫れているように見えることがよくあります。
これは、幼い時期の扁桃腺が免疫の一部として活発に働いていて、大きくなるためです。
そのため、熱がなくほかに症状もなければ、多少大きめに見えても、心配のいらないことが多いです。
ただし、いびきや睡眠中の無呼吸をともなうなど気になる症状があるときは、自己判断せず、小児科や耳鼻咽喉科で相談しましょう。
扁桃腺の腫れの治し方・セルフケア
扁桃腺が腫れてしまったとき、基本となるのは、炎症をこれ以上悪化させないよう、のどを休めて体力の回復をはかることです。
ちょっとした工夫を取り入れるだけでも、つらさをやわらげやすくなります。
安静・水分・うがいで炎症を悪化させない
扁桃腺の腫れを少しでも早く治すには、まずなによりも十分な休養が大切です。
あわせて、こまめに水分をとってのどの乾燥を防ぐことも、悪化を防ぐうえで役立ちます。
うがいでのどを清潔に保つようにすると、炎症をやわらげる手助けにもなります。
痛みがあるときは、飲酒や喫煙、熱いお風呂などは控えるのが望ましいです。
まずは無理をせず、のどと体をしっかり休めてあげることが、回復への土台になり安心です。
市販薬(トローチ・うがい薬・解熱鎮痛薬)の考え方
比較的軽い症状であれば、市販のトローチやうがい薬を使って、のどを整えることもできます。
痛みや熱がつらいというときには、市販の解熱鎮痛薬で症状をやわらげるという方法もあります。
ただし、市販薬はあくまで症状を一時的に和らげるためのもので、腫れの原因そのものを治すわけではありません。
とくに細菌が原因となっている場合には、抗菌薬による治療が必要になることもあります[1]。
市販薬を使ってもなかなか改善しない、あるいは悪化していくといったときは、医療機関で相談したほうがよいでしょう。
冷やす・のどにやさしい食事などの工夫
のどや首のまわりを冷やすことで、痛みがやわらいだと感じる方もいます。
食事は、のどごしがよく刺激の少ないものを選ぶようにすると、腫れた扁桃腺に負担をかけずに済みます。
熱すぎるものや辛いもの、酸味の強いものは、のどにしみて痛むことがあるため、控えめにするとよいでしょう。
おかゆやスープのように、やわらかく温かいものは、のどにやさしく、こうしたときにおすすめです。
病院での治療|ウイルス性と細菌性で異なる
扁桃腺の腫れがつらいときや、なかなか治らず長引くときには、医療機関での治療も選択肢になります。
扁桃炎の治療は、その原因がウイルスなのか細菌なのかによって、大きく変わってきます[1]。
見分け方と治療の考え方を知っておくと、実際に受診したときにも理解しやすくなります。
ウイルス性は対症療法、細菌性は抗菌薬
ウイルスが原因の扁桃炎では、つらい症状をやわらげる対症療法が中心になります[1]。
一方で、細菌が原因の場合には、抗菌薬による治療が中心です[1]。
とくに溶連菌が原因のときは、腎臓や心臓に関わる合併症につなげないために、処方された抗菌薬を最後まで飲みきることがとても大切です[2]。
原因を見きわめて適切に治療するためにも、症状が強いときは医療機関で相談するのが安心だといえます。
繰り返す・重症化する場合の手術(扁桃摘出)
扁桃炎を何度も繰り返してしまう場合には、扁桃を摘出する手術が検討されることもあります。
年に何度も急性の炎症を繰り返していると、そのたびに高熱や痛みが出て、生活への負担が大きくなるためです。
また、扁桃が大きく、いびきや睡眠中の無呼吸の原因になっているような場合にも検討されます。
手術が必要かどうかは、炎症を起こす頻度や症状の程度をふまえて、医師が総合的に判断します。
繰り返す腫れに悩んでいるときは、一度医師に相談してみましょう。
扁桃腺炎はうつるのか?何科を受診するべきか
扁桃腺の腫れについては、「人にうつるのだろうか」「そもそも何科にかかればよいのか」といった疑問もよく聞かれます。
あらかじめ知っておくと、いざ自分や家族に症状が出たときにも、落ち着いて行動できます。
扁桃腺の腫れはうつることがある?
扁桃腺の腫れは、その原因によっては、人にうつることがあります。
ウイルスや細菌の感染が原因の場合、その病原体が周囲の人へ広がってしまうことがあるためです。
こまめな手洗いやうがい、マスクの着用といった基本的な対策が、広がりを防ぐ助けになります。
家族の誰かに症状が出たときは、こうした対策を心がけるようにすると安心です。
何科に受診すればいいの?
扁桃腺の腫れが気になるときは、まず耳鼻咽喉科を受診するのが基本です。
のどの奥の状態を直接みてもらい、原因や炎症の程度を確かめてもらえるためです。
迷うときは、まず内科に相談し、必要に応じて耳鼻咽喉科を紹介してもらう、という方法もあります。
つらい症状が続くようなら、早めに相談しておくのが望ましいといえます。
すぐ受診すべき危険なサイン
扁桃腺の腫れの多くはセルフケアや治療で改善しますが、なかには早めの受診が必要なケースもあります。
炎症が扁桃の周囲まで広がって膿がたまる「扁桃周囲膿瘍」を起こすことがあるためです。
次のような症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
- 唾も飲み込めないほど、のどが強く痛む
- 口が開けにくい
- 息苦しさがある
こうした症状が出ているときは、すぐに医療機関を受診してください。
そのほか、高い熱が続く、水分すらとれない、片側の腫れがいつまでも引かないといったときも、早めの受診が安心です。
つらい症状を我慢しすぎず、危険なサインを感じたら早めに動くことが、重症化を防ぐことにつながります。
扁桃腺の腫れに関するよくある質問
Q:扁桃腺の腫れは何日で治りますか?
原因によって異なりますが、ウイルス性の扁桃炎であれば、おおむね1週間前後で落ち着いていくことが多いでしょう。
細菌性の場合も、抗菌薬による治療によって、数日から1〜2週間ほどで症状が和らいでいくことが多いです。
Q:扁桃腺の腫れは市販薬で治せますか?
比較的軽い症状であれば、市販のトローチやうがい薬、解熱鎮痛薬で症状をやわらげられることもあります。
ただし、細菌が原因の場合には、抗菌薬による治療が必要になることもあります[1]。
市販薬を使っても改善しない、悪化するといったときは、医療機関で相談しましょう。
まとめ
扁桃腺はのどの奥にある免疫組織で、その腫れの多くは、ウイルスや細菌による扁桃炎によるものです。
ウイルス性は安静や対症療法が中心となり、細菌性では抗菌薬による治療が必要になることがあります[1]。
とくに溶連菌が原因のときは、合併症を防ぐために、抗菌薬を最後まで飲みきることが大切です[2]。
熱がないのに腫れるときは慢性扁桃炎であることが多く、片方だけの腫れが続くときは念のため受診しておくと安心です。
セルフケアとしては、安静・水分・うがいでのどを休め、刺激物や飲酒喫煙を控えることが役立ちます。
唾も飲めないほどの痛みや、口が開けにくい、息苦しいといったときは、様子を見ずにすぐ受診してください。
腫れの多くは落ち着いていきますが、長引く・繰り返す・強い痛みがあるときは、早めに医療機関で相談していきましょう。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状が強い・長引く・繰り返す場合や、飲み込めない・息苦しいなどの症状がある場合は、自己判断で市販薬を使い続けず、耳鼻咽喉科などの医療機関にご相談ください。症状の現れ方には個人差があります。
