ニキビ治療薬にはどんなものがある?
ニキビ治療に使う薬には、毛穴の詰まりを改善する薬、殺菌・抗菌作用のある抗生物質、保湿剤、ビタミン剤、漢方薬、ホルモン剤などがあります。種類にもよりますが、飲み薬も塗り薬もあり、体の外からも中からもニキビにアプローチしていきます。
また、塗り薬の成分としては、毛穴の詰まりを改善するアダパレンや、毛穴の詰まり改善とともに抗菌作用、抗炎症作用が期待できる過酸化ベンゾイル、クリンダマイシンなどが代表的です。
ニキビ治療に使う代表的な薬は以下の通りです。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差があります。
毛穴の詰まりを改善する薬【塗り薬】
ニキビは、毛穴に皮脂などが詰まり、そこにアクネ菌などが繁殖することで炎症が起こります。つまり、ニキビ改善のためには毛穴の詰まりを取り除くことがとても重要。そのため、ニキビがある場合はまず毛穴の詰まりを改善する塗り薬を使うことが一般的です。代表的な薬は以下の通りです。
アダパレンゲル・ディフェリンゲル(アダパレン)
アダパレンゲルもディフェリンゲルも、アダパレンを有効成分とするゲル状の塗り薬です。先発医薬品がディフェリンゲル、後発医薬品(ジェネリック)がアダパレンゲルであり、成分や効果は変わりません。
どちらの薬も、皮膚のターンオーバーを促進し、皮膚の角化(硬く厚くなること)を調節して、毛穴の詰まりを改善する効果が期待できます。
日本皮膚科学会のニキビ治療ガイドラインでは、ニキビの初期段階のコメド(面皰(めんぽう)、いわゆる白ニキビ)の治療にも、軽症~重症の炎症が起きたいわゆる赤ニキビの治療にも、強く推奨されている薬です。特に白ニキビへの効果は非常に高いといわれています。
アダパレンゲルの詳細は以下の記事で解説しています。
ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)
ベピオゲルは、過酸化ベンゾイルを有効成分とするゲル状の塗り薬であり、以下のようなさまざまな効果が期待できます。
- 皮膚表面の古い角層を取り除き、毛穴の詰まりを改善
- ニキビの原因菌であるアクネ菌や、黄色ブドウ球菌などに対する抗菌作用
- 抗炎症作用
- 白ニキビの減少作用
抗菌作用のある薬を使い続けると、薬が効かなくなる耐性菌が出現する場合がありますが、ベピオゲルでは耐性菌の出現は報告されていません。
また、ニキビ治療ガイドラインでは白ニキビの治療にも、炎症が起きた赤ニキビの治療にも、炎症が治まった後の状態を維持するための治療にも強く推奨されています。さらに、黒ニキビにも効果が期待できるとされています。
ベピオゲルの詳細は以下の記事で解説しています。
エピデュオゲル(過酸化ベンゾイル・アダパレン)
エピデュオゲルは、過酸化ベンゾイルとアダパレンが有効成分のゲル状の塗り薬です。アダパレンは皮膚の角化を調節し、毛穴の詰まりを改善。過酸化ベンゾイルは毛穴の詰まり改善、抗菌作用、抗炎症作用、白ニキビの減少などの効果が期待できる成分です。
ニキビ治療ガイドラインでは、白ニキビや、中等症から最重症の炎症が起きた赤ニキビ、炎症が治まった後の状態を維持するための治療に強く推奨されています。
デュアック配合ゲル(クリンダマイシンリン・過酸化ベンゾイル)
デュアック配合ゲルは、クリンダマイシンリン酸エステル水和物と過酸化ベンゾイルが有効成分の、ゲル状の塗り薬です。
クリンダマイシンリン酸エステル水和物には、アクネ菌に対する抗菌作用や、炎症の原因となる白血球が患部に集まるのを抑えることによる抗炎症作用が期待できます。さらに、過酸化ベンゾイルには毛穴の詰まり改善、抗菌作用、抗炎症作用、白ニキビの減少などが期待できます。
ニキビ治療ガイドラインでは、白ニキビや赤ニキビの治療に強く推奨されている薬です。
抗生物質【塗り薬】
詰まった毛穴でアクネ菌などが繁殖すると炎症が起こり、赤ニキビとなります。そのため、炎症が起こったニキビに対しては、抗菌・殺菌作用のある抗生物質を使うことがあります。代表的な薬は以下の通りです。
ダラシン(クリンダマイシン)
ダラシンとクリンダマイシンゲルは、クリンダマイシンリン酸エステル水和物を有効成分とする塗り薬です。ダラシンTが先発医薬品、クリンダマイシンゲルがジェネリックであり、基本的にはゲル状の薬ですが、ダラシンTにはローションタイプもあります。
いずれも細菌のタンパク質の合成を阻害し、殺菌したり、アクネ菌などのニキビの原因となる細菌を殺して炎症をおさ抑えたりする効果が期待できる薬です。ニキビ治療ガイドラインでは、炎症が起きている赤ニキビの治療に強く推奨されています。
クリンダマイシンゲルの詳細は以下の記事で解説しています。
アクアチム(ナジフロキサシン)
アクアチムは、ナジフロキサシンを有効成分とする塗り薬で、ローション、クリーム、軟膏の3タイプがあります。また、ジェネリックにナジフロキサシンクリーム/ローション、ナジフロクリーム/ローションがあります。
抗菌作用があり、ニキビ治療ガイドラインでは、炎症が起きている赤ニキビの治療に強く推奨されています。
ゼビアックス(オゼノキサシン)
ゼビアックスは、オゼノキサシンを有効成分とする塗り薬です。ローションと油性クリームの2タイプがあります。ニキビ治療ガイドラインでは、炎症が起きている赤ニキビの治療に推奨されています。
抗生物質【飲み薬】
炎症が起きている赤ニキビの場合、塗り薬だけでなく飲み薬の抗生物質を使うこともあります。代表的な薬は以下の通りです。
ビブラマイシン(ドキシサイクリン)
ドキシサイクリン塩酸塩水和物を有効成分とする内服抗生物質です。クリンダマイシンと同様、細菌のタンパク質の合成を阻害することで殺菌する薬です。
ニキビ治療ガイドラインでは、ニキビ治療における内服抗生物質として最も推奨されている薬であり、特に炎症の起こっている赤ニキビの治療に強く推奨されています。
ミノマイシン(ミノサイクリン塩酸塩)
ミノマイシンは、ミノサイクリン塩酸塩を有効成分とする内服抗生物質です。ジェネリック医薬品に、ミノサイクリン塩酸塩という名前の薬もあります。
こちらも細菌のタンパク質の合成を阻害することで殺菌する薬であり、炎症の原因となる白血球が患部に集まるのを抑え、抗炎症作用を示したり、活性酸素を抑えたりする作用も期待できます。
ニキビ治療ガイドラインでは、炎症の起こっている赤ニキビの治療に推奨されています。
ルリッド(ロキシスロマイシン)
ルリッドは、ロキシスロマイシンを有効成分とする内服抗生物質です。ジェネリック医薬品にロキシスロマイシンという名前の薬もあります。
こちらも細菌のタンパク質の合成を阻害することで殺菌する薬であり、ニキビ治療ガイドラインでは炎症の起こっている赤ニキビの治療に推奨されています。
ファロム(ファロペネム)
ファロムは、ファロペネムナトリウム水和物を有効成分とする内服抗生物質です。細菌の細胞壁の合成を阻害することで殺菌作用を示す薬です。ニキビ治療ガイドラインでは炎症の起こっている赤ニキビの治療に推奨されています。
保湿剤【塗り薬】
ニキビ改善のためには保湿も大事です。乾燥すると、皮膚の乾燥を補うために余計に皮脂が分泌されたり、皮膚のバリア機能の低下や、ターンオーバーの乱れなどにつながったりするためです。そのため、毛穴の詰まりを改善する薬や抗生物質とともに保湿剤が処方されることもあります。
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)
代表的な保湿剤はヘパリン類似物質を有効成分とする、ヒルドイドです。ジェネリック医薬品に、ヘパリン類似物質という名前の薬もあります。
クリームやローション、軟膏などさまざまなタイプがあり、保湿だけでなく、血行促進、抗炎症作用なども期待できます。また、継続して使うことで、肌のバリア機能の維持などにつながり、ニキビの改善効果が期待できるとされています。
イソトレチノイン【飲み薬】
イソトレチノインは、ビタミンA誘導体を含む飲み薬です。皮脂の分泌を抑える効果、毛穴の詰まりを改善する効果、炎症を抑える効果、ニキビの原因となるアクネ菌への抗菌効果などが期待できます。さらに、ニキビをなくすだけでなく、服用終了後もかなり長期間にわたってニキビの再発を抑えることが期待できるとされています。
日本では保険適用外ですが、アメリカでは1982年に認可され、重症のニキビに対する最初の選択肢として使われている薬です。現在は日本でも、他の治療薬ではなかなか改善しない重症のニキビや、繰り返しできるニキビの治療に使うことがあります。
イソトレチノインの詳細は以下の記事で解説しています。
漢方薬【飲み薬】
ニキビができにくくなるよう、体質を改善することを目的として漢方薬を使うことがあります。一般的なニキビ治療薬(西洋薬)で改善しない場合や、薬が合わない場合、抗菌薬を長期服用したくない場合などに漢方薬はよい選択肢となり、ニキビの状態や場所によって適した漢方薬を選んで使います。
ニキビ治療ガイドラインでは、炎症が起こっている赤ニキビに対する治療において、選択肢の一つとして推奨されるのは、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)の3種類です。また、荊芥連翹湯は白ニキビに対する治療においても選択肢の一つとして推奨されています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
膿や湿り気のある湿疹の治療に使われる漢方薬で、ニキビ以外にも、皮膚炎、じんま疹、水虫などの治療に使われることがあります。
皮膚の腫れや赤み、かゆみ、化膿を改善する効果が期待できる他、十味敗毒湯に含まれる甘草(かんぞう)や荊芥(けいがい)には抗菌作用も期待できます。また、メーカーによっては桜皮(おうひ)という生薬が配合されているものもあり、この場合、エストロゲン(女性ホルモン)の産生を促すことで、男性ホルモンによる皮脂の分泌を抑える効果も期待できます。
十味敗毒湯は、ニキビ治療ガイドラインでは炎症が起こっている赤ニキビに対する治療薬の一つとして推奨されています。また、ガイドラインでは推奨はされていないものの、炎症を伴わないニキビ(白ニキビ)の治療で使うこともあります。
十味敗毒湯の詳細は以下の記事で解説しています。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
荊芥連翹湯は、主に鼻の症状に使われる漢方薬ですが、活性酸素の産生を抑える作用や抗アレルギー作用が認められており、ニキビ治療ガイドラインでは、炎症が起こっている赤ニキビに対する治療の選択肢の一つとして推奨されています。また、皮膚の深いところにまで達し、しこりを伴うようなニキビにも効果が期待できるとされています。
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
ニキビの他、顔や頭部の湿疹、皮膚炎などの改善に使われる漢方薬です。ニキビ治療ガイドラインでは、白ニキビの治療にも、炎症を起こしている赤ニキビの治療にも選択肢の一つとして推奨されています。また、膿を持ったいわゆる黄ニキビが多くある場合にも効果が期待できます。
その他
ニキビには、血行不良も関係しているとされています。そのため、血流を改善するような以下の漢方薬を使うことがあります。また、同じような効果が期待できる漢方薬でも、体質などによって使い分けることがあるため、そちらについても紹介します。
漢方薬 | 特徴 |
---|---|
当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん) | むくみやすく、冷え症で肩こりなどがある方向け。艶がなく隆起もないニキビに使うことがある。 |
桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん) | 肩こり、冷え症、月経不順などがある方向け。顔面が赤いか、ややくすみがあり、青黒い感じのニキビに使うことがある。 |
桂枝茯苓丸加薏苡仁 (けいしぶくりょうがんかよくいにん) | 肩こり、冷え症、月経不順などがある方向け。コメドやニキビ跡が目立つ場合に使うことがある。 |
加味逍遙散 (かみしょうようさん) | イライラ感や月経不順がある方向け。 |
桃核承気湯 (とうかくじょうきとう) | 便秘や月経不順がある方向け。 |
温清飲 (うんせいいん) | 乾燥してかゆみがある方向け。炎症を起こした赤ニキビに使うことがある。 |
温経湯 (うんけいとう) | 手足のほてりや唇の乾燥がある方向け。炎症を起こした赤ニキビに使うことがある。 |
黄連解毒湯 (おうれんげどくとう) | 炎症が強い赤ニキビや顔の赤みに使うことがある。 |
半夏瀉心湯 (はんげしゃしんとう) | 不摂生な食事や胃腸障害を伴い、口の周りを中心にできるニキビに使うことがある。 |
芍薬甘草湯 (しゃくやくかんぞうとう) | 男性ホルモンを抑え、皮脂分泌を減少させてニキビを改善する漢方薬。 |
また、ニキビがなかなか治らない時は、脾胃(内臓)の改善を目的に、人参湯(にんじんとう)、六君子湯(りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を使うこともあります。
ビタミン剤【飲み薬】
ビタミン剤のニキビへの効果は明確にはなっていませんが、ビタミンの種類ごとにニキビへのさまざまな効果が期待できるため、体質改善やニキビ予防、ニキビ治療の補助的な位置づけで処方されることがあります。詳しく見ていきましょう。
シナール
アスコルビン酸(ビタミンC)とパントテン酸(ビタミンB5)を有効成分とする薬で、ジェネリック医薬品に、シーピー配合顆粒やデラキシー配合顆粒があります。
期待できる効果は以下の通りです。
- ターンオーバーを整え、ニキビを予防・改善する
- コラーゲンの生成を促進し、肌へのダメージの原因となる活性酸素を抑制する
- メラニンの生成を抑え、ニキビ痕の色素沈着を予防・改善する
- 美白成分「グルタチオン」の産生促進につながる
ハイチオール
L-システインというアミノ酸を有効成分とする薬です。ビタミンCと同様、抗酸化物質としての働きがあり、酸化ストレスを防ぐとされており、メラニン色素の産生を抑えて、色素沈着の予防にも期待できます。
ノイロビタン
オクトチアミン(ビタミンB1誘導体)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)、 シアノコバラミン(ビタミンB12)を有効成分とする薬です。
これらのビタミンB群が皮膚や粘膜をすこやかに保ち、ニキビを予防するとされています。また、ビタミンB2、B6はターンオーバーにとって重要な役割を担う成分です。
ユベラ(トコフェロール酢酸エステル)
トコフェロール酢酸エステル (ビタミンE誘導体)を有効成分とする薬です。先発医薬品がユベラで、ジェネリックはトコフェロール酢酸エステルという名前で製造販売されています。
血流を改善し、ターンオーバーを正常化して色素沈着やシミ、そばかすを改善したり、酸化によるダメージから皮膚の細胞を守ったりする効果が期待できます。また、ビタミンCを同時に摂取することで、より高い抗酸化作用が期待できるとされています。
ホルモン剤【飲み薬】
ニキビの発生には、体内のホルモンバランスも影響しています。特に男性ホルモンは皮脂分泌の増加につながるため、男性ホルモン分泌の増加といったホルモンバランスの乱れがニキビにつながることがあります。そこで、改善のためにホルモン剤を使うことがあるのです。詳しく見ていきましょう。
アルダクトンA(スピロノラクトン)
スピロノラクトンを有効成分とする薬であり、先発医薬品にアルダクトンA、ジェネリックにスピロノラクトンがあります。
利尿剤(尿を増やす薬)や降圧剤(血圧を下げる薬)として使われる薬ですが、男性ホルモンを抑制し、過剰な皮脂分泌を抑えてニキビの予防、改善が期待できる薬でもあります。
マーベロン(低用量ピル)
マーベロンは低用量ピルの一種です。ピルは避妊、生理痛やPMSの改善、生理日移動などに使う女性ホルモン製剤ですが、ニキビ治療に使われることもあります。
ピルに含まれる黄体ホルモン(女性ホルモン)が男性ホルモンを抑え、生理周期に伴って悪化するニキビに効果が期待できるのです。ピルにはさまざまな種類がありますが、ニキビ改善のためには、特にマーベロンを始めとした一相性の低用量ピルがよいとされています。
市販薬と処方薬の違い
市販薬と処方薬の大きな違いは、有効成分の含有量の違いです。一般的に、処方薬のほうが有効成分の含有量が多く、効果も高いと考えられています。また、そもそも市販薬が存在しない成分もあります。たとえば、過酸化ベンゾイルやアダパレンが含まれる市販薬はありません。
また、医師に処方してもらう場合は、症状に合った薬を選んでもらうことができ、副作用が出た時も適切なアドバイスが得られる可能性が高いです。そのため、ニキビができたら早めに皮膚科を受診するとよいでしょう。薬以外にも、面皰を押し出す処置や、レーザー治療、ピーリングなどの施術を行うこともあります。
クリニックフォアでは、この記事で紹介したような治療薬を取り扱っている他、レーザー治療なども行っています。薬の処方のみの場合はオンライン診療も可能。薬は配送するため直接受診する必要はなく、忙しい方でもニキビ治療が始めやすくなっています。ニキビが気になっている方はまず受診してみてはいかがでしょうか。