ニキビ治療の漢方薬「十味敗毒湯」とは? 効果・使い方・副作用を徹底解説!

ニキビ治療では、毛穴の詰まりを改善する塗り薬をメインに使い、炎症が起こっている場合は抗生物質の塗り薬や飲み薬を使うことが一般的です。しかし、抗生物質を使い続けると耐性菌(薬が効かない菌)が出現したり、腸内細菌の環境が変化したり、副作用が現れたりするなどのデメリットもあるのです。そこで、抗生物質を長期服用したくない場合や、一般的なニキビ治療薬(西洋薬)で改善しない場合、薬が合わないなどの場合に漢方薬はよい選択肢となります。また、体質改善によってニキビ改善を目指すという点も、漢方薬の特徴となります。この記事では、ニキビ治療の際に使われることがある十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)という漢方薬について詳しく解説します。

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ニキビ治療の漢方薬「十味敗毒湯」とは

十味敗毒湯は、「10種類の生薬(十味)を組み合わせ、皮膚の毒素を取り除く(敗毒)」という特徴がある漢方薬です。ニキビ治療のガイドラインでは、炎症を伴うニキビに対する治療薬の一つとして推奨されています。

また、膿や湿り気のある湿疹の治療に使われる漢方薬でもあり、ニキビ以外にも、皮膚炎、じんま疹、水虫などの治療に使われることがあります。

十味敗毒湯に含まれる生薬は以下の通りです。(メーカーによって成分が若干異なることがあり、桜皮(オウヒ)が配合されているものもあります。

生薬概要
桔梗(キキョウ)キキョウの根
柴胡(サイコ)ミシマサイコというセリ科の植物の根
川芎(センキュウ)センキュウというセリ科の植物の根茎を湯通ししたもの
茯苓(ブクリョウ)マツホドという菌類の菌核
防風(ボウフウ)ボウフウというセリ科の植物の根や根茎
甘草(カンゾウ)ウラルカンゾウやスペインカンゾウというマメ科の植物の根など
荊芥(ケイガイ)ケイガイというシソ科の植物の花穂
生姜(ショウキョウ)ショウガの根茎
樸樕(ボクソク)クヌギ、コナラ、ミズナラなどの樹皮
独活(ドクカツ)ウドの根茎
桜皮(オウヒ)サクラ類の樹皮

十味敗毒湯に期待できる効果

十味敗毒湯には、皮膚の腫れや赤み、かゆみ、化膿を改善する効果が期待できます。そのため、ニキビだけでなく、アレルギー体質や、肌が化膿しやすい体質の改善目的で使うこともあります。

また、甘草や荊芥には抗菌作用があるといわれています。ニキビは、毛穴に皮脂が詰まり、そこにアクネ菌などが繁殖することで炎症が起こるものなので、アクネ菌に対する抗菌効果によって、ニキビ改善につながります。

桜皮が配合されている場合は、エストロゲン(女性ホルモン)を産生させることで、男性ホルモンによる皮脂の分泌を抑える効果も期待できます。

効果が期待できるニキビのタイプと期間

十味敗毒湯は、炎症を伴うニキビに対しての治療薬の一つとして推奨されています。また、治療ガイドラインでは推奨されていませんが、炎症を伴わないニキビ(面皰(めんぽう)、いわゆる白ニキビ)の治療で使うこともあります。

効果は早いと1カ月ほどで実感できるといわれており、1カ月以上飲んでも効果が実感できない場合は医師に一度相談してみるとよいでしょう。

※効果・効能の現れ方は個人差があります。

十味敗毒湯の使い方

説明書や医師の指示に従い、食前または食間(食事と食事の間。食後2時間後頃が目安)に、水またはぬるま湯と一緒に飲みます。飲み忘れた場合は気がついた時点ですぐに飲むか、次に飲む時間が近い場合は、1回分をスキップして次の分から再開するとよいでしょう。

また、十味敗毒湯はさまざまなメーカーのものがあり、メーカーによって錠剤や粉薬のように形状や用量に違いがあるため注意しましょう。用量は年齢、体重、症状などにより適宜増減することがあるため、医師の指示にしたがってください。

十味敗毒湯の副作用

薬には効果がある反面、必ず副作用のリスクがあります。漢方薬にも副作用のリスクはあり、十味敗毒湯の場合は発疹、赤み、かゆみ、じんま疹、食欲不振、胃の不快感、悪心、下痢などが生じることがあります。副作用に困った時は服用をやめて医師に相談するとよいでしょう。

また、十味敗毒湯に限らず、ニキビの治療時には、薬の使い始めに一度症状が悪化する「好転反応」が現れることがあります。東洋医学では瞑眩(めんげん)とも呼ばれるのですが、十味敗毒湯では瞑眩はほとんど現れず、まれに現れることがあっても、1~2日程度でおさまるといわれています。

偽性アルドステロン症

甘草を含む漢方薬や、グリチルリチン製剤と併用すると、偽性アルドステロン症という副作用が生じることがあります。これは、低カリウム血症(血中のカリウム濃度が低くなること)、血圧上昇、ナトリウムや体液の貯留、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあるもので、進行すると息苦しさや尿の異常、糖尿病の悪化、脱力感、四肢のけいれん、意識消失などが起こることもあります。

また、症状は急激ではなく徐々に現れることもあるため、十味敗毒湯の服用中は健康状態に注意しましょう。

十味敗毒湯を飲む時の注意点

十味敗毒湯は5歳以上であれば服用可能ですが、妊娠中、妊娠している可能性がある方、体が衰弱している方、胃腸が弱い方、薬などで発疹や赤み、かゆみが出たことがある方などは飲むことができません。

また、先述の通り、甘草を含む漢方薬やグリチルリチン製剤との併用は、副作用のリスクがあるため注意が必要です。その他の薬やサプリメントでも、併用することでなんらかの悪影響が出る可能性があるため、医師に相談してから使うようにしましょう。

十味敗毒湯以外のニキビ治療の漢方薬

ニキビ治療では、十味敗毒湯以外にもさまざまな漢方薬を使うことがあります。ここでは、治療ガイドラインに掲載されている漢方薬を中心に紹介します。

治療ガイドラインで「選択肢の一つとして推奨」されている漢方薬

日本皮膚科学会のニキビ治療ガイドラインでは、ニキビ治療の選択肢となる漢方薬もいくつか掲載されています。まず、炎症のあるニキビに対して選択肢の一つとして推奨されるのは、十味敗毒湯、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)の三つ。そして、面皰(めんぽう)に対して選択肢の一つとして推奨されるのは、荊芥連翹湯のみとなっています。

清熱剤と駆瘀血剤をよく使う

東洋医学では、ニキビの炎症を「熱」、 血行不良を「瘀血(おけつ)」呼び、ニキビの治療には、炎症を抑える「清熱剤(せいねつざい)」、血流を改善する「駆瘀血剤(くおけつざい)」に分類される漢方をよく使います。

  • 清熱剤:十味敗毒湯の他、 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)など
  • 駆瘀血剤:当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、 桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)、 加味逍遙散(かみしょうようさん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)など

それぞれに適したニキビの状態、体質などは以下の通りです。

生薬特徴
清上防風湯膿を持ったニキビが多数発生している場合に使う
荊芥連翹湯皮膚の深いところにまで達し、しこりを伴うようなニキビに使う
当帰芍薬散むくみやすく、冷え症で肩こりなどがある・艶がなく隆起もないニキビに使う
桂枝茯苓丸肩こり、冷え症、月経不順などがある・顔面が赤いか、ややくすみがあり、青黒い感じのニキビに使う
桂枝茯苓丸加薏苡仁肩こり、冷え症、月経不順などがあり、コメドやニキビ跡が目立つ場合に使う
加味逍遙散イライラ感や月経不順がある
桃核承気湯便秘や月経不順がある

その他

その他にも、以下のような漢方薬を使うこともあります。

  • 温清飲(うんせいいん):乾燥してかゆみがある方の、炎症のあるニキビに使うことがある
  • 温経湯(うんけいとう):手足のほてりや唇の乾燥がある方の、炎症のあるニキビに使うことがある
  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう):炎症が強いニキビや顔の赤みに使うことがある
  • 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):不摂生な食事や胃腸障害を伴い、口の周りを中心にできるニキビに使うことがある
  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):男性ホルモンを抑え、皮脂分泌を減少させてニキビを改善する

また、ニキビがなかなか治らない場合は、脾胃(ひい。内臓のこと)の改善を目的に、人参湯(にんじんとう)、六君子湯(りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などを併用することもあります。

ニキビ治療に使う薬については以下で詳しく解説しています。

十味敗毒湯を入手する方法

十味敗毒湯には市販品もあります。医療用医薬品との違いは、医療用医薬品のほうが有効成分の含有量が多い点。一方で、市販品のほうが有効成分の含有量が少ないため、穏やかな効き目かつ副作用のリスクが低いという特徴もあります。

しかし、いずれにしても副作用のリスクはあるため、自分に合った漢方薬を選ぶためにも、医師の指示のもと処方してもらったほうが安心といえるでしょう。

クリニックフォアでは十味敗毒湯を取り扱っています。他にもさまざまなニキビ治療薬があり、オンラインでの診療で、医師が症状などをヒアリングしながら適切な薬を処方します。薬は配送で自宅まで届くので、すぐにニキビ治療を始めたい方や忙しい方にもおすすめです。

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参考文献

  1. クラシエ薬品株式会社, 2015,「十味敗毒湯エキス錠クラシエ」説明文書
  2. 株式会社ツムラ, 2012,「ツムラ漢方十味敗毒湯エキス顆粒」添付文書
  3. 公益社団法人 日本皮膚科学会, 2017,「尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017」,日本皮膚科学会雑誌 127 (6):1261-1302