陰部の湿疹・かぶれは病気が原因?対処法を解説!【医師監修】

陰部の湿疹はデリケートな部分だけに心配も多いかもしれません。本記事では陰部に湿疹ができてしまう疾患別に、くわしい症状や治療の方法についてわかりやすく解説します。
陰部湿疹を防ぐコツや日常生活でできる対処法も併せて紹介するので参考にしてください。

陰部の湿疹はどんな症状?

陰部とは、男性は陰嚢や陰茎、女性は腟や外陰などの生殖器周辺を指します。ここにポツポツとした発疹ができて、赤みやかゆみが出る症状を陰部湿疹と呼んでいます。男性は陰嚢、女性は外陰部にできやすい傾向があります。

外気に触れにくい陰部は湿気がこもりやすいうえに皮膚が薄くデリケートなため、悪化を防ぐためにもなるべく早めに症状に合った治療を受けることがのぞましいでしょう。

陰部の湿疹の原因

陰部に湿疹ができる原因は幅広く、単なる湿疹や皮膚の病気、性感染症など多くのものがあります。まずはどのような原因疾患があるのかを見てみましょう。

脂漏性湿疹

頭皮や顔、脇、背中などの皮脂分泌が多い部分にできやすい湿疹です。私たちの体にもともといる常在菌のひとつ、マラアセチア菌は、皮脂を食べて分解する働きがあります。この分解したときにできる物質が皮膚に刺激を与えてできる湿疹が脂漏性湿疹です。ストレスや摩擦・紫外線による刺激、睡眠不足、脂質が多い食事、ビタミン不足などによって悪化しやすいことが指摘されています。

治療には、ステロイド剤や抗菌成分の入った塗り薬、抗ヒスタミン剤の飲み薬などが使われます。

アトピー性皮膚炎

かゆみをともなった湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら長引く疾患です。空気中の花粉・ホコリや、バリア機能の低下、生活環境、ストレスなどが関与すると考えられています。

治療にはステロイドの塗り薬がよく使われますが、皮膚が非常に薄く敏感な陰部に自己判断でステロイドを使うことは危険です。医療機関を受診し、症状に合ったお薬を処方してもらうとよいでしょう。

接触皮膚炎

なんらかの刺激物やアレルゲンに触れたことで発症する、いわゆる「かぶれ」です。かゆみのほか、ヒリヒリとした灼熱感や痛みも症状のひとつです。

原因は身の回りにあるものが多く、自分の汗や石けん、脱毛、ウォシュレット、コンドーム、合成繊維の下着、密着する衣類、トイレットペーパーなども原因のひとつです。女性は月経時に使うナプキンで皮膚炎になることもあります。

治療には、原因の見極めと、陰部を刺激しにくい保湿剤や抗炎症薬が基本です。症状が進んでいる場合はステロイドを使うこともあります。

外陰皮膚掻痒症

女性の外陰部にできる、強いかゆみをともなう湿疹です。原因はまだはっきりとわかっていませんが、更年期以降の女性がかかりやすいことから、女性ホルモンが低下することによって皮膚の新陳代謝が停滞して湿疹ができるのではないか、という説もあります。

治療には、軽症ならば保湿剤や抗炎症成分の入った外用薬で対応できますが、中等度以上になるとステロイドの塗り薬などが処方されます。

性感染症

性感染症には多くの種類があり、原因によって対処法も異なります。性感染症が疑われる場合は、医療機関で正確な診断をしてもらうことが大切です。

カンジダ症

「カンジダ」というカビが原因の疾患です。本来、カンジダは誰もが持っている常在菌で、通常は問題となることはありません。しかし、免疫力が低下したときや高温多湿な環境下では菌が増殖しやすいため、カンジダ菌が増えてカンジダ症を発症しやすくなります。

発症の原因として注意したいのは、抗生物質の服用です。抗生物質によって有用な菌まで死滅してしまうと常在菌のバランスが崩れ、カンジダを発症してしまうリスクがあるのです。また、女性は月経時につけるナプキンの蒸れから腟カンジダを発症してしまうことがあります。

男性は症状が出ないこともありますが、陰部のまわりに白いカスや湿疹が出たり、亀頭がかゆくなったり、赤みが出たりすることが多いです。放置すると、亀頭や包皮に炎症が起こる亀頭包皮炎を発症してしまうこともあるため、注意が必要です。

女性の場合、外陰部や肛門の赤い湿疹、腟や外陰部~肛門にかけてかゆみやヒリヒリ感などの症状が現れます。また、ヨーグルトやカッテージチーズのような白いおりものが出ます。

治療には抗菌作用のある塗り薬や飲み薬を処方するのが一般的ですが、女性の場合は抗菌作用のある腟錠も使われます。

性器ヘルペス

「単純ヘルペス」というウイルスから起こる湿疹です。強い痛みやかゆみ、ただれ、水ぶくれなどの症状があります。初めてヘルペスウイルスに感染した場合は、これに加えて、リンパ腺の腫れや発熱がみられることもあります。

一度感染すると、治療によって症状がおさまったあともウイルスが生き続けるため、免疫力が低下したタイミングで再びウイルスが優位になって再発しやすいのが特徴です。治療には、抗菌薬の飲み薬を服用します。

梅毒

「梅毒トレポネーマ」という細菌が血液や精液などを介して粘膜に感染して発症します。性行為による感染のほか、キスやオーラルセックスでも感染のリスクがありますし、妊娠中にお母さんから赤ちゃんに感染することもあります。

感染すると、最初の10〜90日のうちに痛みの少ない発疹やしこりができます。その後10週間以内には細菌が全身に広がり、赤い湿疹やリンパの腫れ、肝臓や腎臓などの内臓にも異常が起こります。

放置すると心臓や神経にも重い障害をもたらすため、早期に医療機関を受診することがのぞましいでしょう。筋肉注射や内服薬による治療が一般的です。

トリコモナス症

「トリコモナス」という原虫が引き起こす感染症です。性行為でも感染しますが、サウナや温泉、共同で使うリネン類などが感染源となることもあります。

男性は感染しても症状が出ることは少ない一方で、女性は性交時の痛みや腟周辺の赤み、腫れ、かゆみなどさまざまな症状が現れます。また、おりものにも異常がみとめられることも多く、生臭い泡だった黄色いおりものが特徴です。

治療には、抗菌薬の飲み薬や腟に挿入する腟錠が用いられます。

いんきんたむし

「白癬菌(はくせんきん)」というカビに感染して起こる湿疹です。10代後半~20代の若い男性に多い疾患です。白癬菌は水虫の原因菌でもあるため、家族などの身近な人が水虫にかかっていると、周囲の人が白癬菌に感染していんきんたむしを発症することもあります。

感染力は強く、わずかな皮膚のかけらから感染することもありますし、白癬菌を持ったペットに触れただけで感染するケースもあります。

感染すると、肛門の周囲や、性器、太ももなどに強いかゆみや湿疹ができます。治療には、抗真菌薬の塗り薬が一般的ですが、飲み薬を併用することもあります。

疥癬

疥癬の原因は「ヒゼンダニ」という疥癬虫です。皮膚にヒゼンダニが感染して寄生すると、湿疹などの症状があらわれます。性行為以外にも、布団やシーツ、衣類などから感染することも多いようです。

陰部にかゆみをともなう赤い発疹ができることが多いのですが、しこりができるケースもあります。治療には、ダニを駆除できる成分が配合された飲み薬や塗り薬が処方されます。

陰部湿疹の予防・対処法

湿疹ができたときは早めに医療機関を受診するようにしましょう。そのまま放置すると、悪化したり、周囲に感染が広がったりしてしまうおそれがあります。

ここでは、日ごろからできる感染予防法と対処法を紹介します。

締め付けや蒸れに注意する

汗をかくと、蒸れて湿疹が悪化したり、かゆみが強くなったりするおそれがあります。とくにカンジダ症の原因となる真菌(カビ)は高温多湿な環境で増殖します。なるべく通気性の良い、ゆったりとした服装を心がけましょう。

清潔にする

汗や皮脂、汚れ、尿などが皮膚に付着していると湿疹の原因となりやすいため、日ごろから清潔を保つように注意しましょう。ただし、清潔にしようと洗いすぎるのもよくありません。入浴時は洗浄力の強すぎるボディーソープを使ったり、強い力でこすったりせず、低刺激タイプの石けんを使って優しい力で洗うのがおすすめです。

生活習慣の見直し

カンジダなどは免疫力が低下すると悪化します。免疫力を正常に保つためにも、生活習慣を見直して規則正しい生活を心がけましょう。とくに、睡眠を十分にとり、適度にストレスを発散し、ビタミンを積極的に摂取することが大切です。逆に、アルコールや喫煙などは症状を悪化させるリスクがあるため、なるべく控えたほうがよいでしょう。

症状がある人との性行為をしない

皮膚や粘膜が触れ合う性行為は感染を広げてしまうリスクがあります。自分のためにもパートナーのためにも、陰部に異常があるときは性行為を控えるようにしましょう。

陰部の湿疹の検査

受診した場合、問診と視診が基本です。症状によっては、これにくわえて皮膚の一部を顕微鏡で確認したり、患部の一部を培養して病原体を確認したりすることもあります。

腟カンジダが疑われる女性の場合は、おりものを採取して検査します。皮膚科では難しい検査のため、陰部湿疹で受診する場合は、性感染症を診療している病院や婦人科を受診するとよいでしょう。

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一部、対面でなければできない検査や治療もありますが、まずはご相談ください。