5αリダクターゼとは?
5αリダクターゼ(読み方:ゴアルファリダクターゼ)は、5α-還元酵素とも呼ばれ、男性女性にかかわらず、人の体内に存在する酵素です。
ステロイド(副腎皮質ホルモンの一種)の代謝に関わっており、胆汁酸の合成や、アンドロゲン(男性ホルモンの一種)とエストロゲン(女性ホルモンの一種)の代謝に関わっています。
また、男性ホルモンの「テストステロン」を「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変える働きもあります。DHTは、胎児の男性外性器をつくる働きなどがあり、男性の体にとって重要な働きをしています。その一方で、AGA(男性型脱毛症)や前立腺肥大症の発症の原因にもなることもあります。
DHTの作用
5αリダクターゼは、特に男性にとっては必要な存在であるものの、そこから生成されるDHTはAGAや前立腺肥大症の発症の原因にもなることもあります。まずはDHTの働きについて詳しく見ていきましょう。
男性らしい体をつくる
DHTは男性らしい体づくりにおいて不可欠な存在です。DHTには、胎児の男性外性器をつくる働きなどがあり、男性の体にとって重要な働きをしています。
AGAの原因となる
DHTによって抜け毛や薄毛が生じ、AGAを発症することがあります。5αリダクターゼやDHTとAGAの詳細は後述します。
前立腺肥大症の原因となる
DHTは、前立腺の細胞を増殖させることで、前立腺肥大症につながります。
前立腺肥大症は男性特有の病気で、尿道の周りにある前立腺が肥大し、尿道が圧迫されることで、排尿に関するさまざまな症状が出る病気です。50代以降に多く見られ、70代以降の7~8割が発症しているとされています。
5αリダクターゼには種類がある
5αリダクターゼには主にⅠ型、Ⅱ型があり、それぞれ分布場所が異なります。、AGAの発症にかかわるのはⅠ型とⅡ型です。それぞれの詳細は以下のとおりです。
5αリダクターゼⅠ型
Ⅰ型は、毛乳頭細胞(毛根部分に位置し、髪をつくる毛母細胞に栄養や発毛指令などを送る細胞)や皮脂腺を中心に全身に存在しています。また、後頭部や側頭部に特に多いとされています。
以前はⅠ型はAGAの発症には関係ないと考えられていましたが、最近ではⅠ型もAGAに関与しているとされており、5αリダクターゼⅠ型を阻害するAGA治療薬もあります。
5αリダクターゼⅡ型
Ⅱ型は主に前頭部と頭頂部に存在し、ここでは脱毛を促す働きが強いです。一方、ひげ、脇、陰部などの毛乳頭細胞にも存在し、ここでは発毛を促す働きが強くなっています。髪の薄い人は体毛が濃いと言われることもありますが、その背景には5αリダクターゼの働きがあるのです。
また、Ⅱ型はAGA発症に強く影響しているため、Ⅱ型が多く存在する前頭部や頭頂部が薄毛になりやすいとされており、5αリダクターゼⅡ型を阻害するAGA治療薬もあります。
その他、前立腺、精嚢、精巣上体にもⅡ型は存在します。
5αリダクターゼはAGAの原因となる
AGAは、遺伝や男性ホルモンなどが関与する一般的な脱毛症です。髪の生え変わりの周期(ヘアサイクル)に異常が生じることで、抜け毛が多くなり、髪が生えにくくなることで、どんどん薄毛が進行していきます。
なぜそうなってしまうかというと、男性ホルモンのテストステロンは、5αリダクターゼと結びつくとジヒドロテストステロン(DHT)に変化します。そしてDHTが、毛乳頭の中にある受容体(アンドロゲンレセプター)に結びつくと、髪のもととなる毛母細胞の機能が低下し、ヘアサイクルの成長期が短くなるのです。これにより、髪が十分に成長しないまま抜けてしまうので、細く柔らかい毛が増え(軟毛化)、薄毛になっていきます。
5αリダクターゼの活性度が高いほどAGAになりやすい
誰の体内にも5αリダクターゼは存在しますが、全ての人がAGAになるわけではなく、AGAになる人とならない人がいますよね。
この理由としては、5αリダクターゼの活性度が関わっています。5αリダクターゼの活性度が高いとDHTができやすく、AGAになりやすいのです。
さらに、アンドロゲンレセプターの感受性も関係します。感受性が強いと5αリダクターゼとアンドロゲンレセプターが結びつきやすく、DHTができやすい、つまり、AGAになりやすいのです。
なお、活性度と感受性の2つの要素は、遺伝の影響を受けると考えられています。
AGAの原因は5αリダクターゼだけではない
AGAの発症には生活習慣なども影響します。たとえば、食生活が乱れると栄養が不足したり、皮脂の分泌が過剰になったりして頭皮環境が悪くなります。睡眠不足やストレスも血行不良の原因となり、頭皮に栄養が届きにくくなる原因に。皮脂の分泌の乱れにもつながります。
また、間違った洗髪やヘアケアなどによって頭皮に負担がかかることも、AGAの原因となりえます。
5αリダクターゼが多い人の特徴
5αリダクターゼが多い人や活性度が高い人には、以下のような傾向があるとされています。
- 肌や頭皮が脂っぽい人は、5αリダクターゼⅠ型が多い傾向がある
- ひげや体毛が濃い人は、5αリダクターゼⅡ型が多い傾向がある
- ニキビが多い人は5αリダクターゼの活性度が高くDHTが作られやすい
5αリダクターゼを抑制する5つの方法
AGA予防・改善のためには、5αリダクターゼを抑制するのが一つの方法として挙げられます。そのために高い効果が期待できるのが、治療薬を飲むことです。その他、補助的に育毛剤を使ったり、食べ物にも気を配ったり、サプリメントやシャンプーを取り入れたりするとよいでしょう。詳しくは以下の通りです。
治療薬を飲む
5αリダクターゼを抑制するうえで、最も高い効果が期待できるのがお薬を飲む方法です。代表的なお薬には、デュタステリド(ザガーロなど)とフィナステリド(プロペシアなど)があります。いずれも日本皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドラインにおいて、最もランクの高い推奨度Aの治療法です。
これらのお薬は、5α-還元酵素阻害剤に分類されるお薬で、文字通り、5αリダクターゼを阻害することでAGAの進行を防ぐお薬です。ただし、主に抜け毛を抑える効果が期待できるお薬であり、発毛効果はそこまで期待できません。
なお、デュタステリドは5αリダクターゼⅠ型、Ⅱ型の両方を阻害しますが、フィナステリドはⅡ型のみを阻害します。
また、女性は使えなかったり、男性は性欲減退、精液量の減少など、性機能に関する副作用が生じたりするリスクがあることを理解しておきましょう。
育毛剤を使う
5αリダクターゼを抑制するとされる成分に「エチニルエストラジオール」があります。この成分が含まれている育毛剤を使うのも一つの方法です。
ただし、現在のAGA治療で推奨されている育毛剤(外用薬)の成分は、ミノキシジルです。ミノキシジルは、髪を作り出す毛母細胞を刺激したり、血行を促進したりすることによる発毛効果が期待できるお薬です。抜け毛を防ぐだけでなく、発毛を促すため、攻めのお薬と言えます。
5αリダクターゼを抑制する食べ物・栄養を摂る
お薬のような明らかな効果が期待できるわけではありませんが、食べ物の中には、5αリダクターゼを抑制するとされているものもあります。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
大豆を使った食べ物
納豆、豆腐などの大豆を使った食べ物には、イソフラボンが含まれています。イソフラボンには、5αリダクターゼの抑制効果が期待できるだけでなく、IGF-1という成長因子の分泌を促す作用もあり、育毛をサポートする効果も期待できます。
また、イソフラボンは女性ホルモンに似た働きをするため、男性ホルモンの抑制効果も期待できます。
柑橘類の皮
みかん、オレンジ、グレープフルーツ、ゆず、レモン、ライムなどの柑橘類の皮に含まれているリモネンには、5αリダクターゼを抑制する効果があるとされています。
ただ、皮を食べるのは大変なので、みかんの皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)などを取り入れるのがおすすめです。
緑茶など
緑茶にはカテキンが多く含まれており、カテキンの一種であるエピカテキンガレート(EGCg)には、5αリダクターゼの抑制効果が期待できます。また、緑茶にはビタミンC・Eなども含まれており、育毛をサポートする効果が期待できるでしょう。
なお、緑茶ほどではないものの、紅茶、ウーロン茶にもカテキンが含まれています。
ノコギリヤシ
ヤシ科のハーブの一種であるノコギリヤシエキスは、育毛サプリメントにもよく含まれている成分です。なかでもノコギリヤシエキスに含まれるβシトステロールとオクタコサノールという成分は、前立腺肥大症における排尿に関する症状に効果があるとされており、その理由の一つとして、5αリダクターゼを抑制する作用が挙げられています。
ただ、こういったノコギリヤシの効果を示唆する研究結果は多いものの、その多くが、臨床試験デザイン(試験のタイプや条件)に統一性がなかったり、観察期間が短かったりするものであり、研究結果の質が低く、信ぴょう性が高いとは言いにくいです。
とはいえノコギリヤシエキスは育毛アイテムによく含まれている成分なので、取り入れてみるのも悪くはないでしょう。
5αリダクターゼを抑制するサプリメントを利用する
ノコギリヤシ、イソフラボンなどが含まれるサプリメントを利用するのも一つの方法です。
なお、イソフラボンに関連して注目されているのが「エクオール」です。イソフラボンを摂取した際、体内では腸でイソフラボンの一部の成分がエクオールに変化して作用すると考えられています。
エクオールに変化するには特定の腸内細菌が必要となりますが、この腸内細菌は全ての人が持っているわけではありません。つまり、イソフラボンを摂取してもエクオールに変化せず、その作用も期待できないケースがあるのです。そのため、最初からエクオールの含まれているサプリメントを検討してもよいでしょう。
抜け毛を予防する薬用シャンプーを使う
抜け毛を予防するとされる薬用シャンプーなどを使うのもよいでしょう。ただ、「育毛シャンプー」と呼ばれるものにはさまざまなものがありますが、育毛剤のようにダイレクトに育毛や発毛効果が期待できるわけではなく、頭皮環境を向上し、抜け毛予防をすることが主な目的です。
成分によって洗浄力や肌への刺激が異なり、毛髪にハリコシを与えるような成分が配合されていることもあるので、自分に合ったシャンプーを選びましょう。
5αリダクターゼに関するQ&A
最後に、5αリダクターゼに関するよくある質問にお答えします。
女性でも5αリダクターゼで薄毛になる?
女性の体内にも5αリダクターゼは存在し、薄毛の原因になることがあります。このような薄毛をFAGA(女性男性型脱毛症)と言います。
ただ、女性の薄毛の中には、5αリダクターゼが関連するAGAのメカニズムでは説明がつかないタイプも存在することが分かってきたため、最近ではFPHL(女性型脱毛症)と呼ばれることが増えています。
加齢によって5αリダクターゼも減る?
加齢によって5αリダクターゼの活性度はより高まるとされています。つまり、加齢によってDHTが増える可能性が高いです。
実際、AGAは加齢とともに発症・進行することが多いです。
ミノキシジルは5αリダクターゼを阻害できる?
育毛剤の代表的な成分であるミノキシジルには、5αリダクターゼの阻害作用はありません。ただ、前述の通り、毛母細胞の活性化や血行促進による発毛効果が期待できます。
5αリダクターゼの検査はある?
5αリダクターゼの量や活性度を測定する検査はありません。ただ、男性ホルモン量を測定し、AGAリスクを判定するような検査は存在します。
クリニックフォアでもオンラインで検査が可能なので、気になる方はご検討ください。
亜鉛で5αリダクターゼは抑制できる?
亜鉛には5αリダクターゼの抑制効果は期待できません。ただ、髪の主成分であるケラチンをつくるのに欠かせない栄養素なので、薄毛対策においては重要な存在です。
牡蠣、豚レバー、卵などに多く含まれるので、積極的に食べることをおすすめします。
アルコールと5αリダクターゼは関係ある?
アルコールと5αリダクターゼは直接関係するわけではありませんが、過剰摂取は控えたほうがよいでしょう。
アルコールは、体内でアセトアルデヒドという有害物質になり、その後無害な物質に分解されるのですが、分解の際にさまざまな栄養素を消費してしまいます。5αリダクターゼの抑制効果が期待できる栄養素が不足する恐れもあるため、お酒は適量を心がけましょう。
喫煙と5αリダクターゼは関係ある?
喫煙と5αリダクターゼも直接関係するわけではありませんが、喫煙は控えたほうがよいでしょう。
タバコを吸うと、体内に活性酸素が発生し、無効化するためにビタミンCがたくさん消費されます。このように、喫煙によって5αリダクターゼの抑制効果が期待できる栄養素や、育毛によい栄養素が不足する恐れがあります。
また、血行が悪くなり、頭皮への血流が悪くなって薄毛につながることもあるので注意しましょう。
運動・筋トレと5αリダクターゼは関係ある?
「運動をするとハゲる」といった話を聞いた事があるかもしれませんが、運動・筋トレと5αリダクターゼに直接の関係はありません。
ただ、運動や筋トレをすると、男性ホルモンのテストステロンが増えるとされています。テストステロンと5αリダクターゼが結びつくとDHTができるので、これが「運動をするとハゲる」という噂の理由だと考えられます。
とはいえ、運動や筋トレで一時的に男性ホルモンが増えても、DHTになるのはそのほんの一部であり、AGAの原因になる心配は少ないでしょう。
ストレスと5αリダクターゼは関係ある?
ストレスと5αリダクターゼが直接関係するわけではありませんが、ストレスがたまると血行が悪くなったり、亜鉛が消費されたりして、AGAにつながることも考えられます。
そのため、趣味やリラックスの時間を設け、ストレス解消に努めましょう。十分な睡眠や適度な運動も、ストレス解消に役立ちます。
クリニックフォアのオンラインAGA診療
クリニックフォアでは、オンラインで男性・女性それぞれのAGA診療を行っています。診察はスマホなどを使ってオンラインで行い、お薬は自宅などにお届けするため、AGA治療が始めやすくなっています。
また、数本の髪の毛を使ったAGAリスク判定検査も行っています。こちらもオンラインでやり取りが可能なので、ご利用をご検討ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※自由診療
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。