冬は抜け毛が起きやすい季節?原因と対策を皮膚科医が解説します!

実は抜け毛には「起きやすい季節」と「起きにくい季節」があることをご存知でしたか?

そして、抜け毛が起きやすいのは今のこの時期、冬だということまで知っている方はそう多くないのではないでしょうか。

今回はそんな冬に抜け毛が起きやすくなる理由から、その対策まで詳しく解説していきます。

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はじめに:人の毛髪は季節で変わる

「冬になると抜け毛が増える」という話をよく耳にしますが、実は人の毛髪には自然な季節変動があり、研究データでは夏から秋にかけて抜け毛が最も多くなると報告されています[1]。ある研究では、3月に成長期(髪が伸びている時期)の割合が90%以上と最も高く、8~9月に最も低くなり、この時期の抜け毛は冬の平均の約2倍(約60本/日)に達するとされています。これは気温や日照時間の影響と考えられています[1][2]

一方で、冬には冬特有の要因によって抜け毛が増えることもあります。この記事では、季節性の自然な変動を理解した上で、冬に気をつけるべき抜け毛の原因と対策について詳しく解説します。

冬の抜け毛の原因

冬に抜け毛が増えたと感じる場合、以下のような要因が考えられます。

冬の抜け毛の原因

ではまず、冬に抜け毛が増えてしまう原因を紹介します。

1. 乾燥した空気による頭皮の乾燥

冬は湿度が夏の半分程度しかなく、さらに室内で暖房をかける方がほとんどだと思いますが、その暖房によってさらに湿度が下がってしまいます。

実際に湿度が下がっていることはなかなか実感することは難しいですが、冬場になると、顔、手足や指先がカサカサ乾燥するなと感じられる方は多いのではないでしょうか。それらは冬の乾燥が原因で、頭皮も顔や手足と同じように乾燥してしまい、抜け毛が増えるというわけです。

冬季は皮脂欠乏症(乾燥肌)が悪化しやすい時期です[3]。日本皮膚科学会は、皮脂欠乏症に対して保湿剤の適正使用を推奨しています。冬季は頭皮の乾燥により瘙痒(かゆみ)や炎症が起こりやすく、頭皮環境が乱れることで抜け毛やフケの訴えが増えることがあります。適切な保湿と刺激の回避が重要です。

2. 寒さによる血行不良

冬の寒さで体が冷えてしまい、頭皮の血行が悪くなってしまうことが挙げられます。頭皮の血行不良を実感することは難しいですが、手足の指先は冷えるのが分かりますよね。手足の指先は体の末端で冷えやすいため特に冷えてしまうのですが、頭皮も同じく体の末端です。

そのため、頭皮が冷やされて、血管が収縮してしまうために、血流が十分ではなくなり、髪の毛を作り維持するのに必要な物質・栄養を頭皮に届けられなくなってしまいます。

3. 免疫力・体力の低下

寒さにより体が弱って免疫力、体力が落ちてしまうという可能性が挙げられます。風邪をひくと熱が出るのは、体内に入ってきた病原体をやっつけるために免疫機能を上げるための体の防御反応なのですが、冬は体温が下がって体力も落ちていると、免疫機能も落ちてしまいます。

免疫機能が下がると、頭皮も含めた皮膚の常在細菌のバランスが乱れてしまい、皮膚トラブルを起こしてしまうことがあります。

発熱や強いストレス後に起こる休止期脱毛(TE)について

休止期脱毛(Telogen Effluvium: TE)は、発熱、感染症、手術、強いストレスなどの出来事の後、2~3か月遅れて抜け毛が増える現象です[4][5]。多くの場合、3~6か月で自然に軽快します。冬は感染症が増加する時期でもあるため、風邪やインフルエンザなどにかかった後、数か月してから一時的に抜け毛が増えることがあります。これは病気によって一時的に髪の成長サイクルが乱れたためで、原因が解消されれば自然に回復することがほとんどです。ただし、6か月を超えて抜け毛が続く場合や、進行している場合は、慢性的な休止期脱毛や他の疾患の可能性もあるため、医療機関への受診をおすすめします。

感染流行期における休止期脱毛の増加

近年の研究では、発熱を伴う感染症の後、2~3か月で休止期脱毛が出現する傾向が報告されています[6][7]。感染症が流行する冬の時期は、感染対策とともに、栄養バランスの良い食事と十分な休養を意識することが大切です。

抜け毛の対策

では、冬に増えてしまう可能性のある抜け毛の対策はどうしたら良いのでしょうか。それは上記の要因をひとつずつ無くしてあげることが有効です。

1. 頭皮の保湿ケア

頭皮が乾燥しないように、洗浄力の強すぎないシャンプーを使って、さらに顔と同じようにシャンプーの後は保湿してあげましょう。また、加湿器で部屋を加湿することも大切です。室内の湿度は40~60%を目安に保つことが推奨されています。

シャンプーとドライヤーのポイント:ぬるめのお湯(38~40度程度)でやさしく洗い、ゴシゴシこすらないようにしましょう。ドライヤーは頭皮から15~20cm程度離して、熱風を当て続けないよう注意してください。シャンプー後は、頭皮用の保湿ローションやオイルを使って、水分が逃げないようにケアすることも効果的です。

2. 頭皮の血行促進

頭皮の血行を良くしてあげましょう。頭皮の血行を良くするためには、頭皮のマッサージが効果的です。また、全身の血行をよくするために、寒いからと言って部屋の中に閉じこもるのではなく、運動習慣を身につけて、よく眠ることも大切です。

入浴で体を温める:お風呂に入ることで体温が上がることはもちろんのこと、全身の血行も改善されるので一石二鳥です。38~40度程度のぬるめのお湯に10~15分程度ゆっくり浸かることで、体の芯から温まり、頭皮への血流も改善されます。

3. 体調管理と免疫力の維持

冬場も免疫機能を落とさないために体調管理につとめてください。お鍋や温かいスープを食事に取り入れて体の中から温めることも効果的でしょう。また、十分な睡眠と、ビタミン・ミネラル・たんぱく質をバランスよく含んだ食事を心がけることも大切です。

冬に抜け毛が増えたときの判断フロー

冬に抜け毛が気になったとき、以下のような流れで状況を確認してみてください。

ステップ確認内容対応
1最近、発熱・手術・強いストレスがあった休止期脱毛の可能性があります。様子を見て3~6か月で改善するかを確認しましょう。
2頭皮にかゆみ・赤み・大量のフケがある脂漏性皮膚炎や乾燥性湿疹の可能性があります。皮膚科の受診をおすすめします。
3前頭部~頭頂部のパターン的な進行、または家族に薄毛の方がいるAGAの可能性があります。専門医への相談をおすすめします。
4上記に当てはまらないが、抜け毛が6か月以上続いている慢性的な休止期脱毛や他の疾患の可能性があります。医療機関を受診してください。

頭皮疾患の見分け方と受診の目安

脂漏性皮膚炎について

脂漏性皮膚炎は、頭皮に脂っぽい鱗屑(りんせつ:フケのようなもの)と赤みを呈する皮膚疾患です[8]。冬は気温の変化やストレスなどで悪化しやすいことが知られています。治療には抗真菌薬やステロイドの外用薬が用いられます。頭皮のかゆみ、赤み、大量のフケが続く場合は、セルフケアだけでは改善が難しいため、皮膚科の受診をおすすめします。

もしかしてAGAかも?

今まであげたことは全て、男女問わず全員に起こりうることですが、もしかしたらAGAという進行性の男性型脱毛症を発症していることもあります。女性の場合は女性型脱毛症(FPHL)と呼ばれます。

季節性の抜け毛とAGAの見分け方

前頭部や頭頂部のびまん性(広い範囲に広がる)進行や家族歴がある場合、また抜け毛が6か月以上続いている場合は、AGAを疑う必要があります[9]。AGAは進行性の疾患であるため、早期発見・早期治療が重要です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、外用ミノキシジル、内服フィナステリド、内服デュタステリドなどが推奨度Aの治療として挙げられています。一時的な季節性の抜け毛と進行性の薄毛を正しく鑑別し、適切な対応をとることが大切です。

AGA治療薬について

AGAの可能性がある場合、医療機関での治療を検討することになります。ここでは主な治療薬について、わかりやすくご説明します。

フィナステリド(抜け毛を抑える「守り」の薬)

フィナステリドは、抜け毛の原因とされる「DHT(ジヒドロテストステロン)」という物質の生成を抑える薬です。DHTは、男性ホルモン(テストステロン)が「5α還元酵素II型」という酵素によって変化することで生じます。フィナステリドはこの変化を抑えることで、抜け毛を減らす効果が期待できます。内服開始後、1~3か月程度で効果が実感できることが多いです。

主な副作用と頻度:国内の臨床試験では、フィナステリド1mgを服用した276例中11例(4.0%)に副作用が報告されました[10]。主なものは性欲減退が3例(1.1%)、勃起機能不全が2例(0.7%)などです。副作用が気になる場合は、服用を中止することで改善することもありますが、必ず医師に相談してください。また、個人輸入などの非正規ルートでの入手は健康被害のリスクがあるため、必ず医療機関で処方を受けるようにしてください。

デュタステリド(より広い範囲で作用する「守り」の薬)

デュタステリドもフィナステリドと同じく、DHTの生成を抑える薬です。違いは、デュタステリドが「5α還元酵素I型」と「5α還元酵素II型」の両方に作用する点です。フィナステリドはII型のみに作用するため、デュタステリドの方がより広い範囲で効果が期待できます。実際、デュタステリドはフィナステリドと比較して、約1.6倍毛髪数が増加したという報告があります。内服開始後、1~3か月程度で効果が実感できることが多いです。

主な副作用と頻度:デュタステリドの副作用発症率は約5%未満とされており、フィナステリド(約1%未満)と比べてやや高いことが報告されています[11]。主なものは性欲減退、勃起機能不全、精液減少などです。副作用が気になる場合は医師に相談してください。

ミノキシジル(発毛を促進する「攻め」の薬)

ミノキシジルは、頭皮の血管を拡張することで、毛を作る細胞への血流を促進する薬です。血行が改善されることで、毛細血管から毛乳頭へ栄養が行きわたりやすくなり、頭頂部や生え際の発毛が促進されます。外用薬(塗り薬)もありますが、内服型のミノキシジルタブレットの方が体内への吸収率が高く、より高い発毛効果が期待できるとされています。

初期脱毛について:内服開始後、およそ1か月程度で一時的に抜け毛が少し増えることがありますが、これは古い毛が新しい毛に生え変わっているサインであり、薬が効いている証拠です。数か月で必ず生えてきますので、心配せず飲み続けることが大切です。

主な副作用:ミノキシジルは日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されていますが、副作用として塗布部位(外用薬の場合)や頭皮のかゆみ、発赤、フケの増加、毛包炎などが報告されています[9]。また、まれに動悸、頭痛、めまい、手足のむくみ、血圧低下、心拍数の増加なども見られます。心疾患や血圧の薬を飲んでいる方は、使用前に必ず医師に相談してください。また、頭髪の増加に伴い、他の部位の毛量も増加することが一般的です(増加の程度には個人差があります)。気になる方は、外用剤への切り替えなどの対応が可能ですので、医師とご相談ください。

AGAの治療は、ぜひ気になる方は当クリニックを受診してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 冬に抜け毛は本当に増えますか?

人の自然な季節性では、夏から秋にかけて抜け毛が増える報告が多く、冬は比較的少なめです。ただし、冬は乾燥や血行不良、発熱後の休止期脱毛などで一時的に抜け毛が増えることがあります。

Q2. 冬の抜け毛はどのくらい続きますか?

発熱や強いストレス後の休止期脱毛は、通常2~3か月遅れて始まり、3~6か月で落ち着くことが多いです。6か月以上続く場合は、医療機関への受診を検討してください。

Q3. 受診の目安は?

頭皮に赤みや強いかゆみ、大量のフケがある場合、前頭部から頭頂部のびまん性進行や家族歴がある場合、あるいは抜け毛が6か月以上続く場合は、皮膚科やAGA外来の受診をおすすめします。

季節別の抜け毛傾向(研究ベースの概観)

季節研究報告の傾向補足
比較的少なめ(夏のピーク時の約半分)BJD 1991の研究では、冬の抜け毛は夏秋のピーク時(8~9月がピーク、約60本/日)と比べて少ないとされています[1]
中等度3月は成長期(アナゲン)の割合が90%以上と高い時期です[1]
増え始める日照や気温の影響が指摘されています(BJD 2018の検索データ解析より)[2]
ピーク8~9月は成長期の割合が最も低く、抜け毛がピークとなります[1]

冬の抜け毛:原因と対策のまとめ

原因起こり方自宅での対策受診の目安
乾燥(皮脂欠乏症)角層のバリア機能が低下し、かゆみやフケが出て抜け毛が増えたように感じる低刺激性のシャンプーを使用し、毎日保湿する。加湿器で室内湿度を40~60%に保つ赤み、強いかゆみ、大量のフケが続く場合は皮膚科へ[3]
血行不良(寒冷)末梢血管が収縮し、栄養供給が低下する体を温める、軽い運動、入浴(38~40度で10~15分)冷え性が強い場合は内科に相談
感染後の休止期脱毛発熱後2~3か月で抜け毛が増え、3~6か月で改善する傾向十分な休養、栄養バランスの良い食事、やさしいヘアケア6か月を超えて持続する、または進行している場合は受診[4][5]
AGA(男性型および女性型脱毛症)の進行前頭部~頭頂部のパターン的な進行日常のヘアケアを続けながら、医療機関での治療を検討AGAとしての診断・治療が必要[9]

30秒でわかる あなたの頭皮危険度はどのくらい? 5問で完結 LINEでチェックする

AGAを正しく理解する

AGAセルフチェック

自分がAGAなのか、簡単セルフチェック。

AGAの原因

AGAが起こる原因を理解しましょう。

AGAのお薬について

自分に合ったお薬を知りましょう。

参考文献

  1. [1]Randall VA, Ebling FJG. Seasonal changes in human hair growth. Br J Dermatol. 1991;124(2):146-151. (8~9月に抜け毛ピーク、冬の約2倍)
  2. [2]Aldoori N, et al. Seasonality of hair loss: Google Trends time-series analysis. Br J Dermatol. 2018. DOI:10.1111/bjd.16075. (夏~秋に検索ピーク)
  3. [3]日本皮膚科学会『皮脂欠乏症診療の手引き2021』日皮会誌131巻10号, p.2255-. (冬季乾燥の対応)
  4. [4]Malkud S. Telogen Effluvium: A Review. J Clin Diagn Res. 2015;9(9):WE01-WE03. (2~3か月遅発、3~6か月で改善)
  5. [5]Headington JT, et al. Telogen Effluvium - a review of the science and current obstacles. J Dermatol Sci. 2021. (TEのメカニズム)
  6. [6]Mieczkowska K, et al. Time of onset and duration of post-COVID-19 acute telogen effluvium. JAAD 2021. (発症時期・期間)
  7. [7]Park J. Clin Exp Dermatol 2023. (パンデミックの影響)
  8. [8]五十嵐敦之ほか『脂漏性皮膚炎』日本皮膚科学会誌・総説. (診断と外用治療)