ミノキシジルとむくみの関係【副作用の可能性】
むくみは、ミノキシジルで起こりうる副作用のひとつです。
ミノキシジルはもともと高血圧治療薬として開発された成分であり、血管を広げることで血圧を下げる働きがあります。
しかしこの働きは、体内の水分バランスに影響を与え、むくみを引き起こすことがあるのです。
FDA(米国食品医薬品局)の添付文書によると、ミノキシジルを高血圧治療で用いた場合、約7%の頻度でむくみが生じたと報告されています[1]。
また、アメリカ臨床皮膚科学ジャーナルによると、AGA治療目的でミノキシジルを服用したケースでは、約2%に軽度のむくみが生じたと記されてます[2]。
通常、AGA治療で用いるミノキシジルの量は、高血圧治療よりも少ない量ですが、同じ成分である以上副作用が起こる可能性はゼロではありません。
ミノキシジルでむくみが起こる原因
むくみの原因は、おもにミノキシジルが持つ「血管拡張作用」によるものです。
ミノキシジルは血管を広げることで頭皮への血流を増やし、毛根に栄養を届けやすくします。これが発毛を促す仕組みであり、AGA治療に活用されています。
しかしこの作用は、むくみという副次的な症状も引き起こしてしまうのです。
むくみが起こるメカニズム
ミノキシジルにより血管が広がると、体の水分バランスが変わりむくみが生じやすくなります。
この水分バランスの変化は、以下2つの作用が重なることで生じると考えられます[1]。
- 血管が広がることで、水分が毛細血管から外に出やすくなる
- 血圧が下がり、腎臓で塩分と水分を体内へ戻す働きが高まる
通常、体内の水分は血管と周囲の組織を行き来しながらバランスを保っています。
しかし、ミノキシジルにより血管の拡張が続くと、血管の外へ出る水分量が増え、血管への戻りが追いつかないことがあります。
血管に戻りきらなかった水分は皮膚の下にたまり「むくみ」として現れるのです。
また、血管が広がり血圧が下がると、腎臓では塩分や水分を体内へ戻す反応が高まります。体全体の水分量が増えやすくなるため、むくみは助長されてしまいます。
ミノキシジルによるむくみは、血管拡張作用をきっかけに、体が水分を保持しやすい状態に傾くことで生じるのです。
服用量による影響の違い
むくみの副作用は、服用量が多いほど発現率が高くなります。
海外の皮膚科学雑誌に掲載された低用量ミノキシジルに関する文献では、ミノキシジル内服による心血管系副作用(むくみを含む)の発生率が報告されています。
<心血管系の副作用(低血圧やむくみなど)>[3]
| 1日の用量 | 副作用発現率 |
| 0.25~0.75mg | 4.0% |
| 1~1.25mg | 10.8% |
| 2.5~5mg | 34.2% |
用量が多いほど、むくみをはじめとする心血管系の副作用が生じやすいことがわかります。
ただし、むくみの程度や出やすさには個人差があり、同じ量を服用してもむくみが強く出る人もいればまったく出ない人もいます。これは、個人の持つ水分代謝や腎臓の機能、生活習慣などが大きく関係するためです。
一人ひとりに合う量を見極めるために、AGA治療におけるミノキシジルは、低用量から開始し、体の反応を確認しながら少しずつ調整することが推奨されています。
ミノキシジルによるむくみの特徴
ミノキシジルによるむくみは軽度で、一時的なケースが多い傾向があります。
顔や手足に現れやすく、軽度であれば様子をみることも多いです。
症状の部位や期間について、ご自身の状況と照らしあわせてみてください。
むくみが出やすい部位
むくみは「顔(とくにまぶた)」や「手足」に現れやすい傾向があります。
まぶたは皮膚が薄く、わずかな水分の増加でも影響を受けやすい部位です。「朝起きたときには腫れて、日中には引いていく」というケースもあります。
手や足は心臓から離れており血液の流れが滞りやすい部位です。とくに下肢は重力の影響を受けるため、むくみも生じやすくなります。
全身がむくむようなことはまれですが、悪化しないか経過を慎重に見ていく必要があります。
むくみが続く期間と改善までの目安
ミノキシジルによるむくみは、数か月程度で軽減していく場合もあります。
低用量ミノキシジルに関する海外の文献では、むくみは服用開始後1〜3か月とやや遅れて現れ、一時的なものが多いと報告されています[4]。
とくに下肢のむくみは軽度であり、多くが数週間〜数か月で自然に改善したと示されていました。軽度であれば、体がお薬に慣れるにつれて徐々に落ち着いていくと考えられます。
ただし、症状の出方や期間には個人差があり、服用する量や体質にも左右されます。ご自身のむくみの経過をよく観察し改善が見られない場合は医師に相談しましょう。
軽度のむくみは生活習慣の改善で改善するケースがある
日常生活に支障がなく軽いむくみであれば、生活習慣の改善によって緩和が期待できます。
全身にむくみが生じたり、治療を中止するほどひどくなったりするケースは少ないとされています。むくみが出ても「お薬が合わない」とすぐに判断する必要はありません。
ただし人によっては、食習慣や生活スタイルの影響でむくみやすい可能性もあります。症状を和らげるには、余分な水分がたまりにくい習慣を意識することが大切です。
次に紹介する対策を参考にしながら、セルフケアを実践して様子を見ましょう。
ミノキシジルによるむくみを解消するためのセルフケア
むくみを和らげるために、日々の生活を工夫していきましょう。
むくみ解消に大切なポイントは「余分な水分をためないこと」と「血流を促すこと」です。
食事と生活習慣の視点から、今日から実践できるセルフケアを紹介します。
ケア1:食事でできるむくみ対策
毎日の食習慣はむくみ対策の基本です。水分補給も意識することで、体内の水分バランスを適度に整えることが大切です。
具体的には以下3つを意識しましょう。
| 対策 | 期待できる効果 |
| 塩分を控える | 体内に余分な水分がたまらなくなる |
| カリウムを含む食材を摂る | 余分な塩分の排出が促される |
| 水分は適量をこまめに飲む | 体内に適度な水分量を保てる |
塩分を控える
塩分(ナトリウム)には体内に水分をため込む性質があります。ナトリウムが血液中に多くなると、体は濃度を薄めようと水分を保持する作用が働き、むくみが生じやすくなります。
塩分を摂りすぎないように、減塩を心がけましょう。
<減塩の工夫>
- 加工食品・インスタント食品・スナック菓子を控える
- 味付けに、かんきつ類の酸味・香辛料を上手に使う
- ラーメンやうどんのスープを残す
- 調味料をかけすぎない
減塩は高血圧などの生活習慣病予防にもなるため、日頃から意識するのがおすすめです。
カリウムを含む食材を摂る
カリウムは、ナトリウムを体外に排泄するよう促す作用があります。余分な水分も一緒に排出されるため、むくみの軽減に効果的です。
以下にはカリウムが豊富で、毎日の食事に取り入れやすい食材をまとめました。
<カリウムが豊富な食品>
- 海藻類…ひじき、昆布、わかめ
- 緑黄色野菜…ブロッコリー、小松菜、ほうれん草、かぼちゃ
- いも類…じゃがいも、さつまいも、里いも
- 果物…バナナ、なし、みかん、りんご
ビタミンBや鉄、亜鉛などは、育毛にもよい栄養素です[5]。ほうれん草や小松菜はこれらを豊富に含んでおり、むくみ対策をしながら髪の健康サポートも期待できます。
なお、腎臓に持病がある方はカリウム制限が必要な場合があるため、医師の指示に従ってください。
水分は適量をこまめに飲む
「これ以上むくみたくない」と考えて、水分を控えるのは逆効果です。水分不足になると、体はかえって水分を補うように働いてしまいます。
適度に水分を摂取すると、体内の老廃物が排出され血流改善にもつながります。
<水分補給のポイント>
- 1日1.5L〜2L程度を目安にする
- 一度に飲まず、1日数回にわけて飲む
- のどの渇きを感じる前に補給する
- 水分が不足しやすいタイミング(起床時、運動中、入浴後など)は積極的に摂る
カフェインやアルコールは、むくみが悪化することがあるため注意してください。これらの利尿作用によって体は一時的に脱水状態となり、かえって水分をため込もうと働くためです。
水分補給には、水や麦茶などノンカフェイン飲料を選びましょう。
ケア2: 生活習慣でできるむくみ対策
日常生活では血流を促すよう工夫しましょう。
体を温めて血流を高めるアプローチにくわえ、血流が滞りにくいコンディションづくりが効果的です。
意識したいポイントを2つにわけてご紹介します。
入浴やマッサージで血流を促す
むくみをそのままにしておくと、余分な水分だけでなく老廃物もたまりやすくなります。体を温めたりマッサージしたりすると、血液とリンパの流れがよくなりむくみ改善につながります。
- シャワーだけでなくお湯に浸かる
体が温まることで、血液やリンパの流れがよくなり、水分や老廃物の排出が促されます。
- ふくらはぎを中心にマッサージする
ふくらはぎには血液を心臓へ戻すポンプのような働きがあるため、下から上へやさしく刺激を与えると血液循環が促されます。
なお、慢性的なストレスは、自律神経の乱れから血行不良を招くことがあります。これらはむくみの軽減だけでなくリラックス効果も期待できるため、積極的に取り入れるとよいでしょう。
睡眠の姿勢・運動で循環を改善
長時間同じ姿勢でいると、血流が滞りむくみが生じやすくなります。日中はできる範囲で体を動かし、夜は寝る姿勢に気をつけましょう。
<運動の例>
- 起きたら軽くストレッチする
- ウォーキングなど有酸素運動を心がける
- 立ち仕事中にかかとを上げ下げする
- 足首を回す・ふくらはぎを伸ばす
<睡眠の姿勢>
- できるだけ仰向けで寝る
- クッションを利用して足を心臓より高くする
激しい運動をする必要はなく、いつでもできる工夫を習慣化することがポイントです。姿勢が整うと下肢の負担が軽くなり、血の巡りも整いやすくなります。
頭皮に血液が届きやすい状態を維持するためにも継続したい習慣です。
セルフケアで改善しないむくみへの対処法
セルフケアをしてもむくみが改善しない場合、医師に相談しましょう。
主な対応として次の方法があります。
- 医師に相談しミノキシジルの処方量を調整する
- 副作用リスクの低い外用薬に変更する
- 他のAGA治療薬を検討する
お薬の種類や量を調整することで、治療を続けられる場合があります。自己判断で中断せず、医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけましょう。
その1:医師に相談しミノキシジルの処方量を調整する
まずは医師に相談し、症状を正確に伝えましょう。むくみの程度によって減量・休薬・中止などの必要性を医師が判断します。
むくみの副作用はお薬の用量に依存する傾向があるため、服用量を減らすことで軽減できる可能性もあります。
実際に、スペインの皮膚科学雑誌に掲載された症例報告では、まぶたにむくみが出た人について2つの例が示されていました。[2]
| 症例1 | 医師の指示のもと休薬した結果、数日〜1週間ほどでむくみが改善した |
| 症例2 | ミノキシジルを休薬し、むくみが引いたあと低用量で再開。その後むくみは再発しなかった |
とくに2例目は、ミノキシジルの量を調整することでむくみが軽減できる可能性を示す症例です。
ただし、用量調整は医師の判断のもとおこなわれます。自己判断で量を減らしたり中断したりせず、医師とともに治療方針を見直しましょう。
その2:副作用リスクの低い外用薬に変更する
ミノキシジル外用薬へ切り替えるのも選択肢のひとつです。
外用薬の場合、成分の多くは塗った頭皮にとどまり、全身への影響は少ないとされています。外用薬の副作用は、地肌のかゆみや刺激といった部分的な症状が中心です。
ただし、ミノキシジルという成分そのものが合わない場合は、たとえ外用薬でもむくみが起こる可能性もあります。
このケースではミノキシジル製剤すべてを避ける必要があるため、他のAGA治療薬への変更が選択肢となります。
その3:他のAGA治療薬を検討する
ミノキシジルが合わない場合でも、作用の仕方が異なるAGA治療薬で治療を続けられる可能性があります。
代表的なお薬として「フィナステリド」や「デュタステリド」が挙げられます。
これら2つは、男性ホルモン(テストステロン)が抜け毛の原因とされるDHT(ヒドロテストステロン)に変化するのを抑えるお薬です。
血管を広げて発毛を促すミノキシジルとは作用が異なるため、むくみの副作用は起こりにくいと考えられます。
安心してAGA治療を続けるために、複数の選択肢の中から自分に合った方法を見つけましょう。
むくみがひどい場合の受診すべき目安
むくみがひどい場合は、心臓や血管に負担がかかっている可能性があります。[1]放置すると心臓の病気を引き起こすことがあるため、適切に受診判断をしましょう。
以下の表を参考に、医療機関への受診を検討してください。
| 受診を検討すべき主な症状 | 早急な受診が望ましい症状 |
| 全身にむくみが広がっているセルフケア・減量でも改善しない日常生活に支障をきたすほど強いむくみがある | 急激な体重増加(2〜3kg以上)息苦しさや動悸胸の痛み・違和感めまい・ふらつき・失神など |
AGA治療で使われるミノキシジルの量では、重篤な副作用が起こる可能性は低いとされています。しかしどのようなお薬であっても、副作用リスクはゼロではありません。
また、別の病気が原因でむくみが生じている可能性もあります。これらのサインを見逃さず、当てはまる場合は医療機関を受診してください。
安心してAGA治療を続けるために知っておきたいポイント2つ
治療は継続したいものの、見た目にわかるほどのむくみが出ると「2日に1回にしたほうがいい?」「このまま続けて大丈夫?」と不安に感じる方もいるでしょう。
治療中は、以下の2つの視点を心に留めて対応してください。
- 自己判断で服用量を調整しない
- 効果と副作用のバランスを見極める
ここでは、安心して治療を続けるために大切な2つのポイントをお伝えします。
ポイント1:自己判断で服用量を調整しない
むくみが出ても、自己判断で服用を中止したり飛ばしたりしないでください。
ミノキシジルによる発毛効果は、服用を継続している間は維持されますが、中止すると効果は数か月以内に失われます。生えてきた髪も元の状態に戻ってしまうのです。
自己判断で飲んだり飲まなかったりすることで「むくみは続くのに発毛効果は十分に得られない」といった状態になることも考えられます。
また、適切に服用していない状態でむくみが続くと、本当にミノキシジルが原因かどうかの判断が難しくなります。別の原因によるサインを見逃すリスクがあるのです。
むくみは一時的なこともあるため、まずはセルフケアを行い様子を見ましょう。改善しない場合は医師に相談してください。
ポイント2:効果と副作用のバランスを見極める
AGA治療では「効果が得られているか」「副作用が強くないか」の見極めが重要です。
ミノキシジルは開始後3〜4か月頃から効果を発揮しはじめ、安定するには1年ほどかかるとされています。飲みはじめた段階では効果が見えず、副作用ばかり感じることがあるかもしれません。
むくみなどの副作用が出た場合でも、軽度であれば様子を見ながら治療を続けられます。効果よりも副作用が上回る場合は治療方針の見直しが必要です。
こうした判断は、医師の専門的な視点が欠かせません。
安心して治療を続けるためにも、体調に不安があるときはひとりで悩まず医師に相談してください。
当クリニックではオンライン診療で、自宅から気軽に医師に相談できます。むくみの程度が心配な方や今の治療方針に不安を感じている方はご活用ください。
※自由診療
※医薬品副作用被害救済制度等の対象外となります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察を受け、診断された適切な治療方法をお守りください。
※医師の判断でお薬の処方可否・お薬の処方日数は変わります。
ミノキシジルによるむくみに関してよくある質問
ミノキシジルとむくみについて、よく寄せられる質問にお答えします。
むくみが出ても不安になりすぎず、適切に対応できるよう参考にしてください。
ミノキシジルでむくみがひどいのですが、どうしたらよいですか?
まずはセルフケアを実践してみましょう。塩分を控えめにする、体を動かすといった日常生活の工夫で、むくみの軽減が期待できます。こまめに水分を摂ることも欠かせないポイントです。
ただし、悪化する場合や息苦しさや胸の痛みなどを伴う場合は、心臓への負担が懸念されるため速やかに医療機関を受診してください。
カリウムのサプリメントを飲んでもいいですか?
むくみ解消のためにカリウムのサプリメントを摂る必要はありません。
カリウムは食事からの摂取が基本であり、通常の食生活で十分補えます。ほうれん草や小松菜、バナナなど、カリウムを含む食品を心がけてみましょう。
とくに腎臓の病気がある方は、カリウムが過剰となり体に負担をかけてしまう場合があります。どうしてもサプリメントを検討したい場合、服用前に主治医にご相談ください。
まとめ:ミノキシジルのむくみに適切に対処し、安心してAGA治療を続けよう
むくみはミノキシジルで見られる副作用のひとつですが、多くは一時的なもので自然に軽減していきます。
軽度のむくみであれば、塩分を控える・こまめに水分を摂る・マッサージするといったセルフケアで様子を見ましょう。改善が見られない場合や悪化する場合は医師に相談してください。
大切なのは自己判断で服用を中止・変更しないことです。発毛効果が得られなくなるばかりか、他の病気のサインを見落とすリスクもあります。
ミノキシジルが原因であっても、用量の調整やミノキシジル外用薬への変更、他のAGA治療薬への切り替えなど、AGA治療を続けるための選択肢はあります。
不安や悩みをひとりで抱えず、医師とともにご自身に合うAGA治療を見つけていきましょう。
