抜け毛が起こるメカニズムとは?注意すべき抜け毛も解説
抜け毛が落ちていると不安になるものですが、必ずしも「抜け毛=薄毛」というわけではないため心配しすぎる必要はありません。
まずは抜け毛のメカニズムと、薄毛につながる恐れがある、注意すべき抜け毛について解説します。
抜け毛はだれでも起こる
人間の髪は、成長期・退行期・休止期のサイクルを繰り返しています。
- 成長期:髪が成長する時期(2~6年程度)
- 退行期:髪の成長が止まる時期(2~3週間程度)
- 休止期:髪のもととなる毛乳頭の活動が止まり休止する時期(3~4ヶ月程度)
そして休止期を終えると、毛乳頭細胞が再び活動し始めて新たな髪が生え始めるのです。新たな髪の毛が生えてくると、古い髪が新しい髪に押し上げられて抜けていきます。つまり、抜け毛は誰にでも起こるものだということです。
健康な方でも1日あたり50~150本程度は抜けるといわれているため、この範囲内であれば抜け毛があるからといって心配する必要はありません。
正常な抜け毛と異常な抜け毛の見分け方
抜け毛には「正常な範囲内のもの」と「注意が必要なもの」があります。単純に本数だけでなく、毛の質や毛根の状態も重要な判断材料となります。正常な抜け毛は、毛根がマッチ棒のように丸く膨らんでおり、毛根鞘(毛根を包む白い組織)が付いていることが多いです。一方、毛根が小さくギザギザしている、毛根鞘が見られない、髪が細く短いといった場合は、髪が十分に成長する前に抜けている可能性があります。また、抜け毛の太さにも注目しましょう。健康な髪と比べて明らかに細い毛が多く抜けている場合は、ヘアサイクルの乱れが疑われます。[1]
抜け毛が急に増えたら薄毛のサインかも
抜け毛はだれでも起こるものですが、急に本数が増えた場合は薄毛のサインの恐れがあるため注意が必要です。
薄毛の主な原因は、ヘアサイクルの乱れです。何らかの影響によりヘアサイクルが乱れると、本来2~6年ほどある成長期が短縮されてしまい、髪が成長しきれないまま抜けるようになるため抜け毛が増えてしまいます。
下記のような症状が出ている場合は、髪が十分に成長する前に髪が抜けていると考えられます。放置すると薄毛になる恐れがあるため、早めに対処しましょう。
- 抜け毛が200本以上ある
- 排水口や枕などにたくさん抜け毛が落ちている
- 抜け毛が細い
- 抜け毛の毛根が小さかったりギザギザしている など
季節性の抜け毛(季節性シェディング)の傾向
健常な女性でも夏に抜け毛が増え、冬に少ない季節変動が報告されています。春に小さなピーク、夏に大きなピークを示す研究があり、病気でない一過性の増減もあります。これは季節性シェディングと呼ばれる現象です。受診の目安としては、3か月以上抜け毛が持続する場合や、地肌の見え方が進行している場合には医師への相談をおすすめします。[2]
【チェックリスト】抜け毛の主な原因と種類別の見極め方
抜け毛の原因はさまざまです。適切に対処するためにも、なぜ抜け毛が起こるのか、原因を把握しておきましょう。ここでは、主な原因を種類別に整理してご紹介します。
男性に多い「男性型脱毛症(AGA)」・女性に多い「女性男性型脱毛症(FAGA)」
AGAやFAGAなどの脱毛症を発症して、髪が抜けている恐れもあります。AGA・FAGAとは、男性ホルモンが関係する脱毛症です。体内で男性ホルモン(テストステロン)が「5α還元酵素」という酵素の働きによって「DHT(ジヒドロテストステロン)」という別の物質に変換されます。このDHTが毛根にある受容体に結合すると、髪の成長期間が短くなってしまい、髪が十分に成長しきれないまま抜け落ちるようになります。一般的な薄毛の多くはこのAGA・FAGAであるケースが多いです。[3]
下記のような症状が出ている場合はAGAやFAGAの可能性が高いため、早めに治療を開始したほうがよいでしょう。
- 髪がやわらかくなった
- 髪が細くなった
- 抜け毛についている毛根が小さい など
男性の場合は生え際や頭頂部から進行性に薄くなることが多く、女性の場合は頭頂部を中心に全体的に髪が細くなり、ボリュームが減少することが特徴です。AGA・FAGAは進行性の脱毛症であるため、何の対策もせずに放置すると薄毛になる恐れがあります。家族や親戚に薄毛の方がいる場合、遺伝的な要因も関係している可能性があります。写真で経過を比較し、3か月程度で進行が見られる場合は、早めに皮膚科やAGA専門クリニックへの受診を検討しましょう。[4]
全体的に抜ける「休止期脱毛症(TE)」(産後・感染後・栄養不足)
休止期脱毛症(Telogen Effluvium: TE)は、何らかのきっかけで髪の成長サイクルが乱れ、通常よりも多くの髪が一斉に休止期に入ってしまうことで起こる脱毛症です。特徴としては、特定の部位ではなく頭全体から抜け毛が増えることが挙げられます。きっかけとなる出来事(発熱、出産、手術、強いストレスなど)の約2~3か月後に発症することが多く、1日に100~150本を超える抜け毛が持続します。多くの場合は一過性で、原因が解消されれば数か月以内に自然に回復しますが、3か月以上持続する場合や地肌の露出が増加する場合には受診が推奨されます。[5]
産後の抜け毛(産後脱毛)の実態と誤解
産後の抜け毛の主な原因は、ホルモンバランスの乱れです。妊娠すると体内で女性ホルモンの分泌量が増加するため、髪が抜けにくくなります。そして出産を終えると急激に女性ホルモンの分泌量が減少するため、一気に髪が抜けることがあります。抜け毛が増えるのは、産後2〜3か月ごろからです。3~6か月ごろにピークを迎え、産後1年以内には治まることが多いため、あまり心配する必要はありません。
ただし、産後の抜け毛(産後休止期脱毛: PPTE)は一般に語られていますが、発生頻度や定義は一様でないとのレビューもあります。多くは一過性で数か月で回復しますが、地肌の露出が進行性である場合や、円形の脱毛斑が見られる場合は、他の疾患が隠れている可能性もあるため受診をおすすめします。[6]もし、いつまで経っても抜け毛が治まらない場合は、医師に相談してみましょう。
感染後の一過性の抜け毛(例:COVID-19後)
強いストレスや感染症(特に発熱を伴うもの)の2~3か月後に休止期脱毛が出ることがあります。これは身体が大きなストレスに対応する過程で一時的に髪の成長サイクルが乱れるためです。多くは可逆的で自然に回復しますが、持続する場合や悪化する場合は受診が必要です。[7]
まるく抜ける「円形脱毛症」
円形脱毛症は、頭部に円形または楕円形の脱毛斑が突然現れる疾患です。単発の場合もあれば、複数の脱毛斑が現れる場合(多発性円形脱毛症)もあります。自己免疫が関係していると考えられており、ストレスが引き金になることもあります。
ストレスの影響で円形脱毛症を起こしている場合も考えられます。一部の髪が抜けたまま生えてこなくなった場合は、円形脱毛症の疑いがあるため皮膚科で医師に相談してみましょう。急な抜け毛、境界が明瞭な脱毛斑、爪の変化(小さなへこみなど)が見られる場合は、早期受診が推奨されます。[8]
頭皮トラブルによる抜け毛(脂漏性皮膚炎など)
頭皮に起こりやすい脂漏性皮膚炎という病気を発症したことが原因で、抜け毛が起きている場合もあります。脂漏性皮膚炎とは、皮脂が過剰に分泌されたりマラセチア菌が増加したりして発症する皮膚炎です。頭皮にフケ、紅斑(赤み)、痒みなどの症状が現れます。皮脂の分泌量や洗髪の頻度によって症状が変動することがあります。抜け毛のほかに、かゆみやフケなどの症状が出ることが多いため、こうした症状が出ている場合は皮膚科の受診を検討しましょう。セルフケアで改善が見られない場合は、早めの受診が重要です。[9]
特定の髪型による「牽引性脱毛症」
ポニーテールなどの髪が引っ張られる髪型を長期間続けていると、頭皮に負担がかかって抜け毛が増える場合があります。抜け毛が増えているにもかかわらず同じ髪型をし続けると、髪が薄くなって牽引性脱毛症になる恐れもあるため注意が必要です。特に生え際や分け目の部分に負担がかかりやすく、その部分の髪が薄くなることが特徴です。
内科的要因(甲状腺・鉄欠乏ほか)と検査の考え方
貧血や甲状腺疾患などの症状
鉄欠乏性貧血や甲状腺の疾患などを発症すると、抜け毛の症状が出る場合があります。貧血になると毛母細胞に栄養や酸素が届きにくくなり、髪が成長しにくくなるからです。また、甲状腺ホルモンには新陳代謝を高めて毛母細胞の分裂を促す働きがあるため、甲状腺疾患により甲状腺ホルモン分泌のバランスが崩れると、抜け毛が増えることがあります。倦怠感、寒がり、立ちくらみなどの症状が伴うことがあります。既往歴や食事内容も関係するため、これらの症状がある場合は医師に相談しましょう。病気が原因の抜け毛を改善するには、病気そのものを治療する必要があるため医療機関を受診しましょう。
鉄欠乏と抜け毛:検査の目安
フェリチンは体内の鉄貯蔵量を示す指標です。休止期脱毛において鉄欠乏との関連が報告されており、原因を探索する手段として血算(血球数算定)、鉄代謝マーカー(血清鉄、フェリチンなど)の検査を医師の判断で検討することがあります。ただし、基準値や治療介入の閾値については医学的に議論があるため、検査結果の解釈は医師と相談しながら進めることが重要です。自己判断での鉄剤補充は避け、必ず医師の管理のもとで行いましょう。[10]
その他の抜け毛の原因
生活習慣の乱れによる栄養不足や血行不良
偏った食生活や運動不足など、生活習慣の乱れは抜け毛の原因になります。髪が健康に成長するには、下記のような栄養が必要です。
| たんぱく質 | 髪の主成分となる栄養素。健康な髪の成長・維持に必要 |
| ビタミンB群 | たんぱく質の代謝や赤血球の生成に関わる栄養素。健康な髪の成長・維持に必要 |
| ビタミンD | 免疫力を高める働きをもつ栄養素。健康な髪の維持やよい頭皮環境を保つのに必要 |
| ビタミンE | 抗酸化作用がある栄養素。健康な髪の維持やよい頭皮環境を保つのに必要 |
| 亜鉛 | たんぱく質の合成に関わる栄養素。よい頭皮環境の維持や抜け毛防止に必要 |
| 鉄分 | 酸素や栄養を運ぶ役割をもつ栄養素。健康な髪の成長に必要 |
栄養が偏った食事を続けていたり、ダイエットのために無理な食事制限をしていたりすると、上記の栄養が不足します。また、脂質が多い食事を続けていたり運動不足になったりすると、血行が悪くなって髪に栄養が届きにくくなるため、抜け毛が増えることがあるのです。
アルコールの摂取にも注意が必要です。アルコールを摂取すると、髪の成長に必要な亜鉛が大量に消費されてしまうため、抜け毛が増える場合があります。
睡眠不足によるホルモンの分泌の低下
髪の成長には、たんぱく質の合成を促進させる作用がある成長ホルモンが関わっています。成長ホルモンは睡眠中にとくに多く分泌されるため、睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が減り、頭皮環境が悪化して抜け毛が増えることがあります。
また、自律神経の乱れによる血行不良につながることもあります。
喫煙による血行不良
タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があるため、タバコを吸うと血行が悪くなります。一酸化炭素や活性酸素は、動脈硬化や血栓形成を引き起こし、血行を悪くします。長期間喫煙を続けるとこれらの血行不良の状態が慢性化するため、髪に栄養が届きにくくなって抜け毛が増える場合があります。
ストレスによる自律神経の乱れ
人間の体は交感神経と副交感神経が交互に働くことで、各器官の働きを調整しています。しかし、ストレスを受けると自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位になります。
交感神経には体を興奮・緊張状態にして血管を収縮させる働きがあることから、ストレスが溜まると血行不良になって髪が成長しにくくなり、抜け毛が増える恐れがあります。
ストレスの影響で円形脱毛症を起こしている場合も考えられます。一部の髪が抜けたまま生えてこなくなった場合は、円形脱毛症の疑いがあるため皮膚科で医師に相談してみましょう。
紫外線による頭皮へのダメージ
頭皮に紫外線が当たると、頭皮の弾力を保つ役割があるコラーゲンやエラスチンがダメージを受け、頭皮が硬くなります。
また、ダメージを受けた頭皮は外部からの刺激を受けやすく、毛穴に炎症が起こることもあります。こうして頭皮環境が悪化すると髪が育ちにくくなるため、抜け毛が増える場合があるのです。
紫外線は髪のたんぱく質にもダメージを与えるため、髪がパサついたり切れたりするなど、髪が傷んで弱ってしまうこともあります。
加齢による頭皮の老化
体のほかの部位と同じように、歳を重ねると頭皮も老化します。頭皮は老化すると硬くなって血行が悪くなるため、髪に栄養が届きにくくなります。また、髪を作る役割をもつ毛母細胞のはたらきも衰えるため、髪が抜けやすくなります。
産後のホルモンバランスの乱れ
産後の抜け毛の主な原因は、ホルモンバランスの乱れです。妊娠すると体内で女性ホルモンの分泌量が増加するため、髪が抜けにくくなります。そして出産を終えると急激に女性ホルモンの分泌量が減少するため、一気に髪が抜けることがあります。
抜け毛が増えるのは、産後2〜3ヶ月ごろからです。3~6ヶ月ごろにピークを迎え、産後1年以内には治まることが多いため、あまり心配する必要はありません。もし、いつまで経っても抜け毛が治まらない場合は、医師に相談してみましょう。
ヘアスタイルによる頭皮への負担
ポニーテールなどの髪が引っ張られる髪型を長期間続けていると、頭皮に負担がかかって抜け毛が増える場合があります。抜け毛が増えているにもかかわらず同じ髪型をし続けると、髪が薄くなって索引性脱毛症になる恐れもあるため注意が必要です。
ヘアカラーやパーマによる頭皮ダメージ
ヘアカラーやパーマに使われる薬剤は、刺激が強い傾向にあります。そのため頻繁にヘアカラーやパーマの施術を受けていると、頭皮がダメージを受けて抜け毛が増えることがあります。
また、ヘアスプレーやワックスなどの整髪料も、使用後にしっかりと洗い流さないと毛穴に残って抜け毛の原因になる場合があります。
季節の移り変わり
季節が変わった影響で抜け毛が増える人もいます。
- 春:進学や転勤などで環境が変わり、ストレスが溜まって抜け毛が増える
- 夏:紫外線による頭皮のダメージや、夏バテで食欲が落ち栄養不足になったことが原因で抜け毛が増える
- 秋:夏に蓄積した紫外線のダメージによって抜け毛が増える
- 冬:空気が乾燥し、頭皮がダメージを受けて抜け毛が増える
秋・冬は抜け毛が増えやすいなどの話を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、上記のとおり抜け毛が増える要因は1年中存在します。
対人関係でストレスを感じやすい、夏に食欲が落ちやすいなど自分の傾向を把握して、その時々で対策することが大切です。
間違った方法でのシャンプー
頭を洗うときに爪を立てる、ゴシゴシと強く洗う、十分にシャンプーを洗い流せていないなどで頭皮がダメージを受けると抜け毛が増えやすくなります。傷ついた箇所から細菌に感染して炎症が起こった結果、抜け毛が増加するケースもあります。
ドライヤーによる頭皮や髪へのダメージ
髪を乾かすときにドライヤーを近づけすぎると、頭皮の水分が失われてバリア機能が低下します。その結果、頭皮がダメージを受けたり炎症が起きたりして、抜け毛が増えることがあります。
AGA(男性型脱毛症)・FAGA(女性男性型脱毛症)を発症している
AGAやFAGAなどの脱毛症を発症して、髪が抜けている恐れもあります。AGA・FAGAとは、男性ホルモンの影響で髪の成長が妨げられて、髪が十分に成長しきれないまま抜け落ちる脱毛症です。一般的な薄毛はこれであるケースが多いです。
下記のような症状が出ている場合はAGAやFAGAの可能性が高いため、早めに治療を開始したほうがよいでしょう。
- 髪がやわらかくなった
- 髪が細くなった
- 抜け毛についている毛根が小さい など
AGA・FAGAは進行性の脱毛症であるため、何の対策もせずに放置すると薄毛になる恐れがあります。
脂漏性皮膚炎を発症している
頭皮に起こりやすい脂漏性皮膚炎という病気を発症したことが原因で、抜け毛が起きている場合もあります。脂漏性皮膚炎とは、皮脂が過剰に分泌されたりマラセチア菌が増加したりして発症する皮膚炎です。
抜け毛のほかに、かゆみやフケなどの症状が出ることが多いため、こうした症状が出ている場合は皮膚科の受診を検討しましょう。
遺伝の影響を受けている
薄毛や髪の成長サイクルなどは、遺伝の影響を受けるといわれています。家族や親戚に薄毛の方や抜け毛が多い方がいる場合、遺伝的な体質が原因で抜け毛が増えている可能性があります。
貧血や甲状腺疾患などの症状が出ている
鉄欠乏性貧血や甲状腺の疾患などを発症すると、抜け毛の症状が出る場合があります。貧血になると毛母細胞に栄養や酸素が届きにくくなり、髪が成長しにくくなるからです。
また、甲状腺ホルモンには新陳代謝を高めて毛母細胞の分裂を促す働きがあるため、甲状腺疾患により甲状腺ホルモン分泌のバランスが崩れると、抜け毛が増えることがあります。
病気が原因の抜け毛を改善するには、病気そのものを治療する必要があるため医療機関を受診しましょう。
お薬の副作用が出ている
抗がん剤や高血圧の治療薬など、病気の治療薬が原因で髪が抜けることもあります。お薬の影響によって、毛母細胞が死滅するなどの問題が起こるためです。お薬の投与を止めると徐々に症状は治まっていきますが、元に戻るまでには時間がかかります。
副作用の可能性が心配な場合は主治医に相談してみましょう。
【比較表】主な脱毛症の特徴と受診目安
| 原因カテゴリ | 主な特徴 | セルフチェックポイント | 受診目安 |
| AGA/FAGA | 生え際や頭頂部から進行性に薄くなる | 写真で比較し3か月で進行が見られる | 進行が見られる場合や家族歴がある場合は皮膚科またはAGAクリニックへ[4] |
| 休止期脱毛(TE) | 全体的に抜け毛が増える、きっかけの2~3か月後に発症 | 1日100~150本超の抜け毛が持続 | 3か月以上持続する場合、地肌の露出が増加する場合[5] |
| 円形脱毛症 | 円形または楕円形の脱毛斑、爪の変化を伴うことも | 急な抜け毛、境界が明瞭な脱毛斑 | 早期受診が推奨される[8] |
| 脂漏性皮膚炎 | フケ、紅斑(赤み)、痒みを伴う | 皮脂量や洗髪頻度で症状が変動 | セルフケアで改善しない場合[9] |
| 甲状腺疾患・鉄欠乏 | 倦怠感、寒がり、立ちくらみなどを伴う | 既往歴、食事内容の偏り | 脱毛以外の症状を伴う場合。TSH、フェリチンなどの検査を医師の判断で実施[10] |
自分でできる初期対応と生活上の注意
抜け毛が増えてきたら、これ以上悪化する前に何とかしたいと考える方は多いでしょう。そこで、抜け毛が増えたときの対処法を紹介します。
生活習慣を改善する
偏った食生活や運動不足は抜け毛の原因になります。栄養バランスの取れた食事を取る、適度に運動するなどして生活習慣を改善しましょう。
食事では、とくに健康な髪の成長に必要なたんぱく質・ビタミン・亜鉛・鉄分を意識して摂取するのがおすすめです。
また、運動は長く続けることが重要なので、途中で挫折することがないように無理のない範囲で始めてみましょう。
質の高い睡眠を取る
人間は睡眠中に成長ホルモンを分泌し、身体をメンテナンスします。睡眠不足に陥ると成長ホルモンの分泌量が低下するので、抜け毛を減らしたいなら質の良い睡眠を取ることも大切です。下記のようなことを心がけると、睡眠リズムが整いやすくなります。
- 朝日を浴びる
- 寝室を適温に保つ
- ウォーキングやストレッチなどの軽い運動を取り入れる など
また、最近は寝る直前までスマートフォンやPCを使っている方が多いですが、睡眠の質が落ちてしまうので、できれば睡眠の2時間前くらいからは触らないようにしましょう。
禁煙する
タバコは頭皮の血行不良を招くので、抜け毛がひどいときは控えるようにしましょう。ただし、禁煙によるストレスが強いと、それが抜け毛の原因になる可能性もあります。まずは本数を減らすなど、無理のない範囲から始めましょう。
頭皮マッサージで血行を良くする
頭皮の血行が悪かったり頭皮が硬かったりすると、髪の成長に必要な栄養が届きにくくなります。頭皮マッサージで頭皮をやわらかくして、血行をよくするのがおすすめです。
- 蒸しタオルや温かいシャワーなどで頭皮を温める
- 指の腹で頭の前側から順に、頭皮全体を揉みほぐす
頭皮マッサージはストレス軽減にも役立つとされています。シャンプーのついでに、1回数分程度でよいので、毎日マッサージしてみましょう。
入浴後はドライヤーで髪を乾かす
入浴後に髪が濡れたまま放置すると、頭皮に雑菌が繁殖しやすくなり頭皮環境が悪化します。髪を洗った後は、毎回しっかりと頭皮から乾かしましょう。
ただし、ドライヤーを近づけすぎると、ドライヤーの熱で頭皮がダメージを受ける恐れがあります。ドライヤーは頭から20cm以上離して使用しましょう。
ストレスを解消する
過度なストレスは抜け毛の原因になるため、こまめにストレスを解消することも大切です。趣味に没頭する、軽い運動をする、瞑想するなど自分に合った方法を探してみましょう。
頭皮の紫外線対策を徹底する
紫外線によって頭皮がダメージを受けると、抜け毛が増える可能性があります。帽子をかぶる、日傘をさす、頭皮用の日焼け止めスプレーを使うなどして、紫外線から頭皮を守りましょう。
頭皮が紫外線に当たってしまった場合は、冷却スプレーで冷やしたり頭皮用のローションでケアしたりすることが重要です。
髪型を変える
ポニーテールなどの頭皮に負担がかかる髪型を続けると髪が抜けやすくなるので、定期的に髪型を変えるのがおすすめです。
また、強い薬剤で頭皮に負担がかかるため、抜け毛が気になるときはカラーやパーマの回数も減らすとよいでしょう。
適切な方法でシャンプーする
誤った方法でシャンプーすると頭皮がダメージを受けるため、正しい方法でシャンプーするよう心がけましょう。シャンプーの基本的な手順は下記のとおりです。
- ブラッシングする
- お湯のみで念入りに予洗いする
- シャンプーをよく泡立てる
- 泡立てたシャンプーを髪につけて、爪を立てないようにやさしく洗う
- すすぎ残しがないように念入りにすすぐ
熱いお湯を使ったりガシガシと強くこすったりすると頭皮によくないので、ぬるま湯を使ってやさしく洗いましょう。
また、洗わなさ過ぎても洗いすぎてもよくありません。不要な汚れや皮脂だけをしっかり落とせるよう、シャンプーは1日に1-2回程度にとどめましょう。
頭皮にやさしいシャンプーを使う
刺激の強いシャンプーを使うと頭皮が乾燥してダメージを受けやすくなるので、頭皮にやさしいシャンプーを使いましょう。
脂漏性皮膚炎の場合は、ミコナゾール硝酸塩やピロクトンオラミンなどの、抗真菌・抗菌効果がある成分入りのシャンプーの使用を検討しましょう。
【初期対応フローチャート】抜け毛が気になったら
抜け毛の異常な増加を自覚したら、以下のステップで対応を検討しましょう。
- 異常な抜け毛の増加を自覚する
- 抜け毛が持続するか、落ち着くか、セルフ観察を行う(写真記録、抜け毛の本数カウント)
- 以下の警戒サインがないか確認する
- 斑状の脱毛(円形など)
- 頭皮からの出血
- 紅斑(赤み)や強い痒み
- 発熱や感染症の2~3か月後の大量脱毛
- 進行性の薄毛
- 2-3ヶ月抜け毛が落ち着かない
- 警戒サインがある場合は医療機関を受診する
- 必要に応じて血液検査(TSH、フェリチンなど)を医師の判断で実施[10]
- 治療方針の決定(外用薬、内服薬、生活習慣の改善など)
医療機関での治療選択肢:外用薬・内服薬・その他(標準治療の位置づけ)
ここまでに紹介した対処法を試しても、抜け毛が治まらないことがあります。なかなか抜け毛が減らないときは、どうしたらよいのでしょうか。
改善しないなら病院で相談を
脱毛症や脂漏性皮膚炎などが原因の抜け毛は自力での対処が難しく、対処法を試しても改善しないことがあります。下記のような症状がある場合は、脱毛症や脂漏性皮膚炎の可能性が高いでしょう。
- 頭皮が赤い
- かゆみやフケなどの症状がある
- 髪が細くなった
また、抜け毛の症状の裏に、貧血や甲状腺の病気が隠れていることも考えられます。いろいろ試しても抜け毛が減らない場合は、病院に行って医師に相談することが大切です。
国内ガイドラインに基づく標準治療の位置づけ
日本皮膚科学会が発行している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、ミノキシジル外用薬、フィナステリド、デュタステリドの推奨度が提示されています。これらは科学的な根拠に基づいた標準治療として位置づけられており、患者さんが治療を選択する際の拠り所となります。[11]
治療では塗り薬や飲み薬が使われる
一般的に医療機関での男性型および女性型脱毛症治療では、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルなどが配合された内服薬や外用薬が使われます。
ミノキシジル外用薬:適応と注意
ミノキシジルは、毛根にある毛乳頭細胞に直接働きかけ、毛母細胞の増殖を促すことで髪の成長を助ける外用薬です。血管を拡げる作用もあり、頭皮の血流を改善することで、髪に必要な栄養や酸素が届きやすくなります。[12]
国内では男性用として5%濃度、女性用として1%濃度の製品が承認されています。男性用の5%製品は主に頭頂部(つむじ)の薄毛を対象としています。心疾患(心臓の病気)をお持ちの方は使用前に必ず医師に相談してください。また、女性は男性用の高濃度製品を使用せず、女性用の濃度のものを使用することが重要です。頭皮に炎症がある場合は使用を避け、症状が改善してから使用を検討しましょう。米国FDA(食品医薬品局)のラベルに沿った適切な使用が推奨されます。[13]
【重要】ミノキシジル外用薬使用時の注意点
- 使用部位:主に頭頂部が対象(製品により異なる)
- 心疾患がある方:使用前に必ず医師に相談
- 女性の方:濃度に注意し、必ず女性用濃度の製品を使用
- 頭皮に炎症がある場合:使用を避ける
- 自己判断での濃度変更や増量は行わない
フィナステリド/デュタステリド:5α還元酵素を阻害する内服薬
男性ではフィナステリドやデュタステリドを使用することが可能です。これらのお薬は、体内で「5α還元酵素」という酵素の働きを妨げる内服薬です。この酵素は、男性ホルモン(テストステロン)を、薄毛の原因となる「DHT(ジヒドロテストステロン)」という物質に変換する役割を持っています。フィナステリドとデュタステリドがこの酵素の働きを妨げることで、DHTの生成が抑えられ、髪の成長期間が正常化し、抜け毛が減少します。[14]
フィナステリドの主な副作用とその頻度
国内の臨床試験(承認時)では、フィナステリド1mgの副作用発現率は4.0%(276例中11例)でした。主なものはリビドー(性欲)減退1.1%(3例)、勃起機能不全0.7%(2例)などです。多くは軽度ですが、気になる症状があれば医師に相談してください。市販後調査では頻度が異なる可能性があり、まれな副作用も報告されています。[15]
フィナステリド/デュタステリドの精神症状に関する最新動向
欧州医薬品庁(EMA)は2025年5月に、フィナステリドの副作用として自殺念慮(自殺を考えること)を明記する対策を勧告しました(デュタステリドについては警告の追記)。服用中に気分の落ち込みや自殺念慮があれば、直ちに医療機関を受診し、服用の中止について医師に相談してください。頻度は不明とされていますが、これらのリスクと薬の効果を個別に検討することが重要です。[16]
【重要】フィナステリド/デュタステリド使用時の注意点
- 妊娠中または妊娠の可能性がある女性は取り扱い禁止(触れることも避ける)
- 女性は内服は行うべきではありません[11]
- 服用中に気分の変調、自殺念慮などの精神症状が現れた場合は直ちに受診
- 献血制限:フィナステリドは服用中止後1か月間、デュタステリドは服用中止後6か月間は献血不可[17]
- 効果と副作用のリスクを医師とよく相談した上で使用を開始する
献血に関する注意(国内基準)
フィナステリドを服用している方は服用中止後1か月間、デュタステリドを服用している方は服用中止後6か月間は献血ができません。これは、妊娠中の女性に輸血された場合、胎児に影響を及ぼす可能性があるためです。日本赤十字社の基準に従い、献血時には必ず服薬状況を申告しましょう。地域によって表記に差がある場合もあるため、献血当日にも確認することをおすすめします。[17]
OTC医薬品(一般用医薬品)と処方薬の違い
ドラッグストアなどで購入できるOTC医薬品(例:ミノキシジル配合の発毛剤)と、医療機関で処方される医療用医薬品には違いがあります。有効成分の濃度、製剤の種類、医師の診察の有無、価格などが異なります。OTC医薬品は手軽に入手できる利点がありますが、医療用医薬品の方が高濃度であったり、複数の薬剤を組み合わせた治療が可能であったりします。また、個人輸入で海外の医薬品を入手することは、偽造薬のリスクや健康被害のリスクがあるため推奨されません。必ず国内で承認された製品を、医師の指導のもとで使用しましょう。[18]
治療と対策の比較表
| 手段 | 期待される効果 | 注意点・禁忌(例) |
| ミノキシジル外用薬 | AGA/FAGAの発毛促進 | 使用部位の適応(主に頭頂部)、心疾患がある方は要相談、濃度と性別の使い分けが必要[13] |
| フィナステリド/デュタステリド内服薬 | AGAの進行抑制 | 妊娠中・妊娠の可能性がある女性は取り扱い禁止、女性は内服できません、精神症状のリスク、献血待機期間(フィナステリド:1か月、デュタステリド:6か月)[11][15][16][17] |
| 生活習慣改善・頭皮ケア | 休止期脱毛や頭皮トラブルの改善 | 改善が見られない場合は、各種脱毛症や内科的疾患の可能性を考慮し、医師の診察を受ける[8][10] |
抜け毛に関するよくある質問(FAQ)
最後に、抜け毛に関するよくある質問と回答を紹介します。
市販の育毛剤やシャンプーで抜け毛を予防できる?
ビオチンやパンテノールなどの成分が入ったシャンプーは、頭皮環境を整えるお手入れとして重宝します。
- ビオチン(ビタミンB7):頭皮、毛髪をすこやかに保つ・パンテノール(プロビタミンB5):頭皮、毛髪のうるおいを保ちクシどおりを良くする
また、育毛剤は毛母細胞を活性化させ、抜け毛を予防して健康な髪を育てる効果があるといわれています。
しかし、どちらの製品も健康な髪を維持する効果は期待できるものの、発毛効果はありません。抜け毛がひどく薄毛の心配がある場合は、医師に相談するのがおすすめです。
サプリやプロテインが抜け毛の原因になることはある?
マカ入りのサプリメントやプロテインを飲むと、抜け毛が増えるという噂がありますが、これらの副作用で抜け毛が増えることはありません。
20代・30代の女性でも抜け毛は起こる?
抜け毛や薄毛は中高年の男性の悩みというイメージをもつ方もいますが、性別や年齢に関係なく起こる可能性があります。女性の場合は、運動不足や無理なダイエットによる栄養不足などに注意しましょう。
10代の中学生・高校生で抜け毛が多いのはなぜ?
先述のとおり、抜け毛は性別や年齢に関係なく起こる可能性があります。中学生や高校生でも生活習慣の乱れや夜更かし、ストレスなどが原因で抜け毛が増えることがあるので注意しましょう。
なお、10代の男性は、AGAの原因でもある男性ホルモンのテストステロンの分泌量が多い傾向にあります。急に抜け毛が増えた場合はAGAの可能性も考えられるため、クリニックを受診することも検討しましょう。
抜け毛の相談は何科に行けばいい?
頭皮に炎症が起きている、かゆみがあるといった場合は皮膚科で相談してみましょう。皮膚科でもAGA治療薬は取り扱っていますが、より専門的な治療を受けたい場合はAGAなどの薄毛治療をしているクリニックに行くとよいでしょう。
抜け毛が急に増えたのはなぜ?
ストレスや発熱などの2~3か月後に一過性の休止期脱毛が起きることがあります。3か月以上続く場合、地肌の露出が進む場合、斑状に抜ける場合は受診をおすすめします。[5]
ミノキシジルは誰でも使える?
適応は薄毛のタイプや性別、濃度によって異なります。心疾患がある方は事前に医師へ相談してください。頭皮が炎症している場合は使用を避けます。[13]
フィナステリド服用中は献血できる?
日本赤十字社の基準では、フィナステリドは服用中止後1か月間、デュタステリドは服用中止後6か月間は献血不可です。最新の基準をご確認ください。[17]
抜け毛治療はクリニックフォアへ
抜け毛の原因はさまざまで、性別や年齢に関係なく悩まされる可能性があります。抜け毛の対処法はいろいろありますが、原因に応じた対処法を試さないと思うような効果が得にくいため、まずは原因を突き止めることから始めましょう。
脱毛症などが原因の抜け毛は自力で改善するのが難しいので、いろいろと対処法を試しても症状が改善しないときは受診することをおすすめします。
クリニックフォアではオンラインでAGA・FAGAなどの脱毛症治療を行っています。スマホなどで診察を受けていただき、お薬はご自宅などに配送します。定期配送もあるため、続けやすくなっています。オンライン診療という具体的な解決策を提示することで、忙しい方でも治療を始めやすい環境を整えています。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察を受け、診断された適切な治療方法をお守りください。
※自由診療
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。

