放置や無理に剥がすのはNG|まずできる自己対処
かさぶたは剥がさない・掻かない
頭皮にかさぶたができると、つい気になって剥がしたくなるかもしれません。しかし、無理に剥がすと治癒が遅れるだけでなく、細菌感染や脱毛の原因になることがあります。かさぶたは傷を保護し、皮膚の再生を助ける役割を持っています。自然に剥がれ落ちるのを待つことが大切です。
また、かゆみがあっても掻かないようにしましょう。掻くことで炎症が悪化し、さらにかさぶたが増える悪循環に陥ることがあります。爪で掻くと頭皮に細かい傷がつき、そこから細菌が入り込んで膿痂疹(とびひ)などの感染症を引き起こすリスクもあります。
やさしく洗う・保湿する
頭皮を清潔に保つことは基本的なケアです。ただし、強くこすったり、爪を立てて洗ったりするのは避けてください。指の腹を使って、やさしくマッサージするように洗いましょう。シャンプーは低刺激性のものを選び、しっかりとすすぎ残しがないようにすることが重要です。
洗髪後は、頭皮用の保湿ローションなどで保湿するのも効果的です。乾燥が原因でかさぶたができている場合は、保湿によって症状が改善することがあります。ただし、頭皮に炎症や膿がある場合は、保湿剤の使用前に医師に相談することをお勧めします。
受診を考えるタイミング(受診フロー)
自己対処から受診までのフロー
ステップ1:まず自己対処を試みる
・かさぶたを剥がさない、掻かない
・やさしく洗浄する
・適度に保湿する
↓
ステップ2:1~2週間様子を見る
・改善傾向があれば継続
・改善しない、または悪化する場合は受診
↓
ステップ3:以下の症状がある場合は早期受診
・発熱や激しい痛みを伴う
・膿が出ている
・広範囲に広がっている
・脱毛斑(毛が抜けた部分)がある
・小児の場合
・ヘアカラーや整髪料使用直後の悪化
↓
ステップ4:皮膚科を受診
専門医による診断と適切な治療を受ける
特に、発熱や激しい痛み、膿を伴う場合は、細菌感染が疑われますので、速やかに医療機関を受診してください。また、小児の場合は大人よりも症状が急速に悪化することがあるため、早めの受診を心がけましょう。
原因と主な病気(鑑別早見表つき)
頭皮のかさぶたは、さまざまな皮膚疾患によって引き起こされます。ここでは、代表的な疾患とその特徴について解説します。以下の早見表で、ご自身の症状に近いものを確認してみてください。
ただし、最終的な診断は医師が行いますので、自己判断せず、気になる症状があれば皮膚科を受診しましょう。
| 表1:頭皮のかさぶた 主な原因と受診目安 | |||
|---|---|---|---|
| 疾患名 | 典型的な症状・所見 | 自己対処の可否 | 受診の目安 |
| 脂漏性皮膚炎 | 黄白色の鱗屑(フケのようなもの)、赤み、かゆみ | 抗真菌成分配合のシャンプー、保湿 | 数週間持続する、顔や耳にも広がる、乳児以外で繰り返す |
| 頭部白癬(しらくも) | 鱗屑と脱毛、黒い点状の毛の切れ端 | 自己対処は不可 | 必ず皮膚科受診。内服治療が必要(原因菌により薬を選択) |
| 接触皮膚炎 | ヘアカラーや整髪料使用後の赤み、かさぶた(特に生え際) | 原因物質の回避 | パッチテストによる原因特定、短期の抗炎症外用薬 |
| 膿痂疹(とびひ) | 厚い痂皮、膿、発熱を伴うことも | 清潔保持のみ | 抗菌薬が必要。発熱・痛み・広範囲の場合は早期受診 |
| アタマジラミ | 強いかゆみ、卵(白い粒)の付着 | 家族全員での同時対策 | 学校は原則休まなくてよいが、早期の駆除対応が必要 |
脂漏性皮膚炎(フケやかゆみ)- 抗真菌外用が第一選択
脂漏性皮膚炎は、頭皮のかさぶたの原因として最も多い疾患の一つです。皮脂の分泌が多い部位(頭皮、顔、耳の後ろなど)に起こりやすく、黄白色のフケのような鱗屑と赤み、かゆみを伴います。
原因:マラセチアという真菌(カビの一種)が関与していると考えられています。この真菌は健康な人の皮膚にも常在していますが、皮脂が多い環境で増殖し、炎症を引き起こします。精神的ストレス、疲労、睡眠不足なども症状を悪化させる要因の一つと考えられています。皮膚の免疫バランスが乱れることが影響する可能性があり、規則正しい生活やストレス管理も重要です。[1]
治療:抗真菌成分(ケトコナゾールなど)を含むシャンプーが有効です。成人の脂漏性皮膚炎では抗真菌外用薬が有効との体系的レビューがあります。ケトコナゾールなどの抗真菌薬で症状改善が示され、維持療法が再発予防に推奨されています。[2]実際の臨床研究では、2%ケトコナゾールシャンプーを2~4週間使用したところ、88%の患者さん(575名中)で臨床的な改善が見られ、その後6か月間の維持療法でも再発が抑制されたという報告があります。[3]ただし、日本での保険適用や入手方法は異なる場合がありますので、医師にご相談ください。
顔面や外耳道などに症状が広がる場合は、短期的に抗炎症作用のある外用薬(ステロイドなど)を併用することもあります。ただし、長期連用は副作用のリスクがあるため避けるべきです。[2]
注意事項
ストレス対策や生活習慣の改善だけで完治するものではありません。必要に応じて、抗真菌薬などの薬物治療との併用が基本となります。
頭部白癬(しらくも)- 内服治療が基本
頭部白癬は、白癬菌という真菌が毛や頭皮に感染して起こる疾患です。特に小児に多く見られますが、成人でも感染することがあります。
症状:頭皮に円形の脱毛斑ができ、その部分に鱗屑やかさぶたが付着します。毛が根元で切れて黒い点のように見える「黒点」も特徴的です。かゆみは軽度のことが多いですが、炎症が強い場合は痛みを伴うこともあります。
治療:頭部白癬は外用薬のみでは不十分です。白癬菌が毛の内部に入り込むため、テルビナフィンやグリセオフルビンなどの内服薬による全身治療が標準です。シャンプーでの洗浄は補助的な役割に留まります。[4]
さらに、原因菌の種類によって推奨される薬剤が異なります。メタ解析(複数の研究を統合した分析)によると、Trichophyton属の真菌にはテルビナフィンの治癒率が優れており、Microsporum属の真菌にはグリセオフルビンが相対的に良好な効果を示すことが報告されています(1,500名以上を対象とした比較研究、[5])。そのため、可能であれば培養検査や顕微鏡検査で原因菌を同定し、それに応じた薬剤を選択することが望ましいとされています。
注意事項
小児の場合は体重あたりの用量や禁忌薬剤を厳守する必要があります。必ず医師の指示に従ってください。
接触皮膚炎(ヘアカラーなど)- パッチテストで原因特定
接触皮膚炎は、特定の物質に触れることで皮膚に炎症が起こる疾患です。頭皮では、ヘアカラー剤、シャンプー、整髪料などが原因となることが多いです。
症状:原因物質に触れた部分(特に生え際や耳の周り)に赤み、かゆみ、かさぶたが生じます。ヘアカラー後に症状が出る場合は、ヘアカラー剤に含まれるPPD(パラフェニレンジアミン)などの成分が原因であることが多いです。
診断と治療:毛染めや整髪料による反応が疑われる場合、パッチテストが原因特定に有用です。原因物質を特定したら、それを避けることが再発防止の鍵となります。炎症に対しては、短期的にローションタイプのステロイド外用薬を使用します。[6]
注意事項
自己判断で漂白剤や強い溶剤を使用すると、かえって症状が悪化するリスクがあります。必ず医師の指導のもとで対処してください。
膿痂疹(とびひ)- 広がる・発熱時は受診し抗菌薬
膿痂疹は、細菌感染によって起こる皮膚疾患で、「とびひ」とも呼ばれます。主に黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)が原因です。
症状:水ぶくれができ、それが破れてジクジクした状態になり、厚いかさぶた(痂皮)が形成されます。かゆみが強く、掻くことで症状が広がります。発熱や痛みを伴うこともあります。
治療:膿痂疹は黄色ブドウ球菌や溶連菌が原因です。広範囲に広がる場合、発熱や痛みを伴う場合は、抗菌薬の外用または内服が必要です。特に溶連菌による膿痂疹では、治療が遅れると糸球体腎炎という腎臓の合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。[7]
注意事項
小児の場合、学校やプールでの集団感染を防ぐため、治癒するまでプールは禁止されています(日本小児皮膚科学会の学校感染症ガイドライン)。早期受診と適切な治療を心がけましょう。
アトピー性皮膚炎・乾癬 – 保湿+短期抗炎症が基本
アトピー性皮膚炎:慢性的に皮膚の炎症とかゆみを繰り返す疾患です。頭皮にも症状が出ることがあり、掻くことでかさぶたができます。
頭皮のアトピー性皮膚炎では、保湿を継続することと、短期的に外用ステロイドやタクロリムス軟膏などの抗炎症薬を使用することで炎症を抑制します。掻く→かさぶたができる→さらに掻くという悪循環を断つことが重要です。[8]
乾癬:皮膚の細胞が異常に増殖し、厚いかさぶた状の鱗屑ができる疾患です。頭皮にも好発します。
治療には、ビタミンD3外用薬やステロイド外用薬が用いられます。重症例では、内服薬や光線療法、生物学的製剤などが検討されることもあります。
注意事項
乳幼児や顔面への外用薬使用では、ステロイドのランク(強さ)と使用部位に配慮が必要です。医師の指示に従って使用してください。
アタマジラミ(登校停止は不要・家族同時対策)
アタマジラミは、頭髪に寄生する昆虫で、主に小児に多く見られます。吸血によってかゆみが生じ、掻くことでかさぶたができることがあります。
症状:激しいかゆみ、特に耳の後ろや後頭部に多く見られます。髪の根元に白い卵(卵鞘)が付着しているのが特徴です。
対処法:アタマジラミが見つかっても、学校を休む必要は原則ありません。ただし、家族全員で同時に治療を行い、50℃以上のお湯で洗濯・乾燥させる、櫛やタオルの共用を避けるなどの対策で再感染を予防することが大切です。[9]市販の駆除用シャンプーや専用の櫛を使用します。薬剤を使用する際は、用法・用量と対象年齢を守ってください。
頭皮のかさぶたと脱毛の関係
頭皮の炎症やかさぶたが長期間続くと、毛根がダメージを受け、脱毛につながることがあります。特に頭部白癬や円形脱毛症、強い炎症を伴う乾癬などでは、治療が遅れると永続的な脱毛(瘢痕性脱毛)を引き起こす可能性があります。
一方、脂漏性皮膚炎や接触皮膚炎による脱毛は、多くの場合一時的なもので、炎症が治まれば毛は再び生えてきます。ただし、炎症が悪化すると、一時的に抜け毛が増えることがあります。これは頭皮環境の悪化によるものであり、AGA(男性型脱毛症)との直接的な因果関係を示すものではありません。
AGAは、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛根に作用することで起こる進行性の脱毛症です。頭皮の炎症がAGAを引き起こすわけではありませんが、頭皮環境が悪いとAGAの進行に影響を与える可能性は考えられます。
脱毛が気になる場合は、皮膚科専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
市販薬での対処は可能か
頭皮のかさぶたに対して、市販薬で対処できる場合もあります。しかし、原因によっては市販薬では効果がなかったり、かえって症状を悪化させたりすることがあるため、注意が必要です。
抗真菌成分配合のシャンプー:脂漏性皮膚炎が疑われる場合、ミコナゾールなどの抗真菌成分を含むシャンプーが市販されています。これらは一定の効果が期待できます。
保湿剤:乾燥が原因の場合、頭皮用保湿ローションが有効です。
ステロイド外用薬:市販のステロイド外用薬もありますが、頭皮への使用は適さない製剤もあるため、薬剤師に相談してから購入しましょう。また、長期使用は避けるべきです。注意点:頭部白癬は内服治療が必須であり、市販薬では治療できません。また、細菌感染(膿痂疹など)には抗菌薬が必要ですが、これも医師の処方が必要です。症状が1~2週間続く、悪化する、発熱や膿を伴う場合は、自己判断せず必ず皮膚科を受診してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 頭皮のかさぶたは剥がしていいですか?
A. 無理に剥がしてはいけません。剥がすと治癒が遅れるだけでなく、感染や脱毛の原因になることがあります。自然に剥がれ落ちるのを待ち、やさしく洗浄・保湿を心がけてください。1~2週間で改善しない場合は皮膚科を受診しましょう。
Q2. 市販のシャンプーで治せますか?
A. 原因が脂漏性皮膚炎の場合、抗真菌成分配合のシャンプーが有効なことがあります。しかし、頭部白癬は内服治療が必須ですし、他の皮膚炎では効果がありません。悪化したり長引いたりする場合は自己判断せず、皮膚科で正しい診断を受けることが重要です。
Q3. 子どもの頭がかさぶた状です。学校は休むべき?
A. 原因によります。アタマジラミの場合は原則として登校停止は不要ですが、家庭での一斉治療が必要です。とびひ(膿痂疹)の場合は、患部の状態によって医師の指示に従ってください。発熱や膿を伴う場合は、早めに小児科か皮膚科を受診してください。
Q4. 頭皮のかさぶたは何科を受診すればいいですか?
A. 皮膚科を受診してください。頭皮も皮膚の一部ですので、皮膚科専門医が最も適切な診断と治療を行えます。小児の場合は、小児科でも初期対応が可能ですが、症状が続く場合は皮膚科への紹介を受けることが一般的です。
Q5. ストレスで頭皮のかさぶたができることはありますか?
A. ストレスが直接的な原因でかさぶたができるわけではありませんが、ストレスは脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の症状を悪化させる要因の一つと考えられています。疲労、睡眠不足とともに、皮膚の免疫バランスを乱す可能性があります。規則正しい生活とストレス管理も、頭皮の健康維持には重要です。
まとめ
頭皮のかさぶたは、さまざまな原因で生じます。多くの場合、適切なセルフケア(剥がさない、やさしく洗う、保湿する)で改善しますが、症状が続く場合や悪化する場合は、必ず皮膚科を受診してください。
特に以下の場合は早期受診が必要です:
- 発熱、激しい痛み、膿を伴う
- 広範囲に広がっている
- 脱毛斑がある
- 小児の場合
- ヘアカラーや整髪料使用直後の悪化
正しい診断と治療により、頭皮の健康を取り戻すことができます。見た目の悩みやかゆみの辛さ、周囲の目が気になるといった不安を抱えている方も多いと思います。一人で悩まず、専門医に相談することで、適切な治療とともに心理的な負担も軽減されるでしょう。

