髪の毛とカルシウムの関係は?
カルシウムは、髪の健康や白髪予防につながる可能性もあり、健やかな髪を目指すうえで重要な存在です。一方で、過剰摂取は髪に悪影響になることも。詳しく見ていきましょう。
髪の健康に関係あり
髪を健やかに保つには、タンパク質、ビタミン、ミネラルが大事です。カルシウムはミネラルの一種であり、ストレスや肩こりなどによる頭皮環境の悪化予防につながると考えられます。逆に言えば、カルシウムが不足することで、髪の健康が損なわれる恐れがあるのです。
なお、その他に髪にとって重要なミネラルとしては、亜鉛や鉄分が挙げられます。
ストレスによる頭皮環境の悪化を予防
カルシウムには、脳の興奮を抑え、ストレスを和らげる効果が期待できます。
ストレスやイライラによって血行不良になると、頭皮に栄養が届きにくくなり、頭皮環境が悪化して、髪の健康状態の悪化につながります。つまり、カルシウムでストレスが緩和されることで、頭皮環境の悪化が予防でき、髪の健康につながると考えられます。
肩こりによる血行不良を予防
カルシウム不足によって筋肉が緊張しやすくなったり、骨が弱くなると、肩こりなどの原因となります。肩こりになると頭皮への血流も悪くなり、頭皮環境が悪化する恐れがあるのです。そのため、カルシウムには肩こり予防による血流悪化予防効果が期待でき、結果として頭皮環境の悪化予防につながると考えられます。
白髪予防につながる可能性あり
ストレスは、白髪の原因の一つとしても挙げられています。
マウスを用いた動物実験では、交感神経が活性化すると、神経伝達物質のノルアドレナリンが大量に放出され、これが毛包にある色素幹細胞(メラノサイト幹細胞)を枯渇させることで白髪化が引き起こされるというメカニズムが報告されています。[1]
ただし、これはあくまでマウスでの研究結果であり、ヒトで完全に同じメカニズムが証明されたわけではない点に注意が必要です。今後の研究が待たれます。
カルシウムには脳の興奮を抑え、ストレスを和らげる効果が期待できるため、白髪予防にもつながると考えられます。
なお、その他に白髪予防に重要な栄養素として、チロシン(タンパク質を構成するアミノ酸の一種)やヨウ素(ミネラルの一種)なども挙げられます。
摂取しすぎると髪の健康に悪影響となる
カルシウムを過剰摂取すると、鉄や亜鉛の吸収障害が生じることがあります。鉄も亜鉛も髪の健康に欠かせないため、不足すると髪の健康に悪影響を与えることがあると考えられます。
ちなみに、亜鉛は髪の主成分であるケラチンの合成に必要な栄養素です。さらに、男性ホルモンのテストステロンを、AGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)に変化させる「5αリダクターゼ」という酵素の働きを抑えるため、AGA予防にも寄与します。
カルシウムと亜鉛吸収の関係について
高用量のカルシウム摂取が亜鉛の吸収を低下させる可能性があるという報告がある一方で、通常の食事レベルでは悪影響がないとするレビュー研究も存在します。[2][3]結論は一様ではありませんが、過量・長期にわたる単独高用量のサプリメント摂取には注意が必要です。バランスの取れた食事からの摂取を心がけましょう。
ただし、通常の食生活であれば、カルシウムの過剰摂取になることはまずないため、過度に心配する必要はありません。サプリメントなどはきちんと用量を守りましょう。
カルシウムはどれくらい摂ればよい?
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、カルシウムの1日の摂取推奨量は以下の通りです。なお、女性の場合、妊娠中や授乳中でも同様の数値となります。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
| 18~29歳 | 800mg | 650mg |
| 30~49歳 | 750mg | 650mg |
| 50~64歳 | 750mg | 650mg |
| 65~74歳 | 750mg | 650mg |
| 75歳以上 | 700mg | 600mg |
ただし、上記の数値は骨の健康を維持するための推奨量であり、その他の体への効果までふまえたものではない点に注意しましょう。
(参考)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
日本人のカルシウム摂取目安(2025年版)
厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、年齢・性別ごとにカルシウムの推定平均必要量と推奨量が示されています。[4]
これらは骨の健康を維持するために必要な量として設定されており、食事からの不足を避けることが基本とされています。サプリメントを使用する場合は、過量摂取にならないよう十分に留意する必要があります。
| 年齢 | 男性(推奨量) | 女性(推奨量) |
| 18~29歳 | 800mg | 650mg |
| 30~49歳 | 750mg | 650mg |
| 50~64歳 | 750mg | 650mg |
| 65~74歳 | 750mg | 650mg |
| 75歳以上 | 700mg | 600mg |
なお、女性の場合、妊娠中や授乳中でも同様の数値となります。ただし、上記の数値は骨の健康を維持するための推奨量であり、その他の体への効果までふまえたものではない点に注意しましょう。
カルシウムを過剰摂取するとどうなる?
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、カルシウムの1日の耐容上限量は、18歳以上であれば性別を問わず2,500mgとされています。
過剰摂取すると、以下のような症状や病気が生じる恐れがあります。
- 便秘
- 鉄や亜鉛の吸収障害
- 高カルシウム血症(血液中のカルシウム濃度が過度に高くなり、消化管の不調、のどの渇き、多尿などの症状が現れる)
- 高カルシウム尿症(尿中のカルシウム濃度が過度に高くなり、尿路結石などにつながる)
- 泌尿器系結石(尿路結石など)
- 軟組織(筋肉、皮下組織など)の石灰化
- 前立腺がん
カルシウムパラドックスについて
カルシウムをサプリメントで過剰に摂取すると、逆に血管の石灰化などを引き起こし、血流を悪化させる可能性があることが指摘されています。これは「カルシウムパラドックス」と呼ばれる現象です。サプリメントでの安易な摂取はリスクも伴うため、まずは食事からの摂取を心がけ、サプリメントを利用する場合はビタミンDやビタミンK2も併せて摂取することが推奨されます。[5]
先述の通り、鉄も亜鉛も髪の健康に欠かせないものなので、髪のためにも過剰摂取にならないように注意しましょう。
なお、通常の食生活であれば、カルシウムの過剰摂取になることはまずありません。ただ、サプリメントなどはその限りではないので、利用するときは用法用量を守り、過剰摂取に気を付けてください。
(参考)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
カルシウムの摂取方法
カルシウムを摂取したいときは、まずはカルシウムを多く含む食品を摂りましょう。ただ、それだけではなく、カルシウムの吸収を促進するビタミンDや、カルシウムと連携してはたらくマグネシウムも積極的に摂ることをおすすめします。詳しく見ていきましょう。
カルシウムを多く含む食品を摂る
まずはカルシウムを多く含む食品を積極的に摂りましょう。カルシウムは乳製品や魚介類に多く含まれます。以下の表は、文部科学省の食品成分データベースに基づいた主要食品のカルシウム含有量(100gあたり)です。[6]
乳製品
| 食品 | 100gあたりの含有量 |
| パルメザンチーズ | 1,300mg |
| エメンタールチーズ | 1,200mg |
| 脱脂粉乳 | 1,100mg |
| 全粉乳 | 890mg |
| チェダーチーズ | 740mg |
| ゴーダチーズ | 680mg |
| エダムチーズ | 660mg |
| プロセスチーズ | 630mg |
| 牛乳(ジャージー種) | 140mg |
| ヨーグルト(無脂肪無糖) | 140mg |
魚介類
| 食品 | 100gあたりの含有量 |
| 干しエビ | 7,100mg |
| とびうお(焼き干し) | 3,200mg |
| かたくちいわし(田作り) | 2,500mg |
| どじょう(水煮) | 1,200mg |
| たたみいわし | 970mg |
| まあじ(唐揚げ) | 900mg |
| しらす干し | 520mg |
| あゆ(焼き) | 480mg |
| いかなご(つくだ煮) | 470mg |
| からふとししゃも(生干し・焼き) | 380mg |
その他
| 食品 | 100gあたりの含有量 |
| 凍みこんにゃく(乾) | 1,600mg |
| えんどう豆(塩豆) | 1,300mg |
| 青汁(ケール) | 1,200mg |
| 板わかめ | 960mg |
| 刻みこんぶ | 940mg |
| 青のり | 750mg |
| 角寒天 | 660mg |
| 凍り豆腐(乾) | 630mg |
| ねりごま | 590mg |
| 切り干し大根(乾) | 500mg |
ビタミンDを摂る
カルシウムをたくさん摂っても、その吸収率は25~30%程度だとされています。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進するため、カルシウムと一緒にビタミンDも摂ることをおすすめします。
また、ビタミンD自体にも髪の健康に良い影響を与えるはたらきがあるとされています。たとえば、皮膚のバリア機能を高める作用、抗炎症作用などによって頭皮を健やかに保つ作用、毛乳頭細胞(髪のもととなる細胞に、栄養など送る細胞)を活性化し髪の成長を促す作用などが報告されています。
さらに、ビタミンD欠乏と各種脱毛症との関連についても研究が進められています。2024年に発表された系統的レビュー・メタ解析では、円形脱毛症(AA)や女性型脱毛症(FPHL)でビタミンD欠乏との関連が有意に認められた一方、男性型脱毛症(AGA)や休止期脱毛症(TE)では血中ビタミンD値の低下は見られたものの統計的な関連性は限定的であり、研究間で結果にばらつきがあることが報告されています。[7]ビタミンD補充による介入効果については、まだ確立されておらず、今後の研究が必要です。
ビタミンDが多く含まれている食べ物には、以下のようなものがあります。
| 食品 | 100gあたりの含有量 |
| 塩辛 | 120μg |
| アンコウの肝(生) | 110μg |
| しらす干し | 61μg |
| イワシの丸干し | 50μg |
| いくら | 44μg |
| きくらげ(油炒め) | 38μg |
| 紅鮭(焼き) | 38μg |
| カツオ | 22μg |
| 卵黄 | 12μg |
(参考)
https://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html
なお、人間の場合、紫外線によってビタミンDがつくられるので、日光浴が効果的なのですが、食べ物も同様に、紫外線によってビタミンDが増えるものがあります。たとえば、きくらげ、しいたけ、イワシなどは、乾燥きくらげ、干しシイタケ、イワシの丸干しなどを選ぶのがおすすめです。
マグネシウムを摂る
カルシウムは、体内でマグネシウムと連携してはたらいており、体内では2つの濃度が一定になるようにコントロールされています。
そのため、カルシウムをたくさん摂る場合は、マグネシウムも積極的に摂ることが大事です。
マグネシウムを多く含む食べ物には以下のようなものがあります。
| 食品 | 100gあたりの含有量 |
| あおさ | 3,200mg |
| 青のり | 1,400mg |
| 乾燥わかめ | 1,000mg |
| 刻み昆布 | 720mg |
| 板わかめ | 620mg |
| 干しエビ | 520mg |
| ピュアココア | 440mg |
| ねりごま | 340mg |
| いわのり | 340mg |
| アーモンド(炒り) | 310mg |
(参考)
https://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html
サプリメントを利用する
カルシウムは乳製品や魚介類、のりや海藻類などに多く含まれており、野菜などにはあまり含まれていません。そのため、食生活によってはカルシウムの摂取量がかなり少ない方も多いはずです。
そんなときには、補助的にサプリメントを利用するのも一つの方法です。
カルシウムサプリメント利用時の安全確認フロー
1. まず食事からの摂取を検討する(日本人の食事摂取基準を参照)
↓
2. 既往歴・妊娠の有無を確認する
↓
3. 服薬状況を確認する(鉄剤や亜鉛サプリなど、他のミネラルを摂取していないか)
↓
4. 用量・期間を守る(高用量・長期摂取は避ける)
↓
5. 症状が持続する場合は受診する(皮膚科や内科など専門医に相談)
サプリメントは、あくまで食事で不足する栄養素を補うものです。自己判断での長期・高用量摂取は避け、気になる症状がある場合は医療機関に相談しましょう。
エビデンスに基づく脱毛症の治療と栄養の位置づけ
脱毛症、特に男性型脱毛症(AGA)の治療については、日本皮膚科学会が策定した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」において、医学的根拠に基づいた推奨度が示されています。[8]ガイドラインでは、外用ミノキシジルや内服の5α還元酵素阻害薬(フィナステリド、デュタステリド)が推奨されており、これらが標準治療として位置づけられています。
標準治療として認められている医薬品
フィナステリド(守りの治療)
フィナステリドは、抜け毛を抑える「守り」のためのお薬です。抜け毛の原因とされる「DHT(ジヒドロテストステロン)」は、男性ホルモン(テストステロン)が体内の酵素によって変化して生じます。このお薬は、テストステロンがDHTに変化するのを抑えることで、抜け毛を防ぎます。内服開始後1~3ヶ月位で効果が実感できることが多いです。[9]
主な副作用:食欲不振、抑うつ感、かゆみ、蕁麻疹、男性機能低下(性欲減退、勃起不全、精液減少など)が報告されています。
注意事項:女性は内服できません。妊婦、妊娠する可能性のある女性、授乳中の女性は触れないようにしてください。服用期間中は献血ができず、1ヶ月間の休薬が必要です。
デュタステリド(守りの治療・フィナステリドより高い効果)
デュタステリドもフィナステリド同様、抜け毛を抑える「守り」のためのお薬です。テストステロンがDHTに変化するのを抑える作用がありますが、フィナステリドよりも高い効果が期待されます。これは、テストステロンからDHTへの変化に関与する5α還元酵素にはI型とII型が存在し、フィナステリドはII型のみに作用するのに対して、デュタステリドはI型とII型の両方に作用するためです。デュタステリドは、フィナステリドと比較して約1.6倍毛髪数が増加したという報告があります。[10]ただし、男性機能低下などの副作用の発症率もやや高いとされています(フィナステリド:約1%未満、デュタステリド:約5%未満)
主な副作用:食欲不振、抑うつ感、かゆみ、蕁麻疹、男性機能低下(性欲減退、勃起不全、精液減少など)
注意事項:女性は内服できません。妊婦、妊娠する可能性のある女性、授乳中の女性は触れないようにしてください。服用期間中は献血ができず、6ヶ月間の休薬が必要です。
ミノキシジル(攻めの治療)
ミノキシジルは、発毛を促進する「攻め」のためのお薬です。ミノキシジルという成分が頭皮の血管を拡張することで、毛を作る細胞への血流を促進します。血行が改善されることで、毛細血管から毛乳頭へ栄養を行きわたらせることができるようになるため、頭頂部や生え際の発毛が促進されます。ミノキシジル配合の外用薬に比べ、内服型のミノキシジルタブレットの方が体内への吸収率が高く、より高い発毛効果が期待できます。[11]
主な副作用:血圧低下や心拍数の増加、頭痛やめまい、体重増加、手足のむくみなど。また、頭髪の増加に伴い、他の部位の毛量も増加するのが一般的です(増加の程度は個人差があります)。
注意:内服開始後しばらくすると(およそ1ヶ月程度で)、一時的に抜け毛が少し増えることがありますが、これは古い毛が生まれ変わっているサインであり、薬が効いている証拠です。数ヶ月で必ず生えてきますので、飲み続けることが大事です。
カルシウムの位置づけ
このように、AGAなどの脱毛症に対する標準治療は医薬品であり、ガイドラインにおいてカルシウム補給は治療推奨に含まれていません。カルシウムは、あくまで生活習慣・食事の文脈で補助的に位置づけられるものであり、健康な髪の土台作りを支える栄養素として捉えることが適切です。髪の悩みが続く場合は、自己判断でサプリメントに頼るのではなく、まずは専門医(皮膚科など)に相談することが重要です。
パントテン酸カルシウムと髪の毛について
髪に関連して「カルシウム」と名前がつくものに、パントテン酸カルシウムがあります。
パントテン酸カルシウムとは、パントテン酸(ビタミンBの一種)にカルシウムが付加した成分で、こちらも髪によい効果が期待できます。
パントテン酸カルシウムは女性の薄毛に効果が認められた世界初の治療薬「パントガール」にも含まれており、頭皮の細胞や髪を健康に維持する作用、髪の主成分であるケラチンの生成促進作用、ストレスに対抗する副腎皮質ホルモンの合成を助ける作用などが期待できます。
クリニックフォアのオンラインAGA治療
クリニックフォアでは、オンラインでAGAやFAGA(女性のAG)の診察を行っています。
スマホで診察を受けていただき、お薬は配送するので、直接の受診にハードルを感じるかたでも、AGA治療が始めやすくなっています。お薬の定期配送も行っています。
まずは医師に相談しましょう。髪の悩みは、専門的な診断と適切な治療によって改善できる可能性があります。カルシウムをはじめとする栄養素は健康な髪の基礎を作りますが、脱毛症の根本的な治療には医薬品による標準治療が推奨されています。オンライン診療なら、ご自宅から気軽に専門医に相談できます。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。
※自由診療

