AGA治療薬によって副作用やリスクは異なる
一口にAGA治療薬と言えど、AGA治療薬には幾つか種類があります。当然ですが、それぞれの薬によって副作用の内容や強さも異なるため、注意が必要です。
そんなAGA治療薬の中で、ほとんどの病院やAGAクリニックで一般的に使用されている治療薬が以下の3種類です。
AGA治療の主な内服薬には、抜け毛を抑える「守り」のお薬と、発毛を促進する「攻め」のお薬があります。守りのお薬であるフィナステリドとデュタステリドは、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑えることで抜け毛を防ぎます。一方、攻めのお薬であるミノキシジルは、頭皮の血管を拡張して血流を改善することで発毛を促進します。
フィナステリド(商品名:プロペシア)ミノキシジル(内服薬)、デュタステリド(商品名:ザガーロ)
これらの一般的なAGA治療薬の副作用やリスクについて、詳しく解説していきます。
フィナステリド(商品名:プロペシア)
フィナステリドという薬剤は、フィンペシアやプロペシアという商品名で処方されているお薬です。特にプロペシアについては聞いたことのあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この薬は世界初の内服によるAGA治療薬であり、現在も世界中で広く使われているお薬です。フィナステリドは、抜け毛の原因とされるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成に関わる5α還元酵素II型という物質の働きを抑える作用を持っています。
抜け毛の主な原因として考えられているDHTは、男性ホルモンであるテストステロンが5α還元酵素II型という物質によって変化することで生成されます。フィナステリドはこの変化を抑えることで、髪の成長を妨げるDHTの生成を減少させます。 そのため、髪の成長期を止めて抜け落ちやすくさせるジヒドロテストテロンが減少。抜け毛の進行を防ぐとともに、髪の成長期が長くなりしっかりとコシのある太い髪の毛が生え続け、薄毛改善の効果が期待できます。
内服開始後、1~3ヶ月位で効果が実感できることが多いとされています。
フィナステリド(商品名:プロペシア)の副作用やリスク
フィナステリド(商品名:プロペシア)の副作用で最も出現頻度の高いものは性機能の低下です。性機能の低下に関する症状は主に以下の4点が挙げられます。
勃起機能不全(ED)、射精障害、精液量減少、リビドー減退(性欲減退)
フィナステリドは男性ホルモンの働きに影響を与えるため、こういった副作用が起こる可能性があります。 日本で実施された臨床試験では、フィナステリド1mg投与群で6.5%(139例中9例)に副作用が認められ、その主な内訳はリビドー減退と勃起機能不全でした。一方、プラセボ群(有効成分を含まない偽薬を使用したグループ)でも2.2%(138例中3例)に副作用が報告されています[1]。
国際的な大規模臨床試験の統合分析では、1年間の治療期間において、フィナステリド1mg投与群では3.8%(945例中36例)の患者が性機能関連の有害事象を報告しました。これは、プラセボ群の2.1%(934例中20例)と比較して統計的に有意な差でした[2]。また、別のメタ解析では、フィナステリド1mg/日群の性的有害事象発現率は5.31%(1,882例中100例)と報告されており、プラセボ群の3.05%(1,869例中57例)と比較して、性的有害事象のリスクが1.66倍に増加することが示されました[3]。
このデータから、フィナステリドが性機能関連の副作用リスクを増加させる可能性はあるものの、プラセボ群でも一定の副作用が報告されていることがわかります。これは、薬の作用だけでなく、薬を飲むことへの心理的な不安や期待(ノセボ効果)が副作用の体感に影響を与えている可能性を示唆しています。特に性機能に関する症状は、心理的要因が強く作用することがあります。
その他の副作用として、食欲不振、抑うつ感、かゆみ、蕁麻疹などが報告されています。
ミノキシジル(内服薬)
次に紹介するのは、ミノキシジルという薬剤です。ミノキシジルは元々、降圧剤(血圧を下げる薬)として開発されており、その副作用として多毛症になる方が多く見られたため、その後研究が進み、AGA治療に使われるようになりました。
ミノキシジルという成分が頭皮の血管を拡張することで、毛を作る細胞への血流を改善します。血行が良くなることで、毛細血管から毛乳頭へ栄養が行きわたりやすくなり、頭頂部や生え際の 発毛を強く促します。
ミノキシジル配合の外用薬に比べ、内服型のミノキシジルタブレットの方が体内への吸収率が高く、より高い発毛効果が期待できます。
内服開始後しばらくすると(およそ1ヶ月程度で)、一時的に抜け毛が少し増えることがありますが、これは古い毛が生まれ変わっているサインであり、薬が効いている証拠です。数ヶ月で新しい毛が生えてきますので、飲み続けることが大事です。
ミノキシジル(内服薬)の副作用やリスク
ミノキシジルの副作用では、以下の様なものが確認されています。
動悸、心拍数増加、血圧低下、息切れ・呼吸苦、むくみ・体重増加、全身の多毛
低用量ミノキシジル内服における副作用について、研究では以下のような発現率が報告されています。多毛症(多毛)は最も頻繁に報告される副作用であり、特に女性と高用量服用者で発現率が高くなります。ある研究では、多毛症の発現率は女性で20%、男性で6%と報告されています[4]。低用量(4mg未満)では10-25%の患者に影響が見られ、高用量(5mg超)では最大50%に達する可能性があります。
循環器系の副作用としては、ミノキシジルが持つ血管拡張作用により、低血圧、頻脈、浮腫、動悸、めまいなどの副作用が報告されており、その発現率は1-5%の範囲にあることが多いとされています[4]。浮腫は女性に多く、1.3-10%に影響が見られます。これらの副作用は通常、軽度かつ一過性であり、用量調整や服用時間の変更で管理できる場合が多いとされています。
頭髪の増加に伴い、他の部位の毛量も増加するのが一般的です(増加の程度は個人差があります)。気になる方は、外用剤に切り替えるなどの対応が可能ですので医師とご相談ください。
引用:日本皮膚科学会ガイドライン – 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
元々、降圧薬として使われていた背景もあるため、心臓や腎臓、甲状腺機能に障害がある方は必ず医師と相談をした上で利用しましょう。また個人通販などで安易に購入せず、必ず医師の診察を受けた上で使用の可否を判断してもらい、処方を受けるようにしましょう。
デュタステリド
最後はデュタステリドという薬剤を紹介。商品名はザガーロやアボルブといい、今までご紹介してきた薬剤の中では、比較的新しい薬剤です。
デュタステリドは、フィナステリドと同様に、抜け毛の原因とされるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑える働きを持つお薬です。 テストステロンからDHTへの変化の原因となっている5α還元酵素にはI型とII型とが存在していますが、フィナステリドはII型のみに有効なのに対して、デュタステリドはI型とII型の両方に有効であるため、より高い効果が期待されます。
デュタステリドは、フィナステリドと比較した場合、約1.6倍毛髪数が増加したという報告があります。
デュタステリドの副作用やリスク
デュタステリドはフィナステリドと同様に男性ホルモンの働きに影響を与えるため、類似した副作用が見られます。
国内臨床試験では、デュタステリドの性機能関連副作用として、勃起不全4.3%(日本人限定で5.0%)、リビドー減退3.9%、精液量減少1.3%が報告されています[5]。フィナステリドと比較したメタ解析では、デュタステリド0.5mg/日群の性的有害事象発現率は8.27%(375例中32例)と、フィナステリド1mg/日群の5.31%よりも高い数値が示されています[3]。
ただし、男性機能低下などの副作用の発症率もやや高いとされています(フィナステリド:約1%未満に対して、デュタステリド:約5%未満)。
また、血中の薬物濃度が半減するまでにかかる時間は フィナステリドが6~8時間なのに対し、デュタステリドは3~5週間と圧倒的に時間が長いため、副作用が起こる時間も長い可能性があります。ただ効果の持続が長いのは副作用だけでなく、 主効果の抜け毛改善も同様です。デュタステリドの方が、 より薄毛の改善効果があるとされています。
その他の副作用として、食欲不振、抑うつ感、かゆみ、蕁麻疹などが報告されています。 乳房関連の副作用について、デュタステリドは乳房圧痛や乳房肥大(女性化乳房)のリスクも有します。国内の臨床試験では、これらの乳房関連副作用の発現は1%未満と報告されており、極めて稀であるとされています[5]。5α還元酵素阻害薬の使用は、体内の男性ホルモンの低下と相対的な女性ホルモンの増加をもたらすため、女性化乳房を引き起こす可能性があります。ただし、大規模な疫学研究では、5α還元酵素阻害薬の使用が女性化乳房のリスクを3.55倍に有意に増加させた一方、男性乳がんのリスクは増加させないことが明確に示されています[6]。
植毛やレーザー治療の副作用・リスク
前述した、治療薬以外のAGA治療方法としては主に以下の2つが挙げられます。
植毛、レーザー治療
植毛の場合は傷口の炎症や痛み
植毛の場合、人工毛での植毛をした場合には植毛した人工毛と合わずに拒絶反応を起こしたり、人工毛が生着せずに抜け落ちてしまうこともあり、人工毛の植毛は推奨されていません。自毛植毛は可能ですが、傷口の炎症や痛み程度の副作用があるとされています。
レーザー治療の場合は照射した皮膚の乾燥や痒み・痛み
レーザー治療はレーザーで髪の細胞を刺激して発毛を促していく治療です。副作用として、照射部の皮膚乾燥、痒み、痛み、ひりつきなどが1〜5%程度の割合で発症するとされています。
AGA治療でよくある質問
最後にAGA治療に関するよくある質問についてまとめたので、是非チェックしてみてください。
Q. AGA治療のやめどきはいつ頃でしょうか?
AGAは進行性の病態であり、薬をやめてしまうとまた薄毛が進行してしまいます。そのため抜け毛を防ぐフィナステリド、デュタステリドは継続して飲み続ける必要があります。
ヘアサイクルを整えて髪の毛を生やしていくミノキシジルについては、十分髪の毛が生えてきた段階で、減量していくことも可能です。急にお薬を止めてしまうとまた一気に抜け毛が進行することもありますので、変更の際には、医師と相談してください。
Q. AGA治療をやめるとまたハゲてしまうのでしょうか?
先の通りAGAは完治できない病気のため、抜け毛を防ぐフィナステリド、デュタステリドの服用をやめれば抜け毛が進行する可能性は大きいと考えられます。
Q. ミノキシジルタブレットとフィナステリドを併用していますがフィナステリドだけに途中で切り替えるのはありですか?
十分に毛が生えてきた場合には、抜け毛予防としてフィナステリドのみの治療に切り替えることもあります。しかし独断では行わず、医師に相談の上で行いましょう。
Q. AGA治療をしても薄毛に効果が無い場合はあるのでしょうか?
AGA治療をしても薄毛が改善されない事も、稀に起こり得ます。その場合、お薬を変更したり追加するなどの選択肢もありますので再度クリニックでご相談されることをお勧めいたします。毛根が生きていれば、きちんとした治療を行うことで、大多数方で効果を実感できるでしょう。
ただし、そもそも薄毛の原因がAGAでは無い、円形脱毛症や脂漏性脱毛症などの場合にはAGA治療を行っても薄毛が改善されることはありません。一度、お近くの皮膚科で診察を受けることをお勧めいたします(クリニックフォア対面診療)。
Q. 副作用の他に、AGA治療を始める上で気をつけたほうがいいことはありますか?
AGA治療は継続して行っていくものなので、月々発生する治療費は気をつけるべきです。月々の費用の違いは年単位で見ると大きな差になります。クリニックフォアでは月々約3,000円から約30,000円の間で治療を行うことができます。
まとめ:AGA治療には完全に副作用が無い治療方法は無い
このようにAGA治療においては、完全に副作用がない治療というものはありません。全ての治療において何かしらの副作用が出る可能性はあります。
ただし、副作用の発現率は決して高くなく、多くの方が安全に治療を続けられています。フィナステリドとデュタステリドは性機能関連の副作用が主要なリスクであり、ミノキシジル外用薬は局所的な皮膚刺激が主であり、全身性の副作用リスクは低いとされています。
一方で、ミノキシジル内服薬は、外用薬とは異なり全身性の作用により、多毛症や稀な心血管系副作用のリスクを伴います。
また、人によっては服用禁忌などにより、薬が使えないこともあります。妊婦、妊娠する可能性のある女性、授乳中の女性はフィナステリドやデュタステリドに触れないようにする必要があります。また、服用期間中は献血が行えず、フィナステリドは1ヶ月間、デュタステリドは6ヶ月間の休薬が必要になります。高齢者や肝臓の悪い方、ミノキシジルについては高血圧や腎臓などの持病のある方は注意が必要です。
そのため、自己判断で薬を選ぶのではなく必ずクリニックや病院で診療を受けるようにしましょう。

