フィナステリドが健康診断に与える影響【服用中でも受診可能】

AGA治療薬である「フィナステリド」を服用中に健康診断を受けるとき「検査結果に影響が出ないか」「会社に治療を知られないか」と不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
結論からお伝えすると、フィナステリドは一般的に健康診断の前日や当日も普段どおり服用して問題ありません。
ただし、PSA検査や一部の肝機能検査では数値に影響が出る可能性があるため、医師への正確な申告が推奨されます。
なお、申告しても会社に治療の事実が知られる可能性は非常に低いため、過度に心配する必要はありません。
この記事では、フィナステリドが健康診断の検査項目にどのように影響するのか、医師への申告方法などについて詳しく解説します。正しい知識を身につけておくと、安心して健康診断を受けられるでしょう。

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フィナステリドが健康診断に与える影響

フィナステリドを服用していると、健康診断の結果に影響が出るのではないかと心配する方も多いでしょう。しかし、実際に影響を受ける検査項目は限定的で、PSA検査と肝機能検査以外の項目にはほとんど影響しません。

検査結果に影響するのはPSA検査のみ

フィナステリドが健康診断の検査結果に明確な影響を与えるのは、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)検査です。

PSAは前立腺から分泌されるタンパク質の一種で、血液検査で測定します。PSAの値を調べることで、前立腺がんや前立腺肥大、炎症などの異常を早期に発見する手がかりになります。

PSAの基準値は4.0ng/mL未満とされており、この値を超えると精密検査が必要になることがあります。フィナステリドは、このPSAの値を実際の数値よりも約50%低下させることが報告されています[1]。これは、フィナステリドが5αリダクターゼ(5α還元酵素)を阻害することで、前立腺で産生されるPSAの量も減少するためです。

そのため、フィナステリドを服用している方は、測定されたPSA値を2倍に換算して評価する必要があります。たとえば、測定値が2.0ng/mLであれば、実際には4.0ng/mL相当と考えて評価します。

健康診断の前日・当日も服用可能

フィナステリドは一般的に、健康診断の前日や当日でも、いつも通り服用できます。ただし、健康診断を受ける医療機関によっては指導方法が異なる可能性もあるため、事前に確認すると安心です。

フィナステリドの添付文書には、健康診断前の休薬指示は記載されていません。むしろ、服用を中断するとAGAが進行してしまう恐れがあるため、普段通りの時間に服用することが推奨されます。

フィナステリドは、1日1回の継続的な服用により、血中濃度を一定に保つことで効果を発揮します。

服用を中断すると血中濃度が低下し、DHT(ジヒドロテストステロン)を抑える効果が減弱してしまいます。特に、服用開始から6か月以内の初期段階では、継続的な服用が治療効果の定着に重要です[1]

また、フィナステリドは食事の影響を受けないため、朝食を抜く必要がある健康診断の日でも問題なく服用できます。空腹時採血が必要な場合は、採血後に服用すれば問題ありません。朝の健康診断であれば朝食と共に服用を控え、採血後に服用する方法が推奨されます。午後の検査の場合は、通常通り朝に服用しても検査結果への影響はありません。

1日程度の休薬では検査結果が大きく変わることもないため「検査結果への影響が心配」という理由で休薬する必要はないでしょう。

肝機能や一般的な検査項目への影響について

フィナステリドは、PSA値以外にも肝機能検査など一部の項目に影響を及ぼす可能性があります。

ただし、その影響の程度や範囲は限定的で、一般的な健康診断の多くの項目には影響しません。

肝機能(AST/ALT/γ-GTP)への影響の可能性

フィナステリドは副作用として肝機能障害(頻度不明)が報告されています[2]。肝機能検査値(AST/ALT/γ-GTP)が上昇する可能性もありますが、個別の値についての頻度や程度は明らかではありません。

しかし、健康診断で肝機能の数値上昇を指摘された場合でも、その原因が必ずしもフィナステリドとは限りません。肝機能検査値が上昇する原因は多岐にわたりますが、その多くは飲酒習慣や肥満、脂肪肝など、フィナステリド以外の生活習慣要因が関与しています。

肝機能検査値の種類と上昇する原因は、以下の表のとおりです。

検査値上昇する原因・特徴
γーGTP飲酒習慣がある場合に特に上昇しやすい数値です。アルコールによる肝臓への負担が原因となります[3]
ALT(GPT)脂肪肝、肥満、ウイルス性肝炎(B型
・C型)などで上昇することが多い数値です。特に、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)では、ALTが優位に上昇します[3]
AST(GOT)肝臓だけでなく、心臓や筋肉にも存在するため、激しい運動の後や心疾患でも上昇することがあります。

健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断でフィナステリドの服用を中止せず、必ず医師に相談しましょう。原因を特定したうえで、継続して良いかを判断することが大切です。

多くの場合、生活習慣の改善(節酒、減量、バランスの取れた食事など)により数値の正常化を期待できます。

一般的な検査項目への影響はない

フィナステリドは、血糖値やコレステロール、中性脂肪などの一般的な健康診断の検査項目に影響がありません。

具体的には、血液検査の基本項目である以下の検査値に影響を与えないことが確認されています。

【影響がない主な検査項目】

  • 血球数(赤血球、白血球、血小板)
  • ヘモグロビン値
  • 血糖値、HbA1c
  • 総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール
  • 中性脂肪
  • 尿酸値
  • 腎機能(クレアチニン、尿素窒素)

フィナステリド服用の有無に関わらず、これらの項目は通常通り評価できます。

また、尿検査についても、尿蛋白、尿糖、尿潜血などの項目に影響はありません。血圧測定も、フィナステリド単独では影響を受けません。

フィナステリドを服用中であるという申告が特に重要となるのは、PSA検査を含む場合と、肝機能異常を指摘された場合であると理解しておきましょう。

一般的な健康診断の大部分の項目については、フィナステリドを服用していても通常の基準で評価できるため、過度に心配する必要はありません。

健康診断でフィナステリド服用が会社にバレる可能性

健康診断をとおして「AGA治療をしていることが会社に知られてしまうのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、健康診断の結果や問診表の内容はプライバシー情報として厳重に保護されています。医療従事者には守秘義務があるため、病名やお薬の名前などの詳細な情報が本人の同意なく会社に伝わることはありません。

検査結果から服用が判明することはない

健康診断の結果からフィナステリドの服用が会社にバレる可能性は極めて低いと言えます。

労働安全衛生法に基づく定期健康診断の結果は、会社に報告されますが、報告される内容は以下のような判定結果のみです。

  • 総合判定: A(異常なし)、B(軽度異常)、C(要観察)、D(要再検査)、E(要精密検査)
  • 項目別判定: 各検査項目(血圧、肝機能、脂質など)ごとの判定
  • 就業上の措置: 通常勤務、就業制限、要休業など

再検査となった場合でも「要再検査」などの判定のみが伝わるため、具体的な病名や服用しているお薬の名前が会社に報告されることはありません[4]。「申告したらAGA治療を会社に知られるのではないか」と不安になる必要はないでしょう。

たとえば、PSA検査で異常がなければ「異常なし」とだけ報告され、「フィナステリド服用中のため換算値で評価」といった詳細は会社には伝わりません。

問診表の記載内容は守秘義務で守られる

問診票の記載内容についても、医療従事者のみが閲覧し、会社の担当者が見ることはできない仕組みになっています[4]

法律で医療従事者には厳格な守秘義務が課されており、患者の医療情報を無断で第三者に開示することは禁止されています。

問診表に記載した内容が会社の人事担当者や上司の目に触れることはなく、AGA治療についての情報が会社に伝わる可能性は極めて低いといえます。

問診表の記載内容によって、治療内容が会社にバレるのではないかと過度に不安になる必要はないでしょう。

健康診断の「問診票」への正しい申告方法

健康診断でフィナステリドの服用を申告すべきかどうか、迷う方は少なくありません。

健康診断の問診票には、フィナステリド服用中であることの申告が推奨されます。

特に、PSA検査を受ける方は、検査結果への影響があるため必ず申告するようにしましょう。

PSA検査がある場合:服用中と必ず記載

PSA検査を含む健康診断を受ける際は、問診票に「フィナステリド服用中」と必ず記載してください。これは単なる推奨ではなく、検査結果の正確な判定に直結する重要事項です。

問診票の「服用中の薬」の欄には、お薬の名前と用量を記入しましょう。「フィナステリド1mg」のように具体的に記載することで、医師が検査結果を適切に評価できます。

正確な薬剤情報は、検査結果を適切に評価するために必要不可欠です。特にPSA検査を含む場合は、医師が測定値を2倍換算して評価するため、服用の有無についての情報が重要となります。

可能であれば、服用開始時期も記載すると、より正確な評価が可能になります。PSA検査においては、服用期間によって影響する度合いが異なるため、開始時期の情報が有用です。「2025年4月から服用」のように記載すると良いでしょう。

お薬手帳を持参している場合は、それを提示する方法も有効です。お薬手帳には処方日、薬剤名、用量、服用方法などが正確に記載されており、医師が情報を正確に把握できます。

PSA検査がない場合:申告が望ましい

PSA検査が含まれていない一般的な健康診断であっても、フィナステリドの服用は申告することが望ましいでしょう。

その理由は、肝機能検査への影響などを医師が把握できる点にあります。フィナステリドは肝臓で代謝されるお薬のため、まれに肝機能数値の変動が見られることがあります。服用を申告しておけば、検査値に異常が出た際にお薬の影響かどうかを適切に判断してもらえます。

また、健康診断の内容は当日追加されることもあります。事前にPSA検査が予定されていなくても、年齢や問診内容によって追加実施される可能性もゼロではありません。

問診票には「現在服用中の薬」を記入する欄が必ずあります。そこにフィナステリドと記載するだけで済むため、申告による手間はほとんどありません。診療を適切に受けるためにも、服用中の薬は医師に伝えておくと安心です。

フィナステリドと健康診断に関するよくある質問

フィナステリド服用中に健康診断を受ける方が抱える疑問について、よくある質問とその回答をまとめました。同じような不安や疑問を持っている方は、ぜひ参考にしてください。

これまで申告していなかった場合は?

今後の健康診断では必ず申告するようにし、可能であれば過去の検査結果も見直しましょう。特に、PSA検査を受けていた場合は、前立腺疾患の見落としを防ぐため過去の数値の再評価が必要になります。過去の測定値を2倍した値で評価し直すことで、実際のPSA値を推定できます。また、必要に応じて泌尿器科で精密検査を受けると安心です。

肝機能の再検査を指示されたらどうするべきですか?

自己判断での中止は避け、まず医師に相談して原因を特定することが重要です。飲酒や肥満など肝機能異常の原因は多岐にわたり、フィナステリドが原因とは限りません。急な中止は治療効果の低下につながるため、医師に相談するようにしてください。

個人輸入薬を服用している場合も申告すべきですか?

個人輸入薬も有効成分が同じであれば健康診断への影響は類似していると考えられるため、同様に申告しましょう。ただし、個人輸入薬は品質保証がなく偽造品のリスクもあるため、申告時に医師から国内承認薬への切り替えを勧められる可能性があります。

まとめ:正しい知識でAGA治療と健康管理を両立しましょう

フィナステリド服用中の健康診断では、以下の3点を押さえておくと安心です。

  • 健康診断の前日・当日も、普段どおり服用して問題ない
  • PSA検査では値が約50%低下するため、必ず医師に申告する
  • AGA治療が会社に伝わる可能性はほぼない

これらを理解しておくことで、必要以上に不安を感じず健康診断を受けられます。

不明点がある場合は、健康診断の医師やAGA治療中のクリニックに相談しながら進めていきましょう。

30秒でわかる あなたの頭皮危険度はどのくらい? 5問で完結 LINEでチェックする

AGAを正しく理解する

AGAセルフチェック

自分がAGAなのか、簡単セルフチェック。

AGAの原因

AGAが起こる原因を理解しましょう。

AGAのお薬について

自分に合ったお薬を知りましょう。

参考文献

  1. The effect of finasteride on prostate specific antigen: review of available data - PubMed
  2. 5α-還元酵素Ⅱ型阻害薬 男性型脱毛症用薬
  3. 標準的な健診・保健指導 プログラム
  4. 健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針