ミノキシジルと体毛の関係【副作用の可能性】
ミノキシジルは、まれに体毛が増えたり濃くなったりする「多毛症」を引き起こすことが報告されています[1]。
海外の研究では、低用量ミノキシジルを3か月服用した患者1,404名のうち、15.1%に多毛症が認められたと示されています[2]。
ただし、多毛症が起こる要因には、ホルモンバランスの乱れや生活習慣なども考えられるため、かならずしもミノキシジルのみが原因とは限りません。
体毛の変化が気になる場合でも、まずはその発現頻度や背景を正しく理解することが大切です。
ミノキシジルで体毛が濃くなる【多毛症】
ミノキシジルは、頭皮だけでなく全身の毛包にも作用することがあり、その影響で体毛が濃くなる「多毛症」が生じる場合があります。
ミノキシジルは、おもに以下2つの作用によって発毛を促します。
<ミノキシジルの主な作用>
| 血管を広げる作用 | 血流が良くなり毛根に酸素や栄養が届きやすくなる |
| 毛母細胞(※1)を活発にする作用 | 毛をつくる働きが高まり、毛包(※2)の成長が促される |
※1:毛をつくる細胞
※2:毛根を包む部分
発毛を促すこれらの仕組みが全身の毛包に働くと、体毛が太くなったり濃くなったりすることがあります。
ただし、ミノキシジルでかならず多毛症が起こるわけではありません。剤型や用量によっても発現率に違いが見られます。
内服薬と外用薬では多毛の出やすさに違いがある
ミノキシジル内服薬は、外用薬よりも多毛症が起こりやすい傾向があります。これは、成分が体内に取り込まれる仕組みに違いがあるためです。
内服薬は、成分が消化管で吸収されたのち、血液を通して全身に運ばれます。お薬が体の毛根にも作用すると、体毛の成長が促されます。
一方、外用薬の場合、成分は頭皮に塗った部位から吸収されるしくみです。血液中へ入る成分の量は限られ、全身への影響も少ないと考えられています。
実際にミノキシジル外用薬を用いた臨床試験では、顔の産毛に変化が見られたものの、全身に及ぶ影響はなかったと報告されています[3]。
体毛の変化をできるだけ抑えたい場合は、剤形による影響の違いも踏まえて検討するとよいでしょう。
内服薬による多毛症の発現率は用量に比例する
内服薬による多毛症は、服用量が多いほど起こりやすいことがわかっています[4]。血液中のお薬の濃度が高くなるほど、毛母細胞への作用が強まるためです。
海外の臨床研究では、多毛症が起こる割合について以下のように報告されています。
<内服ミノキシジルの用量と多毛症の発現率[4]>
| ミノキシジルの量(1日あたり) | 多毛症の発現率 |
| 0.25〜0.75mg | 28.9% |
| 1〜1.25mg | 30.4% |
| 2.5〜5mg | 86.8% |
表を見ると、用量が増えるにつれて多毛症の発現率が高くなっていることがわかります。
ただし、症状のあらわれ方には個人差があり、人によって感じ方も異なります。
心配な場合は医師の判断のもと少ない用量から開始し、経過に応じて調整していくとよいでしょう。
ミノキシジルによる体毛変化の特徴
ミノキシジルによる体毛の変化には、いくつかの特徴があります。
ここでは、症状があらわれやすい部位や性別による違いについて解説します。
ご自身の症状と照らし合わせながら確認してみてください。
体毛が濃くなりやすい部位
ミノキシジルによる体毛の変化は顔まわり」に出やすい傾向があります。
また、内服薬の場合は腕や足など「四肢」にも生じることがあります。
<多毛症があらわれやすい部位[5]>
- 顔:こめかみ、もみあげ、口ひげ、額など
- 四肢:腕、手の甲、足 など
顔まわりや腕などの産毛は、もともと細く短い毛です。
ミノキシジルには毛を太く長くする作用があるため、本来目立たなかった産毛が濃くなると変化に気づきやすくなります。
男女で発現率に違いがある
体毛の変化は、男性よりも女性に起こりやすいことがわかっています。
低用量のミノキシジル内服薬を対象とした海外の研究では、多毛症の発現率について次のような結果が報告されています。
<性別ごとの多毛症の発現率[4]>
| 性別 | 発現率 | 多毛症が起きたときの平均服用量 |
|---|---|---|
| 女性 | 31.4% | 1.4mg |
| 男性 | 23.7% | 4.1mg |
表から、女性は男性に比べて服用量が少ないにも関わらず、発現率が高いことが読み取れます。
男女で発現率に差がある理由は、単に体質の違いだけではありません。女性が細かな変化に気づきやすい点も関係していると考えられています[4]。
体毛の変化が気になる場合は、次に紹介する選択肢を参考にし、医師とともにご自身に合う治療法を見つけましょう。
ミノキシジルによる体毛増加を防ぐ4つの選択肢
「AGA治療は続けたいけれど体毛増加は防ぎたい」という場合、体毛ケアを工夫したり、治療方針を見直したりすることで対応していきましょう。
以下4つの選択肢から、自分に合った方法を検討してみてください。
その1:脱毛処理を行いながら治療を続ける
ミノキシジルの使用により、体毛が濃くなる(増える)ことがあります。
症状が気にならない範囲であれば、体毛ケアを行いながら治療を継続すると良いでしょう。
<体毛ケアの一例>
- 電気シェーバーやカミソリでのシェービング
- 除毛クリームやワックスによる処理
- 家庭用光脱毛器
- 医療脱毛やエステ脱毛
体毛ケアを行う場合は、肌トラブルにも注意が必要です。
とくにシェービングや除毛クリームによる処理は、肌に負担がかかり刺激や肌荒れを引き起こすこともあります。
肌の弱い方やケアに負担を感じる方は、医師に相談しご自身に合った治療法への変更も検討しましょう。
その2:内服薬なら外用薬へ切り替える
内服薬から外用薬への切り替えも選択肢のひとつです。
外用薬は内服薬よりも全身への影響が少なく、多毛症のリスクを下げられる可能性があります。
もちろん外用薬でも発毛効果は確認されています。
海外の臨床試験では、5%濃度のミノキシジル外用薬を使用した人で明らかな発毛効果が見られました[7]。
また、5%のミノキシジル外用薬は2%製剤よりも毛髪が増え、濃度が高いほど発毛効果が期待できると示されています[7]。
外用薬でも多毛症が起こる可能性はゼロではありませんが、適切な使い方を心がけることで頭皮以外への影響を抑えられるでしょう。
その3:用量を見直す
多毛症は用量が多いほど起こりやすい傾向があるため、用量を見直すことも対策のひとつとなります。
海外の文献では、ミノキシジル内服薬を1mg増やすと、6か月後に多毛症のリスクが約17.6%増加すると示されていました[4]。
外用薬でも濃度を下げることで体毛への影響を和らげられると考えられます。
ただし、用量を減らすと頭部の発毛効果も弱まる可能性があります。
副作用と効果のバランスを考えながら、医師とともにご自身に合う用量を見つけましょう。
その4:他のAGA治療薬を検討する
ミノキシジルが合わない場合や体毛に抵抗がある場合は、作用の仕方が異なるAGA治療薬も選択肢となります。
代表的なお薬には男性なら「フィナステリド」や「デュタステリド」が挙げられます。
これら2つは、男性ホルモン(テストステロン)が抜け毛の原因とされるDHT(ヒドロテストステロン)に変化するのを抑えるお薬です。
ミノキシジルのように全身の毛包を刺激する作用がないため、体毛への影響は起こりにくいと考えられます。
女性なら「スピロノラクトン」が挙げられます。
体毛が気になる場合は、これらのお薬への変更や、組み合わせることでミノキシジルの用量を調整することなど、ご検討ください。
体毛増加を抑えながらミノキシジルで治療を続けるポイント2つ
AGA治療をしたいものの、体毛が気になり治療を継続するか悩む方もいるでしょう。
ミノキシジルによる体毛の変化は医師と相談しながら対応できるケースが多く、すぐに治療をやめる必要はありません。
治療中は、以下2つのポイントを意識してみてください。
- 自己判断で中断しない
- 外用薬は顔などに付着しないよう注意する
安心してAGA治療を続けるために、これらのポイントを理解し適切に対応しましょう。
ポイント1:自己判断で中断しない
体毛が濃くなっても、自己判断で治療を中断するのは避けましょう。
AGA治療では継続が重要であり、中断するとこれまで得られた効果が徐々に失われてしまいます[8]。
また、効果を実感するまでには4〜6か月ほどかかるとされています[8]。
はじめは体毛ばかりが気になって「肝心の頭部は変わらない」と感じるかもしれませんが、効果は少しずつ発揮されていきます。
不安を感じても自己判断は避け、まずは医師に相談してください。
医師とともに、多毛に配慮しながらAGA治療を続ける方法を見つけていきましょう。
ポイント2:外用薬は顔などに付着しないよう注意する
外用薬を使用する際は、薬液が顔や手についたままにしないよう注意してください。
薬液が顔などに残っていると、付着した部分の毛が濃くなることがあります。
また、薬液がついた手で顔や体に触れると、触れた部位の毛包に作用する可能性があります。
外用薬を塗布するときは、次の点を心がけましょう。
<ミノキシジル外用薬を使うときのポイント>
- 生え際に液が垂れないよう丁寧になじませる
- 塗布後は、手についた薬液で顔などを触らないようにする
- 使用後は石けんで手を洗う
- 枕カバーをこまめに交換する
これらを実践することで、頭皮への効果を保ちつつ、意図しない部位への多毛症予防につながるでしょう。
ミノキシジルと体毛に関するよくある質問
ミノキシジルによる体毛について、よく寄せられる質問にお答えします。
多毛症への不安を軽減しながら、AGA治療を続けるために参考にしてください。
多毛症はいつから起こりますか?
体毛の変化を感じる時期には個人差があるため、一概には言えません。
目安としては、頭髪への効果を実感する時期(治療開始から4〜6か月ごろ[8])に、体毛の変化にも気づくことが考えられます。
ただし、体毛の変化が頭髪よりも先に気になるケースも想定されます。
ミノキシジルで体毛だけ濃くなることはありますか?
体毛だけが濃くなると感じるケースは起こり得ます。
とくに内服薬の場合、全身の毛包に作用する可能性があり、体毛の変化に気づきやすい一方で、頭髪への効果を実感するまでには時間がかかります。この時間差により「体毛だけが濃くなった」と感じることがあります。
また、治療開始から2〜12週間ごろには「初期脱毛」が起こることがあります[9][10]。これは休止期の弱い毛が新しく成長する毛に押し出されることで起こる現象です。
この時期は頭髪が一時的に薄くなるため、体毛の変化がより目立ち「体毛だけが濃くなった」と感じやすくなります。
初期脱毛は治療を続けていくうちに落ち着きます[10]。まずは継続しながら様子を見てください。気になる変化が続く場合は、用量調整や剤形変更などについて医師と相談しましょう。
お薬の使用をやめたらどのくらいの期間で体毛はもとに戻りますか?
使用を中止してから数か月から半年程度でもとに戻ると考えられます。
ミノキシジルの効果は可逆的であり、使用を中止すると数か月以内に効果が失われるためです[4]。
濃くなった体毛も時間の経過とともに生え変わり、少しずつ本来の状態へと近づいていきます[8]。
まとめ:ミノキシジルで体毛が気になるときはまずは医師に相談しよう
ミノキシジルは頭部の発毛効果が期待できる一方で、体毛へ影響する可能性があります。
体毛への影響は個人差があり、用量や剤形によっても異なります。
大切なのは、体毛が気になっても自己判断で治療を中断しないことです。ミノキシジルは継続が重要であり、中断すると得られた効果が失われてしまいます。
「髪は生やしたいけれど、体毛への影響は抑えたい」という場合、まずは医師へ相談してください。
用量の調整やミノキシジル外用薬への変更など、AGA治療を続けるための選択肢はあります。医師とともに、ご自身の希望に合った方法を見つけていきましょう。
当クリニックではオンライン診療を提供しており、自宅から医師に相談できます。体毛の変化が心配な方や今の治療方針に不安を感じている方は、お気軽にご活用ください。
※自由診療
※医薬品副作用被害救済制度等の対象外となります。
※効果・効能・副作用のあらわれ方は個人差がございます。医師の診察を受け、診断された適切な治療方法をお守りください。
※医師の判断でお薬の処方可否・お薬の処方日数は変わります。
