中性脂肪とは?基準値と高い場合のリスク
中性脂肪は血液中に存在する脂質の一種で、私たちの体にとって欠かせないエネルギー源です。
食事から摂取した栄養のうち、すぐに使われなかった分が肝臓で中性脂肪に合成され、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。
体温を維持したり内臓を衝撃から守ったりする役割も担っていますが、増えすぎるとさまざまな健康リスクを招く可能性があります。
ここでは、中性脂肪の基準値や高い場合に起こりうる病気について解説します。
中性脂肪の役割と基準値(150mg/dL未満)
中性脂肪は、ブドウ糖が不足したときにエネルギーとして使われる「体の予備燃料」のような存在です。
食事から得たエネルギーが余ると肝臓で中性脂肪に変換され、必要なときに分解されてエネルギーとして消費されます。
空腹時の血液検査で測定される中性脂肪の基準値は30〜149mg/dLとされています。
150mg/dL以上になると「高トリグリセリド血症」と診断され、脂質異常症の一つに該当します。
また、食後に測定した場合は175mg/dL以上が診断基準となります[1]。
中性脂肪の数値は食事の影響を受けやすく、食後4〜6時間でピークに達し、その後徐々に低下していきます。
健康診断では通常、前日の21時以降は食事を摂らず、空腹状態で採血を行うことで正確な数値を測定します。
健康診断の結果で基準値を超えている場合は、生活習慣の見直しを始めるサインと捉えましょう。
中性脂肪が高いと起こりうる病気(動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・脂肪肝)
中性脂肪が高い状態が続くと、血管の老化である動脈硬化が進行しやすくなります。
動脈硬化が進むと血液の流れが悪くなり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった命に関わる病気を引き起こすリスクが高まる可能性があるため注意が必要です。
この状態が続くと血液がドロドロになり、血管の内壁にプラーク(脂肪の塊)が蓄積して血管が狭くなります。
さらに、余った中性脂肪が肝臓に蓄積すると脂肪肝を招き、進行すると肝硬変や肝がんにつながる可能性もあります。
脂肪肝は自覚症状がほとんどないまま進行するため、定期的な健康診断で早期発見することが重要です。
中性脂肪とコレステロールの違い
中性脂肪とコレステロールはどちらも血液中の脂質ですが、その役割は異なります。
中性脂肪は主にエネルギー源として使われるのに対し、コレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料となる成分です。
中性脂肪は食事の影響を受けやすく、食後に数値が上昇しやすい特徴があります。
前日に脂っこい食事やアルコールを摂取すると、翌日の検査で数値が跳ね上がることも珍しくありません。
一方、コレステロールは体内で分解されにくく、数値の変動が比較的緩やかです。
コレステロールは食事からの摂取だけでなく、体内でも合成されるため、食事制限だけでは数値が下がりにくい傾向があります。
どちらも増えすぎると動脈硬化の原因となりますが、中性脂肪は生活習慣の改善によって比較的短期間で数値が下がりやすいとされています。
両方の数値が高い場合は、まずコレステロールの管理を優先しつつ、中性脂肪対策も並行して行うことが大切です。
中性脂肪が高くなる5つの原因
中性脂肪が高くなる原因は、主に日常の生活習慣にあります。
「脂っこいものを食べすぎているから」と思いがちですが、実は糖質の摂りすぎやアルコールの影響も大きく関係しています。
原因を正しく理解することで、自分に合った効果的な対策を立てることができます。
ここでは、中性脂肪が上がりやすくなる5つの原因を解説します。
糖質(炭水化物)の摂りすぎ
中性脂肪が高くなる最大の原因の一つが、糖質の過剰摂取です。
ご飯やパン、麺類などの炭水化物を摂りすぎると、血糖値が急上昇し、余った糖が肝臓で中性脂肪に変換されます。
糖質は体のエネルギー源として必要な栄養素ですが、消費しきれない分はすべて中性脂肪として蓄積されてしまいます。
特に注意したいのが、丼ものや麺類だけで済ませる食事です。
ラーメンとチャーハンのセット、うどんとおにぎりの組み合わせなど、炭水化物の重ね食べは中性脂肪を急上昇させる原因となります。
炭水化物中心の食事はエネルギー過剰になりやすく、消費しきれなかった分が中性脂肪として蓄積されてしまいます。
清涼飲料水や甘いお菓子に含まれる砂糖や果糖も、中性脂肪を増やす原因となります。
果糖は肝臓で直接中性脂肪に変換されやすい性質があり、フルーツジュースや甘い缶コーヒーの飲みすぎには注意が必要です。
糖質を完全にカットする必要はありませんが、食事全体のバランスを見直すことが改善への第一歩です。
アルコールの飲みすぎ
アルコールは中性脂肪を増やす大きな要因の一つです。
肝臓でアルコールを分解する際に脂肪酸が作られ、これが中性脂肪の原料となります。
アルコールを分解する過程で、肝臓は中性脂肪の合成を優先的に行うため、飲酒量が多いほど中性脂肪が増えやすくなります。
特にビールや日本酒、甘いカクテルなど糖質を含むお酒は中性脂肪を上げやすい傾向があります。
ビール中瓶1本(500ml)には約15gの糖質が含まれており、これだけでも中性脂肪を上昇させる要因となります。
さらに、お酒を飲むと食欲が増して揚げ物などのおつまみを食べすぎてしまい、カロリーオーバーにつながりやすくなります。
飲酒習慣がある方で中性脂肪が高い場合は、まず飲酒量の見直しから始めることをおすすめします。
休肝日を週に1〜2日設けるだけでも、数値の改善が期待できます。
禁酒を始めると2週間程度で中性脂肪の低下が見られ始め、1カ月後には大幅な改善が期待できるケースも多くあります。
脂質の摂りすぎ
脂質そのものの摂りすぎも、中性脂肪を増やす原因となります。
揚げ物や脂身の多い肉、バターやクリームを使った料理を頻繁に食べていると、摂取した脂質がそのまま中性脂肪として蓄積されやすくなります。
特に動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は、中性脂肪やLDLコレステロールを増やす作用があります。
外食やコンビニ弁当が多い方は、知らず知らずのうちに脂質を摂りすぎている可能性があります。
コンビニのから揚げ弁当には約30〜40gの脂質が含まれており、これは1日の目標量の半分以上に相当します。
肉類を食べる際は、脂身の少ない部位を選んだり、調理法を「揚げる」から「焼く・蒸す」に変えたりする工夫が効果的です。
鶏肉であればもも肉より胸肉やささみ、豚肉であればバラ肉よりヒレ肉を選ぶと脂質を抑えることができます。
脂質は体に必要な栄養素でもあるため、完全に避けるのではなく「質」と「量」を意識して摂ることが大切です。
運動不足
運動不足は、中性脂肪が高くなる大きな原因の一つです。
食事から摂取したエネルギーを消費しきれないと、余った分が中性脂肪として体内に蓄積されてしまいます。
運動をすると、筋肉に存在するリポ蛋白リパーゼという酵素が活性化し、血液中の中性脂肪を分解してエネルギーとして消費します。
逆に運動不足が続くと、この酵素の働きが低下し、中性脂肪が血液中に溜まりやすくなります。
デスクワーク中心の生活や車での移動が多い方は、意識的に体を動かす機会を作ることが重要です。
1日の目標歩数を達成していない人は、達成している人と比べて中性脂肪が異常値になる割合が高いというデータもあります。
厚生労働省は1日8,000〜10,000歩の歩行を推奨していますが、多くの方がこの目標に達していないのが現状です。
まずは日常生活の中で「階段を使う」「一駅分歩く」など、できることから始めてみましょう。
加齢やストレス
年齢を重ねると基礎代謝が低下し、若い頃と同じ食事量でも中性脂肪が増えやすくなります。
特に女性は閉経後にホルモンバランスが変化し、脂肪がつきやすくなる傾向があります。
エストロゲンという女性ホルモンには中性脂肪の代謝を促進する働きがあり、閉経によりこのホルモンが減少すると中性脂肪が上昇しやすくなります。
ストレスも中性脂肪を増やす要因の一つです。
過度なストレスを受けると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が増加します。
コルチゾールにはインスリンの働きを低下させる作用があり、血糖値のコントロールがうまくいかなくなると、結果として中性脂肪値にも悪影響を及ぼします。
ストレスから逃れるために過食や飲酒に走ってしまうケースも少なくありません。
年齢やストレスは避けられない部分もありますが、食事と運動の習慣を見直すことで改善は十分に可能です。
中性脂肪を下げる食事のポイント
中性脂肪を下げるためには、食生活の改善が最も重要です。
「何を食べるか」だけでなく「どのように食べるか」も意識することで、より効果的に数値の改善が期待できます。
中性脂肪は食事の影響を受けやすいため、食生活を見直すことで比較的早く効果が表れやすい特徴があります。
ここでは、今日から取り入れられる食事のポイントを解説します。
糖質・脂質を控えめにして腹八分目を心がける
中性脂肪を下げるための基本は、摂取エネルギーを適正に保つことです。
食べすぎによってエネルギーが余ると、その分が中性脂肪として体内に蓄積されてしまいます。
1日の適正エネルギー量は、デスクワーク中心の方で体重1kgあたり約25〜30kcalが目安とされています。
体重60kgの方であれば、1日1,500〜1,800kcal程度が適正範囲となります。
ご飯やパン、麺類の量を少し減らし、その分を野菜やたんぱく質で補うバランスの良い食事を心がけましょう。
ご飯1杯(150g)を100gに減らすだけでも、約80kcal、糖質約20gを減らすことができます。
腹八分目を意識し、ゆっくりよく噛んで食べることで満腹感を得やすくなります。
食事に20分以上かけることで、満腹中枢が刺激されて食べすぎを防ぐことができます。
無理な食事制限は続かないため、まずは「少し減らす」ことから始めてみてください。
青魚(EPA・DHA)を積極的に摂る
サバ、イワシ、サンマなどの青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)には、中性脂肪を下げる働きがあります。
また、EPAやDHAには血液をサラサラにする作用があり、動脈硬化の予防にも役立ちます。
1日の目安として、アジ1尾分やサバ1切れ程度(約100g)を摂ることが推奨されています。
青魚100gには約1,000〜2,000mgのEPA・DHAが含まれており、これは中性脂肪を下げるのに十分な量とされています。
EPAやDHAは加熱すると減少するため、刺身など生で食べるのが最も効率的です。
調理する場合は、煮魚にして煮汁ごと食べると栄養を逃しにくくなります。
焼き魚の場合は、流れ出た脂にEPA・DHAが含まれているため、ホイル焼きにすると栄養を逃さず摂取できます。
魚を毎日食べるのが難しい場合は、サバ缶やイワシ缶を活用するのも手軽でおすすめです。
缶詰は骨ごと食べられるためカルシウムも摂取でき、長期保存も可能なので常備しておくと便利です。
食物繊維が豊富な野菜・海藻・きのこを摂る
食物繊維には、腸内で糖質や脂質の吸収を抑える働きがあります。
特に水溶性食物繊維は、中性脂肪やコレステロールの排出を促す効果が期待できます【5】。
水溶性食物繊維は腸内でゲル状になり、余分な脂質や糖質を包み込んで体外に排出する作用があります。
水溶性食物繊維が豊富な食材には、海藻類(わかめ、もずく、めかぶ)、オクラ、モロヘイヤ、納豆、りんごなどがあります。
きのこ類も食物繊維が豊富で、特にシイタケに含まれるエリタデニンという成分は中性脂肪の生成を抑える働きがあるとされています。
えのきやしめじ、まいたけなども低カロリーで食物繊維が豊富なため、積極的に取り入れたい食材です。
野菜は1日350gを目安に、毎食「1皿分の野菜」を意識して摂りましょう。
生野菜だと量が多く感じますが、加熱するとかさが減って食べやすくなります。
味噌汁やスープに野菜をたっぷり入れると、手軽に摂取量を増やすことができます。
大豆製品で良質なたんぱく質を補う
大豆製品には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがある植物性たんぱく質が豊富に含まれています。
大豆に含まれるβ-コングリシニンという成分には、中性脂肪の合成を抑制し、分解を促進する作用があることが研究で明らかになっています。
豆腐、納豆、豆乳、味噌などは毎日の食事に取り入れやすく、継続しやすい食材です【5】。
動物性たんぱく質に偏りがちな方は、1日1品は大豆製品を摂るよう意識してみましょう。
納豆1パック、豆腐半丁程度を目安にすると無理なく続けられます。
納豆には食物繊維やビタミンK2も含まれており、腸内環境の改善や骨の健康維持にも役立ちます。
肉料理の代わりに豆腐ハンバーグや厚揚げのステーキなどを取り入れるのも効果的です。
大豆製品は低カロリーで満腹感も得やすいため、ダイエット中の方にもおすすめです。
甘い飲み物やお菓子を控える
清涼飲料水や甘い缶コーヒー、お菓子類は中性脂肪を増やす大きな原因となります。
砂糖や果糖ブドウ糖液糖を多く含む飲み物は、血糖値を急上昇させ、余った糖分が中性脂肪に変換されてしまいます。
500mlのペットボトル飲料には、角砂糖10〜15個分(約30〜50g)の糖分が含まれているものもあります。
果糖は肝臓で直接代謝されるため、中性脂肪に変換されやすい特徴があります。
ジュースや甘い飲み物を習慣的に飲んでいる方は、まず水やお茶に置き換えることから始めましょう。
どうしても甘いものが欲しいときは、砂糖不使用の飲料や果物を少量摂る程度に抑えることが大切です。
果物は食物繊維やビタミンを含むため、ジュースよりもそのまま食べる方が血糖値の上昇が緩やかになります。
間食を完全にやめる必要はありませんが、1日200kcal以内を目安にすると中性脂肪への影響を抑えられます。
飲み物を変えるだけでも、1日あたりの摂取カロリーを大幅に減らすことができます。
食べる順番と時間を工夫する
同じ食事内容でも、食べる順番を工夫することで中性脂肪への影響を抑えることができます。
食事の最初に野菜や海藻を食べる「ベジファースト」を実践すると、糖質や脂質の吸収が緩やかになります。
野菜に含まれる食物繊維が胃の中で膨らみ、その後に食べた糖質や脂質の吸収スピードを遅くする働きがあります。
食べる順番は「野菜・海藻→たんぱく質(肉・魚)→炭水化物(ご飯・パン)」の順がおすすめです。
この順番で食べることで、血糖値の急上昇を防ぎ、中性脂肪の合成を抑えることが期待できます。
食事の時間帯も中性脂肪に影響します。
夜遅い時間の食事は、エネルギーとして消費されにくく、中性脂肪として蓄積されやすくなります。
夕食はできるだけ21時までに済ませ、就寝の2〜3時間前には食べ終えるようにしましょう。
どうしても夕食が遅くなる場合は、夕方に軽食を摂り、帰宅後は消化の良い軽めの食事にすると良いでしょう。
中性脂肪を下げる運動のポイント
食事の改善と並んで重要なのが、運動習慣を身につけることです。
運動には中性脂肪を燃焼させる効果があり、継続することで数値の改善が期待できます。
運動によって筋肉が活性化すると、中性脂肪を分解する酵素の働きが高まり、血液中の中性脂肪が減少しやすくなります。
ここでは、中性脂肪対策に効果的な運動のポイントを解説します。
有酸素運動を週150分以上行う
中性脂肪を下げるのに最も効果的なのが、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動です。
有酸素運動を週150分以上続けると、中性脂肪が平均で約13〜15mg/dL程度下がることが報告されています。
有酸素運動を行うと、体内に蓄積された中性脂肪が分解され、エネルギーとして消費されます。
運動開始から20分程度経過すると、体脂肪がエネルギー源として使われ始めるため、20〜30分以上の継続が効果的です。
運動の強度は「息切れせずに隣の人と会話できる程度」が目安です。
心拍数でいうと、最大心拍数(220−年齢)の50〜70%程度が適切な運動強度とされています。
40歳の方であれば、心拍数90〜126程度を維持しながら運動するのが理想的です。
1日30分のウォーキングを週5日行う、または1日20分を毎日続けるなど、自分のライフスタイルに合わせて取り組みましょう。
まとまった時間が取れない場合は、10〜15分の運動を1日2〜3回に分けても効果が期待できます。
朝10分、昼休みに10分、夕方10分というように分割しても、合計時間が同じであれば同様の効果が得られます。
無理のない範囲で継続することが、中性脂肪を下げる最大のポイントです。
筋力トレーニングで基礎代謝を上げる
有酸素運動に加えて筋力トレーニングを行うと、より効果的に中性脂肪を減らすことができます。
筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、安静時でもエネルギーを消費しやすい体になります【6】。
筋肉1kgあたりの基礎代謝量は約13kcalとされており、筋肉量が増えるほど1日の消費カロリーが増加します。
筋肉には中性脂肪を分解する酵素(リポ蛋白リパーゼ)が多く存在するため、筋肉量を増やすことで中性脂肪の分解が促進されます。
特に大きな筋肉である太もも、お尻、背中の筋肉を鍛えると、効率よく基礎代謝を上げることができます。
スクワット、腕立て伏せ、腹筋運動などを週2〜3回行うのが目安です。
スクワットは下半身の大きな筋肉を効率よく鍛えられるため、中性脂肪対策に特におすすめの種目です。
1セット10〜15回を2〜3セット行い、セット間に1分程度の休憩を挟むと効果的です。
運動に慣れていない方は、自重でできるスロートレーニングから始めるとよいでしょう。
ゆっくりとした動作で行うスロートレーニングは、関節への負担が少なく、運動初心者でも取り組みやすい方法です。
有酸素運動と筋トレを組み合わせることで、脂肪燃焼効果がさらに高まります。
日常生活で活動量を増やす工夫
忙しくて運動の時間が取れない方は、日常生活の中で活動量を増やす工夫をしましょう。
エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩く、座っている時間を減らしてこまめに立ち上がるなど、小さな積み重ねが大切です。
階段の上り下りは、平地を歩くよりも約3倍のエネルギーを消費するとされています。
毎日5分間階段を使うだけでも、1カ月で約500〜600kcalのエネルギー消費につながります。
デスクワーク中心の方は、1時間に1回は立ち上がって軽くストレッチをするだけでも効果があります。
長時間座り続けると、中性脂肪を分解する酵素の働きが低下することが研究で示されています。
30分〜1時間ごとに立ち上がって2〜3分歩くだけでも、この酵素の働きを維持することができます。
通勤時に早歩きを意識する、買い物は車を使わず歩いて行くなど、できることから始めてみてください。
早歩きは通常の歩行と比べて約1.5倍のエネルギーを消費し、中性脂肪の燃焼効果も高まります。
特別な運動をしなくても、日々の活動量を増やすことで中性脂肪の改善につなげることができます。
中性脂肪を下げるための生活習慣
食事や運動に加えて、日常の生活習慣を見直すことも中性脂肪対策には欠かせません。
飲酒や睡眠、喫煙など、普段の習慣が中性脂肪の数値に大きく影響しています。
生活習慣の改善は、中性脂肪だけでなく全身の健康維持にもつながります。
ここでは、見直したい生活習慣のポイントを解説します。
アルコールは適量を守り休肝日を設ける
アルコールは中性脂肪を増やす大きな原因となるため、適量を守ることが重要です。
1日の適量は、ビールなら中瓶1本(500ml)、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度が目安とされています。
これは純アルコール量に換算すると約20g程度であり、厚生労働省が推奨する「節度ある適度な飲酒」の基準となっています。
糖質を多く含むビールや日本酒、甘いカクテルは特に中性脂肪を上げやすいため、飲むなら焼酎やウイスキーなどの蒸留酒を選ぶとよいでしょう。
蒸留酒は糖質をほとんど含まないため、同じアルコール量でも中性脂肪への影響が比較的小さいとされています。
おつまみも揚げ物を避け、枝豆や冷奴、刺身など低カロリーのものを選ぶことが大切です。
枝豆は食物繊維とたんぱく質が豊富で、アルコールの分解を助けるビタミンB群も含まれているため、おつまみとして最適です。
週に1〜2日は休肝日を設けて、肝臓を休ませる習慣をつけましょう。
休肝日を設けることで、肝臓の機能が回復し、中性脂肪の代謝も改善されやすくなります。
夜遅い食事・夜食を避ける
夜間は体をあまり動かさないため、エネルギー消費量が少なくなります。
夜遅い時間に食事を摂ると、消費しきれなかったエネルギーが中性脂肪として蓄積されやすくなります。
体内時計を調節する「BMAL1(ビーマルワン)」というたんぱく質は、夜22時〜深夜2時に最も多く分泌されます。
このたんぱく質には脂肪を蓄積させる働きがあり、この時間帯に食事を摂ると中性脂肪が増えやすくなります。
夕食はできるだけ21時までに済ませ、就寝の2〜3時間前には食べ終えるようにしましょう。
仕事の都合で夕食が遅くなりがちな方は、夕方に軽食を摂り、帰宅後は消化の良い軽めの食事にするなどの工夫が効果的です。
夕方におにぎり1個やサンドイッチを食べておき、帰宅後は野菜スープや豆腐など軽いものにすると、総カロリーを抑えながら空腹感も満たせます。
寝る前の夜食は中性脂肪を増やす大きな原因となるため、できる限り控えることをおすすめします。
十分な睡眠を確保する
睡眠不足は中性脂肪を増やす要因の一つです。
睡眠時間が短いとホルモンバランスが乱れ、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減少し、食欲を増進するホルモン(グレリン)が増加します。
その結果、食べすぎにつながりやすくなり、中性脂肪の上昇を招いてしまいます。
また、睡眠不足は成長ホルモンの分泌を低下させ、脂肪の分解を妨げる原因にもなります。
1日7〜8時間程度の睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを保つことが大切です。
就寝前のスマートフォンやパソコンの使用は、ブルーライトが睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑制するため、睡眠の質を下げる原因となります。
寝る1時間前からは画面を見ないようにし、リラックスできる環境を整えましょう。
質の良い睡眠をとることで、中性脂肪対策だけでなく全身の健康維持にもつながります。
禁煙に取り組む
喫煙は中性脂肪を増やし、善玉(HDL)コレステロールを減らすことが分かっています。
タバコに含まれるニコチンは、肝臓での中性脂肪の合成を促進し、分解を抑制する作用があります。
喫煙者は非喫煙者と比べて、中性脂肪が約10〜20%高くなる傾向があるとされています。
また、タバコに含まれる有害物質が血管を傷つけ、動脈硬化を促進するリスクも高まります【2】。
禁煙を始めると、比較的早い段階で血圧や脂質の数値に改善が見られることがあります。
禁煙後2〜3カ月で善玉コレステロールが増加し始め、中性脂肪も徐々に低下していくケースが多いとされています。
禁煙が難しい場合は、禁煙外来を利用してお薬の力を借りる方法もあります。
禁煙補助薬を使用すると、自力で禁煙する場合と比べて成功率が約2〜3倍高くなるというデータがあります。
中性脂肪が高い方は、食事や運動の改善と合わせて禁煙にも取り組むことをおすすめします。
中性脂肪に関するQ&A
Q1:中性脂肪が高いとどうなりますか?
中性脂肪が高い状態が続くと、動脈硬化が進行しやすくなります。
動脈硬化が進むと、心筋梗塞や脳梗塞、狭心症といった命に関わる病気のリスクが高まります。
また、脂肪肝や急性膵炎の原因にもなるため、早めの対策が重要です。
Q2:中性脂肪を下げる食べ物は何ですか?
サバ、イワシ、サンマなどの青魚に含まれるEPA・DHAは、中性脂肪を下げる効果が期待できます。
そのほか、食物繊維が豊富な野菜・海藻・きのこ類、大豆製品なども積極的に摂りたい食材です。
一方、糖質の多い食品やアルコール、揚げ物は控えめにすることが大切です。
Q3:中性脂肪とコレステロールの違いは何ですか?
中性脂肪は主に体のエネルギー源として使われる脂質で、食事の影響を受けやすい特徴があります。
一方、コレステロールは細胞膜やホルモンの材料となる脂質で、体内で分解されにくい性質を持っています。
どちらも増えすぎると動脈硬化の原因となりますが、対策の優先度や改善のしやすさが異なります。
Q4:中性脂肪を下げるのに効果的な運動は何ですか?
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動が中性脂肪を下げるのに最も効果的です。
週150分以上の有酸素運動を続けると、中性脂肪が平均で約13〜15mg/dL程度下がることが報告されています。
筋力トレーニングを併用すると、基礎代謝が上がり、より効果的に中性脂肪を減らすことができます。
Q5:中性脂肪が高いのですが、お酒は飲んでも大丈夫ですか?
アルコールは中性脂肪を増やす大きな原因となるため、できれば控えることが望ましいです。
飲む場合は、ビール中瓶1本(500ml)、日本酒1合程度を上限とし、週に1〜2日は休肝日を設けましょう。
糖質の少ない焼酎やウイスキーを選び、揚げ物などの高カロリーなおつまみを避けることで、中性脂肪への影響を抑えることができます。
まとめ
中性脂肪は体のエネルギー源として必要な物質ですが、増えすぎると動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な病気を招くリスクがあります。
空腹時の血液検査で150mg/dL以上になると脂質異常症と診断され、生活習慣の見直しが必要です。
中性脂肪が高くなる主な原因は、糖質の摂りすぎ・アルコールの飲みすぎ・脂質の摂りすぎ・運動不足といった生活習慣にあります。
改善のためには、青魚や食物繊維を意識した食事、週150分以上の有酸素運動、適度な飲酒と十分な睡眠が効果的です。
食べる順番や食事の時間帯を工夫することで、同じ食事内容でも中性脂肪への影響を抑えることができます。
中性脂肪はコレステロールに比べて改善しやすく、3カ月程度で数値の変化が期待できます。
生活習慣を見直しても改善しない場合は、遺伝的要因や他の病気が隠れている可能性があるため、医療機関を受診して原因を調べることが大切です。
まずはできることから少しずつ取り組み、健康的な体づくりを目指しましょう。
