“睡眠改善薬”と”睡眠薬”の違いは?効果と副作用について医師が解説します。

夜眠れない時に、睡眠薬に頼りたいと考える方もいるのではないでしょうか。ですが、睡眠薬を使ったことのない方は睡眠薬を使うことが不安と考えるかもしれません。

ここでは、睡眠薬とはどのようなものなのか、薬局で買える睡眠改善薬と処方薬である睡眠薬(睡眠導入剤)の違いについてご紹介します。

不眠症かもしれない。睡眠薬を飲むと効果はあるの?

最近夜なかなか眠れないという方の中には自分は不眠症ではないかと悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。不眠症は日本人の国民病ともいわれ、5人に1人が睡眠に対して何かしらの悩みを持っているほか、60歳以上となると約3人に1人が不眠症に悩まされているといわれています。まずは、不眠症とはどういった病気なのかその定義についてご説明します。

不眠症とは、「入眠障害・熟眠困難・中途覚醒などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する状態」といわれています。

  • 入眠障害:なかなか眠れないこと
  • 熟眠困難:睡眠時間は充分であるものの、本人は充分に寝たという満足感がないこと
  • 中途覚醒:眠りが浅くて途中何度も目を覚ますこと

不眠という状態は実は誰にでも起こりうるものですが、多くの場合は数日あるいは数週間で改善し、また眠れるようになります。ですが不眠症の場合は、長期間眠れずに、それに伴って、さまざまな身体症状を引き起こしてしまうのです。

不眠症の原因にはさまざまなものがあります。例えばストレスや生活リズムの乱れ、環境、不眠を誘発する薬物の使用やコーヒーなどの刺激物などです。それらの因子を改善することができれば睡眠薬を使わなくても不眠を改善することができるかもしれません。ですが、こころの病気や身体の病気については、睡眠薬を服用しても不眠症を改善することができない可能性があります。このため、医療機関を受診し、専門医からの診察を受けることが必要です。

睡眠薬にはどんな種類があるの?睡眠薬と睡眠導入剤、睡眠改善薬は違うもの?

睡眠薬は、睡眠薬(睡眠導入剤)と睡眠改善薬(OTC)の2種類に分類されます。睡眠改善薬は市販品として販売されており薬局でも購入できる医薬品です。睡眠改善薬とは、「精神疾患等病的な原因のない人が経験する一過性の不眠」に対して使用するものとされ、ドリエル等のお薬で、抗ヒスタミン薬の副作用である眠気を活用したお薬とされています。

対して睡眠薬(睡眠導入剤)は市販されておらず、病院で処方してもらうことが必要となります。睡眠薬には超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型のお薬があります。

超短時間作用型

超短時間作用型とは⾮ベンゾジアゼピン系のお薬で、言葉の通りお薬の効果がある時間が非常に短いため睡眠導入のために用いられるお薬です。マイスリーなどがこれにあたります。

短時間作用型・中間作用型・長時間作用型

短時間作用型、中間作用型、長時間作用型のお薬はすべてベンゾジアゼピン系のお薬で、名前の通り、作用する時間がどんどん長くなっていきます。効く時間が長いということはお薬の作用が強いということも特徴です。短時間作用型はデパス、中間作用型はサイレースなどがよく耳にする睡眠剤でしょう。

どんな副作用があるの?毎日飲むのは避けるべき?

睡眠薬の副作用は眠気、ふらつき、転倒、精神運動機能の低下、前⾏性健忘(睡眠薬服⽤後の出来事を覚えていない)、頭痛、消化器症状などがあります


睡眠薬は単剤で飲むことが一般的なのですが、複数の睡眠障害を抱えている方は他の種類の睡眠薬を一緒に飲むこともあります。このように複数の種類のお薬を一緒に内服することになれば副作用はさらに強く出てしまうことが考えられます。

また、副作用による事故が多いことも現状です。睡眠薬の成分が残ったまま運転をして事故を起こすなどということもあり、注意が必要です。

前述したように医師が処方している場合は医師の処方した用法や用量を守って内服することができれば毎日飲んでも大丈夫であるといわれています。しかし、医師の用法や用量を守らずに自己判断で服用することや、市販のお薬を連日服用するということは避けるようにしましょう。

薬以外でできる対策は?

睡眠薬に頼りたくないという方は、できるだけ、日々の生活習慣を改めていただくことが大事です。以下に、よくやりがちなNGな行為と、医学的に推奨される行為をあげます。

・よくやりがちなNGな行為①: 寝る前にお酒を飲む
入眠を促しますが、熟眠を妨げ、中途覚醒を起こすことがわかっています。できるだけ寝る前にアルコールを飲む回数を減らしましょう

・よくやりがちなNGな行為②: 休みの日に遅くまで寝る
睡眠のリズムを狂わせ、睡眠障害を悪化させる可能性があります。できるだけ入眠時間・起床時間を一定にすることをお勧め致します

・よくやりがちなNGな行為③: よく寝れるように早くベッドに入る
早くベッドに入ることで、入眠まで時間がかかり、逆に眠れないというプレッシャーがかかることがあります。あくまで意識せずに、適切な時間にベッドに入りましょう

・よくやりがちなNGな行為④: 昼寝を多くする
昼寝を多くとりすぎることは、睡眠のリズムを狂わせ、睡眠障害を悪化させる可能性があります。できるだけ睡眠のリズムを一定にしましょう

・医学的に推奨される行為①: ゆっくりお風呂に入る
ゆっくりお風呂に入ることは、体温を高くし、リラックスすることで副交感神経を優位にし、入眠を促す作用があります

・医学的に推奨される行為②: 適度な運動をする
適度な運動をすることは、体に適切な疲労感を生み、入眠を促す作用があります。

・医学的に推奨される行為③:  カフェインを控える
カフェインは交感神経を亢進させる作用があり、入眠を阻害する作用があります。特に寝る前にはカフェイン(コーヒーや緑茶など)を避けるようにしてください

・医学的に推奨される行為④: 寝る前のスマホを控える
スマホ等の刺激による光刺激は脳を覚醒し、入眠を阻害する作用があります。寝る前にはスマホの使用を控えるようにしましょう

公開日:5月21日