痩せたら血圧は下がる?
体重と血圧には密接な関係があり、減量によって血圧が改善するケースは多く報告されています[1]。
ただし、効果の現れ方には個人差があり、他の生活習慣も影響します。
ここでは、痩せると血圧が下がる理由についてお伝えします。
体重を減らすと血圧が下がる可能性がある
厚生労働省の「e-ヘルスネット」によると、肥満は高血圧の主要なリスク要因の一つとされており、体重が増えると血圧も上がりやすくなる傾向があることが示されています[1]。
これは体重が増えることで心臓や血管に負担がかかり、血液を全身に送り出すためにより強い圧力が必要になるためです。
逆に、体重を減らすことで心臓や血管への負担が軽減され、血圧が改善するケースは数多く報告されています[2]。
もちろん効果には個人差がありますが、血圧が気になる方にとって減量は有効な選択肢の一つといえるでしょう。
生活習慣の改善として、まずは適正体重を目指すことから始めてみてください。
なぜ痩せると血圧が下がるのか
痩せると血圧が下がる理由は、心臓や血管への負担が軽減されることにあります。
体重が増えると、体の隅々まで血液を届けるために心臓はより強く、より多くの血液を送り出す必要が出てきます[1]。
心臓が強く働けば働くほど、血管にかかる圧力も高くなり、結果として血圧が上昇しやすくなります。
体重を減らすことで全身に送る血液量が適正化され、心臓の負担が軽くなるため、血管にかかる圧力も自然と下がっていきます。
また、体脂肪が減ることで血管が拡張しやすくなることも血圧低下に関係しているとされています[3]。
このように、減量は心臓と血管の両面から血圧改善に働きかけるため、高血圧対策として効果的なのです。
内臓脂肪と血圧の関係
特に内臓脂肪が多い方は、減量による血圧改善効果を実感しやすい傾向があります。
内臓脂肪とは、お腹の中の内臓周りについた脂肪のことで、見た目には分かりにくいものの、健康に大きな影響を与えることが知られています[3]。
厚生労働省の情報によると、内臓脂肪型肥満の方は高血圧になりやすいことが指摘されています[3]。
内臓脂肪からは、血圧を上げる働きを持つ物質や、インスリンの働きを妨げる物質などが分泌されることがあります。
これらの物質が血管を収縮させたり、体内に水分を溜め込みやすくしたりすることで、血圧が上がりやすい状態を作り出してしまいます。
お腹周りが気になる方は、体重だけでなくウエストサイズにも注目しながら減量に取り組むことをおすすめします。
何kg痩せたら血圧は下がる?
減量による血圧改善効果には個人差がありますが、ある程度の目安は示されています。
無理な減量は体に負担がかかるため、適切な目標設定が大切です。ここでは、血圧を下げるための減量目標についてお伝えします。
少しの減量でも血圧改善効果が期待できる
大幅に体重を落とさなくても、数kg程度の減量で血圧に良い影響が現れるケースは少なくありません。
血圧が少し下がるだけでも、脳卒中や心臓病のリスクが低下するとされており、小さな変化でも健康面では大きな意味があります。
「たくさん痩せないと意味がない」と考えるのではなく、少しずつ成果を積み上げていくことが大切です。
まずは無理のない範囲で減量を始め、血圧の変化を確認しながら継続していきましょう。
まずは現体重の3〜5%の減量を目標に
血圧改善を目指すなら、まずは現体重の3〜5%の減量を目標にするのがおすすめです。
急激な減量は体に大きな負担がかかるだけでなく、リバウンドのリスクも高まり、結果的に長続きしないことが多いためです。
体重70kgの方であれば約2〜3.5kg、体重80kgの方であれば約2.4〜4kgが最初の目標となります。
この程度の減量であれば、極端な食事制限をしなくても、食事内容の見直しや適度な運動を取り入れることで十分に達成可能な範囲です。
理想的なペースとしては、1ヶ月に0.5〜1kg程度の減量を目安にすると、体への負担も少なく、健康的に痩せることができます。
焦らずに長期的な視点で取り組むことが、血圧改善と体重維持の両方を叶える鍵となります。
減量だけで血圧が正常値になるとは限らない
減量だけで血圧が正常値になるとは限らない点にも注意が必要です。
高血圧の原因は肥満だけでなく、遺伝的な要因、塩分の摂りすぎ、ストレス、運動不足、喫煙、過度な飲酒など、複数の要因が複雑に絡み合っています[1]。
体重を減らしても、これらの他の要因が改善されていなければ、血圧が思うように下がらないケースも少なくありません。
減量はあくまで血圧改善のための有効な手段の一つであり、それだけで全てが解決するわけではないことを理解しておくことが大切です。
減量と同時に、減塩や適度な運動、ストレス管理など、他の生活習慣の見直しも並行して行うことで、より効果的な血圧改善が期待できます[4]。
それでも血圧が改善しない場合は、お薬による治療が必要になることもあるため、医師に相談しながら対策を進めていきましょう。
血圧を下げるための効果的な減量方法
血圧を下げることを目的とした減量では、単に体重を減らすだけでなく、血圧に良い影響を与える生活習慣を取り入れることが重要です。
食事と運動の両面からアプローチすることで、より効果的に血圧改善を目指すことができます。
ここでは、血圧改善に効果的な減量方法をお伝えします。
減塩を意識した食事を心がける
血圧を下げるためには、減塩を意識した食事を心がけることが非常に効果的です。
塩分の摂りすぎは血圧を上げる大きな原因の一つとされており、塩分を多く摂ると体内に水分が溜まりやすくなり、血液量が増えることで血圧が上昇します[4]。
具体的に成人男性で1日7.5g未満、成人女性で1日6.5g未満の塩分摂取が目標とされています[5]。
高血圧の予防と治療のためには、さらに1日6g未満を目指すことも推奨されています[4]。
外食や加工食品、インスタント食品には塩分が多く含まれていることが多いため、なるべく自炊を心がけ、調味料の使用量を意識的に減らすことが効果的です。
減量と減塩を同時に行うことで、血圧改善効果をより高めることができます。
有酸素運動を習慣にする
有酸素運動を習慣にすることで、減量と血圧改善の両方に効果が期待できます。適度な運動は高血圧の予防・改善に効果があるとされています。
ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、脂肪を燃焼させるだけでなく、血管の機能を改善する働きもあります。
運動を継続することで血管が柔軟になり、血液の流れがスムーズになるため、血圧が下がりやすい体質へと変化していきます。
運動の目安としては、1日30分程度のウォーキングを週に数回行うことから始めるのがおすすめです。
激しい運動よりも、長く継続できる運動を選ぶことが、血圧改善と減量成功の両方につながります。
野菜や果物を積極的に摂取する
野菜や果物を積極的に摂取することも、血圧改善に効果的な方法の一つです。
野菜や果物に豊富に含まれているカリウムには、体内の余分な塩分(ナトリウム)を尿と一緒に排出する働きがあります[4]。
塩分が排出されることで体内の水分量が適正化され、血液量が減少するため、血圧が下がりやすくなります。
カリウムを多く含む食品の摂取が血圧改善に効果的であることが示されています[4]。
特にほうれん草、小松菜、バナナ、アボカド、トマト、キウイなどはカリウムを多く含む食材として知られています。
ただし、腎臓に持病がある方はカリウムの摂取量に制限が必要な場合があるため、心配な方は医師に相談してから取り入れるようにしてください。
痩せても血圧が下がらない場合の原因
「痩せたのに血圧が下がらない」という方もいらっしゃるかもしれません。
減量しても血圧が改善しない場合は、他の原因が考えられます。原因を把握することで、適切な対策を取ることができます。
ここでは、痩せても血圧が下がらない場合の原因についてお伝えします。
塩分の摂取量が多いままになっている
痩せても塩分の摂取量が多いままだと、血圧は下がりにくい傾向があります。
塩分には体内に水分を溜め込む性質があり、塩分を多く摂取すると血液量が増加して血圧が上がりやすくなります[4]。
体重は減っても、外食中心の食生活を続けていたり、加工食品やインスタント食品を頻繁に食べていたりすると、知らず知らずのうちに塩分を摂りすぎている可能性があります。
減量の効果を実感するためには、体重を減らすことと同時に、塩分摂取量を見直すことが非常に重要です。
調味料を減らす、汁物は具だけ食べてスープを残す、加工食品の栄養成分表示で塩分量をチェックするなど、日常の中で塩分を減らす工夫を取り入れてみてください。
塩分を控える習慣を身につけることで、減量の効果を最大限に活かすことができるでしょう。
遺伝的な要因が関係している可能性がある
高血圧には遺伝的な要因が関係している場合があり、両親や祖父母など、血縁者に高血圧の方がいると、自身も高血圧になりやすい傾向があります。
遺伝的に血圧が上がりやすい体質を持っている方は、生活習慣を改善しても血圧が十分に下がらないケースがあるため注意しましょう。
家族に高血圧の方がいる場合は、若いうちから血圧を意識した生活習慣を心がけることが予防につながります。
他の病気が原因で血圧が高くなっている場合も
他の病気が原因で血圧が高くなっている場合もあり、これを「二次性高血圧」と呼びます。
二次性高血圧の原因としては、腎臓の病気、副腎のホルモン異常、甲状腺の病気、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます[1]。
これらの病気が原因で血圧が上がっている場合は、いくら減量や生活習慣の改善を行っても、根本的な原因が解決されない限り血圧は下がりにくい状態が続きます。
減量や減塩、運動などを継続しているにもかかわらず血圧が改善しない場合は、一度医療機関で詳しい検査を受けてみることをおすすめします。
検査によって血圧が高い原因を特定できれば、それに合った適切な治療を受けることができます。
原因に対する治療を行うことで、血圧のコントロールがしやすくなるケースも多いため、気になる方は早めに医師に相談してみてください。
血圧が気になる方が減量する際の注意点
血圧が高めの方が減量を始める際には、いくつかの注意点があります。無理な減量は逆効果になることもあるため、正しい方法で取り組むことが大切です。
安全に減量を進めるためのポイントを押さえておきましょう。
ここでは、血圧が気になる方が減量する際の注意点をお伝えします。
急激な減量は避ける
血圧が気になる方は、急激な減量は避けるようにしましょう。
短期間で大幅に体重を落とそうとすると、体に大きな負担がかかり、血圧が不安定になることがあります[2]。
極端な食事制限は栄養不足を招き、めまいや立ちくらみ、倦怠感などの症状を引き起こす可能性もあります。
また、急激に痩せた後はリバウンドしやすく、体重が元に戻るどころか以前より増えてしまうケースも少なくありません。
1ヶ月に0.5〜1kg程度のペースを目安にすると、体調を崩すことなく継続しやすくなります。
急いで結果を求めるよりも、長期的に続けられる方法を選ぶことが、血圧改善と体重維持の両方を実現する近道です。
極端な食事制限は逆効果になることも
極端な食事制限は、血圧改善には逆効果になることがあります。
食事量を極端に減らすと、体に必要な栄養素が不足し、体調を崩したり、代謝が低下してかえって痩せにくくなったりすることがあります[2]。
特にカリウムやマグネシウム、カルシウムなど、血圧のコントロールに関わる栄養素が不足すると、血圧が下がりにくくなる可能性があります[4]。
「食べない」減量法ではなく、「何をどう食べるか」を意識した減量を心がけることが大切です。
バランスの良い食事を摂りながら、全体的な摂取カロリーを適度に減らしていくアプローチが、健康的な減量と血圧改善の両方につながります。
食事内容を見直す際には、野菜や果物、魚、大豆製品などを積極的に取り入れ、加工食品や脂っこい食事を控えめにすることを意識してみてください。
定期的に血圧を測定して変化を確認する
減量中は定期的に血圧を測定して、変化を確認することが大切です。
血圧の変化を自分で把握することで、減量の効果を実感しやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。
測定のタイミングとしては、朝起きてトイレを済ませた後と、夜寝る前の1日2回、毎日同じ条件で測定するのが理想的です[1]。
測定結果はノートやアプリに記録しておくと、血圧の推移が分かりやすくなり、医師に相談する際にも役立ちます。
血圧が順調に下がっていれば減量が効果を発揮している証拠ですし、なかなか下がらない場合は他の原因を探るきっかけにもなります。
血圧が大きく変動する場合や、減量を続けても改善が見られない場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。
よくある質問
Q:何kg痩せたら血圧は下がりますか?
A:減量による血圧改善効果には個人差がありますが、少しの減量でも効果が期待できるとされています。
まずは現体重の3〜5%の減量を目標に、無理のないペースで取り組むのがおすすめです。
効果には個人差があるため、焦らず継続しながら変化を確認していくことが大切です。
Q:痩せても血圧が下がらないのはなぜですか?
A:痩せても血圧が下がらない場合、塩分の摂りすぎや遺伝的な要因、他の病気が原因になっている可能性があります。
減量と同時に減塩を意識することも重要です。
生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合は、一度医師に相談して原因を調べてもらうことをおすすめします。
Q:血圧を下げるにはどんな運動がおすすめですか?
A:ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動がおすすめです[1]。
1日30分程度、週に数回を目安に続けると効果が期待できます。
激しい運動よりも、無理なく長く継続できる運動を選ぶことが大切です。
Q:減量中に血圧のお薬を飲んでいても大丈夫ですか?
A:血圧のお薬を服用中の方でも、減量を行うことは可能です。
ただし、減量によって血圧が下がりすぎる場合があるため、定期的に血圧を測定して変化を確認してください。
お薬の調整が必要になることもあるため、自己判断で服用をやめず、医師に相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
体重を減らすことで、血圧が下がる可能性は十分にあります。
厚生労働省の情報でも、肥満は高血圧の主要なリスク要因の一つであり、減量によって血圧が改善することが示されています。
まずは現体重の3〜5%の減量を目標に、1ヶ月0.5〜1kg程度の無理のないペースで始めてみましょう。
減量と同時に、減塩や有酸素運動、野菜や果物の摂取を意識することで、より高い効果が期待できます[4]。
ただし、減量だけで血圧が正常値になるとは限らないため、他の生活習慣の見直しも併せて行うことが大切です。
痩せても血圧が下がらない場合は、塩分の摂りすぎや遺伝的要因、他の病気が原因となっている可能性があるため、医師に相談してみてください。
定期的に血圧を測定しながら、健康的な方法で減量を続けていきましょう。
