マンジャロとピルは併用できる?避妊効果への影響と安全な使い方を解説

「マンジャロを始めたいけど、ピルと一緒に使っても大丈夫?」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか?
ダイエットや糖尿病治療でマンジャロを検討している方の中には、低用量ピルを日常的に服用している方も少なくありません。
結論から言うと、マンジャロとピルの併用は可能ですが、日本イーライリリー「マンジャロ皮下注アテオス添付文書」では「併用注意」に指定されています[1]。
マンジャロ開始当初に、お薬の作用によってピルの血中濃度が下がり、避妊効果が弱まる可能性があるためです。
この記事では、併用時に注意が必要な理由や具体的な対策、アフターピル・中用量ピルとの併用についても詳しく解説します。

マンジャロとピル(低用量ピル)は併用できる?

前述の通り、添付文書には『併用注意』と記載されています。具体的にどのようなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。

マンジャロとピルの併用は可能ですが、日本イーライリリー「マンジャロ皮下注アテオス添付文書」では、「併用注意」に指定されているので詳しく見ていきましょう[1]

これは、マンジャロの作用によってピルの血中濃度が下がり、避妊効果が弱まる可能性があるためです。

特にマンジャロの使用開始直後や増量直後は影響を受けやすいとされています。

添付文書では「併用注意」と明確に記載されている

併用が完全に禁止されているわけではありませんが、一緒に使う場合は注意が必要という意味です。

添付文書によると、マンジャロと経口避妊薬を併用した場合、ピルの血中濃度を示す指標(最高血中濃度やAUC)が低下したというデータがあります[1]

血中濃度が下がると、ピル本来の効果が十分に発揮されない可能性が出てきます。

医師や薬剤師に相談したうえで、適切な対策を取りながら併用することが大切です。

ピルの効果が弱まる可能性がある理由

マンジャロには「胃内容排出遅延作用」と呼ばれる働きがあります[1]

これは胃の中にある食べ物や飲み物、お薬などが腸へ送られる速度を遅くする作用です。

ピルは口から飲んで腸で吸収されるお薬のため、マンジャロの作用により胃から腸へのお薬の移動が遅くなることでピルの吸収にも影響が出ると考えられます。

経口避妊薬の最高血中濃度や到達時間に変化が見られたとも報告されており[2]、一時的に有効濃度を下回る時間帯ができ避妊効果が弱まる可能性があります。

特に注意が必要なタイミング

マンジャロの使用開始直後と用量の増量直後が、特にピルへの影響が出やすい時期とされています。

マンジャロは2.5mgから開始し、4週間ごとに段階的に増量していくお薬です。

増量のたびに胃内容排出遅延作用の強さが変わるため、そのつどピルの吸収にも影響が及ぶ可能性があります。

一般的に、同じ用量を4週間以上続けると体が慣れてきて影響が安定してくるとされています。

マンジャロの使用開始後4週間や用量を増量した直後4週間の、安定するまでの期間は、他の避妊方法を併用するなどの対策が推奨されます。

マンジャロがピルの効果に影響する仕組み

マンジャロがピルの効果に影響を与える仕組みを理解しておくと、なぜ注意が必要なのかがより明確になります。

ここでは胃内容排出遅延作用の詳しい内容と、他のGLP-1製剤との違いについて解説します。

仕組みを知ることで、適切な対策を取りやすくなるでしょう。

マンジャロの「胃内容排出遅延作用」とは

胃内容排出遅延作用とは、胃の内容物が小腸へ移動する速度を遅くする働きのことです。

マンジャロはGIP/GLP-1受容体作動薬に分類され、この作用によって食後の血糖値上昇を緩やかにします。

また、食べ物が胃に長くとどまることで満腹感が持続し、食欲抑制にもつながります。

ダイエット目的では有益な作用ですが、口から飲むタイプのお薬には影響を及ぼす場合があります。

ピルのような経口薬は腸で吸収されるため、胃から腸への移動が遅れると吸収のタイミングや量が変わってしまうのです。

ピルの血中濃度が下がると何が起きるか

ピルの血中濃度が下がると、避妊に必要なホルモン量が体内で維持できなくなる可能性があります。

低用量ピルは、一定のホルモン濃度を保つことで排卵を抑制し、避妊効果を発揮する仕組みです。

血中濃度が低下すると、排卵抑制が不十分になったり、子宮内膜の状態が変化したりすることがあります。

その結果、避妊効果が低下する可能性があると考えられています。

マンジャロとピルを併用する際の注意点

マンジャロとピルを併用する場合、いくつかの注意点を守ることで安心して使用することがですます

ここでは、併用時に気をつけるべき点を3つご紹介します。

マンジャロ開始から1ヶ月間、マンジャロ増量後1ヶ月間は他の避妊方法も併用する

マンジャロの使用を始めてから最初の1ヶ月間は胃排出遅延作用が最も強く出る可能性がある時期であり、また身体がそれに慣れていない時期のため、コンドームなど他の避妊方法を併用することが推奨されます。

この期間はマンジャロの作用や体への影響が安定しておらず、ピルの吸収に影響が出やすいためです。

増量した場合も同様に、新しい用量に体が慣れるまで4週間程度は注意が必要とされています。

コンドームなどを併用することで、万が一ピルの効果が弱まっていても避妊効果を補えます。

安心して併用するための大切な対策です。

吐き気・嘔吐・下痢があるときは要注意

マンジャロの使用中に吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状が出た場合は、特に注意が必要です。

嘔吐や下痢が起きると、服用したピルが十分に吸収されないまま体外に出てしまう可能性があります。

マンジャロでは消化器症状が比較的起こりやすく、特に使用開始時や増量時に多いとされています[3]

ピルを服用してから2〜3時間以内に嘔吐した場合は、追加でピルを服用するか医師に相談してください。

下痢が続く場合も同様に、ピルの効果が十分でない可能性を考慮する必要があります。

アフターピル・中用量ピルとの併用はどうなる?

低用量ピル以外にも、アフターピル(緊急避妊薬)や中用量ピルを使用している方もいるでしょう。

これらのお薬とマンジャロとの併用についても気になる点だと思います。それぞれの特徴と注意点を確認していきましょう。

アフターピル(緊急避妊薬)との併用

アフターピルは、避妊に失敗した際に緊急的に使用するお薬です。

マンジャロの添付文書では、アフターピルとの併用について特別な注意喚起はされていません[1]

ただし、アフターピルも口から飲むタイプのお薬であるため、理論的には胃内容排出遅延作用の影響を受ける可能性はあります。

アフターピルは服用のタイミングが重要で、72時間以内(製品によっては120時間以内)の服用が推奨されています。

マンジャロ使用中にアフターピルが必要になった場合は、受診の際に、必ずマンジャロを使用中であることを伝えてください。

中用量ピル(生理日移動・月経困難症治療)との併用

中用量ピルは、生理日の移動や月経困難症の治療などに使用されるお薬です。

低用量ピルよりもホルモン含有量が多いのが特徴ですが、同じ経口薬であるため胃内容排出遅延作用の影響を受ける可能性があります。

生理日移動の目的で短期間だけ使用する場合は、マンジャロとの併用期間も限られるため大きな問題になりにくいでしょう。

しかし、月経困難症の治療などで継続的に使用する場合は、低用量ピルと同様に注意が必要です。

処方を受ける際には、マンジャロを使用中であることを必ず医師に伝えてください。

ジエノゲスト(子宮内膜症治療薬)との併用

ジエノゲストは子宮内膜症の治療に用いられる黄体ホルモン製剤です。避妊目的のピルとは異なりますが、同じく口から飲むホルモン剤です。

マンジャロの添付文書において、ジエノゲストは併用注意薬として特別に記載されていません。

ただし、経口薬全般に胃内容排出遅延作用が影響する可能性は否定できません。

子宮内膜症の治療中にマンジャロを始める場合や、その逆の場合も、婦人科と処方元の医師の両方に相談することをおすすめします。

マンジャロとピルを安全に併用するための対策

マンジャロとピルを安全に併用するためには、いくつかの対策を行うのがおすすめです。ここでは具体的な対策を3つご紹介します。

必ず医師に併用していることを伝える

マンジャロを処方してもらう医療機関と、ピルを処方してもらう医療機関が異なる場合は特に注意が必要です。

それぞれの医師に、もう一方のお薬を使用していることを必ず伝えてください。

お薬手帳を活用すると、複数の医療機関で処方されているお薬を一元管理でき、伝え漏れを防げます。

また、薬局でも「他に飲んでいるお薬はありますか」と聞かれた際に正確に答えられるようにしておきましょう。

医師や薬剤師が併用状況を把握していれば、適切なアドバイスや用量調整を受けられます。

※オンライン診療であれば、受診時に医師に薬の併用について相談するようにしましょう。

体調の変化を記録しておく

マンジャロとピルを併用している期間中は、体調の変化を記録しておくと安心です。

消化器症状(吐き気・嘔吐・下痢など)の有無や程度、不正出血の有無などを記録しましょう。

不正出血はピルの効果が不安定になっている兆候の可能性があります。記録があれば、受診時に医師へ正確に状況を伝えられ、適切な対応を受けやすくなります。

スマートフォンのメモアプリや手帳など、続けやすい方法で記録する習慣をつけましょう。

ピル以外の避妊方法も検討する

マンジャロ使用中の避妊については、ピル以外の方法を検討することも選択肢のひとつです。

コンドームは物理的に避妊する方法であり、マンジャロの影響を受けません。

また、子宮内避妊具(IUD)やホルモン付き子宮内システム(IUS)は、経口摂取ではないためマンジャロとの相互作用を心配する必要がありません。

避妊方法にはそれぞれ良い点・注意点がありますので、婦人科医に相談して自分に合った方法を選ぶことが大切です。

複数の避妊方法を組み合わせることで、より確実な避妊効果が期待できます。

マンジャロとピルの併用に関するよくある質問

Q. マンジャロを使っていてもピルの避妊効果はゼロになりますか?

避妊効果がゼロになるわけではありません。

マンジャロとの併用でピルの血中濃度が低下する可能性はありますが、効果が完全になくなるわけではないとされています。

ただし、効果が弱まる可能性があるため、特に使用開始直後4週間や増量直後の4週間は他の避妊方法を併用することが推奨されます。

Q. マンジャロを1ヶ月以上続ければピルの効果は安定しますか?

同じ用量を4週間以上続けると、体が慣れてピルの吸収も安定してくるとされています。

ただし、マンジャロを増量するたびに再び影響が出る可能性があるため、増量後はさらに4週間程度の注意が必要です。

最終的な用量が安定するまでは、慎重に経過を見守りましょう。

Q. ピルを飲んでいてマンジャロを始める場合、どちらの医師に相談すべきですか?

両方の医師に相談することが望ましいです。

マンジャロを処方する医師にはピルを服用中であることを、ピルを処方する婦人科医にはマンジャロを始めることを伝えてください。

どちらか一方にしか相談できない場合は、まずマンジャロを処方する医師に相談し、必要に応じて婦人科への確認を依頼しましょう。

クリニックフォアならどちらの処方も対応しており、一元管理された処方歴から適切にアドバイスさせていただきます、

マンジャロとピルの併用に関するまとめ

マンジャロとピル(低用量ピル)の併用は可能ですが、マンジャロの添付文書では「併用注意」として注意喚起されています[1]

マンジャロの胃内容排出遅延作用により、ピルの血中濃度が低下し、避妊効果が弱まる可能性があります。

特に使用開始直後や増量直後の4週間は影響を受けやすいため、コンドームなど他の避妊方法の併用が推奨されます。

吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状があるときは、ピルの吸収が不十分になる可能性があるため注意が必要です。

アフターピルや中用量ピルについては添付文書上の特別な記載はありませんが、経口薬である以上、影響を受ける可能性は考慮しておきましょう。

マンジャロとピルを処方されている医療機関が異なる場合は、必ず両方の医師に併用していることを伝えてください。

不安な点があれば医師や薬剤師に相談し、安心して治療を続けられる環境を整えましょう。

参考文献

  1. 日本イーライリリー「マンジャロ皮下注アテオス 添付文書」
  2. 日本イーライリリー「マンジャロ(チルゼパチド)の相互作用は?」
  3. PMDA「患者向医薬品ガイド マンジャロ皮下注アテオス」