オゼンピックは製造中止になった?
「オゼンピック 製造中止」というキーワードで検索される方が多いですが、実際にはオゼンピックが完全に製造中止になったわけではありません。
正確には「一時的な出荷停止」と「限定出荷」という状況が続いていたもので、現在は通常出荷が再開されています。
まずは、製造中止に関する誤解を解消し、現在の正確な状況をお伝えします。
完全な製造中止ではなく「一時的な出荷停止」だった
オゼンピックに関して「製造中止」という言葉が広まった背景には、2022年に起きた出荷停止の影響があります。
しかし、これは製薬会社が意図的に製品の製造を終了したわけではなく、製造工程における問題が指摘されたことによる「一時的な製造・輸出の中止」でした。
具体的には、オゼンピック皮下注SD(0.25mg、0.5mg、1.0mg)という製剤について、製造を委託していたヨーロッパの会社が2021年12月に製造と輸出を一時的に停止したことが始まりです。
この影響により、日本国内では2022年3月頃から出荷調整・出荷停止が発生し、医療機関や薬局でオゼンピックが入手困難な状況が生まれました。
重要なのは、すでに日本に出荷されていたオゼンピックの品質や安全性には問題がなかったという点です。
あくまで製造工程に関する問題であり、お薬そのものの有効性や安全性が否定されたわけではありません。
2024年1月から通常出荷が再開されている
出荷停止後、ノボ ノルディスク ファーマは新たな規格である「オゼンピック皮下注2mg」を2022年5月に発売し、供給回復を図りました。
しかし、世界的な需要の急増により、2mg製剤も品薄状態が続き、2023年8月から限定出荷の対象でした。
その後、2023年12月には「2024年1月初旬より限定出荷を解除し、通常出荷を再開する見通し」と発表され、予定どおりに通常出荷へ移行しています。
現在(2024年以降)は供給状況が改善し、医療機関で処方を受けられる環境に戻っている状況です。
現在の供給状況と処方の可否
2024年1月以降、オゼンピック皮下注2mgは通常出荷が再開されており、糖尿病治療を目的とした処方は可能な状況です。
一方で、従来のオゼンピック皮下注SD(0.25mg SD、0.5mg SD、1.0mg SD)については、出荷停止の状態が続いています。
そのため、現在オゼンピックの処方を受ける場合は、基本的に「オゼンピック皮下注2mg」という複数回使用タイプの製剤が処方されることになります。
なお、オゼンピックは2型糖尿病の治療薬として承認されており、糖尿病治療目的であれば保険適用で処方を受けることが可能です。
一方、減量や美容目的での使用は保険適用外の自由診療となり、日本医師会や日本糖尿病学会からは適応外使用を控えるよう呼びかけが行われています[4][5]。
オゼンピックの有効成分であるセマグルチドを含むお薬は、ウゴービという商品名でも発売されています。
ウゴービは、肥満症の適応を持ち、SD製剤のみ発売されています。
オゼンピックが出荷停止になった理由
オゼンピックが出荷停止に至った直接的な原因は、製造工程に関する問題でした。
ここでは、なぜ出荷停止が起きたのか、その背景と理由を詳しくお伝えしていきます。
FDA査察による製造工程への指摘
オゼンピックの出荷停止の発端となったのは、FDA(アメリカ食品医薬品局)による査察でした。
FDAは医薬品の製造工程が適切に管理されているかを確認するため、世界各国の製薬会社や製造委託先に対して定期的に査察を行っています。
この査察では、オゼンピックの製造を担当していたヨーロッパの会社が、GMP(医薬品を安全に作るためのルール)についてFDAから指摘を受けました[3]。
GMPとは、薬をいつでも同じ品質で安心して使えるようにするための国際的な基準で、工場の設備や作り方、品質チェック、スタッフの教育など細かい決まりが定められています。
今回の指摘は、あくまで製造の手順や管理方法に関するもので、すでに出荷されていたオゼンピックの品質に問題があったわけではありません。
ただし、指摘された点を改善するには時間が必要だったため、製造会社は改善が終わるまで製造と輸出を一時的に止める判断をしました。
ヨーロッパの提携製造会社が製造・輸出を一時中止
オゼンピックの製造販売元であるノボ ノルディスク ファーマは、以前「オゼンピック皮下注SD」の製造工程の一部をヨーロッパの提携工場に委託していました。
2021年12月、その提携工場から「FDAの査察でGMP(医薬品を安全に作るための基準)に関する指摘を受けたため、製造と輸出を一時的に停止する」と発信されました。
さらに、問題の改善には時間がかかる見込みで、再開の時期も当初は未定でした。
この影響を受け、ノボ ノルディスク ファーマは2022年2月14日、オゼンピック皮下注SD(0.25mg・0.5mg・1.0mg)で出荷調整や出荷停止が起こる可能性を発表しました。
その後、1.0mg製剤は2022年3月初旬ごろから、0.25mg・0.5mg製剤は3月中旬ごろから出荷が止まり、日本国内では一時的にオゼンピックが手に入りにくい状況となりました。
日本糖尿病学会・日本糖尿病協会の対応
オゼンピックの出荷停止を受けて、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は2022年2月14日に「オゼンピック皮下注SDの製造輸出一時中止に伴う出荷調整への対応について」という声明を発表しました[1]。
この声明では、医療関係者および患者に対して以下のような対応を呼びかけています。
まず発信されたのは、「安定供給が確保されるまでの間、オゼンピックを新規に処方しないでください」「欠品を見越した大量処方は決してしないでください」という注意喚起でした。
また、欠品となった場合には「患者の希望や生活様式を考慮して、代替薬(トルリシティ皮下注アテオス等)への切り替えを行ってください」との指針が示されました。
さらに強いメッセージも出され、「美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外使用は決してしないでください」という内容でした。
学会と協会は2022年2月23日には厚生労働省医政局長に対して要望書も提出しました[1]。
それは「2型糖尿病治療以外の診療用途に当該薬剤が用いられることのないように、医薬品卸売会社などの流通関係者にご指導をお願い申し上げます」という要請でした。
この要望書では、地域によって薬が不足している背景として、美容目的の自由診療クリニックによる大量確保や、医薬品の流通段階で出荷に偏りがあった可能性についても、懸念が示されていました[1]。
オゼンピックが品薄になった背景
オゼンピックの供給不足は、製造工程の問題だけが原因ではありません。
実は、世界的な需要の急増という別の要因も、品薄状態を長引かせる大きな原因となっています[6]。
ここでは、オゼンピックがなぜこれほど品薄になったのか、その背景をお伝えしていきます。
世界的な減量需要の急増
オゼンピックは本来、2型糖尿病の治療薬として開発されたGLP-1受容体作動薬です。
しかし、オゼンピックには血糖値を下げる効果だけでなく、食欲を抑制して体重減少を促す効果があることが知られるようになりました。
臨床試験のデータでは、オゼンピック1.0mgを半年から1年程度使用した場合、平均で5〜6kgの体重減少効果が認められています[7]。
この体重減少効果が注目されたことが、特に海外でオゼンピックをダイエット目的で使用する人が急増した背景です。
SNSやメディアを通じてオゼンピックの減量効果が広く知られるようになり、「痩せ薬」としての需要が世界中で爆発的に高まりました。
製薬会社の生産体制は、もともと糖尿病治療での使用を想定して整えられていたため、急激に増えた需要に製造が追いつかない状況でした。
結果として、製造工程の問題が解決した後も、世界的な供給不足が続く要因となりました。
適応外使用(美容・痩身目的)の広がり
日本国内においても、オゼンピックの適応外使用が問題となりました。
オゼンピックは日本では2型糖尿病の治療薬としてのみ承認されており、肥満症や減量目的での使用は保険適用外となります。
ただし、2024年2月に発売されたウゴービは肥満症の保険適用を持っており、有効成分はオゼンピックと同じセマグルチドです。
ウゴービを保険適用で使うには、厳格な条件があります。
美容クリニックや自由診療を行う医療機関では、減量目的でオゼンピックを処方するケースが増加したのが実情です。
自由診療では医師の判断で適応外の処方が可能であるため、「GLP-1ダイエット」「メディカルダイエット」などの名称でオゼンピックを含むGLP-1製剤が広く宣伝されるようになりました。
この適応外使用の広がりにより、本来は糖尿病治療のために確保されるべきオゼンピックの在庫が、減量目的の需要に流れてしまうという問題が発生しました。
日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、この状況に対して繰り返し「美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外使用は決してしないでください」と注意喚起を行っています[5]。
本来必要な糖尿病患者への供給が逼迫
減量目的での需要急増により最も深刻な影響を受けたのは、本来オゼンピックを必要としている2型糖尿病の患者さんたちでした。
食事療法や運動療法だけでは血糖コントロールが難しい糖尿病患者にとって、オゼンピックは重要な治療選択肢の一つです。
しかし、品薄状態が続いたことで、かかりつけの医療機関や薬局でオゼンピックの在庫が確保できず、治療の継続が困難になるケースが発生しました。
日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が厚生労働省に提出した要望書では、「欠品のため2型糖尿病の治療中断や血糖コントロール悪化が危惧される事態は誠に遺憾であり、患者が適切な治療を継続して受けられるよう強く要望しているところであります」との声明が出されています[5]。
この問題は、オゼンピックが「やばい」と言われる理由の一つにもなっており、適応外使用の広がりが本当に困っている患者の治療機会を奪っているという深刻な社会問題として認識されるようになりました。
現在でも、ノボ ノルディスク ファーマや医療関係団体は、2型糖尿病患者への供給を最優先するよう呼びかけを続けています。
オゼンピック出荷停止から再開までの経緯
オゼンピックの出荷停止から通常出荷再開までには、約2年の期間がかかりました。
ここでは、その間に何が起きたのか、時系列で整理してお伝えしていきます。
2022年2月:出荷調整・停止の発表
2022年2月14日、ノボ ノルディスク ファーマは、オゼンピック皮下注SD(0.25mg、0.5mg、1.0mg)について出荷調整・出荷停止が発生する見込みであることを発表しました[1]。
この発表の内容によると、オゼンピックSDの製造工程の一部を委託していたヨーロッパの提携製造会社が、2021年12月にFDA査察におけるGMP上の指摘を受け、製造と輸出を一時的に中止したとのことでした[3]。
具体的な出荷停止のスケジュールとしては、1.0mg製剤は2022年3月初旬以降、0.25mg・0.5mg製剤は3月中旬以降に出荷停止となる見込みとされました。
再稼働時期については「現時点で未定」とされ、GMP問題の解決には時間を要するとの報告がありました。
同日、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会も対応方針を発表し、新規処方の自粛や代替薬への切り替えを呼びかけています。
2022年5月:新規格「2mg製剤」の発売
出荷停止が続く中、ノボ ノルディスク ファーマは供給回復に向けた取り組みを進めていました。
実は、オゼンピック皮下注2mgという別規格の製剤は2018年に日本で承認を取得しており、薬価収載に向けた準備が進められていました。
出荷停止の影響を受け、この2mg製剤の発売が前倒しで進められ、2022年5月25日に「オゼンピック皮下注2mg」として新たに発売されることになりました。
これにより、出荷停止となったSD製剤の代わりとして、2mg製剤がオゼンピックの供給を担うことになったのでした。
2mg製剤はSD製剤とは異なる規格で、1本で複数回使用できるタイプの製剤です。
SD製剤からの切り替えにあたっては、使い方や針の付け替えなど、いくつかの変更点があるものの、有効成分(セマグルチド)は同じであり、治療効果に違いはありません。
2023年8月:2mg製剤も限定出荷に
2mg製剤の発売により一時的に供給状況は改善しましたが、世界的な需要増加の影響は続いていました。
2023年8月、ノボ ノルディスク ファーマは「需要に見合った供給が難しい」との理由で、オゼンピック皮下注2mgについても限定出荷を開始することを発表したのでした。
限定出荷とは、メーカーから卸売業者への出荷量を制限することで、医療機関への供給量をコントロールする措置です。
この措置により、医療機関によっては必要な量のオゼンピックを入手できない状況が再び発生しました。
限定出荷の背景には、減量目的での世界的な需要が引き続き高水準であったことに加え、製造能力の拡大が需要の増加に追いつかなかったことがあります。
2024年1月:通常出荷再開
2023年12月12日、ノボ ノルディスク ファーマは朗報を発表しました。
オゼンピック皮下注2mgについて、2024年1月初旬より関係卸への限定出荷を解除し、通常出荷を再開する見通しであるとのことでした[2]。
供給の安定は2024年1月15日頃を見込んでいるとされ、予定通り2024年1月から通常出荷が再開されました。
これにより、約2年にわたって続いたオゼンピックの供給不安は、一応の解決を見ることになったのでした。
ただし、従来のSD製剤(0.25mg、0.5mg、1.0mg)については引き続き出荷停止の状態が続いており、現在オゼンピックを使用する場合は2mg製剤が処方され、ウゴービの場合はSD製剤が処方されることになります。
また、世界的な需要が高止まりしている状況は変わっていないため、今後の供給状況については引き続き注視が必要です。
オゼンピックSD製剤と2mg製剤の違い
オゼンピックの出荷停止を機に、SD製剤から2mg製剤への切り替えが進みました。
「SD製剤と2mg製剤は何が違うの?」という疑問をお持ちの方も多いと思いますので、両者の違いを詳しくお伝えします。
SD製剤(使い切りタイプ)の特徴
オゼンピック皮下注SD(Single Dose)は、2020年6月に日本で発売された製剤で、1本を1回で使い切るタイプの注射剤です。
SD製剤には0.25mg、0.5mg、1.0mgの3種類の規格があり、それぞれ1回分の投与量があらかじめ充填されています。
SD製剤の最大の特徴は、注射針がすでに本体に取り付けられた状態で提供されていることです。
そのため、使用前に針を装着する手間がなく、初めて自己注射を行う患者さんでも比較的簡単に使用することができました。
また、使い切りタイプであるため、新しいペンを使うたびに空打ち(針から薬液が出ることを確認する作業)を行う必要がありませんでした。
保管方法については、使用前は冷蔵庫(2〜8℃)での保管が必要で、使用時に冷蔵庫から取り出してそのまま注射するという手軽さがありました。
一方で、針があらかじめ装着されているため、インスリン用の細い針に比べると針がやや太く、注射時の痛みが強いと感じる患者さんもおられました。
2026年2月現在、SD製剤はオゼンピックとして処方を受けることはできません。
その一方で、同じ成分を含むウゴービはSD製剤のみの発売です。
2mg製剤(複数回使用タイプ)の特徴
オゼンピック皮下注2mgは、2022年5月に発売された新しい規格の製剤で、1本で複数回使用できるタイプの注射剤です。
2mg製剤は、1本のペンに2mg分の薬液が充填されており、投与量に応じて使用回数が変わります。
0.25mgで使用する場合は1本で8回分(8週間分)、0.5mgで使用する場合は1本で4回分(4週間分)、1.0mgで使用する場合は1本で2回分(2週間分)となります。
SD製剤との大きな違いは、2mg製剤には注射針が付属していない点です。
そのため、インスリン注射と同じ様に、使用のたびに自分で針を取り付けて使用し、注射後は針を取り外して廃棄する必要があります。
針は別売りとなっており、医療機関や薬局で処方を受けて入手します。
使用できる針はインスリン用のペン型注入器用注射針で、31〜34ゲージという非常に細い針を使用するため、SD製剤に比べて注射時の痛みが軽減されるというメリットがあるのです。
また、2mg製剤では新しいペンを使い始める際に1回だけ空打ちが必要となります。
2回目以降の使用では空打ちは不要ですが、針を取り付けた際に大きな気泡(直径5mm以上)が見られる場合や、ペンを落としてしまった場合などは空打ちを行う必要があります。
保管方法については、未開封の状態では冷蔵庫(2〜8℃)での保管が必要ですが、開封後は室温(30℃以下)でも保管が可能で、開封から8週間以内に使い切る必要があるのです。
現在はどちらが処方されるのか
2026年2月現在、オゼンピックの処方を受ける場合は、「オゼンピック皮下注2mg」が処方されます。
従来のSD製剤(0.25mg SD、0.5mg SD、1.0mg SD)は出荷停止が続いており、新規に処方を受けることはできません。
SD製剤を使用している患者さんは、すでに2mg製剤への切り替えが行われているはずですが、使い方にいくつかの違いがあるため、切り替え時には医師や薬剤師から使用方法の説明を受けることが重要です。
主な違いをまとめると、SD製剤は針付き・使い切り・空打ち不要であったのに対し、2mg製剤は針別売り・複数回使用・初回のみ空打ち必要という特徴があります。
有効成分はどちらもセマグルチド(遺伝子組換え)であり、治療効果に違いはありません。
2mg製剤は1本で複数回使用できるため、処方を受ける頻度が減るというメリットもあります。
出荷停止中の代替薬と切り替え時の注意点
オゼンピックの出荷停止により、多くの患者さんが他のGLP-1受容体作動薬への切り替えを余儀なくされました。
ここでは、出荷停止中に使用された代替薬と、切り替え時の注意点についてお伝えします。
トルリシティなど他のGLP-1受容体作動薬への切り替え
オゼンピックが入手困難になった際、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、代替薬への切り替えを検討するよう医療関係者に呼びかけました[3]。
代替薬として主に挙げられたのが、同じGLP-1受容体作動薬であるトルリシティ皮下注アテオス(一般名:デュラグルチド)です。
トルリシティもオゼンピックと同様に週1回投与のGLP-1受容体作動薬であり、血糖降下作用と体重減少効果を持っています。
その他にも、GLP-1受容体作動薬にはビクトーザ(リラグルチド)やリベルサス(セマグルチド経口薬)など、いくつかの選択肢があります。
また、近年ではマンジャロ(チルゼパチド)という新しいタイプのお薬も、新たなラインナップとして加わっているところです。
マンジャロはGLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用する「デュアルアゴニスト」と呼ばれる薬剤で、血糖降下作用と体重減少効果がオゼンピックよりも強いというデータもあります[8]。
代替薬の選択にあたっては、患者さんの状態、治療目標、生活様式、副作用の出方などを総合的に考慮して、医師が最適な薬剤を判断します。
どの薬剤が適しているかは個人差があるため、医師と相談の上で切り替えを行うことが重要です。
切り替え時の血糖コントロール悪化に注意
GLP-1受容体作動薬の種類を変更する際には、血糖コントロールが一時的に悪化する可能性があることに注意が必要です。
日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、代替薬への切り替え時の注意点として以下の点を挙げています。
まず、代替薬投与にあたっては、血糖自己測定または血液検査等で適宜血糖値をモニターし、急激な血糖コントロールの悪化に注意することが求められます。
また、切り替え先の薬剤の用量が漸増規定(徐々に増量する規定)となっている場合、血糖コントロールの悪化を防ぐため、投与開始時から維持量で投与する必要性が高いと医学的に判断される場面も想定されるのです。
通常、GLP-1受容体作動薬は副作用(特に消化器症状)を軽減するために少量から開始して徐々に増量していくのが一般的ですが、オゼンピックからの切り替えの場合は、すでに体がGLP-1受容体作動薬に慣れているため、最初から維持量で投与しても副作用が出にくいと考えられます。
ただし、投与開始時から維持量で投与する場合でも、消化器症状などの副作用が強く出る可能性はあるため、体調の変化には十分注意が必要です。
切り替え後に体調の変化や気になる症状があれば、速やかに医師に相談してください。
現在はオゼンピックに戻せるのか
2024年1月からオゼンピック皮下注2mgの通常出荷が再開されたことにより、出荷停止中に代替薬に切り替えていた患者さんも、希望すればオゼンピックに戻すことが可能な状況となっています。
ただし、オゼンピックに戻すかどうかは、患者さんの希望と医師の判断によります。
代替薬で血糖コントロールが良好に維持できている場合や、代替薬の方が患者さんに合っている場合は、そのまま代替薬での治療を継続することも選択肢の一つです。
一方、代替薬では血糖コントロールが十分でない場合や、副作用が気になる場合、オゼンピックの方が使いやすいと感じる場合などは、オゼンピックへの復帰を検討することができます。
オゼンピックに戻す際も、急な薬剤変更は血糖コントロールに影響を与える可能性があるため、医師の指示に従って慎重に行うことが大切です。
なお、現在はSD製剤は出荷停止のままであるため、オゼンピックに戻す場合は2mg製剤での処方となります。
以前SD製剤を使用していた方は、2mg製剤との使い方の違い(針の取り付け、空打ちなど)について、改めて医師や薬剤師から説明を受けるようにしてください。
今後オゼンピックが手に入らなくなる可能性は?
2024年1月から通常出荷が再開されたオゼンピックですが、「また手に入らなくなるのでは?」という不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、今後の供給見通しと、安定して使い続けるためのポイントについてお伝えします。
世界的な需要増加は続いている
オゼンピックを含むGLP-1受容体作動薬の世界的な需要は、現在も高い水準で推移しています。
その背景には、2型糖尿病患者の増加に加え、減量目的での使用が世界中で広がっていることがあります。
特に欧米では、オゼンピックの有効成分であるセマグルチドを高用量で配合した肥満治療薬「ウゴービ」が承認されており、肥満治療としての需要が非常に高まっています。
日本でも2024年からウゴービが保険適用で使用できるようになりましたが、適用条件が厳しく(BMI35以上など)[9]、条件を満たさない方が減量目的でオゼンピックを求めるケースは依然として存在します。
また、SNSやインターネットを通じてオゼンピックの減量効果が広く知られるようになったことで、適応外使用への関心は衰えていません。
このような状況から、オゼンピックを含むGLP-1受容体作動薬の需要は今後も高止まりすることが予想されます。
メーカーの増産体制と供給見通し
ノボ ノルディスク ファーマは、世界的な需要増加に対応するため、製造能力の拡大に取り組んでいます。
2024年1月の通常出荷再開は、この増産努力の成果の一つといえます。
製薬会社は、需要予測に基づいて生産計画を立て、原材料の調達から製造、品質管理、出荷までの一連のプロセスを管理しています。
しかし、医薬品の製造は厳格な品質基準のもとで行われるため、需要が急増しても簡単に生産量を増やすことはできません。
新たな製造ラインの構築や、製造設備の増強には数年単位の時間がかかることもあります。
ノボ ノルディスク ファーマは増産体制の整備を進めていますが、世界的な需要の伸びが製造能力の拡大を上回る場合、再び供給が逼迫する可能性は否定できません。
現時点では通常出荷が再開されており、直ちに供給が途絶える状況ではありませんが、今後の需要動向によっては再び限定出荷などの措置が取られる可能性もゼロではないと考えておく必要があります。
安定して使い続けるためのポイント
オゼンピックを安定して使い続けるために、患者さんができることをいくつかご紹介します。
まず、定期的な通院を欠かさないことが重要です。
処方されたお薬がなくなる前に医療機関を受診し、継続的に処方を受けることで、お薬が手元になくなるリスクを減らすことができます。
万が一、医療機関や薬局で在庫が不足している場合でも、早めに受診していれば代替手段を検討する時間的余裕が生まれます。
次に、かかりつけ医との良好な関係を維持することも大切です。
供給状況に変化があった場合、かかりつけ医から早めに情報を得られれば、対応策を一緒に考えることができます。
また、日頃から血糖コントロールの状態を良好に保ち、オゼンピック以外の治療選択肢についても医師と相談しておくと、万が一の際にもスムーズに対応できます。
さらに、個人輸入や非正規ルートでの購入は避けてください。
インターネット上では個人輸入代行サイトなどでオゼンピックが販売されていることがありますが、偽造品や品質に問題のある製品が混入しているリスクがあります[10]。
正規の医療機関で処方を受け、正規の流通ルートで入手した薬剤を使用することが、安心して治療を続けるための大前提です。
オゼンピックの製造中止に関するよくある質問
オゼンピックの製造中止や供給状況に関して、多く寄せられる質問にお答えします。
Q1. オゼンピックは本当に製造中止になったのですか?
A:オゼンピックは完全に製造中止になったわけではありません。
2022年に起きたのは、製造工程の問題による「一時的な出荷停止」であり、製薬会社が意図的に製品の製造を終了したわけではありませんでした。
従来のSD製剤(0.25mg、0.5mg、1.0mg)は現在も出荷停止が続いていますが、2mg製剤については2024年1月から通常出荷が再開されています。
つまり、オゼンピック自体は現在も製造・販売されており、医療機関で処方を受けることが可能です。
Q2. なぜオゼンピックは出荷停止になったのですか?
A:オゼンピックが出荷停止になった直接的な原因は、製造工程に関する問題でした。
オゼンピックSD製剤の製造を委託していたヨーロッパの会社が、FDA(アメリカ食品医薬品局)の査察でGMP(製造管理・品質管理基準)に関する指摘を受け、製造と輸出を一時的に中止したことが発端です[3]。
すでに出荷された製品の品質には問題がなく、あくまで製造工程の改善が求められたものでした。
また、出荷停止後も品薄状態が続いた背景には、減量目的での世界的な需要急増により、製造能力が需要に追いつかなくなったことも影響しています。
Q3. オゼンピックはいつから再開されましたか?
A:オゼンピック皮下注2mgは、2024年1月から通常出荷が再開されています。
SD製剤の出荷停止後、2022年5月に新規格の2mg製剤が発売されましたが、世界的な需要増加により2023年8月から限定出荷となっていました。
その後、2023年12月にノボ ノルディスク ファーマから「2024年1月初旬より限定出荷を解除し、通常出荷を再開する」との発表があり、予定通り再開されたのでした。
なお、従来のSD製剤については現在も出荷停止が続いています。
Q4. 現在オゼンピックを処方してもらえますか?
A:はい、現在オゼンピックは医療機関で処方を受けることが可能です。
2024年1月からオゼンピック皮下注2mgの通常出荷が再開されており、供給状況は改善しています。
ただし、地域や医療機関によっては在庫状況に差がある場合もあるため、処方を希望する場合は事前に医療機関に確認することをおすすめします。
なお、オゼンピックは2型糖尿病の治療薬として承認されており、糖尿病治療目的であれば保険適用で処方を受けることができるのです。
減量目的での使用は保険適用外の自由診療となり、医療関係団体からは適応外使用を控えるよう呼びかけが行われています[4]。
Q5. オゼンピックの代わりになるお薬はありますか?
A:オゼンピックと同じGLP-1受容体作動薬には、いくつかの代わりのお薬があります。
週1回使うお薬としては、トルリシティ皮下注アテオス(デュラグルチド)があり、オゼンピックの出荷停止中に代替薬として多く使用されました。
毎日使用するお薬としては、ビクトーザ皮下注(リラグルチド)があります。
また、オゼンピックと同じ有効成分(セマグルチド)を含む飲み薬として、リベルサス錠があり、注射が苦手な方の選択肢となるのです。
さらに、近年登場したマンジャロ皮下注(チルゼパチド)は、GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用する新しいタイプの薬剤で、血糖降下作用と体重減少効果が強いとされています[8]。
どの薬剤が適しているかは個人差があるため、医師と相談の上で選択することが重要です。
Q6. 今後また手に入らなくなる可能性はありますか?
A:現時点では通常出荷が再開されており、直ちに供給が途絶える状況ではありません。
しかし、オゼンピックを含むGLP-1受容体作動薬の世界的な需要は依然として高く、今後の需要動向によっては再び供給が逼迫する可能性は否定できないのです。
製薬会社は増産体制の整備を進めていますが、需要の伸びが製造能力の拡大を上回る場合、再び出荷の制限がかかる可能性もあります。
安定して使い続けるためには、定期的な通院を欠かさず、かかりつけ医と良好な関係を維持し、供給状況の変化に早めに対応できるようにしておくことが大切です。
また、個人輸入など非正規ルートでの購入は偽造品のリスクがあるため、正規の医療機関で処方を受けるようにしてください[10]。
オゼンピックを安心して使用するための注意点
オゼンピックの供給状況が改善された現在、改めて安心して使用するための注意点を確認しておきましょう。
オゼンピックは効果的な治療薬ですが、正しく使用しなければ十分な効果が得られなかったり、思わぬ健康被害を招いたりする可能性があります。
医師の処方のもとで使用する
オゼンピックは医師の処方が必要な医療用医薬品です。
自己判断で使用を開始したり、用量を変更したり、中止したりすることは避けてください。
特に、インターネット上の個人輸入代行サイトなどを通じてオゼンピックを購入することは、重大なリスクを伴います]。
厚生労働省は、海外から個人輸入した医薬品については品質や安全性が確認されていないこと、偽造品が混入している可能性があることなどを警告しています[10]。
実際に、オゼンピックの偽造品による健康被害は否定できません[11]。
安心してオゼンピックを使用するためには、国内の医療機関を受診し、医師の診察を受けた上で正規に処方された薬剤を使用してください。
適応外使用のリスクを理解する
オゼンピックは日本では2型糖尿病の治療薬として承認されており、肥満症や減量目的での使用は保険適用外の適応外使用となります。
適応外使用には、いくつかのリスクがあることを理解しておく必要があります。
まず、ダイエット(減量)目的で使って副作用が出たとしても、健康保険が使えない可能性があるのです。
副作用の治療にかかる費用が全額自己負担となるケースも考えられます。
また、糖尿病ではない方がオゼンピックを使用した場合の長期的な安全性については、十分なデータが蓄積されていません。
臨床試験は主に2型糖尿病患者を対象に行われており、健康な方への長期使用がどのような影響を及ぼすかは、まだ明らかになっていない部分もあるのです。
さらに、適応外使用の広がりは、本来オゼンピックを必要としている糖尿病患者への供給を圧迫するという社会的な問題も引き起こしています。
日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、「美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外使用は決してしないでください」と繰り返し呼びかけています。
減量目的でGLP-1製剤の使用を検討している場合は、保険適用で使用できる肥満症治療薬(ウゴービなど)の適用条件を満たすかどうかを医師に相談するか、適応外使用のリスクを十分に理解した上で判断することが重要です。
副作用に注意し、異常があれば医師に相談する
オゼンピックには、他のGLP-1受容体作動薬と同様にいくつかの副作用があります。
最も多く報告されている副作用は消化器症状で、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などが挙げられます。
これらの症状は特に投与開始初期や増量時に起こりやすく、多くの場合は体がお薬に慣れるにつれて軽減していきます。
しかし、症状が長引く場合や日常生活に支障が出るほど強い場合は、我慢せずに医師に相談してください。
また、まれではありますが、低血糖、急性膵炎、胆石症、胆嚢炎などの重大な副作用も知られています。
激しい腹痛(特に上腹部から背中にかけての痛み)、持続する嘔吐、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、強い空腹感・冷や汗・手の震えなどの症状が現れた場合は、直ちに投与を中止して医療機関を受診しましょう。
定期的に医療機関を受診し、血糖値や体調の変化を医師に報告することで、副作用の早期発見・早期対応につなげることができます。
まとめ
オゼンピックは完全に製造中止になったわけではなく、2022年に起きたのは製造工程の問題による「一時的な出荷停止」でした。
出荷停止の直接的な原因は、製造を委託していたヨーロッパの会社がFDA査察でGMP(製造管理・品質管理基準)に関する指摘を受けたことにあります。
すでに出荷されていた製品の品質には問題がなく、あくまで製造工程の改善が求められたものでした。
また、減量目的での世界的な需要急増により製造能力が追いつかなくなったことも、品薄状態が続いた大きな要因です。
現在の供給状況については、従来のSD製剤は出荷停止が続いていますが、2mg製剤は2024年1月から通常出荷が再開されています。
SD製剤と2mg製剤の主な違いは、SD製剤が針付き・使い切り・空打ち不要であるのに対し、2mg製剤は針別売り・複数回使用・初回のみ空打ち必要という点です。
有効成分は同じセマグルチドのため、治療効果に違いはないとされています。
今後の見通しとしては、現時点では供給状況は安定しているものの、世界的な需要が高止まりしている状況は変わっていません。
安定して使い続けるためには、定期的な通院を欠かさず、個人輸入など非正規ルートでの処方は避けることが大切です。
供給状況や使用方法について不明な点があれば、かかりつけの医師や薬剤師に相談してみてください。
